権色調教師

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# 第一章:相続と秘書 父が亡くなった。心臓発作だった。突然の出来事に、誰もが驚いたが、私は驚かなかった。むしろ、長く待ち望んだ瞬間がついに訪れたという思いだった。 二十二歳。大学を卒業したばかりの私が、林氏グループの全てを相続した。時価総額数百億の企業。何千人もの従業員。そして、それ以上に価値あるもの——絶対的な権力
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相続と秘書

# 第一章:相続と秘書

父が亡くなった。心臓発作だった。突然の出来事に、誰もが驚いたが、私は驚かなかった。むしろ、長く待ち望んだ瞬間がついに訪れたという思いだった。

二十二歳。大学を卒業したばかりの私が、林氏グループの全てを相続した。時価総額数百億の企業。何千人もの従業員。そして、それ以上に価値あるもの——絶対的な権力。

重役室の大きな革張りの椅子に深く腰掛け、窓の外に広がる都心の景色を見下ろす。これが全て、私のものだ。指一本動かすだけで、誰かの人生が変わる。それが何よりの快感だった。

ノックの音が響いた。

「社長、お邪魔してもよろしいでしょうか」

低く艶めかしい声。ドアが開き、一歩を踏み入れる女性——高娅。父の秘書を十年近く務めてきた三十五歳の熟女だ。

彼女はゆっくりと歩み寄る。タイトスカートに包まれた豊満な腰が、規則正しく揺れる。白いブラウスの胸元は、はち切れそうな膨らみを強調していた。化粧は濃すぎず、むしろ上品にまとめているが、その瞳には燃えるような熱が宿っている。

「高娅さん、何か?」

私は淡々と言った。彼女のことはよく知っている。父の生前、何度か彼女から誘惑の視線を送られたことがある。だがその時は、父の女に手を出すわけにはいかなかった。

「社長、お茶をお持ちしました」

彼女は机の上に湯呑みを置く。その動作だけで、彼女の体の線が露わになる。わざとらしいほどゆっくりと。

「それだけですか」

「いいえ……」

彼女の声が一段と低くなる。そして、机の前に片膝をついた。

「林逸様、私は……ずっとあなたを待っていました」

見上げるその瞳は潤み、頬は赤く染まっている。三十五歳の大人の女性が、若造の私の前で跪く——その光景は、確かに私の支配欲を刺激した。

「父の秘書だったお前が、今度は私のものになるのか」

「はい、全てを捧げます」

彼女の手が、私の太腿の上に置かれる。指がゆっくりと動き、内側へと向かう。

「お前は、よく父を誘惑していたな」

「でも、決して触らせませんでした。私は……あなたのための女だったんです」

その言葉が、私の欲望の火に油を注いだ。私は椅子から立ち上がり、彼女の髪を掴んで立たせた。抵抗しない。むしろ、その瞳は喜びに輝いている。

「机に伏せろ」

彼女は従順に体を折り曲げ、両手を机についた。後ろを向いた姿勢で、その曲線がより一層強調される。私はスカートの端を捲り上げた。

「お前はこれから、私の玩具だ」

「はい……あなた様の玩具でございます」

一時間後、乱れた髪と服を整えながら、高娅は私の胸に寄り添っていた。その顔には、満足げな笑みが浮かんでいる。

「林逸様、私、あなたのために何かできることはございませんか」

「何かって?」

「あなたに相応しい……玩具をご紹介できます」

面白い。彼女はただの秘書ではなかった。私のための調教役——つまり、狩人になろうとしているのだ。

「誰を?」

「部門管理職の趙強という男がおります。三十二歳。性格は弱く、出世欲は強い。既婚者で、妻は看護師長から最近ホワイトカラーに転身したそうです」

「それがどうした」

「彼——緑奴(寝取られ奴隷)に育てるのに最適です。あなたの権力を見せつければ、すぐに従いますよ」

私は笑った。高娅は賢い。ただの欲望の捌け口ではなく、私の支配の道具としても機能する。彼女なら、面白いゲームができるだろう。

「見せてもらおう。お前の腕前を」

恩威の併用

# 第二章 恩威の併用

執務室の窓から差し込む午後の日差しが、机の上に置かれた一枚の辞令書を照らしていた。私はその紙を手に取り、しばらく見つめてから、ニヤリと笑った。

「高娅、趙強を呼んでくれ。」

「かしこまりました、社長。」

高娅は優雅に一礼すると、ヒールの音を響かせて部屋を出ていった。彼女の後ろ姿を見送りながら、私は辞令書を机の端に置いた。これは餌だ。趙強という魚を釣るための、最高の餌だ。

数分後、ノックの音が響いた。

「失礼します、社長。」

趙強が緊張した面持ちで入ってくる。彼の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。三十二歳の部門管理職とはいえ、トップの呼び出しに慣れていないのだろう。

「座れ。」

私はソファを指さした。趙強はおどおどしながら、ソファの端に浅く腰掛けた。

「お、お呼びでしょうか、社長。」

「最近の仕事ぶりを見ていたんだが、お前の部門の成績は悪くない。特に先月のプロジェクト管理の品質は、全社で一番だった。」

「あ、ありがとうございます。それは皆の努力の賜物で…」

「いや、リーダーシップの問題だ。お前がしっかりしているから、部下もついてくるんだ。」

私はわざとらしく賞賛の言葉を並べた。趙強の顔に少しずつ自信の色が広がっていくのが分かる。そして、私は本題を切り出した。

「ところで、趙強。お前はこの会社にもう五年いるな。そろそろ役職を一つ上げてもいい頃だと思わないか?」

趙強の目が一瞬大きく開かれた。

「は、はい…そうですね…」

「実はな、来月から新たにクロスファンクショナルチームを立ち上げることにした。各部門から優秀な人材を集めて、新規プロジェクトを推進するつもりだ。そのチームのリーダーとして、お前を指名したい。」

趙強の顔がパッと輝いた。しかし、私は続けて言った。

「ただし、正式な部門長ではなく、まずはエージェントディレクターという形だ。つまり、代理ディレクターだ。実績を積めば、半年後には正式に任命するつもりだが…どうだ、やってみるか?」

趙強は一瞬、迷いの表情を見せた。代理という言葉に、彼の野心と不安が交錯しているのだ。しかし、すぐに決心したように頷いた。

「ありがとうございます、社長。必ずや期待に応えます!」

「そう言ってくれると嬉しい。ただし、これは俺の一存で決めたことだ。他の幹部連中はお前の実力をまだ認めていない。だからこそ、結果を出す必要がある。いいか、手柄はすべてチームのものにして、失敗はすべて俺がかぶる。だが、もし失敗が続くようなら…その時はお前の責任だ。」

私は恩威を併用した。これで趙強は、私への忠誠心と同時に、不安感も抱くようになる。まさに理想的な状況だ。

趙強は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、社長。必ず結果を出します。絶対にご期待に沿いますので!」

「よし、その意気だ。ところで…」

私は話題を変えた。

「お前の家庭はうまくいっているか? 確か、奥さんは看護師だったな?」

趙強は少し驚いた顔をしたが、すぐに答えた。

「はい、妻は市内の総合病院で看護師長をしています。ただ、夜勤が多くて、すれ違いの生活が続いていて…最近はなかなか顔を合わせる時間もなくて困っています。」

「そうか。それは大変だな。病院勤務は厳しいと聞く。特に看護師長となれば、責任も重いだろう。」

「はい…実際、妻は最近疲れが溜まっているようで、体調を崩しがちで…私としても何とかしてやりたいのですが。」

趙強が愚痴をこぼす。私はその言葉を聞きながら、ゆっくりと紅茶を一口すすった。

「ふむ…それなら、一つ良い話がある。」

私は机の引き出しから携帯電話を取り出した。

「市立第二病院の院長とは、ちょっとした知り合いだ。うちのグループ会社がそこと医療機器の契約を結んでいるからな。一度連絡してみよう。」

「えっ? でも、そんなことまでお願いするわけには…」

「構わない。お前はこれからうちの重要なプロジェクトを任せる優秀な人材だ。その家族の生活が安定しなければ、仕事にも影響が出る。それに…」

私はわざとらしくため息をついた。

「実はな、うちの会社の役員たちは、家族のケアを軽視する傾向がある。俺はそれを変えたいと思っているんだ。社員の家族が安心して生活できる環境を整えることこそ、真の企業成長につながると確信している。」

私はもっともらしい理屈を並べた。もちろん、本当の目的は別にある。だが、趙強にはそれが聖人君子のような行為に見えたのだろう。彼の目には感謝の涙がにじんでいた。

「社長…ありがとうございます。そんなお心遣いまでいただいて…」

「よし、今すぐ電話する。」

私は電話帳を開き、第二病院の院長の番号を探し当てた。高娅が事前に調べておいてくれた情報だ。

「もしもし、王院長先生ですか? 林逸ですが。お久しぶりです。先日は医療機器の契約、ありがとうございました。」

「いやいや、こちらこそ。林社長、いつもお世話になっております。」

「実は、お願いがあってご連絡しました。うちの社員の奥様が、そちらで看護師長をされているそうで。王雪さんと言うのですが、ご存知ですか?」

「ああ、王雪さんですか。優秀な看護師長で、うちの病院の誇りです。何か問題でも?」

「いえ、全く問題はありません。ただ、彼女が夜勤で大変そうなので、もし可能なら、院務室の副主任というポジションを用意していただけないでしょうか? デスクワーク中心の仕事で、体力的にも負担が少なく、それでいて役職も上がるという…本人のキャリアアップにもつながるかと思いまして。」

「院務室の副主任ですか…ちょうど来月、そのポジションが空く予定でした。しかし、通常は院内の公募で決めるものでして…」

「もちろん、その点は重々承知しております。ですので、もし王院長先生がお認めいただけるなら、今回は特別に…という形でお願いしたいのです。もちろん、その代わりといっては何ですが、次回の医療機器の更新時には、価格面で特別なご優待をさせていただきます。いかがでしょうか?」

数秒の沈黙の後、院長の声が聞こえた。

「…分かりました、林社長の頼みとあれば。ただし、これは本当に特別な措置ですよ。他の看護師たちに示しがつかないので、内密にしていただきたい。」

「もちろんです。ありがとうございます、王院長先生。来月、改めてご挨拶に伺います。」

電話を切ると、私は趙強に向かって親しげな笑顔を見せた。

「決まったぞ。来月から奥さんは院務室の副主任だ。給料も上がるし、夜勤もなくなる。どうだ、これで少しは家庭も落ち着くだろう?」

趙強は立ち上がると、深々と頭を下げた。彼の肩が震えている。

「社長…ありがとうございます。こんなにしていただいて、本当に…言葉もありません。」

「良いんだよ。これから一緒に頑張っていく仲間だ。お互いに助け合っていこう。」

私は立ち上がり、趙強の肩をポンと叩いた。彼は顔を上げると、涙ぐんだ目で私を見つめた。

「絶対に、絶対にご恩は忘れません。この恩は必ず仕事で返します!」

「そう言ってくれると嬉しい。さて、今日のところはこれで戻って良いぞ。明日から新しいチームの準備を始めよう。資料は高娅から受け取ってくれ。」

「はい! ありがとうございました!」

趙強は何度も頭を下げながら、部屋を出ていった。ドアが閉まると同時に、私はソファに深く腰掛けて、ニヤリと笑った。

高娅が入ってきた。

「社長、うまくいきましたね。」

「ああ。趙強は完全に俺の掌の上だ。借りを作った部下ほど、扱いやすいものはない。」

「それにしても、奥さんの仕事まで手配されるとは。あの男はどこまで感謝するでしょうね。」

「感謝だけじゃない。これで彼の妻は俺の恩人として、夫に頭が上がらなくなる。そして夫婦間にも微妙な力関係が生まれる。興味深い観察対象になるだろうな。」

私は高娅の手を取った。

「お前もよくやってくれている。趙強の妻の情報を調べるのに、どれだけ苦労した?」

「看護師長という立場ですから、調べるのは簡単でした。それに、彼女は真面目な性格で、同僚からの評判も良い。完全に騙されるタイプです。」

「よし。このゲームは始まったばかりだ。じっくりと楽しもうじゃないか。」

窓の外では、夕日が街を赤く染め始めていた。私はその景色を見ながら、次の一手を考える。

趙強、そしてその妻の王雪。彼らはどんな反応を見せるだろうか。俺の掌の上で踊る人形たちは、いつまで無邪気に笑っていることができるだろうか。

想像するだけで、胸が高鳴る。

恩情の代償

# 第三章 恩情の代償

その夜、趙強の自宅のリビングには重い沈黙が漂っていた。

窓の外では都会のネオンが瞬き、遠くからかすかに車の音が聞こえてくる。しかし、その二つの影はソファに座ったまま、長い間一言も発しなかった。

「強…」

王雪が先に口を開いた。彼女の声にはかすかな震えがあった。看護師長から総合病院のホワイトカラー管理職へと転身したばかりの彼女は、まだ新しい職場に完全に馴染めてはいなかった。しかし、それ以上に彼女を不安にさせていたのは、夫の趙強が最近見せる異常な態度だった。

「林社長の件、どうするつもり?」

趙強は深くため息をつき、手に持った茶碗をテーブルに置いた。彼の目には苦悩と迷いが交錯していた。

「あの日、林社長が手術費を立て替えてくれなければ、母さんは…」

王雪は唇を噛んだ。彼女は忘れられなかった。三ヶ月前、姑が突然倒れ、緊急手術が必要になった時、高額な手術費に家族は途方に暮れた。保険ではカバーしきれない部分が大きく、貯金をすべて使っても足りなかった。親戚や友人に借金を頼み歩いたが、結果は芳しくなかった。

そんな時、趙強の直属の上司である高娅秘書が現れ、林逸社長が全額を立て替えてくれたのだ。

「五十万だぞ…」王雪は小声でつぶやいた。「それに、私の仕事のことも紹介してもらった。あの病院の管理職のポジションは、普通に応募しても絶対に入れなかった。」

趙強はうつむいた。彼もまた、林逸の恩恵を受けていた。二ヶ月前、部門の管理職のポジションが空いた時、競争率は非常に高かった。しかし、高娅秘書が一声かけただけで、趙強は他の候補者を押しのけてその座を手に入れたのだ。

「あまりにも多く借りがありすぎる…」王雪の声は次第に小さくなった。「私たち、どうやって返せばいいんだろう?」

趙強は顔を上げ、妻を見た。彼女はまだ二十八歳だが、最近できた小じわが彼女の疲れを物語っていた。彼女は美しかった。看護師だった頃から病院で評判の美人で、今はスーツ姿のキャリアウーマンとして、一段と魅力的に見えた。

「林社長を食事に誘おうか?」趙強が提案した。「高級なレストランを予約して、心を込めて…」

「それだけでは足りない」王雪は首を振った。「五十万の借金と、二人分の職場の紹介だぞ。食事一回で済む問題じゃない。」

「じゃあ、どうすれば…」

王雪は立ち上がり、窓辺に歩いていった。街の明かりが彼女の輪郭を柔らかく照らし出していた。

「私は必ず返す」彼女は静かだが、強い決意を込めて言った。「どんな方法でも構わない。私にできることなら、何でもする。」

趙強はその言葉に背筋が冷たくなるのを感じた。しかし同時に、心の奥底で何かが芽生えているのにも気づいた。それは恐怖か、それとも期待か——彼自身もよくわからなかった。

「強、私たちは林社長に感謝しなければならない」王雪が振り返り、夫の目を見つめた。「借りは必ず返す。それが私たちの…義務だ。」

趙強はゆっくりとうなずいた。その瞬間、彼の心の中で何かが変わった。弱さと葛藤が、徐々に別の感情に取って代わられようとしていた。

——

その頃、林逸の豪華なペントハウスでは、高娅が書類を携えて現れていた。

「社長、趙強夫婦の状況は順調です」高娅は優雅に微笑みながら、報告した。「今夜、彼らはきっと話し合っているでしょう。どうやってあなたに恩返しをするかについて。」

林逸はソファにだらりと寄りかかり、ワイングラスを手にしていた。彼の目には冷酷な光がきらめいていた。

「罠にかかったか?」

「ええ」高娅は近づき、声を低くした。「王雪はもうあなたの借りを返す決心をしています。どんな方法でも構わない、と心に誓ったようです。趙強の方は…まだ迷いがありますが、あの男は弱い。昇進の誘惑には勝てません。」

林逸はグラスを軽く揺らし、深紅の液体が縁を伝うのを眺めた。

「調教はまだ始まったばかりだ」彼は冷酷な笑みを浮かべた。「次は、彼らの限界をどこまで押し広げられるか、試してみよう。」

高娅は目を輝かせた。彼女はこの瞬間が一番好きだった。人の心を操り、支配する快感。それこそが彼女の生きる喜びだった。

「次の段階の準備はできていますか?」林逸が尋ねた。

「もちろんです」高娅はバッグから一枚の封筒を取り出した。「これがそのプランです。まずは趙強から…彼の同級生である李雅の存在を利用します。」

林逸は封筒を受け取り、中身に目を通した。そして満足そうにうなずいた。

「面白い…」彼はつぶやいた。「人間の弱さを利用するのが、これほど楽しいものだとはな。」

高娅は微笑みながら、一歩下がった。彼女の目には忠誠と歓喜が混ざり合っていた。

「社長、どのように調教を進めますか?」

林逸は立ち上がり、窓辺に歩いていった。眼下に広がる都会の夜景を見下ろしながら、彼はゆっくりと言った。

「まずは趙強に味をしめさせる。林氏グループの力を見せつけてやれ。そして、王雪には…少しずつ理解させていくんだ。彼女の体と心が、誰のものかを。」

女同級生の李雅

# 第四章 女同級生の李雅

オフィスの空気はいつもより微かに緊張していた。趙強は書類に目を落としながらも、その視線は斜め前方のガラス張りの部屋へと向かっていた。

そこに座る李雅は、今日も完璧な装いだった。上品な白のブラウスにタイトスカート、控えめながらも品の良さを感じさせるアクセサリー。彼女は大学時代から変わらず、どこか高嶺の花のような雰囲気を漂わせている。

大学生の頃、同じ法学部だった彼女は、いつも最前列で教授の話に耳を傾け、ノートを取る姿が印象的だった。趙強は当時から密かに彼女に憧れていた。卒業後、彼女が同じ会社に入ってきた時は驚いたものだ。

「趙強さん、ちょっとよろしいですか?」

柔らかな声に、趙強は慌てて視線を逸らした。心臓が大きく跳ねる。

「は、はい。何でしょうか、李雅課長」

李雅は優雅に立ち上がり、彼のデスクまで歩いてきた。彼女の纏う微かな香水の香りが、趙強の鼻腔をくすぐる。

「先週提出してもらった企画書だけど、少し修正点があるの。後で私の部屋に来てくれる?」

「承知しました」

李雅は微笑むと、自分のデスクへと戻っていった。趙強はその後ろ姿を見送りながら、妙な違和感を覚えていた。

最近、李雅の様子がどこかおかしい。以前はもっと凛とした佇まいだったのに、何かを隠しているような、どこか落ち着かない雰囲気がある。目元には微かな隈があり、どこか疲れているようにも見える。

*それに…*

趙強はふと、李雅の首元に視線を留めた。彼女のスカーフの下から、何か金属のようなものが一瞬光った気がした。

「あの…」

声をかけようとした時、エレベーターの扉が開き、高娅が現れた。

「皆さん、お疲れ様です」

高娅の登場に、オフィスの空気が一変する。彼女はいつものように完璧な笑顔とスタイルを武器に、フロアを歩いていた。

だが、その視線は確かに李雅の方を捉えていた。

「李雅課長、先日のお打ち合わせの資料ですが」

高娅はそう言って、李雅の部屋に入っていった。その後、ガラス越しに二人が何かを話しているのが見える。

趙強は思わず目を凝らした。

高娅が李雅の肩に触れる。瞬間、李雅の体がビクリと震えた。何かを言われたのか、彼女の顔が一瞬で赤く染まる。

「何だ…?」

趙強は首を傾げた。二人の関係は上司と秘書。だが、そのやり取りにはどこか親密さと同時に、不可解な力関係のようなものが感じられた。

昼休みになり、趙強は社員食堂で一人、うどんを食べていた。そこに李雅が現れた。彼女はトレイを持って、彼の近くの席に座った。

「お昼はいつもここなの?」

「ええ、まあ。リーズナブルですし」

李雅は軽く笑った。その笑顔は相変わらず綺麗だった。

「大学の時も、よく学食で一緒になったわね」

「覚えててくれたんですか?」

「もちろん。あなた、いつも同じメニューを頼んでたもの」

趙強は照れくさそうに頭を掻いた。彼女がそんな細かいことまで覚えているとは思わなかった。

「ところで、李雅課長」

「李雅でいいわよ。昔の友達なんだから」

「じゃあ…李雅。最近、何かあった?」

李雅の箸が止まった。その表情が一瞬で曇る。

「どうしてそう思うの?」

「いや、なんとなく。疲れてるように見えたから」

李雅は何も言わず、うつむいた。トレイの上のうどんが冷めていく。

「気にかけてくれてありがとう。でも、大丈夫」

そう言って顔を上げた時、その瞳に一瞬、何かが過ぎった。それは、恐怖とも諦めともつかない、複雑な光だった。

趙強はそれ以上追及できなかった。彼女が立ち上がり、トレイを片付けようとした時だ。

「李雅課長」

声のした方を見ると、高娅が立っていた。その手には、一枚の書類が握られている。

「林社長から、至急の書類です。ご確認をお願いします」

高娅は書類を差し出すと、李雅の耳元に顔を寄せた。何かを囁いたようだった。

李雅の顔色が一瞬で青ざめる。トレイを持つ手が微かに震えた。

「わ、わかりました。すぐに確認します」

「お願いしますね」

高娅は意味深な笑みを浮かべると、優雅にその場を去っていった。

「李雅…」

「ごめん、戻らないと」

李雅はそう言うと、足早に食堂を出ていった。その背中は、どこか追い詰められた小動物のようだった。

その日の午後、趙強は書類を届けるため、社長室へ向かった。エレベーターを降り、廊下を歩いていると、社長室の前に高娅が立っているのが見えた。

「あら、趙強さん」

「林社長に書類をお届けに」

高娅は顎で社長室のドアを示した。

「中にいらっしゃるわよ」

趙強がドアをノックしようとした時、中から声が聞こえた。それは、社長の声ではない。

「お願いします…もう、やめてください…」

李雅の声だった。泣き声のような、震えた声。

趙強の手が止まる。心臓が激しく打ち始める。

「あらあら、どうなさったの?」

高娅がわざとらしく首を傾げた。

「い、いえ…また後で来ます」

趙強はその場を離れようとした。だが、高娅が彼の腕を掴んだ。

「まあまあ、せっかく来たんだから。中に入ったら?」

「でも…」

「大丈夫よ。社長も李雅課長も、あなたに会いたがってるわ」

高娅の口元に浮かぶ笑み。それは、すべてを見透かしたような、恐ろしいほど美しい笑顔だった。

「遠慮しないで」

強く腕を引かれ、趙強は社長室のドアの前に立たされた。

「どうぞ」

高娅がドアを開ける。中から、何かが崩れ落ちる音がした。

「あっ…!」

李雅の声。彼女は床に片膝をつき、必死に服の乱れを整えていた。林逸はデスクに座り、悠然と煙草をふかしている。

「おや、趙強か。どうした?」

「し、書類をお届けに…」

「そうか。そこに置いておけ」

趙強は震える手で書類をテーブルに置いた。李雅は顔を上げようとしない。その首元には、さっき見た金属の輪のようなものが、はっきりと見えていた。

「もういい。下がれ」

林逸の一言で、趙強は部屋を飛び出した。背中に冷や汗が流れる。

*あれは…首輪?*

信じられなかった。あの高慢な李雅が、首輪をつけている? そんなはずはない。

だが、自分の目は確かに見た。

廊下の角で、趙強は立ち止まった。心臓の鼓動が耳の奥で響いている。

「どうかなさいましたか?」

後ろから高娅の声。振り返ると、彼女は優雅に歩いてきていた。

「な、何でもありません」

「まあ、そうおっしゃらずに」

高娅は趙強の耳元に顔を寄せ、囁いた。

「知りたいことがあるなら、いつでも私のところにいらっしゃい。あなたにも、いいことがあるかもしれないわよ」

その言葉に、趙強の全身が粟立った。

「失礼します!」

彼はそう言うと、その場から逃げるように立ち去った。

その夜、家に帰った趙強は、ソファに座り込んでいた。何度も思い返す、昼間の光景。

*李雅が…首輪?*

信じられなかった。しかし、あの光景は確かに現実だった。

「ただいまー」

妻の王雪が帰宅した。彼女は最近、林逸の会社に転職してから、どこか生き生きとしていた。

「あら、どうしたの? 顔色が悪いわよ」

「いや…ちょっと疲れただけだ」

王雪は怪訝そうな顔をしたが、それ以上は追及しなかった。

「そう。お風呂わかすわね」

「ああ…ありがとう」

趙強は天井を見上げた。あの会社には、何かが潜んでいる。それは、彼の理解を超えた、何か恐ろしいものだった。

だが、同時に、もう一つの感情が胸の奥で芽生えていた。

*もしかしたら…*

自分の欲望を、制御できなくなりそうだった。

調教の場

**第五章 調教の場**

私の命令は絶対だ。

高娅がスマホを取り出し、ホテルの住所を趙強に送信するのを、私はソファに深く腰掛けて見ていた。部屋の照明は薄暗く、重厚なカーテンが外界の光を遮断している。空調の効いた空間に、かすかに消毒液の匂いが混じっていた。

「林社長、すべて準備完了です」

高娅が恭しく頭を下げる。彼女の瞳には、これから始まる調教への期待がちらついていた。私はグラスを傾け、琥珀色の液体を一口含む。喉を焼く感覚が、支配者としての自覚を一層鮮明にする。

「彼が来るまで、待つとしよう」

私の声は冷たく、部屋の空気を震わせた。高娅は頷き、隣の部屋へと消える。そこには、すでに調教の準備を施された李雅が待っていた。

三十分後、ノックの音が響いた。

「入れ」

ドアが開き、緊張した面持ちの趙強が立っていた。彼の目が部屋の中を彷徨い、落ち着かない様子が手に取るように分かる。スーツの襟元を何度も直す仕草が、彼の不安を物語っていた。

「林社長、お呼びと聞きましたが……」

「ああ、ちょっとした見せ物を用意してね。君にも参加してもらう」

私は優雅に立ち上がり、彼の背中を軽く押す。趙強の体が一瞬硬直したが、抵抗する素振りは見せなかった。私の指図に従うことに、すでに慣れてきているらしい。

「こっちだ」

隣の部屋のドアを開けると、趙強の呼吸が止まったのが分かった。

部屋の中央。照明が一つのベッドを照らし出していた。その上で、裸の李雅が両手を後ろ手に縛られ、目隠しをされていた。彼女の体はわずかに震えていたが、それ以上に目を引いたのは、高娅が手にした鞭だった。

「っ……李雅……!」

趙強の声が裏返る。彼の視線は、李雅の豊かな胸や、くっきりと浮かぶ肋骨の線に釘付けになっていた。高娅が鞭の先で彼女の乳首を軽くなでると、李雅の体がびくんと跳ねる。

「静かにしろ。これはすべて、お前たちの未来のために必要なことだ」

私は趙強の耳元に顔を寄せ、ささやくように言った。彼の顔が一瞬で紅潮し、全身が硬直する。

「見ているといい。これが、本当の調教というものだ」

高娅が鞭を振るう。ヒュッという鋭い音とともに、李雅の太ももに赤い線が浮かんだ。彼女の口から漏れるかすかな悲鳴が、部屋に淫靡な空気をまき散らす。鞭は正確に、彼女の敏感な部分を狙っていた。太もも、尻、そして胸。一打ごとに、李雅の体が白いシーツの上で悶えた。

「あっ……ああっ……」

「どうだ、趙強。お前の憧れの女が、今どこで何をされているか、よく見えるか?」

私は趙強の肩に手を置いた。彼の体は小刻みに震え、拳を握りしめていた。嫉妬か、興奮か、あるいはその両方か。彼の複雑な感情が、握りしめた拳の震えとなって伝わってくる。

「彼女はもう、お前の手の届かない存在だ。だが、お前が望むなら、今ここで彼女に触れることもできるぞ」

私はゆっくりと、趙強の耳元で言葉を紡いだ。彼の瞳孔が開き、迷いの色が一瞬走る。

「どうする? お前のその手で、彼女を支配してみるか?」

趙強はしばらく固まっていたが、やがてゆっくりと一歩を踏み出した。彼の指が李雅の髪に触れる。その瞬間、李雅の体が一層激しく震えた。

「手を離せ。目隠しを外せ」

私の命令に、高娅が即座に従う。目隠しが外された李雅の目が、焦点を結ぶ前に趙強の姿を捉えた。

「……趙強……? どうして……」

彼女の声は掠れていた。その瞳には、羞恥と屈辱、そしてかすかな期待が混ざっていた。

「李雅……俺は……」

趙強の声が震える。彼の指が、彼女の頬をなぞった。

「口を開けろ。趙強に、お前の口淫の技術を見せてやれ」

私の言葉に、李雅の体が一瞬固まる。しかし、高娅が手にした鞭が壁を打つ乾いた音が響くと、彼女はゆっくりと口を開いた。

「俺の前で……土下座しろ」

趙強の声が、わずかに強くなる。彼は床に膝をつき、李雅の顔の前に自分の陰部を押し付けた。

「吸え……俺を……」

彼の言葉には、まだ迷いが混じっていた。しかし、李雅が唇を開き、彼の先端を迎え入れた瞬間、趙強の体が大きく震えた。

「あ……ああ……」

彼の腰が自然に動き、李雅の口の中で質量が増していく。高娅がスマホを構え、その一部始終を録画していた。

「よく見せろ。お前たちの主従関係を、はっきりと刻み込め」

私はソファに腰を下ろし、グラスを傾けた。趙強の震える脚、李雅の涙に濡れた頬。すべてが私の掌の上で踊っていた。

「これで、お前たちは本当に一つになった。もう二度と、元の関係には戻れない」

私の言葉が、部屋の空気を重く支配する。趙強の腰の動きが激しくなり、やがて彼の喉から低いうめきが漏れた。

「あっ……終わった……」

彼の体がだらりと力なく垂れる。李雅の口元から白濁した液体が滴り落ち、シーツに染みを作った。

「次は、お前の妻だ」

私の言葉に、趙強の顔が一瞬で青ざめた。彼の口が何かを言おうとしたが、言葉にならない。

「すべては、お前たちのためだ。理解しろ」

私はそう言い放ち、部屋を後にした。背後で、高娅の冷たい笑い声が響いていた。

罠の始まり

# 第6章 罠の始まり

王雪が行政職に就いてから、二週間が経った。

病院の事務フロアは、診療現場とは全く異なる空気が流れていた。静かな廊下、規則正しい書類の山、そして何より——男性上司たちの視線。看護師長時代にも感じたことはあったが、ここでの視線はより露骨で、より権力的だった。

「王雪さん、今夜の歓迎会、楽しみにしてるよ」

先輩の男性管理職——五十代の佐藤部長が、彼女のデスクに近づき、肩に手を置いた。王雪は反射的に身を固くしたが、笑顔を浮かべることを忘れなかった。

「ありがとうございます。楽しみにしています」

佐藤の指が、彼女の肩から背中へと滑り落ちる。一瞬の接触。王雪はこらえた。

転職してきた恩人、林社長の顔が浮かんだ。彼の助けがなければ、今頃どうなっていたかわからない。だからこそ、ここでトラブルを起こすわけにはいかない。

その夜、居酒屋の個室。

佐藤部長は既にかなり酒が入っていた。他の同僚たちもそれぞれ盛り上がっている。王雪の隣に、佐藤が詰めて座った。

「王雪さん、看護師長から転身する人は珍しいね。でも、君の能力ならきっとやれる。そのためには——まあ、この業界のルールってものがあってね」

佐藤の手が、テーブルの下で王雪の膝に触れた。王雪は息を呑んだ。

「部長、私、お酒はあまり強くなくて」

「そんなこと言わずに。これからの付き合いもあるんだから」

注がれた日本酒のグラスが、彼女の前に差し出された。王雪は迷った。断れば、今後の立場が悪くなる。受け入れれば——。

その頃、趙強のスマホが震えた。

画面には王雪からの短いメッセージ。「今夜は歓迎会で遅くなる」

趙強は眉をひそめた。彼女が転職してから、こんな連絡が増えていた。病院の管理職という立場は、思ったよりも闇が深い。医療業界の旧態依然とした体質を、彼は知っていた。

悩んだ末、趙強は直属の上司であり、今や自分を引き上げてくれた恩人でもある林逸に相談しようと決めた。

次の日、林逸のオフィス。

「林社長、ちょっとご相談が」

珍しく緊張した面持ちの趙強に、林逸はソファを勧めた。

「王雪のことなんですが…昨晩の歓迎会で、先輩の部長が彼女にしつこく酒を強要したみたいで。それだけならいいんですが、最近そういう場面が増えてきて」

林逸はアロマコーヒーを一口含み、ゆっくりと飲み干した。彼の瞳に一瞬、何かが光った。

「趙強、これはな、普通の暗黙のルールだ」

「え…?」

「病院の世界はな、閉鎖的で、古い体質が残っている。新人の女性管理職にとって、こういう試練は避けられない。君の妻がどれだけ耐えられるか、それが試されているんだ」

趙強は言葉を失った。だが、林逸は軽やかに続けた。

「でも、心配するな。俺が電話一本で解決してやる」

林逸はスマホを取り出し、病院の理事長——自分たち林家と親交のある人物に直接電話をかけた。たった三十秒の会話。

「もう大丈夫だ。佐藤部長は明日から地方の分院に異動になる。これで、しばらくは安全だ」

趙強の目に涙が浮かんだ。

「林社長、ありがとうございます。あなた様のおかげで…」

「いいえ、部下を守るのが上司の役目だ。君は安心して仕事に集中しろ」

趙強が深々と頭を下げて退室した後、林逸は口元に冷たい笑みを浮かべた。そして内線で高娅を呼んだ。

「高娅、次の獲物の準備が整った。計画を始めよう」

高娅は微笑み、ノートパソコンを開いた。

「王雪さんですね。調教計画は既に練ってあります。まずは——服装から」

彼女は数枚の写真を見せた。全て清楚なワンピースやスカート姿の女性たち。だが、どこか官能的でもある。

「彼女の看護師時代の服装は実用的すぎます。もっと女性らしく、上品で、かつ…誘うような装いが必要です。そして、行動パターンも変えます」

「具体的には?」

「まずは、私が彼女に近づきます。同じ女性として、職場の悩み相談という形で。彼女が私を信頼するように仕向けて、少しずつ、『より魅力的になる方法』を教えていくんです」

林逸は満足げに頷いた。

「面白い。始めろ」

数日後、病院のカフェテリア。

王雪が一人でランチをとっていると、見知らぬ美女が話しかけてきた。三十歳前後だろうか、スーツの上品な女性。細身だが、スタイルが際立っている。

「隣、いいかしら?」

微笑む女性に、王雪は頷いた。

「ありがとう。私、高娅と言います。実は——林グループの秘書をしているの」

王雪の目が輝いた。

「ああ、林社長の…! お世話になっております」

「知ってるわ。あなたが林社長に紹介された新しい管理職の方ね。聞いてるわよ、頑張ってるって」

高娅の言葉に、王雪はほっとした。そして、思わず本音が漏れた。

「でも、まだ慣れなくて。特に…男性の上司との付き合い方とか」

「わかるわ。私も最初は苦労したもの。でもね、女性が職場で生き残るためには、ある程度の駆け引きが必要なの」

高娅はコーヒーを一口すすると、意味深に続けた。

「特に、あなたみたいな美しい女性はね。その魅力をどう使うかが、キャリアの鍵になる」

王雪は少し戸惑った。

「魅力…ですか?」

「そう。服装から、話し方、目線の送り方。全部が武器になるの。例えば、佐藤部長みたいな男には——もっと上手くかわす方法があるのよ」

高娅はバッグから一枚の名刺を取り出した。

「もし興味があれば、今度ショッピングに付き合ってあげる。あなたに似合う服、選んであげるから」

王雪は迷った。だが、林逸の秘書という立場の高娅が、何か信頼できる存在に思えた。

「…お願いします」

その週末、高娅と王雪は、都内の高級ブティックを巡った。

「このスカート、とても似合うわ。脚が長く見えるし、上品なのに色っぽい」

高娅は試着室から出てきた王雪の姿を、確かめるように見つめた。深い紺色のペンシルスカート。細身のシルエットが、彼女の健康的で美しいラインを強調している。

「でも、こんなに短くて…職場に着ていくのは」

「大丈夫よ。適度な露出が、むしろ好印象を与えるの。それに、あなたの立場なら、ある程度の華やかさも必要」

王雪は鏡の中の自分を見つめた。看護師時代の清潔で実用的な制服とは全く違う。自分が、誰かの視線を意識してしまう。

「これは…新しい私、なのかしら」

高娅は彼女の耳元で囁いた。

「そうよ。あなたはもっと輝ける。林社長も、きっと喜ぶわ」

その言葉に、王雪の心臓が跳ねた。林逸。あの支配的で、冷酷で、でもどこか惹かれてしまう存在。彼の前で、もっと美しくありたい——そんな気持ちが芽生え始めていた。

「買います」

高娅は微笑んだ。罠は、着実に機能し始めていた。

帰宅した王雪を迎えた趙強は、新しい服を見て目を丸くした。

「そのスカート、短くないか?」

「これが今のトレンドなのよ。職場でも好印象だって、先輩の秘書の方が言ってた」

「誰だ、その人?」

「林社長の秘書、高娅さん。とても親切にしてくれてるの」

趙強は何か言いかけて、やめた。林逸の周辺にいる人間ならば、信頼してもいいはずだ。自分の出世も、妻の職場環境も、全て林逸のおかげなのだから。

「そうか…気をつけてな」

王雪は新しいスカートをクローゼットにしまいながら、考えた。高娅の言葉が、頭の中で反芻する。

『魅力を武器にしなさい』

『林社長も、きっと喜ぶわ』

自分は、何か大きな流れに飲み込まれ始めている。そんな予感が、彼女の胸の奥で静かに芽生えていた。

そしてその夜、林逸のマンションで。

高娅はタブレット端末に王雪の新しい写真を送っていた。

「彼女はもう、自分の変化に気づき始めています。次のステップに進んでも構いません」

林逸は写真をズームで見た。スカート姿の王雪。健康的な美しさの中に、新しい色気が滲んでいる。

「いい調子だ。次は——彼女をより深く、俺の世界に引き込む」

「具体的には?」

「彼女の夫、趙強をより深く締め上げる。借金の話はどうなってる?」

「順調です。彼が貯金を切り崩して、毎月返済している。そろそろ限界が近いはず」

林逸は満足げに笑った。

「ならば、次の手を打とう。趙強に新たなチャンスを与えるふりをして、さらに借金させる。そして——王雪を俺のものにするための、最後の一手だ」

高娅はうなずき、スケジュール帳にメモを書き込んだ。

「王雪さんの心の準備ができたら、次の段階に進みましょう」

窓の外には、都会のネオンが輝いている。その光の一つ一つが、罠の網の目のように、獲物を絡め取ろうとしていた。

王雪はまだ知らない。自分がもう、林逸という蜘蛛の巣に囚われ始めていることを。

服従テスト

# 第七章: 服従テスト

高級中華料理店の個室には、重厚な円卓が鎮座していた。私は正面の席に座り、左右に古参株主の張氏と李氏を配置した。二人は六十代半ば、会社の創業期から付き合いのある顔役だ。

「林社長、今日はどういう風の吹き回しで?」

張氏が硝子の酒杯を弄りながら問いかける。私は口元だけで笑った。

「久しぶりに顔を見せようと思いまして。それに、ちょっとした見せ物もご用意しました」

ちょうどその時、扉が開き、高娅が先導して趙強と王雪が入ってきた。趙強は脂汗を浮かべた顔で、所在なさげに立っている。王雪はと言えば、胸元が深く開いた黒のローネックドレスに、黒ストッキングが脚のラインをくっきりと浮かび上がらせていた。髪はアップにまとめられ、首筋の白さがやけに艶めかしい。

「お、これはこれは」

李氏が目を細めた。私は手を挙げて二人を呼び寄せる。

「趙強、君の席はそこだ」

私は自分の斜め後ろの、給仕係が使う小さな椅子を指さした。趙強の顔色が一瞬で変わった。

「社長、そ、それは……」

「何か問題でも?」

私は眉をひそめず、穏やかな口調で続けた。趙強は一瞬躊躇したが、王雪に軽く肘で突かれて、黙ってその椅子に腰を下ろした。背筋を伸ばしても、円卓の料理には手が届かない。まるで犬に与える残飯を見ているような位置だった。

「趙部長、今日は給仕係だ。我々の盃が空になったら、すぐに注げ」

私はそう命じてから、隣の王雪に目を向けた。彼女は緊張で肩を強張らせていたが、それでも美しい姿勢を保っている。

「王雪、こっちに来て座れ」

私は自分の左隣をぽんと叩いた。王雪は一瞬ためらったが、高娅が背後からそっと背中を押した。彼女はおずおずと歩み寄り、私のすぐ隣に腰を下ろした。太腿がかすかに私の脚に触れる。

張氏が意味深な笑みを浮かべた。

「林社長、これはまた……若い奥さんを連れて来られて」

「いえ、私はただの社員の妻です」

王雪が慌てて否定した。だが私は彼女の手を取って、自分の膝の上に載せた。

「今日は特別なゲストだ。我々の古参株主の皆様に、私の周りの者たちがどれほど忠実かをお見せしようと思ってな」

私は箸で海老のチリソース煮を摘まみ、王雪の口元に差し出した。

「食べろ」

王雪の瞳が一瞬揺れた。趙強が小さく息を呑むのが聞こえる。だが王雪はゆっくりと口を開き、私の箸から海老を受け入れた。咀嚼する彼女の頬が微かに紅潮している。

「美味いか?」

「は、はい……とても」

彼女の声が震えていた。私は満足して頭を撫でた。

「いい子だ。そういう素直なところが好きだぞ」

李氏が酒杯を掲げた。

「林社長、あなたは本当に人を使うのが上手い。しかし、奥さんをそんな風に……ご主人は何も言わないのか?」

私は趙強に目をやった。彼は俯いたまま、手に持った酒瓶をぎゅっと握り締めている。

「趙強、どう思う? 君の奥さんが他の男に食事を食べさせてもらうのを、どう思う?」

「……社長のお心遣いに、感謝しています」

歯を食いしばったような声だった。私は笑った。

「よく言えた。褒めてやろう。さあ、今度は君も一杯どうだ?」

私は自分の酒杯を指さした。趙強が立ち上がり、震える手で酒を注ぐ。だが私はそれを拒んだ。

「いや、俺が飲みたいのは酒じゃない。王雪の口移しの酒だ」

個室の空気が凍りついた。張氏が口元に手を当てて笑いを噛み殺している。

「林社長、それは……」

「王雪、俺に酒を飲ませてくれ」

私は王雪の顎を指で持ち上げた。彼女の目には涙が浮かんでいたが、それでも私は構わず自分の酒杯を彼女の唇に当てた。琥珀色の液体が彼女の口に流れ込む。彼女がごくりと喉を鳴らすと、私はそのまま彼女の後首を掴み、自分の唇を重ねた。

甘い酒の香りと、彼女の唇の柔らかさが混ざり合う。王雪は最初こそ固まっていたが、すぐに抵抗を諦め、されるがままになった。

「うむ、美味い」

私は唇を離し、趙強を見下ろした。彼は拳を握り締め、爪が掌に食い込んでいるのが見える。だが、口だけは三味線を弾いていた。

「……社長、お楽しみいただけたようで、何よりです」

「ああ、実に良い妻だ。君は幸せ者だな」

私は王雪の肩を抱き寄せた。彼女の身体が微かに震えている。だが、それでも拒絶はしなかった。何より、彼女の眼差しにはかすかな熱が宿っていることに、私は気づいていた。男に支配される快感に、彼女の身体が正直に反応しているのだ。

張氏が酒杯を置き、真剣な表情で言った。

「林社長、あなたは本当に……人を屈服させる術を熟知している。この夫婦は、もう完全にあなたの掌の上だな」

「まだまだですよ。調教はこれからが本番です」

私はそう言って、王雪の耳元に顔を寄せた。

「今夜は泊まりで付き合え。ホテルを取ってある」

「でも、子供が……」

「姑に任せればいい。それとも、俺の命令に逆らうのか?」

王雪は一瞬迷い、助けを求めるように夫を見た。だが趙強はうつむいたままだ。その姿を見て、王雪は観念したように頷いた。

「……わかりました」

食後、私は古参株主たちと別れ、高娅に後処理を任せた。車の後部座席で、私は王雪と並んで座った。運転席では趙強がハンドルを握っている。バックミラー越しに、彼の苦渋に満ちた表情が見えた。

「趙強、今日はどうだった? 自分の妻が他の男に抱かれているのを見て、何か感じたか?」

「……何も感じません。すべて社長のお心のままに」

「ふん、嘘をつくな。お前の目は嫉妬に燃えている。だが、それでいい。嫉妬もまた一つの調味料だ」

私は王雪の手を取って、自分の太腿の上に載せた。

「王雪、お前は今夜、本当に俺にすべてを捧げる覚悟はあるか?」

王雪が小さく息を呑んだ。しばらくの沈黙の後、彼女は静かに答えを紡いだ。

「……私には、社長に返しきれない恩があります。旦那の仕事も、生活も、すべて社長のおかげです。だから……それで返せるのなら、私は構いません」

「恩義で動くか。それは良い。だが、それだけでは長続きしない。お前には、もっと深いところで俺に従うことを教え込まねばならん」

私は指で彼女の項を撫でた。王雪がびくりと震える。

「私は、女という生き物を完全に掌握することに喜びを感じる。肉体だけではない。心も、魂も、すべてを支配したい。お前は今夜、その第一歩を踏み出すのだ」

車がホテルに到着した。私は王雪の手を引いて車を降りる。趙強も後ろからついてきた。エレベーターの中で、私は趙強に向かって言った。

「お前は部屋の外で待っていろ。自分の妻が他の男に抱かれる声を、じっくりと聞くがいい」

趙強の顔が真っ青になった。だが、それでも彼は首を縦に振った。

「……はい、社長」

部屋に入ると、私は王雪をベッドの縁に座らせた。彼女の肩が震えている。窓の外には都会の夜景が広がり、ネオンサインが彼女の横顔を照らしていた。

「緊張しているな」

「……はい」

「大丈夫だ。すぐに慣れる。女は快楽の奴隷になることに、本能的に悦びを感じるものだ」

私は彼女のドレスのファスナーに手をかけた。王雪がかすかに抵抗する仕草を見せたが、私はそれを無視してファスナーを下ろした。黒いドレスが滑り落ち、彼女の白い肩と胸元が露わになる。

「美しいな」

私は彼女の肌に指を滑らせた。王雪が息を呑み、目を固く閉じる。

「目を開けろ。俺の顔を見ろ」

私は顎を掴んで無理やり目を開けさせた。

「これからお前は、俺の女になる。趙強の妻ではなく、俺の玩具になるのだ。そのことをしっかりと心に刻め」

「……はい」

彼女の声は鈴のように澄んでいたが、そこには諦念と、かすかな昂ぶりが混ざっていた。

私は満足して微笑み、彼女の身体をベッドに押し倒した。この夜、私はこの女のすべてを掌握した。そして、その支配は永遠に続くのだ。

部屋の外で、趙強が壁に凭れてうつむいている。耳を澄ませば、妻のかすかな喘ぎ声が聞こえてくる。彼は拳を握り締め、目に涙を浮かべながらも、唇を噛みしめて耐え続けた。

だがその心の奥底では、確かに一つの声が響いていた。

──これでいいのだ。これで俺の出世は約束された。すべてはそのためだ。妻の身体はその代償に過ぎない。

そう自分に言い聞かせながら、趙強はゆっくりと目を閉じた。この日から、彼の魂に杭が打たれた。それは屈辱と怨嗟と、そして歪んだ快楽が混ざり合った、不浄の杭だった。

KTV調教

KTVのVIPルームは、薄暗い照明と派手なネオンが交錯する異空間だった。大きなソファに私はどっかりと腰掛け、足を組んでウイスキーのグラスを傾ける。隣には高娅が控えめに座り、その向かいには緊張した面持ちの趙強と、何かを悟ったように落ち着かない王雪が並んでいた。

「林社長、お招きいただきありがとうございます」

趙強が恐る恐る頭を下げる。その声は震えていた。私は彼の緊張を楽しむように微笑み、グラスを掲げた。

「今日はただの飲み会だ。堅苦しいことは抜きにしよう。高娅、曲を入れろ」

高娅が立ち上がり、タッチパネルを操作する。大画面に演歌の歌詞が流れ始めた。彼女はマイクを手に取り、趙強の隣に座り直す。その距離感が、趙強の肩をさらに強張らせた。

「趙さん、一緒にどうですか?」

高娅の声は甘く、しかしどこか支配的だった。趙強は戸惑いながらもマイクを受け取り、震える声で歌い始める。その間、私は王雪の方を向いた。

「王さん、君も歌わないか?」

「私、音痴で…」

王雪が恥ずかしそうにうつむく。その仕草が、かえって私の欲望を刺激した。彼女の首元に光るネックレスが、薄暗い光に揺れている。

「構わないさ。ここでは自由にやろう」

私は立ち上がり、王雪の前に立った。彼女の顔が少し上がり、目が合う。その瞳には、抵抗か、それとも期待か。わずかな揺らぎがあった。

「少しだけ、俺と踊らないか?」

私は手を差し出した。王雪は一瞬ためらい、趙強の方を見た。だが、趙強は高娅にからかわれて歌うのに必死で、こちらに気づいていない。彼女はゆっくりと私の手を取った。

音楽が流れる中、私は彼女の腰を引き寄せた。柔らかな感触が腕に伝わる。彼女の体は微かに震えていたが、拒む仕草はなかった。そのままソファに腰を下ろし、彼女を自分の膝の上に座らせた。

「林社長…これ…」

王雪の声が小さく震える。私は耳元に唇を寄せてささやいた。

「静かにしてろ。趙強も楽しんでるんだからな」

彼女の体が一瞬固まったが、すぐに力を抜いた。私はその隙を見逃さず、頬に手を添えて顔を自分の方に向けさせた。唇を重ねる。最初は軽く、次第に深く。彼女の唇は柔らかく、抵抗しなかった。むしろ、わずかに応えるような動きがあった。

その間、手は自然に彼女の胸元へ。スーツのジャケットの上から、形を確かめるように触れた。王雪の息が一瞬止まり、すぐに荒くなった。彼女は何も言わず、ただ目を閉じて私に身を任せている。

一方、趙強は高娅に隣で肩を組まれ、マイクを通して無理に合唱を強いられていた。彼の目は、時折、私と王雪の方に向く。その視線の先で、彼の妻が別の男に抱かれている。彼の手はマイクを持つ手が震え、声が裏返った。

「趙さん、もっと声を出して!この曲、好きでしょ?」

高娅の声が軽やかに響く。彼女は趙強の太ももに手を置き、優しく撫でながら、その反応を楽しむように見つめていた。趙強は汗をかき、目を逸らそうとするが、高娅の手が彼の顎を掴んで画面に向けさせる。

「ちゃんと見てなきゃ、歌詞がわからないよ」

彼の視線は、再び王雪へ。私が彼女の胸に顔を埋め、首筋にキスを落とすその瞬間だった。王雪の体はかすかに震え、指がソファの布地を掴む。だが、彼女の口からは抵抗の言葉は出なかった。

私は顔を上げ、趙強と目を合わせた。彼の顔は青ざめ、唇を噛みしめている。その苦痛を、私はじっくりと味わった。

「趙強、君も歌がうまいな。もっと聞かせてくれ」

私は笑顔で言った。彼は何かを飲み込むように、小さくうなずき、声を張り上げた。その声には、諦念と屈辱が混ざっていた。

高娅が私の隣に座り、ウイスキーを注ぎながらささやいた。

「社長、なかなかいい反応ですよ。あの男、もう完全に飼いならせそうです」

「ああ、だが急ぐな。ゆっくりと、深く刻むんだ」

私はグラスを煽り、再び王雪のあごを持ち上げた。彼女の瞳は潤んでいたが、どこか陶酔しているようにも見えた。私は彼女の耳元で低く言った。

「今日からお前は俺のものだ。夫の前で、そう示せ」

王雪は一瞬固まり、そしてゆっくりと首を縦に振った。その目には、抗えない事実を受け入れる光があった。

曲が終わり、高娅が拍手をする。趙強はマイクを置き、立ち上がろうとしたが、足がもつれてよろめいた。高娅が支え、彼をソファに押し戻す。

「もう一曲どう?今度はデュエットよ」

高娅の提案に、趙強は無理やり笑顔を作る。その笑顔の裏で、彼の心は血を滴らせている。私はその光景を満足げに見つめ、膝の上の王雪の髪を撫でながら、次の一手を考えていた。

「王さん、君も歌わないか?俺と一緒に」

私は彼女の手を引いて立ち上がらせた。王雪は一瞬ためらったが、すぐに立ち上がり、私の腕に絡みついた。その行動が、趙強の心をさらに抉る。

マイクを握りしめ、私は王雪と向かい合った。歌詞が流れ始める。彼女の声は震えていたが、次第に安定していく。私は彼女の腰に手を回し、そのまま歌い続けた。

趙強はソファの隅で、高娅に肩を抱かれながら、その光景を見つめている。彼の目には涙が浮かんでいたが、それを拭う勇気もなかった。

夜はさらに深く、KTVのネオンが歪んだ笑顔と隠された欲望を照らし出していた。