天照の夏

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# 天照の夏 ## 第一章 出征 日出の国は、大夏の南方に位置する島国である。その国土は狭いが、神授の血脈を誇る日出天皇の統治下、強力な軍備と神力を背景に、大陸への侵略を繰り返していた。この数十年、日出の勢力は急速に拡大し、大夏の辺境を脅かし続けている。特にここ数年、日出天皇は自らの血脈こそが世界を統べるにふさわしいと
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出征

# 天照の夏

## 第一章 出征

日出の国は、大夏の南方に位置する島国である。その国土は狭いが、神授の血脈を誇る日出天皇の統治下、強力な軍備と神力を背景に、大陸への侵略を繰り返していた。この数十年、日出の勢力は急速に拡大し、大夏の辺境を脅かし続けている。特にここ数年、日出天皇は自らの血脈こそが世界を統べるにふさわしいと確信し、征服を天命と称し、朝貢を拒む国々を武力で従えてきた。大夏はその最大の標的となっていた。

大夏の都、洛陽城。その中央にそびえる紫宸殿の高台で、女帝・李蓉は遠く南の空を見つめていた。彼女の瞳は漆黒の宝石のように澄み、その中に星の輝きを宿している。腰まである黒髪は風に揺れ、朱色の龍袍の裾がはためく。二十五歳とは思えない威厳と気品を兼ね備えたその姿は、まさに天の化身のようであった。

「陛下、準備が整いました」

背後から声がかかる。振り返ると、夫であり親王でもある孫沫が、甲冑に身を固めて立っていた。二十七歳の彼は、戦場で鍛え上げた筋骨隆々の体躯に、勇猛さと知性を併せ持つ男である。その瞳は今、妻であり主君でもある李蓉を見つめていた。

「沫……今日がその日なのね」

李蓉の声には、わずかに震えが混じっていた。彼女はゆっくりと歩み寄り、夫の胸元に手を触れる。冷たい甲冑の感触が、彼女の指先に伝わる。

「日出の軍が国境を越えたという知らせが届いた。朕は……あなたを戦場に送らねばならない」

孫沫は無言で李蓉の手を握る。その手のひらは温かく、力強かった。

「陛下、お心遣い感謝いたします。しかし、私は必ずや日出の軍を打ち破り、大夏の平和を守り抜くと誓います」

「あなたの勇気は朕もよく知っている。だが……」

李蓉は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。彼女は女帝である前に、一人の女であった。夫を戦場に送る不安は、どんなに強くあろうと消え去ることはない。

「陛下、時が参りました」

老将軍の声が遠くから聞こえる。孫沫は李蓉の手を離そうとしたが、彼女はそれを許さなかった。

「少しだけ……もっとあなたを感じさせて」

李蓉の囁きに、孫沫は頷いた。二人は紫宸殿の奥へと歩いていく。兵士たちの目を避け、密やかな別れの時を過ごそうと。

寝室の扉が閉じられる。そこは紅い絹の帳が垂れ、甘い香りが漂う神聖な空間であった。孫沫は重い甲冑を脱ぎ捨て、李蓉の前に跪く。

「陛下……」

「この場では、ただの蓉だ」

李蓉は彼の頬に手を触れる。その指先は優しく、孫沫の強張った表情をほぐすように撫でた。

「あなたを失うのが怖い。日出の軍は強いと聞く。あなたが……」

「蓉」

孫沫は立ち上がり、彼女を抱きしめた。その腕はまるで壊れ物を扱うように優しい。二人の唇が重なり、それは長く深い口づけへと変わる。

帳の中、二人の体が重なる。しかし、孫沫の体は疲労と緊張で硬くなっており、思うように動かない。彼の熱はすぐに冷め、まるで春の雪のように柔らかく萎えてしまう。彼は恥ずかしさに俯き、李蓉に謝ろうとした。

「すまない……蓉。私は……」

「いいの。大丈夫」

李蓉は彼の背中を優しく撫でながら、耳元で囁く。彼女の手は彼の胸から腹へ、さらに下へと滑り落ち、柔らかくなったそれを優しく包み込む。

「戦場に行く前は不安でいっぱいなのよね。私もよくわかるわ」

彼女の指先は巧みに動き、孫沫の体を再び熱くさせていく。しかし、その熱は長くは続かず、すぐに彼は果ててしまった。白濁したものが彼女の手のひらに広がる。

「もう少しだけ……私のそばにいて」

李蓉は彼を抱き寄せ、そっと頭を撫でる。孫沫はその胸の中で、幼い子供のように泣きじゃくった。彼は武人としての誇りを持っているが、その心は脆く、妻の前では弱さを見せることができた。

「いつも守られてばかりだな、私は……」

「いいえ。あなたが私の夫でいてくれることが、何よりの力になる」

李蓉の言葉に、孫沫は顔を上げる。その瞳はまだ濡れていたが、確かな光を宿していた。

「約束する。必ず戻ってくる」

「ええ、信じているわ」

二人はもう一度、静かに口づけを交わした。それから、孫沫は再び甲冑を身につけ、立ち上がる。

「行く時だ」

李蓉も立ち上がり、彼の前に立つ。彼女の目線はしっかりと夫を捉えていた。

「朕はここであなたの帰りを待つ。必ず、無事に帰ってきてほしい」

「陛下の御身に、永遠の栄光あれ」

孫沫は深々と一礼し、扉の向こうへと消えていった。李蓉は一人、寝室に残され、彼の温もりを感じていた手のひらを見つめる。そこには、彼の残した白い跡がまだ乾かずにあった。

「どうか……どうか無事でいて」

彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

数日後、国境の要衝・鎮南関に孫沫率いる大夏軍が到着した。関所の向こうには、無数の陣幕が並び、日出の軍旗が風に翻っている。その数は三万を超えるという。

「親王殿下、日出軍の先鋒が動きました!」

斥候の報告に、孫沫は馬上で背筋を伸ばす。彼は佩剣を抜き放ち、声高に叫んだ。

「諸君!日出の蛮族どもが我が大夏の領土を侵している。ここは一歩も引くな!大夏の威光を示せ!」

「おおっ!」

将兵たちの鬨の声が響く。孫沫は先頭に立ち、愛馬を駆って関門を開け放たせた。土煙を巻き上げながら、大夏軍が突撃を開始する。

日出軍の先鋒は、巨大な矛を構えた重装歩兵の集団であった。しかし、孫沫の騎兵隊はその横腹に斬り込み、一瞬の隙を突く。孫沫自らが槍を振るい、敵将の一人を馬上から叩き落とした。

「やったか!」

味方の声が上がるが、それも束の間、日出軍の本隊が動き始める。その中心には、黒い甲冑に身を包んだ将軍が指揮を執っていた。

「面白い……大夏の将は勇敢だな。だが、それだけだ」

将軍は手を上げると、後方から弓兵隊が一斉に矢を放つ。空を覆う矢の雨が、大夏軍に降り注ぐ。

「盾を構えろ!」

孫沫が叫ぶが、完全には避けきれず、数名の兵士が倒れる。しかし、大夏軍の士気は衰えない。孫沫はさらに前進を続け、敵将に迫った。

「名乗れ!我こそは大夏親王、孫沫である!」

「ふん、名乗るほどの者ではない」

敵将は冷静に槍を構え、孫沫の突撃を受け止める。金属がぶつかり合う激しい音が響き、二人は一進一退の攻防を続ける。孫沫は全力を振り絞り、敵将の防御を突破しようとするが、相手の方が一枚上手であった。

「くっ……」

孫沫の槍が弾かれ、彼の体がよろめく。その隙に敵将の槍が彼の肩をかすめ、甲冑に傷がついた。

「これ以上の戦いは無駄だ。退け!」

孫沫は苦渋の決断を下し、撤退を命じる。大夏軍は関内へと退却する。しかし、その後の押し寄せる日出軍の攻撃を、彼らは必死に防ぎきった。

「敵を撃退せよ!この関を守り抜くのだ!」

孫沫の指揮の下、大夏軍は必死の防戦を続ける。日が暮れるまで戦いは続き、ついに日出軍も攻めあぐねて兵を引いた。

その夜、孫沫は傷の手当てを受けながら、遠く南の空を見つめていた。

「蓉……私は、まだ戦える。必ず、お前のもとに帰る」

彼の拳は固く握られ、その目には決意の炎が燃えていた。

しかし、洛陽の紫宸殿で、李蓉は不安に胸を焦がしていた。彼女の手は常に龍袍の端を握りしめ、遠くを見つめる時間が増えていった。その横顔には、女帝としての威厳とは別に、一人の女としての憂いが色濃く映っていた。

「陛下、お休みになられたほうがよろしいかと」

侍女の声に、李蓉は首を振る。

「まだ眠れぬ。もう少し……ここにいる」

彼女の目は、南の空に向かって注がれていた。その瞳には、戦場の夫の姿が映っているかのようであった。

月が昇り、静かな夜が訪れる。しかし、戦の火は決して消えることはなかった。

敗北

# 第二章 敗北

戦場の空は、異様なほどに澄み渡っていた。大夏の軍旗は風に翻り、数万の兵士たちが決戦の時を待つ。孫沫は愛馬の上から前方を見据えていた。遠く、日出国の陣営が黒い雲のように広がっている。

「親王殿下、日出軍の動きが……」

副将の言葉が終わらないうちに、空が暗転した。

空が裂けたのだ。

そこから現れたのは、一輪の太陽のごとき輝き。強烈な光が大夏軍を包み込み、兵士たちは悲鳴を上げて地面に伏した。光の中から、優雅な衣をまとった一人の女性が降り立った。

「天后桜子……!」

孫沫の口から、思わずその名が漏れる。伝説でしか聞いたことのない、日出の天后が自ら戦場に現れたのだ。

「凡人の虫けらどもめ」

桜子の声は戦場全体に響き渡った。その声には神力が込められており、聞く者の心を直接震わせる。

「跪け」

その一言で、大夏軍の前列にいた兵士たちが次々と膝をついた。神力による強制的な服従。抵抗する間もなく、数百の兵士が地面に伏した。

「立つんだ! 奴の神力に屈するな!」

孫沫は叫んだが、自らの体も震えているのを感じた。この神力は、戦の女神である月夕さえも凌駕するかもしれない。

桜子は優雅に手を掲げた。その手から放たれた光の奔流が、大夏軍の陣をなぎ倒す。鎧など紙のように裂け、兵士たちの悲鳴が響き渡る。

「親王殿下! 撤退を!」

副将が必死に叫ぶが、孫沫は首を振った。

「撤退などできぬ。ここが大夏の命運の分かれ目だ」

彼は腰の宝剣を抜き放ち、桜子に向かって突撃した。数騎の精鋭がそれに続く。

「愚かな」

桜子は微笑みながら、指を一つ鳴らした。すると、孫沫たちの周囲の空間が歪み、騎馬はまるで壁にぶつかったように停止した。空中から無数の光の鎖が現れ、彼らを縛り上げる。

「降伏しろ。お前の軍はもう壊滅した」

桜子の言葉に、孫沫は振り返った。そこには、地獄さながらの光景が広がっていた。大夏軍の陣は跡形もなく崩れ、生存者たちは皆、地面に這いつくばって震えている。戦場は、血の海と化していた。

「よくも……よくも我が兵を……!」

孫沫の目から涙が溢れた。彼はこれまで数多の戦場を渡り歩いてきた。だが、これほど一方的な虐殺は初めてだった。

「優しいのね。でも、その優しさがお前を弱くしているのよ」

桜子は手を伸ばし、孫沫の顎を掴んだ。彼女の神力が直接彼の心に浸透してくる。暖かく、心地よく、全てを委ねたくなるような感覚。

「抗うな。お前はもう、私のものだ」

その言葉とともに、孫沫の意識は闇に沈んでいった。

孫沫が目を覚ました時、彼は見知らぬ部屋にいた。大理石の床、金で装飾された柱、天井には精緻な絵画。間違いなく、日出の宮殿内部だ。

「目が覚めたか」

聞き覚えのある声がした。桜子が、玉座に優雅に腰かけていた。その足元には、何匹もの犬が伏している。

「ここは……どこだ」

「日出の天后宮だ。お前を、しっかりと調教するために連れて来たのだ」

桜子は立ち上がり、ゆっくりと孫沫に近づいた。彼女の足音が大理石の床に響く。

「お前はもう、大夏の親王ではない。私の犬だ」

「ふざけるな!」

孫沫は立ち上がろうとしたが、手足にはめられた鎖が彼を阻んだ。神力で強化された鎖は、彼の力を完全に封じていた。

「お前の兵たちも、皆捕らえた。もしお前が素直に従えば、兵たちの命だけは助けてやってもいい」

その言葉に、孫沫の動きが止まった。

「だが、もし逆らうなら……一人残らず、お前の目の前で処刑してやる」

「卑怯な……!」

「卑怯? 戦場では、勝てば官軍よ」

桜子は冷たく微笑んだ。その微笑みには、一片の慈しみもなかった。

「まずは、お前に教えてやろう。この場所での自分の立場を」

彼女は手を叩いた。すると、二人の侍女が、青ざめた顔の大夏兵士を連れてきた。

「この者は、お前の部隊の伍長だそうだ。名は?」

「お、小姓の張……張漢と申します……」

「そうか、張漢。お前の主君に、命がどんなに軽いものか教えてやれ」

桜子は優雅に立ち上がると、孫沫の前に立った。

「跪け」

孫沫は震えた。心の中で、皇帝の妻としての誇りが囁く。屈するな、と。しかし、目の前の兵士の命がかかっている。彼はゆっくりと、膝をついた。

「よし。では、私の靴を舐めよ」

「なに……!」

「言うことを聞け。さもなければ、この男の首が飛ぶ」

桜子の指が、張漢の首筋に触れた。神力が彼の命脈を直接握っている。

孫沫は唇を噛んだ。誇りが、誇りが許さない。しかし……。

彼はゆっくりと、頭を下げた。そして、舌を伸ばし、桜子の靴の先端に触れた。

「もっと熱心に。犬は、主人の足を舐めるものだ」

孫沫の目から涙が一粒、落ちた。彼は舌で、桜子の靴の表面を丁寧になめた。皮革の味、そしてほのかな汗の味が口の中に広がる。

「よし。では、次の段階だ」

桜子は手を振ると、張漢は連れて行かれた。次に、孫沫の鎧を外すように侍女に命じた。

「何をするつもりだ」

「公衆の面前で、お前の身分を教えてやる」

桜子が指を鳴らすと、宮殿の壁が消え、一面の広場が現れた。そこには、数千の日出の兵士と民衆が集まっていた。

「ここで、お前を調教する。皆の前で」

孫沫は恐怖に震えた。彼は鎧を剥がされ、下着だけの姿にされた。戦の英雄として名高い彼が、今や裸同然で晒されている。

「まずは、四つん這いになれ」

「やめ……やめてくれ……」

「命令だ」

桜子の声には、抗いがたい力があった。孫沫の体が、勝手に動き出す。彼は四つん這いになり、両手と両膝を床につけた。

その瞬間、広場に笑い声が広がった。日出の民衆が、大夏の親王が犬のように這いつくばる姿を見て、嘲笑しているのだ。

「よくできた。次は、お尻を上げろ」

孫沫は震えながら、腰を上げた。彼の肛門が、衆目に晒される。

「見よ! これが大夏の親王の姿だ!」

桜子は高らかに宣言した。そして彼女はゆっくりと、孫沫の背後に回った。

「これから行うのは、お前を完全に私の所有物とする儀式だ」

桜子は手を掲げると、その手に鞭が現れた。神力で作られた鞭だ。

「痛みに耐えることも、犬の役目だ」

鞭が振り下ろされる。鋭い痛みが孫沫の臀部を襲った。一撃ごとに、皮膚が裂け、血が滲む。

「いっ……!」

「声を出すな。犬は鳴くな」

桜子は容赦なく鞭を打ち続けた。十、二十と数えるうちに、孫沫の臀部は血まみれになった。痛みで意識が飛びそうになるが、彼は歯を食いしばって耐えた。

「よく耐えた。褒美をやろう」

桜子は鞭を置き、代わりに自らの足を使った。彼女は繊細な足の指を、孫沫の肛門に近づけた。

「これからは、私の足の指で、お前の最も恥ずかしい部分を刺激してやる」

「やめ……やめろ……」

孫沫の声は泣き声になっていた。しかし、桜子は止めない。彼女の足の指が、彼の肛門の周りを優しく撫でる。

「力を抜け。お前の体は、もう私のものだ」

桜子の足の指が、ゆっくりと孫沫の肛門の中に侵入した。異物感と屈辱が彼を襲う。

「あっ……ああっ……」

「感じるか? お前の肛門が、私の足の指を締め付けている」

桜子の足の指は、器用に動いた。孫沫の体中に、奇妙な感覚が広がる。痛みと快感が混ざり合い、彼の理性を崩壊させていく。

「そろそろ、お前も限界だろう」

桜子はもう片方の足も使い、孫沫の陰茎を刺激した。両方からの刺激に、孫沫の体が震える。

「だめ……だめだ……」

「もういい。解き放て」

その言葉とともに、孫沫の体が痙攣した。彼は思わず射精してしまった。この辱めの場で、数千人の目の前で。

「ははは! 見ろ、犬が失禁しているぞ!」

桜子の嘲笑が響く。孫沫は涙と汗にまみれて、床に崩れ落ちた。

「まだ終わっていないぞ」

桜子は彼の頭を掴み、無理やり自分の足元に引き寄せた。

「今から、お前の肛門に私の足を完全に挿入してやる。これで、お前の体の全てが私のものになるのだ」

彼女の足の指が、再び孫沫の肛門を広げる。今度は、足全体がゆっくりと侵入してきた。想像を絶する苦痛と屈辱。

「いやあああっ!」

孫沫の悲鳴が宮殿に響いた。しかし、桜子は止まらない。彼女は丹念に、孫沫の肛門を犯しながら、足の指で彼の前立腺を刺激した。

「どうだ? 自分の肛門が、私の足でこんなに気持ちよくなるとは思わなかっただろう?」

「うっ……ううっ……」

孫沫は声にならない声を上げた。体は勝手に反応し、痛みの中に快感が混ざっている。自分が、この感覚に溺れていくのが分かる。

「お前はもう、私の犬だ。私の足の匂いを嗅ぎ、私の指示に従い、私のために生きるのだ」

桜子の言葉が、孫沫の心に深く刻まれた。抵抗する力は、もう残っていない。

「は……はい……」

「なんと返す?」

「わ、私は……あなたの犬です……」

その言葉を聞いて、桜子は満足げに微笑んだ。

「よし。では、犬らしく鳴いてみせろ」

「ワン……ワン……」

孫沫の口から、犬の鳴き声が漏れた。その声は、彼のすべてが打ち砕かれた証だった。

「よくできた。これからは、お前の名は『沫公狗』だ」

桜子は足を抜き、孫沫の頭を優しく撫でた。その手つきは、まるで本当の犬を扱うようだった。

「さあ、立って私の後ろに付け。これから、お前の新しい生活が始まるのだ」

孫沫はよろよろと立ち上がった。彼の目は虚ろで、最初の男らしい輝きは失われている。

「っ……」

彼は桜子の後ろに、犬のように四つん這いでついていった。もう、そこには大夏の親王の面影はない。ただ一人の、飼いならされた公狗が存在するだけだった。

その日以降、孫沫は天后桜子の忠実な下僕として、日々調教され続けた。彼の口からは、かつての誇り高い言葉は二度と発せられることはなかった。

服従

# 第三章 服従

## 一

日出の軍旗が地平線を埋め尽くしたのは、夏の終わりのことであった。

大夏の北方国境に築かれた堅牢な城塞群は、日出天皇が自ら率いる大軍の前になす術もなく崩れ去った。第一の関門である北門関は、わずか半日で陥落した。守将の趙明義は戦死し、その首は城門に掲げられた。

「降伏せよ。さもなくば、お前たちの家族も同じ運命を辿ることになる」

日出の将軍がそう宣言した時、既に城の中は混乱の極みにあった。住民たちは逃げ惑い、兵士たちは武器を投げ捨てた。そして、最初の降伏者が現れた。

それは北門関の副将であった陳泰であった。彼は自分の妻と二人の娘を日出の兵士たちの前に差し出した。

「どうか、お命だけはお助けください」

陳泰は地面にひれ伏し、額を何度も打ちつけた。その姿を見た他の将校たちも次々と倣い、自分の家族を差し出すようになった。

日出の兵士たちは大笑いしながら、連れ出された女たちを獣のように扱った。彼女たちの悲鳴が城中に響き渡ったが、誰も助けることはできなかった。むしろ、他の住民たちは自分の番が来ないことを願いながら、ただ震えて見守るしかなかった。

「日出天皇陛下万歳!」

最初にそう叫んだのは、町の豪商であった張富だった。彼は自分の妻と三人の妾を日出の兵士たちに差し出し、自らは天皇の旗を振って街中を練り歩いた。

「日出の支配を受け入れよ!抵抗すれば死あるのみ!」

張富の声は震えていたが、それでも笑顔を浮かべようと必死だった。彼の顔には、恐怖とへつらいが混ざり合った奇妙な表情が張り付いていた。

北門関が陥落してから三日後、同じ光景が大夏の国境沿いのすべての都市で繰り広げられた。

## 二

東城は大夏北部の要衝であった。ここを守るのは李蓉の信任厚い将軍、趙明の弟である趙武であった。

「兄の無念を晴らすのだ!」

趙武はそう叫んで兵士たちを鼓舞したが、日出の軍勢は圧倒的だった。空には日出の神鳥が飛び交い、地上では甲冑に身を固めた精鋭部隊が波のように押し寄せた。

「趙将軍、もはやこれまでです」

副将の王林が悲痛な面持ちで進言した。

「城の民を救うためにも、降伏なさってください」

趙武は拳を震わせた。彼の目には涙が浮かんでいたが、やがてうなずいた。

「……わかった。だが、条件がある。民の命だけは助けてもらいたい」

こうして東城も降伏した。だが、日出の兵士たちが最初に行ったのは、城の女性たちを集めることであった。若い娘も、既婚の女も、年老いた女も、すべてが標的となった。

「この女は俺のものだ」

「こっちは俺が先に見つけた」

日出の兵士たちは笑いながら、女たちを引きずっていった。泣き叫ぶ声、助けを求める声が街中に響き渡ったが、誰も手を出すことはできなかった。

趙武の妻もまた、その中に含まれていた。

「旦那様!」

彼女が叫んだ時、趙武はただ目を閉じることしかできなかった。彼の拳は血が出るほど握り締められていたが、何もできなかった。

「これが……降伏の代償か」

趙武はつぶやいた。その声は震えていた。

## 三

そして、日出の軍勢は東城からさらに南下し、大夏の首都である天京へと迫った。

首都には連日、敗走してきた兵士たちが流れ込んできた。彼らの口から語られるのは、日出の圧倒的な力と、各地での惨状ばかりであった。

「もう駄目だ」

「日出の前には、大夏の兵など子ども同然だ」

「抵抗すれば、家族が皆殺しにされる」

恐怖が首都中に蔓延した。人々は家にこもり、門を閉ざした。市場は閑散とし、通りを行き交う者もまばらになった。

宮殿の中では、李蓉が額に手を当てて座っていた。彼女の前には、次々と届けられる敗報が積み上げられていた。

「皇姐、ここは私に戦わせてください!」

李軒が進み出た。彼の目は怒りに燃えていた。

「私は太子です。国を守る義務があります!」

「駄目だ」

李蓉は首を振った。

「お前まで失うわけにはいかない」

「しかし!」

「李軒」

太后の王凝が静かに口を開いた。

「今は冷静になる時です。感情に任せて行動すれば、大夏は完全に滅びます」

その時、外から騒ぎが聞こえてきた。宦官が慌てて走り込んできた。

「陛下!大変です!日出の軍勢が、城外に到達しました!」

宮殿中が騒然となった。大臣たちは顔色を青くし、侍女たちは悲鳴を上げた。

「落ち着け」

李蓉が立ち上がった。彼女の声は静かだったが、その中に込められた威厳に、皆が息を呑んだ。

「私は朝堂で会議を開く。全員、参集せよ」

## 四

朝堂には、重臣たちが集まっていた。彼らの顔には恐怖が張り付いていた。中には、震えが止まらない者もいた。

「陛下、ここは降伏なさるべきです」

最初に口を開いたのは、老臣の張文遠であった。

「日出の軍勢は、我々の想像を絶する力を持っています。抵抗すれば、首都の民が皆殺しにされます」

「何を言う!」

李軒が立ち上がった。

「降伏など、あってはならぬ!我らは大夏の誇りを持って戦うべきだ!」

「誇りなど、民の命の前には何の価値もありません」

張文遠は静かに言った。

「各地での報告をご覧ください。抵抗した都市では、女人はすべて凌辱され、男人は奴隷にされました。降伏した都市では、せめて命だけは助けられているのです」

「それでも!」

「李軒」

李蓉が手を上げて、弟を制した。彼女の目は冷たく澄んでいた。

「……我らには、勝ち目はないのか?」

「ありません」

兵部尚書の趙明がうつむいた。

「我々の兵はすでに半分以上を失い、残った兵も士気を完全に失っています。一方、日出の軍勢はまだ全軍が健在です。それに……」

彼は言葉を切った。

「日出天皇自身が、神の力を持っていると言われています。彼の前に立ち向かえる者は、この世にはいません」

朝堂に沈黙が降りた。誰もが言葉を失っていた。その沈黙を破ったのは、外から聞こえてくる叫び声であった。

「日出天皇陛下万歳!」

「大夏は終わった!」

「降伏しろ!」

それは、首都の民たちの声であった。彼らは城門を自ら開け、日出の軍勢を迎え入れようとしていた。

「何という……」

李軒が絶望の表情を浮かべた。

「民が……自ら降伏している……」

「生きたいと思うのは、当然のことだ」

王凝が静かに言った。

「蓉よ、お前が決断する時だ」

## 五

李蓉は立ち上がり、ゆっくりと朝堂の外へ出た。彼女の後ろには、重臣たちがただ黙って従った。

宮殿の庭には、恐怖に震える侍女や宦官たちがいた。彼らは李蓉を見ると、すぐに地面にひれ伏した。

「陛下……私たちは……」

「わかっている」

李蓉は優しく言った。

「お前たちは、自分たちの命を守るために行動しろ。私はお前たちを責めたりはしない」

彼女はそのまま宮殿の門へと歩いていった。門の外では、日出の軍勢がすでに広場を埋め尽くしていた。彼らの鎧は太陽の光を反射して輝き、その威容は圧倒的だった。

そして、その中央に、日出天皇が立っていた。

彼は白い衣をまとい、頭には金の冠を戴いていた。その顔は美しく、まるで神のように神々しかった。しかし、その目には冷酷な光が宿っていた。

「大夏の女帝よ」

日出天皇が口を開いた。その声は低く響き、広場全体に届いた。

「よくぞ出てきた。お前の決断を聞こう」

李蓉は唇を噛んだ。彼女の手は震えていたが、それを必死に抑えた。

「……私は降伏する。ただし、条件がある」

「条件だと?」

日出天皇は笑った。

「敗者が条件を出すとは、滑稽だな」

「民の命だけは助けてほしい」

李蓉は言った。

「私の命は差し出しても構わない。だが、無辜の民たちを殺さないでほしい」

日出天皇はしばらく李蓉を見つめていたが、やがて口元に笑みを浮かべた。

「面白い。では、お前は私の奴隷となるか?」

「……なると言ったら、民を助けてくれるのか?」

「そうだ」

日出天皇はうなずいた。

「お前が私に完全に服従し、私の言葉に従うならば、民の命は助けてやろう。ただし、すべての女人は日出の兵士たちの慰みものとなる。それが条件だ」

李蓉は目を閉じた。彼女の心の中で、様々な感情が渦巻いていた。誇り、怒り、悲しみ、絶望……しかし、最終的に彼女の心を占めたのは、ただ一つの思いであった。

「……わかった」

彼女はうなずいた。

「私は、あなたに服従する」

## 六

その瞬間、広場にいた大夏の民たちから、安堵のため息が漏れた。同時に、日出の兵士たちからは歓声が上がった。

「よく決断した」

日出天皇は満足そうにうなずいた。

「では、まずはその証として、私の前で跪け」

李蓉はゆっくりと地面に膝をついた。彼女の美しい衣装が地面に広がり、砂埃にまみれた。

「こうか?」

「もっと深く。額を地面につけろ」

李蓉は言われた通りにした。彼女の額が冷たい石に触れた。その感覚が、彼女の心に深い屈辱を与えた。

「よろしい」

日出天皇は歩み寄り、李蓉の前に立った。彼は彼女の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「これからお前は、私の所有物だ。私が命令すれば、何でもしなければならない。わかっているな?」

「……はい」

李蓉の声はかすれていた。

「もっと大きな声で」

「……はい!」

「よろしい」

日出天皇は手を離した。

「では、まずはお前の宮殿を明け渡せ。そして、お前の家族もすべて私の前に連れてこい」

李蓉は立ち上がり、ふらふらと宮殿の中へ戻っていった。その姿を見て、大夏の民たちはただ黙って見守るしかなかった。

## 七

宮殿の中では、すでに混乱が始まっていた。侍女たちは荷物をまとめて逃げ出そうとし、宦官たちは金目のものを隠そうとしていた。しかし、日出の兵士たちがすでに宮殿内に侵入し、すべてを掌握していた。

「動くな!」

「お前たちは、すべて天皇陛下の所有物だ!」

日出の兵士たちは笑いながら、女たちを集め始めた。彼女たちは泣き叫びながらも、抵抗することはできなかった。

李蓉は自分の居室に戻り、机の前に座った。彼女の手は震えていた。机の上には、大夏の国璽が置かれていた。彼女はそれを手に取り、じっと見つめた。

「これで……終わりなのか」

彼女の目に涙が浮かんだ。しかし、彼女はそれを拭うことなく、立ち上がった。

「母上」

彼女は王凝の部屋へ向かった。部屋の中では、王凝が静かに座っていた。彼女の顔には、諦めと悲しみが混ざった表情が浮かんでいた。

「蓉よ」

「母上……私は……」

「よくやった」

王凝は優しく言った。

「お前は正しい決断をした。民の命を守るために、自分の誇りを捨てる……それが帝王の務めだ」

「しかし……」

「もういい」

王凝は立ち上がり、李蓉の手を握った。

「私たちは、これからどう生き残るかを考えよう。すべてを失ったわけではない。まだ、希望はある」

## 八

その夜、宮殿では日出の将兵たちによる宴が開かれた。彼らは大夏の酒を飲み、大夏の女たちを侍らせて楽しんだ。

「おい、こっちに来い」

一人の日出の将校が、若い侍女を呼び寄せた。彼女は震えながら近づき、将校の前にひれ伏した。

「お前の名前は?」

「……未児と申します」

未児は声を震わせた。彼女は李軒の妻であり、太子妃であった。

「未児か。良い名前だ」

将校は彼女の顎を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「泣くな。笑え。今日は祝いの席だ」

未児は無理やり笑顔を作った。しかし、その目からは涙が溢れ出した。

「泣くなと言っている」

将校は手を挙げ、未児の頬を打った。彼女は床に倒れ、そのまま動かなくなった。

「つまらん女だ」

将校は酒を飲み干し、別の女を呼び寄せた。

その光景を、李軒は遠くから見つめていた。彼の拳は震えていた。しかし、彼もまた日出の兵士たちに抑えられており、動くことはできなかった。

「未児……」

彼の声は誰にも届かなかった。

## 九

翌朝、李蓉は日出天皇の前に連れ出された。彼女は昨日と同じ白い衣をまとっていたが、その表情はどこか虚ろだった。

「よく眠れたか?」

日出天皇は皮肉な笑みを浮かべて言った。

「……はい」

「嘘をつくな。お前の顔には、疲れがはっきりと出ている」

天皇は立ち上がり、李蓉の前に立った。

「だが、それでいい。お前が苦しめば苦しむほど、私は満足する」

李蓉は何も言わなかった。

「今日から、お前は私の側に仕えよ。すべての命令に従い、決して逆らうな。もし逆らえば、お前の民に罰が下る」

「……わかりました」

「では、まずは私の足を清めよ」

李蓉は一瞬ためらったが、やがて地面にひれ伏し、天皇の足に口づけをした。

「これでいいのか?」

「もっと丁寧に」

李蓉はもう一度、今度は舌で丁寧に清めた。その間、彼女の目からは涙がこぼれ落ちていた。

「よろしい」

日出天皇は満足そうにうなずいた。

「今日のところはこれで終わりだ。下がってよい」

李蓉は立ち上がり、ふらふらとその場を離れた。彼女の心は、完全に打ち砕かれていた。

## 十

その日から、大夏は完全に日出の支配下に置かれた。首都の街中では、日出の兵士たちが闊歩し、大夏の民たちは彼らを見るとすぐに地面にひれ伏した。

「日出天皇陛下万歳!」

「日出の支配に感謝します!」

民たちはそう叫びながら、へつらいの笑みを浮かべた。彼らの目には、恐怖と絶望が宿っていたが、それでも笑顔を作らなければならなかった。笑わなければ、命が危なかったからだ。

市場では、日出の兵士たちが好き勝手に品物を持っていった。商人たちはそれを見て、ただ黙ってうつむくしかなかった。

「おい、これはいくらだ?」

「……ただでお持ちください」

「何だと?俺はちゃんと金を払うと言っている」

兵士は笑いながら、銅貨を数枚投げた。それは品物の価値の十分の一にも満たなかった。しかし、商人はそれを受け取り、深く頭を下げた。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

彼の声は震えていた。

## 十一

宮殿の中では、李蓉がただ毎日を過ごしていた。彼女は日出天皇の命令で、彼の身の回りの世話をさせられた。食事の世話、衣装の世話、そして夜には彼の寝所に侍らされた。

「今夜も私の部屋に来い」

ある夜、天皇がそう命じた。

「……はい」

李蓉はうなずいた。彼女の目は虚ろで、まるで魂が抜けたようだった。

夜、彼女は天皇の部屋に連れて行かれた。そこでは、すでに天皇が酒を飲んで待っていた。

「来たか」

「……はい」

「こっちに来い」

李蓉は言われた通りに近づいた。天皇は彼女の手を掴み、強引に引き寄せた。

「お前は美しい。だが、それだけでは飽きる」

天皇は彼女の首筋に口づけをした。

「お前には、もっと屈辱を与えねばならない」

李蓉は何も言わなかった。彼女の目からは、涙が静かに流れ落ちていた。

## 十二

その日から、李蓉は完全に天皇の奴隷となった。彼女はすべての命令に従い、一切の抵抗をしなかった。彼女の心は、完全に砕け散っていた。

しかし、それでも彼女は生きていた。それは、大夏の民を守るためだった。彼女が生きていれば、天皇も民を皆殺しにはしない。そう信じて、彼女は毎日を耐え忍んだ。

「陛下、お食事の時間です」

「陛下、お着替えのお手伝いを」

「陛下、お休みになる準備は」

彼女の声は、いつも優しく丁寧だった。しかし、その目からは、かつての誇り高き女帝の面影は消えていた。

「よくやっている」

ある日、天皇が言った。

「お前は良い奴隷だ。だから、褒美をやろう」

「……褒美?」

「そうだ。今夜はお前の弟と会わせてやろう」

李蓉の目に、一瞬光が戻った。

「李軒に……会えるのですか?」

「ああ。ただし、条件がある」

天皇は残酷な笑みを浮かべた。

「お前が、私の前で裸になり、私の足に口づけをするのだ。そして、私の前で、自分は奴隷であると宣言せよ」

李蓉は一瞬ためらった。しかし、彼女はうなずいた。

「……わかりました」

彼女は衣装を脱ぎ、裸になった。そして、天皇の前にひれ伏し、彼の足に口づけをした。

「私は……大夏の女帝、李蓉は……日出天皇陛下の奴隷です」

彼女の声は震えていた。しかし、それでも彼女は言い切った。

「よろしい」

天皇は満足そうにうなずいた。

「では、約束通り、弟に会わせてやろう」

## 十三

その夜、李蓉は李軒と対面した。彼は牢獄に閉じ込められていた。その姿はやつれ、目には光がなかった。

「姉上……」

「李軒」

李蓉は彼の手を握った。

「お前は……無事だったか?」

「……何とか生きている」

李軒はうつむいた。

「しかし、未児が……未児が毎日、日出の兵士たちに……」

言葉を続けられなかった。李蓉は彼の手を強く握った。

「すまない……すまない……私が無力だから……」

「姉上のせいではない」

李軒は顔を上げた。彼の目には、かすかな怒りが宿っていた。

「すべては、日出のせいだ。いつか必ず……復讐を……」

その時、牢獄の外から声が聞こえた。

「時間だ」

李蓉は立ち上がり、李軒に別れを告げた。

「生きろ。必ず、生きるのだ」

「……姉上も」

李蓉は牢獄を後にした。彼女の心の中には、わずかな希望が灯っていた。

「いつか……必ず……」

彼女はそうつぶやいた。その声は、夜の闇に消えていった。

## 十四

それから一か月が過ぎた。大夏の首都は、完全に日出の支配下に置かれていた。民たちは恐怖の中で生きていたが、それでも生きていた。

李蓉は毎日、天皇の側に仕えた。彼女の心は砕けていたが、それでも生きていた。彼女は生きることを選んだ。それは、いつか来る復讐の日を待つためだった。

ある日、天皇が彼女に言った。

「明日、私は大夏の民たちの前で、お前を正式に奴隷として宣言する。それでいいな?」

「……はい」

李蓉はうなずいた。彼女の目には、もはや涙はなかった。

翌日、広場には大夏の民たちが集められた。彼らは恐怖と絶望の表情を浮かべながら、日出の兵士たちに囲まれていた。

その中央に、李蓉が連れ出された。彼女は白い衣をまとい、その首には鎖が巻かれていた。

「見よ!」

日出天皇が高らかに宣言した。

「これが、かつて大夏の女帝と呼ばれた者だ!今や、私の奴隷に過ぎない!」

民たちは黙って見つめていた。中には、泣き出す者もいた。

「お前たちも、これに倣え!日出に逆らえば、同じ運命を辿ることになる!」

天皇はそう言って、李蓉の鎖を引いた。彼女は地面に倒れた。

「立て」

天皇の命令に、彼女は立ち上がった。そして、天皇の前にひれ伏した。

「私は、日出天皇陛下の奴隷です」

彼女の声は、静かに広場に響いた。

民たちは、ただ黙って見つめていた。彼らの心の中で、大夏は完全に終わった。しかし、同時に、新たな時代が始まったことも感じていた。

それは、服従の時代だった。

降伏

# 第四章 降伏

夏の太陽が高い位置に上り、大夏の皇宮は異様な静寂に包まれていた。かつては百官の奏上や将兵の練兵の声が響いていた大殿は、今や日出の禁軍に占拠され、その威容は見る影もない。

李蓉は深紅の朝服に身を包み、白玉の階段を一段一段と上っていく。その手には、大夏の国璽が収められた金の箱が抱えられていた。彼女の顔には平静を装った微笑みが浮かんでいるが、その指先はわずかに震えていた。

大殿の奥、高台にある玉座には、日出天皇が悠然と腰かけていた。彼は漆黒の龍袍をまとい、その瞳には征服者の傲慢さが宿っている。傍らには、美しい天后・桜子が立ち、優雅な微笑みを浮かべて李蓉の一挙一動を見つめていた。

「大夏の女帝、李蓉、日出天皇陛下に国璽を奉り、降伏の意を表します」

李蓉は深く頭を下げ、金の箱を両手で捧げ持った。その声は宮殿の隅々まで響き渡り、集まった文武百官や日出の将兵たちの耳に届いた。

天皇はゆっくりと立ち上がり、階段を下りて李蓉の前に立った。彼は箱を受け取ると、蓋を開けて国璽を取り出した。それは大夏の歴代皇帝が受け継いできた宝玉であり、今やその重みは虚しく彼の掌にあった。

「よく来たな、李蓉」

天皇の声は低く、響きがあり、宮殿全体に圧力を与えた。

「これより、大夏は日出の属国となり、朕の支配下に置かれる。降伏文書には、年々の朝貢、軍の削減、そして何よりも……」

彼は一呼吸置き、口元に冷笑を浮かべた。

「そなた自身が、朕の妃となること。すなわち、朕の妻の一人として、日出に仕えることだ」

李蓉の顔色が一瞬で青ざめた。彼女は唇を噛みしめ、必死に感情を抑えようとした。しかし、その瞳の奥には燃え上がる怒りが渦巻いていた。

「……承知しました」

声はかすれ、ほとんど聞こえないほどだった。

天皇は満足そうにうなずき、玉座に戻った。そして、宦官に命じて降伏文書を読み上げさせた。

「日出天皇陛下の御前において、大夏皇帝・李蓉は以下を誓う。第一、大夏は日出の宗主権を認め、年貢として金十万両、絹三万匹、米二十万石を献上する。第二、大夏軍は常備兵三万に削減し、残りは全て解散する。第三、大夏皇帝・李蓉は日出天皇に臣従し、その妃として日出の宮廷に伺候する。第四……」

文書が読み上げられる間、李蓉はうつむいたまま、一言も発さなかった。彼女の肩はわずかに震え、その美しい顔には無念の色が濃く影を落としていた。

「……以上、全てを遵奉することを誓う。もし違反すれば、天罰を受け、大夏の国運は永遠に断たれるであろう」

宦官の声が終わると、宮殿に再び静寂が訪れた。天皇はゆっくりと立ち上がり、李蓉の前に歩み寄った。

「李蓉、これよりお前は朕の妃となる。朕の前では、自らを『児臣』と称し、朕を『父皇』と呼べ」

李蓉の目に涙が浮かんだ。彼女は唇を噛みしめ、声を絞り出した。

「……児臣……承知しました」

「では、式典を続けよう。朕はお前を正式に妃として迎える。その証として、今ここで、お前の貞操を朕に捧げよ」

天皇の言葉に、宮殿中が騒然となった。李蓉は驚きのあまり顔を上げ、天皇を見つめた。彼女の夫である孫沫親王が、人混みの中で拳を握りしめている。弟の李軒太子も、怒りに震えていた。

「陛下……ここは宮殿の大殿でございます。公衆の面前でそのような……」

「黙れ!」

天皇の怒号が宮殿に響き渡った。

「お前は今や朕の妃だ。朕がどうしようと、お前の口出しすることではない。それに、お前の夫や弟たちが見ている前で、お前が朕に完全に服従する姿を見せれば、大夏の者たちも、これ以上無駄な抵抗をしようとは思うまい」

李蓉は震えながら、ゆっくりと地面にひざまずいた。彼女の目から涙が溢れ、頬を伝って落ちた。孫沫は叫び出したい衝動を必死に抑え、李軒は歯を食いしばって拳を握りしめていた。

「………承知しました」

小声で答えると、李蓉はゆっくりと立ち上がり、天皇の前に歩み寄った。天皇は彼女を玉座の前に立たせると、その朝服の帯を解き始めた。

「大夏の女帝が、朕の前で裸になるのはこれが初めてだな」

天皇の手が、李蓉の体に触れる。彼女は恐怖と羞恥に身を固くし、目を閉じた。朝服がはだけられ、下着姿になる。そして、最後の一枚が取り去られると、彼女の白い裸身が公衆の前に晒された。

「おおっ……!」

宮殿中にどよめきが起こった。李蓉は自分の腕で胸を隠そうとしたが、天皇がその手を掴んで広げさせた。

「隠すな。お前の体を、皆に見せよ。これからは、お前の体は朕のものだ。朕が望むように使う」

天皇は李蓉の胸を強く揉みしだいた。彼女は思わず声を漏らしたが、必死に抑えようとした。

「ふふ……なかなか良い感触だ。大夏の女帝ともあろう者が、朕の手でこうして辱められるのは、実に痛快だ」

天皇は彼女の体をしばらく弄った後、自分の腰帯を解き、その巨大な男性器を露わにした。それは常人をはるかに超える大きさで、見る者すべてを圧倒させた。

「さあ、お前の口で朕に奉仕せよ」

李蓉は恐怖に震えながら、天皇の前にひざまずいた。彼女の美しい瞳には涙が溢れ、その唇はわずかに震えていた。そして、ゆっくりと顔を近づけ、その巨大なものを口に含んだ。

「うっ……んんっ……」

李蓉の喉が圧迫され、苦しそうな声が漏れる。天皇は彼女の頭を掴み、強く押し付けた。

「もっと深く、全てを呑み込め」

李蓉は嗚咽を漏らしながらも、必死にそれに従った。唾液が口の端から垂れ、彼女の美しい顔は涙と唾液で濡れていた。

「ふっ…ふっ…はあっ……」

数分後、天皇は彼女の頭を離し、立たせた。

「今度は、後ろを向け」

李蓉は震えながら、指示に従った。彼女は両手を玉座の肘掛けに置き、腰を屈めた。天皇はその背後に立ち、彼女の腰を掴むと、一気にその巨大なものを挿入した。

「ああああっ!!!」

李蓉の悲鳴が宮殿に響き渡った。それは激痛と屈辱が混ざった叫びだった。彼女の体は引き裂かれるような感覚に襲われ、膝が崩れそうになる。

「どうだ、朕のものは気持ち良いか?」

天皇は優越感に満ちた声で問いかけた。そして、激しく腰を動かし始めた。

「いやっ…やめてくれ……苦しい……」

李蓉は涙を流しながら懇願したが、天皇はそれを無視して動き続けた。

「苦しい? それはお前がまだ朕のものに慣れていないからだ。すぐに気持ち良くなってくる」

確かに、激痛の中に奇妙な快感が混ざり始める。李蓉は自分でも気づかないうちに、腰をわずかに動かしていた。

「おや、もう感じ始めたか。やはり女は皆同じだ。最初は抵抗しても、最後には快楽に溺れる」

天皇は動きを速め、李蓉の体内を激しく責め立てた。彼女の体は震え、口からは淫らな声が漏れ始める。

「はぁ……はぁ……ああっ……そこ……そこが……」

「どこだ? ここか?」

天皇は彼女の一番敏感な場所を巧みに突き、李蓉はさらに大きな声を上げた。

「ああっ! そ、そこです……そこが気持ち良いです……」

「ほう、素直になってきたな。では、朕のことを何と呼ぶ?」

「…………父……父皇……陛下……」

「そうだ。これからは、朕のことは父皇と呼べ。そして、お前のことは児臣と称せ」

「は、はい……児臣……承知しました……」

天皇はさらに激しく動き、李蓉の体内をかき乱す。彼女の理性は快楽に溶かされ、徐々に崩壊していった。

「あああっ! 父皇! 父皇! 児臣はもう……もう駄目です……」

「何が駄目だ? 言ってみろ」

「児臣……児臣は父皇の……ちんぽで……イかされてしまいそうです……」

李蓉の言葉に、天皇は満足げな笑みを浮かべた。そして、最奥まで一気に突き入れた。

「では、イけ。朕の前で、思い切りイけ」

その言葉と同時に、李蓉の体が激しく痙攣し、絶頂に達した。彼女の体内が収縮し、天皇のものを締め付ける。

「あああああっ! イきます! イきます! 父皇! 父皇! ありがとうございます!」

李蓉は快楽の波に飲み込まれ、無意識のうちに淫語を叫んでいた。彼女の体は汗と涙で濡れ、美しい顔は真っ赤に染まっていた。

天皇もまた、彼女の体内に種を放った。熱い精液が子宮に注がれ、李蓉の体が再び震える。

「ふう……良い締め付けだった。大夏の女帝の膣は、朕のものを存分に味わわせてくれた」

天皇は彼女の中から自分のものを引き抜くと、李蓉はその場に崩れ落ちた。彼女の股間からは白濁した液体が垂れ、床に広がっていく。

「これで、お前は完全に朕のものとなった。これからは、朕の妃として、日出の宮廷で生きるが良い」

李蓉は床に横たわり、大きく呼吸をしながら涙を流した。彼女の心は屈辱と快楽の記憶で満たされ、複雑な感情が渦巻いていた。

「………児臣……謹んで……従います……」

かすれた声で、彼女はそう答えた。

その光景を、孫沫親王は歯を食いしばって見つめていた。彼の目には怒りの涙が浮かび、拳は血が出るほど握りしめられていた。しかし、彼には何もできなかった。周りを取り囲む日出の兵士たちが、彼の一挙一動を監視していたからだ。

李軒太子もまた、怒りに震えていた。彼の妻である未児太子妃が、彼の腕を掴んで必死に止めている。

「殿下、おやめください……今は我慢の時です……」

未児は小声でそう言った。その目にも涙が浮かんでいた。

一方、太后の王凝は、無表情でその光景を見つめていた。彼女の心は複雑だったが、表には一切出さなかった。

「陛下、降伏式典はこれにて完了と見なしてよろしいでしょうか?」

王凝は平静を装って問いかけた。

「ああ、完了だ。これより、大夏は日出の属国となり、李蓉は朕の妃となる。皆、これに異議はないな?」

天皇の問いに、誰も答えられなかった。宮殿は再び静寂に包まれた。

「よし。では、李蓉を朕の後宮に連れて行け。これより三夜、朕は彼女を寝所に侍らせる」

天皇の命令に、侍女たちが李蓉に近づき、彼女を立ち上がらせた。李蓉は力なく、されるがままに連れて行かれた。

その夜、天皇の寝室で、李蓉は再び天皇に身体を求められた。昼間の式典のときよりも、彼女の反応は正直だった。

「さあ、児臣。朕の前で、自分から腰を動かしてみせよ」

「は、はい……父皇……」

李蓉は震える手で天皇の胸に触れ、ゆっくりとその上にまたがった。そして、自分の腰を上下に動かし始めた。

「ああっ……父皇の……ちんぽが……児臣の膣の中で……気持ち良いです……」

「そうか。朕も気持ち良いぞ。もっと動け」

「は、はい……児臣……頑張ります……」

李蓉は夢中で腰を動かした。最初は苦痛だった行為も、今では快楽に変わっていた。彼女の頭の中は、天皇への服従と快楽への欲求で満たされていた。

「父皇……児臣は……父皇のことが……好きです……」

「ふふ、そうか。では、これからも朕に尽くせよ」

「はい……児臣……父皇に……すべてを捧げます……」

その夜、李蓉は何度も絶頂に達し、その度に天皇の精液を体内に受け入れた。彼女の心は、ゆっくりと、しかし確実に変わっていった。

翌朝、李蓉は自分の寝室に戻り、鏡の前に座った。彼女の目は虚ろで、頬には赤みが差していた。

「私は……変わってしまった……」

彼女は自分の体に残る夜景の跡を撫でながら、つぶやいた。

「かつての誇り高き女帝は、もういない。今の私は、ただ天皇に仕えるだけの妃だ……」

その言葉には、自嘲とともに、どこか甘い響きが含まれていた。

「でも……それが……私の運命なのかもしれない……」

彼女はゆっくりと立ち上がり、侍女たちに新しい衣装を用意させた。それは日出の宮廷の服であり、彼女の新しい身分を示すものだった。

「今日から、私は児臣・李蓉。日出天皇の妃として、新たな人生を歩む」

彼女の目に、かつての輝きはなかった。代わりに、服従の色が深く刻まれていた。

その日以降、李蓉は天皇の寵愛を一身に受けるようになった。彼女は公の場ではいつも天皇の傍らに控え、その美貌と知性で多くの者を魅了した。しかし、その心の奥底では、常に天皇への服従と忠誠が支配していた。

彼女はもはや、かつての女帝ではなかった。彼女は日出天皇の所有物であり、その快楽の道具として生きることを運命づけられていた。

そして、大夏の民は、自分たちの女帝が他国の皇帝に完全に屈服した姿を見て、深い失望と無力感に苛まれた。しかし、それこそが天皇の狙いだった。大夏の精神的な支柱を完全に打ち砕き、二度と反旗を翻すことができないようにするために。

こうして、大夏は日出の支配下に完全に置かれ、その独立と栄光は過去のものとなった。新たな時代の幕開けとともに、李蓉の新しい人生も始まったのである。

母女宗廟の辱め

# 第五章 母女宗廟の辱め

大夏の都、洛陽の空は鉛色の雲に覆われていた。かつてこの地を守護していた神々の加護は失われ、今や日出の神々の威光が街全体を覆い尽くしていた。

宗廟の重厚な扉が音を立てて開かれる。そこは大夏の歴代皇帝たちの霊が祀られている聖域であった。今やその神聖な場所が、最も屈辱的な舞台となろうとしていた。

王凝は白い喪服のような簡素な衣を身にまとい、二人の日出の侍女に両腕を取られて宗廟の中央へと導かれた。彼女の顔には年齢に似合わぬ気品が漂っていたが、その目には深い悲しみと怒りが混在していた。

「太后様、どうかお静かに」

侍女の一人が冷たい声で言った。

王凝は唇を噛みしめ、何も言わなかった。彼女の心の中では大夏の栄光と、今まさに失われようとしている尊厳が激しく衝突していた。

宗廟の奥には、日出の天皇が玉座に座っていた。彼の傍らには天后桜子が立ち、優雅な笑みを浮かべている。彼女の目は冷たく、王凝を見下すように光っていた。

「大夏の太后、王凝よ。そなたは今日より我が奴隷となる」

天皇の声は低く、しかし威厳に満ちていた。

王凝は顔を上げ、天皇をまっすぐに見つめた。

「私は大夏の太后。たとえ死を賜ろうとも、決して屈しはしない」

「ふっ」

天皇は軽く笑った。

「死? それは簡単すぎる。そなたには生きて、己の無力さを思い知るがいい」

彼は手を上げると、二人の侍女が王凝の衣を剥ぎ始めた。

「やめなさい!」

王凝は抵抗しようとしたが、二人の侍女の力は強く、彼女の細い腕では抗うことはできなかった。

白い衣がはだけられ、彼女の成熟した体が露わになる。45歳だが、その肌はまだ艶やかで、豊かな胸とくびれた腰は年齢を感じさせなかった。

「なかなか良い体をしている」

天皇は立ち上がり、ゆっくりと王凝に近づいた。

「太后として長年宮中で過ごしてきたのだろう。ならば、そなたの口はどれほど上手いのか、試してやろう」

彼は自分の衣の帯を解き、男根を露わにした。それはすでに半分勃起しており、明らかに彼の意図を示していた。

「跪け」

天皇の命令は絶対だった。

王凝は震える膝を床につけた。彼女の目の前には、大夏を征服した男の性器があった。それは彼女の誇りを打ち砕くための、最も屈辱的な象徴だった。

「舐めよ」

天皇の声は優しく、しかしその目は冷たかった。

王凝は躊躇した。彼女の唇は震え、涙が目に溜まっていた。しかし、もし逆らえば、娘の李蓉や息子の李軒に何が起こるか分からない。

彼女はゆっくりと口を開け、舌を出した。その舌が天皇の亀頭に触れた時、彼女の体は激しく震えた。

「もっとしっかりと」

天皇は彼女の髪を掴み、自分の股間に押し付けた。

王凝は涙を流しながら、男根を舐め始めた。彼女の舌は先端を撫で、時折口に含んだ。その動きはぎこちなく、経験のないことを如実に示していた。

「未熟だな。しかし、それも面白い」

天皇は彼女の頭を強く押し付け、男根を喉の奥まで挿入した。

「んぐっ!」

王凝は吐き気を催したが、天皇は緩めなかった。

「もっと深く。そなたの喉の奥で、朕のものを感じろ」

何度かの挿入の後、天皇は彼女の口から男根を抜いた。王凝は激しく咳き込み、涙と唾液が混ざった液体を床に垂らした。

「まだ終わりではない」

天皇は振り返り、侍女に命じた。

「李蓉を連れて来い」

王凝の目が見開かれた。

「やめてください! 娘は関係ありません!」

「関係ある。そなたの娘も、朕の奴隷となるのだ」

数分後、李蓉が宗廟に連れてこられた。彼女の衣は乱れ、顔には抵抗の跡があった。しかし、母が裸で跪いているのを見た時、彼女の表情は驚愕に変わった。

「母上!」

李蓉は叫び、母に駆け寄ろうとしたが、侍女たちに阻まれた。

「よく見ていろ、大夏の女帝よ。これがそなたの母の姿だ」

天皇は王凝の頭を再び掴み、自分の足の間に押し付けた。

「舐めよ。朕の足を」

王凝は震える手で天皇の足を持ち上げ、その指を口に含んだ。彼女の舌は足の指の間を這い、一本一本丁寧に舐め上げた。

「もっとだ。もっと卑しく、もっと淫らに」

天皇の声は喜びに満ちていた。

李蓉はその光景を目の当たりにし、全身が震えた。彼女の誇り高き母が、敵の足を舐めている。その光景は彼女の心を完全に打ち砕いた。

「なぜ……なぜそんなことを!」

李蓉の声は泣き叫ぶようだった。

「それはお前のためだ、蓉」

王凝の声はかすれていた。

「お前を守るためだ」

「感動的な親子愛だな」

天皇は笑いながら、王凝の頭を自分の股間に押し付けた。

「さあ、母娘そろって朕に仕えよ」

彼は李蓉の手を引いて、自分の前に立たせた。

「お前も母と同じように、朕のものを舐めろ」

李蓉は激しく首を振った。

「断る! 私は大夏の女帝だ!」

「大夏など、もうない」

天皇は冷たく言い放った。

「お前たちの国は滅びた。今のお前たちは、朕の所有物に過ぎない」

彼は李蓉の顎を掴み、無理やり口を開けさせた。そして、自分の男根を彼女の口に押し込んだ。

「うぅっ!」

李蓉は抵抗しようとしたが、天皇の力は強く、彼女の頭を固定していた。

「母と娘が、朕のものを奪い合う姿を見たいものだ」

天皇は王凝の髪も掴み、二人の女の頭を並べた。

「さあ、競え。どちらが朕をより満足させるか」

王凝と李蓉は涙を流しながら、天皇の男根を舐め始めた。母は竿の根元を、娘は先端を、二人の舌が絡み合い、唾液で濡れた男根は光っていた。

「そうだ。その調子だ」

天皇は気持ちよさそうに息を漏らした。

「朕のものを、お前たちの喉の奥まで飲み込め」

王凝はまず男根を口に含み、深くまで咥え込んだ。彼女の喉が震え、えずく音が聞こえたが、それでも彼女は止めなかった。

「母上!」

李蓉が叫んだ。

「黙っていろ。お前もやれ」

天皇は李蓉の頭を掴み、男根に向かって押し付けた。

李蓉は渋々口を開け、母が舐めた後の男根を口に含んだ。唾液と母の味が混ざり、彼女は吐き気を覚えた。

「二人とも、朕の肛門も舐めろ」

天皇は立ち上がり、床にうつ伏せになるように命じた。

王凝と李蓉は従うしかなかった。二人は天皇の臀部に顔を近づけ、その皺の深い肛門に舌を這わせた。

「もっと深く。舌を入れるのだ」

母娘は互いに目を合わせ、涙を流しながら、天皇の肛門を舐め続けた。その光景はまるで地獄の絵図のようだった。

「朕のものだ。お前たちは朕の奴隷だ」

天皇の声は宗廟の中に響き渡った。

そこへ、天后桜子が優雅に歩いてきた。彼女の美しい顔には常に冷たい微笑みが浮かんでいた。

「陛下、なかなかご満足のようですね」

「うむ。大夏の太后と女帝、この二人の辱めは朕の心を大いに満たす」

桜子は床に跪く母娘を見下ろし、軽く笑った。

「ならば、私も少し楽しませていただきましょう」

彼女はスカートをまくり上げ、自分の秘部を露わにした。それは完璧な形をしており、蜜のように濡れていた。

「太后よ。私のものも舐めなさい」

王凝は顔を上げ、桜子の秘部を見つめた。そこには強い神力が宿っており、見つめるだけで彼女の心は支配された。

「はい……天后様」

王凝は這いながら桜子の前に進み、その秘部に顔を埋めた。彼女の舌は膣の周りを舐め、クリトリスを刺激した。

「ああっ……なかなか上手いではないか」

桜子は気持ちよさそうに声を上げた。

「李蓉。お前も来い」

李蓉も母の隣に跪き、桜子の秘部を舐め始めた。二人の舌が絡み合い、桜子の愛液が彼女たちの顔を濡らした。

「これでいいのだ。お前たちはすべてを失った。国も、誇りも、尊厳も。今のお前たちはただの雌奴隷に過ぎない」

桜子の声は優しく、しかしその言葉は刃のように鋭かった。

宗廟の外では、大夏の臣民たちが涙を流していた。彼らは自分たちの太后と女帝が、敵の天皇と天后に辱められていることを知っていた。しかし、何もできなかった。日出の神々の力は圧倒的で、抗う術はなかった。

宗廟の中では、母娘の辱めはまだ続いていた。

天皇は再び王凝の前に立ち、その口に男根を挿入した。

「朕のものを、お前の喉の奥で感じろ」

王凝は涙を流しながら、天皇の男根を喉の奥まで受け入れた。彼女の顔は苦痛に歪み、吐き気を必死にこらえていた。

「母上……」

李蓉はその光景を見て、心が張り裂けそうだった。

「お前もだ」

天皇は李蓉を呼び寄せ、彼女の口にも男根を入れた。

母娘は交互に天皇の男根を口に含み、舐め、吸い、喉の奥まで飲み込んだ。その様子はまるで、食べ物を奪い合う野良犬のようだった。

「もっとだ。もっと激しく」

天皇の息が荒くなる。

「朕はお前たちに全てを捧げさせたい。心も、体も、魂も」

彼の体が震え、男根が膨らんだ。そして、大量の精液が王凝の口の中に放たれた。

「飲め。すべて飲み干せ」

王凝は涙を流しながら、その精液を飲み干した。白い液体が彼女の口の端から垂れ、彼女の胸を濡らした。

「次はお前だ」

天皇は男根を李蓉の口に移した。そして、再び射精した。

李蓉は吐き気を必死にこらえながら、その精液を飲んだ。彼女の口の中は苦く、そして熱かった。

「よくやった」

天皇は満足そうに笑った。

「これでお前たちは、朕のものだ。心も、体も、魂も」

彼は立ち上がり、宗廟の中央にある祭壇に向かって歩いた。そこには大夏の歴代皇帝たちの位牌が祀られていた。

「見よ。お前たちの祖先たちも、この光景を見ている。彼らもきっと、誇りに思うだろう。自分たちの子孫が、朕の奴隷になったことを」

王凝と李蓉は涙を流しながら、床にうつ伏せになっていた。彼女たちの誇りは完全に打ち砕かれ、ただの奴隷としての新しい人生が始まろうとしていた。

「明日から、お前たちは朕の寝室で過ごすことになる。朕の足を舐め、朕のものを舐め、朕のすべての欲望を満たすのだ」

天皇の声は冷たく、しかし確かな喜びに満ちていた。

「そして、大夏の民は、自分たちの太后と女帝が、朕の奴隷になったことを知るだろう。それこそが、大夏に対する最大の復讐だ」

桜子が優雅に歩み寄り、床に伏す母娘を見下ろした。

「陛下、今日のところはこれで十分でしょう。彼女たちも疲れているようです」

「うむ。だが、まだ終わらせない。明日も明後日も、そして永遠に、この辱めは続くのだ」

天皇は振り返り、宗廟を後にした。桜子もその後に続いた。

宗廟の中には、王凝と李蓉だけが残された。二人は抱き合い、涙を流した。

「母上……私たちは……」

「言うな、蓉」

王凝は娘を強く抱きしめた。

「耐えるのだ。生き延びるのだ。いつか……いつか必ず」

しかし、その言葉には力がなかった。二人は分かっていた。もはや、大夏は終わったのだと。そして、自分たちの人生もまた。

宗廟の外では、夜が更けていった。月夕の女神も、日夕の女神も、もはやこの地を守ることはなかった。大夏の神々は沈黙し、日出の神々の威光だけが、暗闇の中で輝いていた。

次の日、天皇は再び宗廟に二人を呼び寄せた。今度は、彼女たちに更なる辱めを与えるためだった。

「今日は、朕の足を舐めることから始めよう」

天皇は玉座に座り、両足を伸ばした。

王凝と李蓉は這いながら近づき、天皇の足の指を口に含んだ。彼女たちの舌は慎重に、しかし恭しく、一本一本の指を舐め上げた。

「もっとだ。もっと深く。朕の足の匂いを、お前たちの鼻の奥まで感じろ」

母娘は涙を流しながら、天皇の足の指の間を舌でなぞり、足の裏を舐め、かかとを噛んだ。その光景は、まさに人間の尊厳の崩壊そのものだった。

「朕の足は、お前たちにとって何だ?」

天皇が尋ねた。

「あ……あなた様の足は、私たちの主……私たちの神でございます」

王凝が震える声で答えた。

「そうだ。朕はお前たちの神だ。お前たちの主だ。お前たちの全てだ」

天皇は満足そうに頷いた。

「では、朕のものを舐めよ」

彼は自分の男根を露わにした。それは既に硬く立ち上がっていた。

王凝がまず近づき、先端を口に含んだ。彼女は慎重に、しかし熱心に舐め始めた。その様子は、前日とは明らかに違っていた。彼女はすでに、抵抗を諦めていたのだ。

「母上……」

李蓉が悲しげに呟いた。

「黙っていろ。お前もやれ」

天皇の命令に、李蓉も従うしかなかった。彼女は母の隣に跪き、天皇の男根を舐め始めた。

母娘の舌は、天皇の男根の上で絡み合い、唾液で濡れた竿は光っていた。

「そうだ。その調子だ。朕のものを、お前たちの喉の奥で感じろ」

王凝は男根を深くまで咥え込み、喉の奥で締め付けた。彼女の目には涙が浮かんでいたが、その動きは女王としての経験を感じさせるものだった。

「お前はなかなか優秀だ。太后としての経験が活きているようだ」

天皇は王凝の頭を撫でながら言った。

「しかし、娘はまだ未熟だ。もっと練習が必要だな」

彼は李蓉の頭を掴み、無理やり男根を喉の奥まで押し込んだ。

「うぐっ!」

李蓉は吐き気を催したが、天皇は緩めなかった。

「飲め。朕のものを、精液を、すべて飲み干せ」

天皇の体が震え、大量の精液が李蓉の口の中に放たれた。彼女は涙を流しながら、それを飲み干した。

「次は母だ」

天皇は男根を王凝の口に移し、再び射精した。

母娘は交互に天皇の精液を飲み続けた。彼女たちの顔は涙と唾液と精液で濡れ、その姿はもはや人間とは思えなかった。

「今日はこれで終わりだ」

天皇は立ち上がり、服を整えた。

「明日もまた来い。朕はお前たちをもっと辱めてやりたい」

彼は宗廟を後にし、母娘だけが残された。

王凝と李蓉は抱き合い、涙を流した。しかし、その涙はもはや抵抗の涙ではなかった。それはただの絶望の涙だった。

「母上……私たちは、もう……」

「ああ。もう、戻れない」

王凝の声は虚ろだった。

「私たちは、もう……奴隷だ」

宗廟の天井には、大夏の歴代皇帝たちの位牌が静かに並んでいた。彼らはただ、無言でその光景を見守るしかなかった。

そして、その日から、母娘の奴隷としての日々が始まった。毎日、宗廟で天皇の足を舐め、男根を舐め、肛門を舐め、精液を飲み干す。それが彼女たちの新しい人生だった。

大夏は完全に滅びた。太后と女帝が奴隷となったことで、民衆の抵抗も完全に終わった。日出の天皇の支配は、揺るぎないものとなった。

しかし、誰も知らなかった。この辱めの中に、わずかな希望が隠されていることを。王凝と李蓉の心の奥底で、いつか復讐を果たそうとする炎が、決して消えることなく燃え続けていることを。

その炎がいつ、どのように燃え上がるのか。それは、誰にも分からなかった。

暗流うごめく

# 第六章 暗流うごめく

深更、大夏皇宮の片隅にある廃殿の地下密室。蝋燭の火が揺らめき、壁に影を落とす。

太子李軒は粗末な木机の前に座り、向かいには数名の旧臣たちがひざまずいている。太子妃未児はその傍らに控え、青白い顔を必死に落ち着かせていた。

「皆、よく来てくれた」

李軒の声は低く抑えられていたが、その瞳には炎が宿っている。かつて日の出帝国に蹂躙される前、彼は何万人もの兵を率いる将来の皇帝だった。今や彼の周りに集ったのは、わずか十数名の忠臣だけだ。

「殿下、御身お健やかで何よりでございます」

老将の陳忠が涙を拭いながら言った。彼は李軒の父、先帝の時代から仕える武人だ。年の功か、その目は衰えを知らない。

「陳将軍、今の状況を報告せよ」

李軒の指示に、陳忠は懐から羊皮紙を取り出した。

「日の出の占領軍は都城外に三個師団を駐屯させております。城内には二千人の警備隊。しかし…彼らは我々大夏の民を完全に掌握しているわけではありませぬ。密かに決起できる勢力は、私が把握しているだけで三千人」

「三千か…」李軒は唇を噛んだ。かつての大夏の常備軍は十万人。それが僅か三千にまで減り果てたのだ。

「殿下、まだ希望はあります」もう一人の若い将校が口を開く。「民の中には日の出への恨みを持つ者が多い。武器さえあれば、いつでも立ち上がる準備はできております」

未児は黙ってそのやり取りを聞いていた。彼女の指は無意識に衣の端を揉みしだいている。恐怖が心臓を鷲掴みにしていたが、夫の前でそれを表に出せはしなかった。

「よし」李軒が立ち上がる。蝋燭の光が彼の顔を照らし出し、影が深く刻まれる。「我々は必ず都を奪還する。二度と、日の出の蛮族に大夏の地を穢させるわけにはいかない」

「殿下万歳!」旧臣たちが低く声を揃える。

密会が終わり、人々が去った後も、李軒はその場に立ち尽くしていた。未児がそっと近づき、彼の腕に触れる。

「殿下、お疲れでしょう」

「疲れなど…」李軒は言いかけて、はっと息を呑む。彼の目が未児の顔に留まった。蝋燭の灯りの中で、その白い肌は透き通るように美しい。十九歳の若さで、自らの運命に翻弄されながらも、彼の妻として立ち続けている。

「未児」

「はい」

「今日は…二人きりで過ごそう」

未児の頬がほんのりと赤らんだ。彼女はうつむき、小さく頷いた。

二人は廃殿を出て、今は日の出の将校たちが寝静まった後の宮殿の一室へと足を運んだ。ここはかつて李軒の私室だった。家具は最低限しか残されていないが、ベッドだけはかろうじて使える状態だ。

部屋に入ると、李軒はすぐに未児を抱きしめた。

「未児…お前がいてくれて良かった」

「殿下こそ…私の全てです」

未児の声は震えていた。彼女は李軒の胸に顔を埋め、その温もりを感じる。結婚してからもうすぐ一年になるというのに、彼女はまだ処女のままだ。最初の夜、李軒は彼女を抱こうとしたが、うまくいかなかった。それ以来、二人の間には触れ合うことを避けるような微妙な空気が流れていた。

李軒が未児の唇を奪う。彼の手が彼女の衣の紐を解き始める。未児は息を呑み、身体を強張らせた。

「怖いか?」李軒が耳元で囁く。

「いいえ…殿下となら」

嘘だった。未児は心の底から恐怖していた。しかし、それを感じさせてはいけない。彼女は妻として、夫を支える義務がある。たとえ自分がどれほど怖がっていようとも。

李軒が未児をベッドに押し倒す。彼の手が彼女の胸に触れ、肌の上を滑る。未児は目を閉じ、されるがままに身を委ねた。

しかし、時が経っても、それ以上は進まなかった。

李軒の身体が硬直している。彼は自分の下腹部に手をやり、何かを確かめるように押さえた。汗が額に浮かんでいる。

「…くそ」

低い呟きが漏れる。未児は目を開け、夫の様子を伺った。

「殿下?」

「…だめだ、今日は…」

李軒は未児から離れ、ベッドの端に座り込んだ。その背中は屈辱に震えている。彼の前に立った男としての誇りが、音を立てて崩れ落ちる音が、未児には聞こえた気がした。

未児はゆっくりと体を起こし、衣を整える。そして李軒の背後からそっと抱きしめた。

「お気になさらないでください」

「黙れ!」李軒の声が鋭くなる。「俺は…俺は男だぞ。なのに…なぜ…なぜこうなるんだ」

彼の拳がベッドを叩く。痛々しい音が部屋に響いた。

未児は黙って彼の背中を撫で続けた。どんな言葉をかけても、今は逆効果だ。彼の傷ついた男としての誇りは、言葉では癒せない。

「先日医者に診せたが…『過度の精神疲労』だと言われた」李軒が自嘲気味に笑う。「精神疲労だ。ふん、つまりは心が弱っているということだ」

「殿下は強い方です」

「強いだと?俺は何もできやしない。都は奪われ、父は殺され、妹たちは拉致された。そして今、自分の妻すら満足させられないのに、強いだと?」

未児は黙って彼の手を握った。その手は冷たく、かすかに震えていた。

「私…いつでも殿下と共にあります。たとえこの身がどんな状態でも、私はあなたの妻です」

「お前には…他の男を宛がうべきかもしれない」

「そんなことをおっしゃらないでください!」未児の声が初めて強くなる。「私は殿下の妻です。それ以外の何者でもありません。そんなことを言われると、私は悲しみます」

李軒は振り返り、未児の顔を見つめた。蝋燭の明かりの中、彼女の瞳は潤み、唇はわずかに震えている。それでも、その目には確固たる意志が宿っていた。

「すまない…」李軒が小声で言った。「俺は…お前に辛い思いをさせている」

「いいえ、殿下。私が選んだ道です」

未児はそう言って、李軒の胸に顔を埋めた。彼の心臓の鼓動が、早く、乱れている。それは恐怖なのか、怒りなのか、それとも別の何かなのか。

「殿下、少し休みましょう。明日もまた、やるべきことがたくさんあります」

李軒は何も答えず、ただ未児の髪を撫でていた。その手の動きは優しかったが、どこか空虚さが漂っていた。

夜が更けていく。窓の外では、満月が雲に隠れ、影が深くなっていた。

未児は李軒の腕の中で、決して眠れない夜を過ごしていた。彼女の心の中では恐怖と不安が渦巻いている。もしもこの計画が失敗したら。もしも日の出の軍に見つかったら。もしも夫が再び立ち上がれなくなったら。

だが、彼女はそれらを全て胸の奥に押し込めた。今、彼女がすべきことは、夫の支えになること。たとえ自分が崩れそうになっても、決して弱みを見せてはいけない。

「未児」李軒が突然口を開いた。

「はい」

「お前は…怖くないのか?」

未児は一瞬戸惑った。しかしすぐに、落ち着いた声で答えた。

「怖いです。でも、殿下と一緒なら、どんなことでも乗り越えられます」

「そうか…」

李軒の腕の力が少し強くなる。未児はその温もりに包まれながら、自分自身に言い聞かせた。

私は強い。強くならなければならない。夫のために、そして大夏のために。

朝が来るまで、二人は何も語らなかった。

翌日、李軒は早朝から旧臣たちとの会合に出かけた。未児は一人、部屋に残り、机に向かって手紙を書いている。それは、北の辺境に潜伏している叔父への密書だった。

書き終えた手紙を封筒に入れ、召使いの一人に手渡す。その召使いもまた、心から李軒に忠誠を誓っている者の一人だった。

「必ず届けてください」

「はい、妃殿下。確かに」

召使いが去った後、未児は深く息を吐いた。彼女の手がわずかに震えている。昨夜の出来事が、彼女の心に影を落としていた。

「殿下…あなたは強い方よ。私が知っています」

そう呟きながら、彼女は遠くを見つめる。窓の外では、日の出の軍旗が風に翻っていた。あの太陽の旗が、大夏の空に掲げられてから、もうどれだけの月日が経っただろう。

日の出の支配は日に日に厳しくなっている。民衆からは重い税を搾り取り、反抗する者は容赦なく処刑する。李軒の父である先帝も、その犠牲者の一人だった。

未児は先帝の最期を思い出す。あの日、都が陥落した時、先帝は自らの手で后を刺し、自らも火の中に飛び込んだ。あれは、決して捕虜になるのを拒んだ末の行動だった。

「陛下、あなたの仇は、必ず」

そこまで言いかけて、未児は口を閉ざした。壁に耳あり、障子に目あり。今の大夏では、誰が日の出に通じているか分からない。

その時、部屋の戸が静かに開かれた。未児は警戒して振り返るが、入ってきたのは侍女の鈴だった。

「妃殿下、こちらにいらっしゃいましたか」

「鈴…何かあったの?」

「いえ、ただ…太子殿下がお呼びです。西の離宮までお越しいただきたいと」

未児は頷き、立ち上がった。西の離宮は、現在旧臣たちの拠点となっている場所だ。何か重要な話があるのだろう。

「すぐに向かうわ」

鈴が退出するのを見送り、未児は衣装を整えた。鏡の中の自分は、どこか浮かぬ顔をしている。彼女は両手で頬を叩き、気合を入れた。

「私は大夏の太子妃。弱音を吐くわけにはいかない」

小さく呟き、部屋を後にする。

西の離宮に着くと、そこには李軒と数名の将校が集まっていた。地図を囲み、何やら熱心に話し合っている。未児が入ってくると、李軒が顔を上げた。

「来たか」

「はい。何かありましたか?」

「うむ…北の辺境からの知らせだ」李軒が地図の一点を指差す。「叔父上の軍が、日の出の補給路を断ったという」

未児の目が輝いた。叔父は先帝の実弟で、辺境の守りを任されていた武人だ。都が陥落した時、何とか落ち延び、今も抵抗を続けている。

「それは朗報ですね」

「ああ。しかし、これで日の出も本格的に動き出すだろう。我々も準備を急がねばならん」

李軒の声には力がある。昨夜の弱々しい姿は、もうどこにもなかった。未児はそれを見て、安堵と同時に、わずかな寂しさを感じた。

夫は強い。国を奪還するという使命に燃えている。けれども…その陰で、彼の男としての弱さは、ますます深みに沈んでいる。

未児はそのことを考えないようにした。今は、復国の話に集中すべきだ。

「未児、お前は安全な場所に避難していてくれ」

「いえ、私も共に戦います」

「危険だ」

「私は殿下の妻です。危険を避けて逃げるような女ではございません」

李軒は何度か口を開け閉めしたが、最後にはため息をついて頷いた。

「分かった。ただし、最前線には出るなよ」

「はい、約束します」

会合が終わり、二人きりになった時、李軒が未児の手を握った。

「昨夜は…すまなかった」

「もう気にしていません」

「いや、気にしろ。俺は…お前に謝らなければならないことがある」

未児は首をかしげる。李軒はしばらく躊躇した後、重い口を開いた。

「俺は…お前を本当の意味で妻にできないかもしれない」

「殿下…」

「医者からは『時が解決する』と言われた。しかし、いつまで待てばいい? 一ヶ月? 一年? それとも十年?」

未児は彼の手を握り返した。その手は冷たく、弱々しい。

「殿下、私は待ちます。たとえどんなに時間がかかろうとも、あなたを支え続けます」

「だけど…」

「何も言わないでください」未児はそっと彼の口に指を当てた。「私はあなたの妻です。それだけで十分です」

李軒の瞳が揺れた。そして、彼はゆっくりと未児を抱きしめた。その腕の中は、昨夜よりも確かに温かかった。

「ありがとう…未児」

「どういたしまして、殿下」

二人はしばらくそうして抱き合っていた。窓の外では、風が木々を揺らしている。その風は、遠くの戦場から届く悲鳴のように、不気味に響いた。

その夜、再び二人は同じ部屋で過ごした。今度こそ、うまくいくかもしれない。そんな淡い期待が、未児の心に浮かんだ。

しかし、結果は同じだった。

李軒は自分の体に鞭打つように奮闘したが、無駄だった。彼の身体は、彼の意思とは裏腹に、何の反応も示さなかった。

「ちくしょう!」

彼は拳を壁に叩きつけた。白い漆喰が剥がれ落ち、血が滲む。

「殿下、やめてください!」

未児は彼の手を取ろうとしたが、李軒は振り払った。彼の目には、怒りと屈辱の色が混ざっている。

「俺は…俺はもう…」

「そんなことはありません!」

未児は強く彼の手を握った。その手に拳の傷が痛々しい。

「殿下は強い方です。力を失ったわけではありません。ただ、今は心が疲れているだけです」

「心が疲れただと…」李軒が自嘲する。「男としての機能を失っておいて、心のせいなどと言えるか?」

「言えます。私は信じています。必ず、殿下は立ち直れると」

未児の声には強い確信が込められていた。その瞳には、涙すら浮かんでいる。

李軒はしばらく彼女を見つめていたが、やがて深いため息をつき、ベッドに倒れ込んだ。

「すまない…本当にすまない」

「謝らないでください」

未児は彼の隣に横たわり、その胸に頭を乗せた。李軒の心臓の鼓動が、ゆっくりと落ち着いていくのが分かる。

「殿下、一緒に寝ましょう。明日もまた、戦いが待っています」

「ああ…そうだな」

李軒が彼女の肩に手を回す。その腕は以前よりも力強く感じられた。

「未児」

「はい」

「必ず、都を取り戻す。そして、正式な式を挙げ直そう。その時こそ…」

「ええ、その日を待っています」

未児はそう答えながら、目を閉じた。

その夜、彼女は夢を見た。それは、大夏の都が再び日の本の光に包まれる夢だった。人々は笑い、旗は風に靡き、そして彼女の夫、李軒は、晴れやかな顔で帝位に座っている。

それは、まだ遠い未来の話だった。

しかし、未児は信じていた。必ず、その日は来ると。

そのために、彼女は戦う。

夫のために、国のために、そして大夏のすべての民のために。

朝の光が差し込む頃、未児は目を覚ました。隣では、李軒がまだ眠っている。その寝顔は、昼間の威厳ある姿とは違い、どこか幼く、無防備だった。

未児はそっと彼の髪を撫でた。その手触りは柔らかく、温かい。

「殿下…あなたは私たちの希望です」

彼女は小声でそう呟き、自分自身に言い聞かせるように繰り返した。

「私はここにいる。あなたのそばに、いつまでも」

その瞬間、遠くで太鼓の音が響いた。それは、日の出の軍が朝の訓練を始める合図だった。未児はそっと立ち上がり、窓の外を見る。

空には、まだ朝日が昇っていない。闇の中に、大夏の都が沈んでいる。

しかし、やがて必ず夜明けは来る。

未児は固く拳を握りしめた。

その拳の中には、希望と、決意と、そして夫への愛が込められていた。

それは、まだ見ぬ未来への、小さな灯火だった。

反抗者の滅亡

# 第七章 反抗者の滅亡

## 一

その夜、大夏の皇宮は異様な静寂に包まれていた。月は雲に隠れ、星々もその光を失ったかのようだった。空気は重く、風さえも息を潜めている。

李軒は鎧を纏い、佩剣を握りしめて立っていた。その瞳には決意の炎が燃えている。彼の後ろには、三百の兵士が整然と並んでいる。全員が精鋭だ。長年の訓練を積み、実戦を経験した者たちばかりである。

「諸君!」李軒が声を上げる。「今日こそ、我ら大夏の誇りを取り戻す時だ!日出の暴君どもは、我が姉を辱め、国を蹂躙した。もはや耐える必要はない!」

「おおっ!」兵士たちの鬨の声が上がる。

李軒は剣を抜き、空高く掲げた。刃がかすかに月明かりを反射している。

「我に続け!皇宮を奪還せよ!」

## 二

反乱軍は轟音とともに皇宮の正門を突破した。最初の警備兵たちは不意を突かれ、ほとんど抵抗もできずに倒された。李軒は先頭に立ち、次々と敵を斬り伏せていく。

「やれ!やれ!」彼の声は戦場に響く。「奴らはたかが数人だ!押し潰せ!」

確かに、最初の防衛線は脆かった。日出の兵士たちは少数で配置されており、大軍の前に為す術もなく蹴散らされた。李軒の心は高鳴った。このままいけば、本殿まで到達できる。姉を救出できる。そして、あの傲慢な日出天皇を跪かせることができる―

「太子殿下!前方に敵の増援です!」斥候が叫んだ。

李軒は前方を見据えた。回廊の先に、一つの人影が立っている。たった一人だ。だが、その存在感は異常だった。

「一人か?」李軒は笑った。「笑止!たった一人で我ら三百人を止められると思うか?」

兵士たちも笑い声を上げた。だが、その笑いはすぐに凍りつくことになる。

## 三

その男はゆっくりと歩いてきた。身の丈は六尺ほど。筋肉質な体躯に、黒い鎧を纏っている。顔には無表情が張り付き、目だけが冷たく光っていた。腰には二本の刀を差し、背中には巨大な鎖鎌を担いでいる。

「名乗れ!」李軒が剣を向ける。「我は大夏の太子、李軒なり!貴様、何者だ!」

男は足を止めた。口元がわずかに歪む。

「加藤一郎。」低い声で答える。「日出天皇直属、親衛隊隊長である。」

「親衛隊隊長?」李軒は嘲弄の笑みを浮かべた。「一人で我らを止められると思っているのか?」

加藤一郎は答えなかった。代わりに、ゆっくりと背中の鎖鎌を外した。鎖の音が冷たく響く。

「かかれ!」李軒が命令を下す。

数十人の兵士が一斉に突撃した。槍を構え、剣を掲げて―

次の瞬間、何が起こったのか誰も理解できなかった。

## 四

鎖鎌が唸りを上げて回転した。まるで生きた蛇のように、それは兵士たちの間を縫って舞う。最初の一振りで、五人の兵士の首が飛んだ。血が噴き出し、地面を赤く染める。

「な…」李軒の目が見開かれる。

加藤一郎は動いた。その動きは人間離れしていた。一歩踏み出すごとに、二、三の兵士が倒れる。鎖鎌の刃は正確に急所を捉え、鎖は兵士の足を絡め取る。

「うわああ!」

「助けてくれ!」

悲鳴が次々と上がる。反乱軍の先鋒はたちまち壊滅状態に陥った。

「退くな!退くな!」李軒が叫ぶ。「数で押せ!奴は一人だ!」

しかし、兵士たちの足はすでに止まっていた。目の前で繰り広げられる光景に、彼らは恐怖で硬直していた。加藤一郎はまるで死神のようだった。一振りごとに命を刈り取り、一歩ごとに血の道を敷いていく。

## 五

「畜生…」李軒は歯を食いしばった。

彼は自ら剣を構え、前に出ようとした。だが、その腕を副将が掴む。

「殿下!お下がりください!あの男は尋常ではありません!」

「離せ!」李軒は腕を振り払おうとする。「我が戦わねば、誰が戦うというのだ!」

その時、加藤一郎が鎖鎌を大きく振りかぶった。鎖が空を裂き、巨大な弧を描く。そして、その先端が兵士の密集地帯に突き刺さった。

「ぐわああ!」

鎖鎌の刃が三人の兵士を貫通した。加藤一郎は軽く鎖を引く。三人の兵士が悲鳴を上げながら引き寄せられる。そのまま、彼は鎖を振り回した。三人の体が棍棒のように他の兵士を叩きのめす。

「ひいっ!」

「た、助けて!」

恐怖が集団を支配した。一人の兵士が槍を捨てて逃げ出した。それを皮切りに、次々と兵士たちが武器を投げ捨てる。

「逃げるな!戻れ!」李軒が怒鳴るが、もはや誰も彼の声を聞いていない。

## 六

加藤一郎は冷たい目で逃げる兵士たちを見つめた。そして、腰の刀を抜いた。二本の刀が月光に輝く。

「逃げられると思うか?」

その声は低く、しかし確かに全員の耳に届いた。次の瞬間、彼の姿が消えた。

「!?」

李軒が目を疑ったその刹那、加藤一郎は逃げる兵士たちの前に現れていた。二本の刀が閃く。空中に血の花が咲く。三つの首が同時に舞い上がった。

「あ、あ、あ…」

その場に残された兵士たちは、膝をついた。震え上がり、口からは泡を吹いている者もいる。一人の若い兵士は、その場に座り込み、股間を濡らしていた。

「た、頼む…命だけは…」

何人かの兵士が両手を地面につけ、額を土に擦り付けた。

「お許しください!お許しください!」

「我々は命令されただけで…」

「太子に唆されただけで…」

加藤一郎はそんな彼らを見下ろした。その表情には、軽蔑とも無関心ともつかない色が浮かんでいる。

「醜い。」彼は一言だけ言った。

## 七

「貴様!」

李軒が怒りの声を上げた。彼は佩剣を抜き、加藤一郎に切りかかろうとした。しかし、その前に副将が彼を押し止める。

「殿下!無茶です!あの男は化け物です!」

「離せ!我は大夏の太子だ!臆するわけにはいかない!」

その時、加藤一郎が鎖鎌を再び振り回した。今度は狙いが違う。鎖が李軒の足元を這い、瞬間的に絡みついた。

「なっ!」

李軒はバランスを崩し、地面に倒れた。剣が手から離れ、乾いた音を立てて転がる。

「殿下!」

副将が救い出そうと前に出たが、加藤一郎の刀が一閃する。副将の喉笛が裂け、血が噴き出した。彼はその場に崩れ落ちた。

「が…あ…」

「よくも…!」李軒は歯を食いしばり、起き上がろうとする。しかし、鎖が彼の両足を固く縛っていた。

加藤一郎はゆっくりと近づいてきた。その手には犬をつなぐための鎖が握られている。

「日出天皇陛下のご命令だ。」彼は淡々と言った。「反逆者は、犬として扱え、と。」

「貴様…!」

李軒が怒鳴ろうとした瞬間、加藤一郎の足が彼の腹にめり込んだ。

「がふっ!」

衝撃で胃の内容物が逆流する。李軒はその場にうずくまり、息もできない。

## 八

加藤一郎は、倒れた兵士たちに次々と犬鎖をかけていった。首輪をはめ、鎖でつなぐ。その手際は、まるで長年この仕事をしてきたかのようだった。

「やめてくれ…」

「許してくれ…」

兵士たちの哀願も、加藤一郎には届かない。彼はただ黙々と作業を続けた。三十人ほどの兵士が生き残っていたが、全員が犬のように鎖につながれた。

「これで終わりだ。」加藤一郎は言った。

そして、彼は李軒の方に向き直った。太子はまだ腹を押さえて蹲っている。

「太子殿下。」加藤一郎の声には皮肉が込められていた。「ご自分で歩けますか?それとも、引きずられたいですか?」

李軒は顔を上げた。その目には憎悪の炎が燃えている。

「貴様…覚えておけ…必ず…」

「なら結構。」加藤一郎は彼の首根っこを掴み、無理やり立たせた。そして、別の鎖を彼の首にかける。

「ぐっ…!」

李軒は抵抗しようとしたが、加藤一郎の力は圧倒的だった。彼はまるで子犬のように引きずられていった。

## 九

その時、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。

「殿下!」

李軒は顔を上げた。その声には聞き覚えがあった。

「未児…!」

太子妃の未児だった。彼女は二人の侍女に伴われて、回廊の角から現れた。その顔は恐怖に引きつっている。

「殿下!どうなさったのですか!」

未児は走ってこようとした。しかし、加藤一郎が手を挙げる。

「止まれ。」

その一言に、未児は足を止めた。彼女の体は小刻みに震えている。

「未児…逃げろ…!」李軒が叫ぶ。

しかし、加藤一郎はすでに動いていた。彼の影が一瞬で未児の前に現れる。

「きゃっ!」

次の瞬間、未児の細い腕が加藤一郎の手に掴まれていた。

「離してください!私は太子妃です!」

「太子妃であろうと、反逆者の妻には変わりない。」加藤一郎は冷たく言った。「大人しく従え。」

未児は抵抗しようとしたが、無駄だった。加藤一郎の腕力は、彼女の華奢な体にはあまりに強力だった。

## 十

加藤一郎は、李軒の首に鎖をかけ、未児の腕を掴んだまま、皇宮の本殿へと向かった。その後ろには、犬のように鎖につながれた三十人の兵士たちが続く。他の者たちは、すでに死体となって回廊に転がっている。

「ひっ…ひっ…」

鎖につながれた兵士の中には、泣きじゃくる者もいた。失禁したまま歩いている者もいる。膝が震えて立っていられず、引きずられている者もいた。

「情けない…」一人の老兵が呟いた。「大夏の兵が、一人の敵にここまでやられるとは…」

「黙れ!」別の兵士が叫ぶ。「お前だって逃げようとしただろう!」

「逃げたって仕方ないだろ!あの男は化け物だ!」

「もう終わりだ…大夏は終わった…」

絶望の言葉が、鎖につながれた列から次々と漏れる。

李軒はそれを聞きながら、唇を噛みしめた。悔しさで体が震える。彼は太子だ。大夏の未来を担うべき存在だ。なのに、今は犬のように鎖につながれている。

「姉上…すまない…」彼は心の中で呟いた。「俺は…あまりに無力だった…」

## 十一

本殿に到着すると、そこには日出天皇が玉座に座っていた。その隣には、天后の桜子が優雅に立っている。二人はまるで、これから始まる見せ物を楽しみにしているかのようだった。

「加藤一郎、報告せよ。」日出天皇が低い声で言った。

加藤一郎は片膝をついた。

「反逆者、李軒を捕らえました。同調者約三百名のうち、大半を討ち取り、残りを連行しております。」

「三百名?」日出天皇は軽く眉を上げた。「たった三百名で、我に挑もうとしたのか?」

その言葉に、李軒は顔を上げた。

「三百名で十分だ!貴様ら侵略者を追い出すには!」

「黙れ。」加藤一郎の手が動き、李軒の頬を打った。

「ぐっ!」

「面白い。」日出天皇は笑った。「大夏の太子は、なかなか勇気があるようだ。だが、無謀だな。」

「父上、この者、どのように処分なさいますか?」桜子が甘い声で尋ねた。

「そうだな…」日出天皇は考え込むふりをした。「まずは、彼に自分の無力さを思い知らせてやろう。」

## 十二

日出天皇は立ち上がり、ゆっくりと李軒の前に歩いてきた。彼の目は、まるで虫けらを見るかのように冷たかった。

「李軒よ。」彼は言った。「お前は、大夏を救おうとしたのだろう?だが、見ろ。お前の兵士たちは、鎖につながれて震えている。お前の妻は、恐怖で青ざめている。お前自身も、今や犬よりも劣る存在だ。」

「黙れ…!」李軒は歯を食いしばった。

「お前の姉、李蓉は、今や我が妃として、日の本の宮廷で暮らしている。」日出天皇は続けた。「彼女は賢明にも、抵抗を諦めた。だが、お前は違った。愚かにも、戦いを選んだ。」

「姉上は…決して諦めてなどいない!」

「そうか。」日出天皇は軽く肩をすくめた。「だが、それはどうでもいい。お前は敗れた。負けた者は、勝者の慈悲にすがるしかないのだ。」

李軒は沈黙した。その目には、まだ闘志が燃えている。しかし、言葉は出てこなかった。

## 十三

「加藤一郎。」日出天皇が命じる。「この者たちを、地下牢に繋げ。そして、民の前で晒し者にせよ。大夏の反逆者が、いかに無惨に敗れたかを、皆に見せつけてやれ。」

「はっ。」

加藤一郎は立ち上がり、鎖を引いた。李軒はよろめきながらも、立ち上がろうとした。

「待て。」未児が声を上げた。「お願いです…せめて、殿下だけでも…解放してください…」

彼女の声は震えていた。目には涙が溢れている。

「未児…」李軒は苦しそうに言った。「頼む…そんなことを言うな…」

「だが…殿下は太子です…こんな扱いを受けるべきでは…」

「笑止。」桜子が口を挟んだ。「太子?今や、ただの反逆者だ。いや、反逆者以下の存在だ。お前も同じだぞ、太子妃よ。」

未児は唇を噛みしめた。涙が頬を伝う。

「可哀想に。」桜子は優雅に歩み寄り、未児の顎を指で持ち上げた。「こんなに美しい顔が、涙で台無しだ。だが、それも一興だな。」

「お前…!」李軒が怒鳴ろうとしたが、加藤一郎の拳が再び彼の腹に入った。

「がはっ!」

「殿下!」

未児が叫ぶが、桜子が彼女の腕を掴んだ。

「おとなしくしろ。」桜子は冷たく言った。「お前たちの命運は、我々の手にあるのだ。」

## 十四

その時、空から一筋の光が降りてきた。それは、神々しい輝きを放ち、本殿全体を照らし出す。

「何だ!」

兵士たちが騒然とする。

光の中から、一人の少女が現れた。それは月夕だった。大夏の護国女神である。しかし、その表情は今、深刻だった。

「止めなさい、日出天皇。」月夕の声は澄んでいたが、威厳に満ちていた。「これ以上、大夏の者を辱めるのは、神々の怒りを買うことになる。」

日出天皇は月夕を見上げ、笑った。

「神々の怒り?面白い。だが、我が神は、お前たちの神々より強い。知っているだろう?」

「傲慢は身を滅ぼす。」月夕は言った。「我が父、東極皇天聖帝は、お前たちの行いを許してはおられない。」

「ならば、かかって来い。」日出天皇は手を広げた。「我が父、天照大神は、常に我と共にある。お前たちの神々が、我に敵うと思うか?」

月夕は沈黙した。彼女の目には、複雑な感情が浮かんでいる。

「月夕様!」李軒が叫んだ。「お助けください!この暴君を…」

「黙れ、反逆者。」加藤一郎が鎖を強く引いた。李軒の首が締まり、声が出せなくなる。

月夕は李軒を見つめた。その目には、哀れみと無力感が混ざっている。

「李軒…」彼女は小さく呟いた。「私も…今は、何もできぬ…」

「何ですって…?」

「神界の掟がある。」月夕は言った。「直接的な干渉は、許されていない。私はただ、警告することしかできない。」

李軒の顔から血の気が引いた。彼の最後の希望が、今、絶たれたのだ。

## 十五

加藤一郎は、李軒と未児を地下牢へと連れて行った。そこは湿気が多く、悪臭が立ち込めている。壁には苔が生え、床には水が溜まっている。

「ここで、おとなしくしていろ。」加藤一郎は言い、鎖を壁の環に繋いだ。

「いつまで…ここに閉じ込めておくつもりだ?」李軒は掠れた声で尋ねた。

「決まり次第、知らせる。」加藤一郎はそれだけ言うと、振り返らずに去っていった。

鉄格子の扉が閉まる音が、暗闇に響く。鍵がかけられる音が、全ての希望を打ち砕くかのようだった。

「殿下…」未児が李軒の手を握った。彼女の手は冷たく、震えている。

「すまない…未児…」李軒はうつむいた。「俺は…お前を巻き込んでしまった…」

「そんな…」未児は首を振った。「私は、殿下の妻です。どこにでもお供します。」

「だが…こんな場所で…」

「構いません。」未児は微笑んだ。その顔は涙で濡れているが、笑顔は美しかった。「殿下と一緒なら、どこでも構いません。」

李軒はその言葉に、胸が締め付けられる思いだった。彼は妻の手を強く握り返した。

「ありがとう…未児…」

## 十六

その夜、地下牢は静まり返っていた。他の囚人たちは、疲れ果てて眠っている。李軒は目を開けたまま、天井を見つめていた。

(なぜ…なぜ、こんなことに…)

彼の頭の中は、後悔と自責の念でいっぱいだった。三百人の兵士を率いて、日出の宮殿を攻撃した。だが、結果は惨敗。大半の兵士は死に、残りは囚われの身となった。

(俺は…何もできなかった…)

加藤一郎の強さは、人間離れしていた。一人であれだけの兵士を相手にできるとは、到底思えない。あれはまさに、化け物じみていた。

(大夏は…もう終わりなのか…)

李軒の目から、一筋の涙が流れた。彼はこれまで、何があっても泣いたことなどなかった。だが、今は違う。全てを失った絶望が、彼の心を押し潰そうとしていた。

「殿下…」

未児の声が、暗闇の中で聞こえた。

「起きていらっしゃいますか?」

「ああ…」

「私も、眠れません。」未児は言った。「怖くて…」

李軒は体を起こし、妻の方を見た。暗がりでも、彼女の顔がぼんやりと見える。

「大丈夫だ。」彼は言った。「必ず、ここを出る方法を考える。」

「本当ですか?」

「ああ。」李軒は、自分に言い聞かせるように言った。「俺は、大夏の太子だ。まだ、終わったわけではない。」

その言葉に、少しだけ力が湧いてきた。彼は拳を握りしめた。

(そうだ…まだ終わってない…必ず…必ず、この屈辱を晴らしてみせる…)

## 十七

翌朝、加藤一郎が再び地下牢に現れた。

「李軒。出て来い。」

「何の用だ?」

「民衆の前で、お前の罪を告白するのだ。」加藤一郎は冷たく言った。「日出天皇陛下のご命令だ。」

李軒は唇を噛みしめた。民衆の前で、自らの無力を認めろというのか。それは、彼の誇りを完全に打ち砕く行為だった。

「嫌だ。」彼は言った。「そんなことは、絶対にしない。」

「拒否権はない。」加藤一郎は鎖を引いた。李軒の首が締まり、彼は無理やり立ち上がらされた。

「殿下!」

未児が叫ぶが、加藤一郎は彼女にも鎖をかけた。

「お前も来い。妻として、夫の罪を共に償うのだ。」

「やめろ!未児を巻き込むな!」

「黙れ。」

加藤一郎の拳が、再び李軒の腹に入る。彼はその場に崩れ落ちた。

## 十八

広場には、大勢の民衆が集められていた。日出の兵士たちが周囲を固め、誰も逃げられないようにしている。

李軒と未児は、鎖につながれて壇上に立たされた。その姿を見て、民衆の間に動揺が走る。

「あれは太子殿下では…」

「なぜ鎖につながれているんだ…」

「日出の奴らめ…」

「静まれ!」加藤一郎が声を張り上げる。「これより、反逆者李軒の罪を告白させる!」

李軒は壇上から、集まった民衆を見下ろした。その顔には、無数の視線が注がれている。中には、同情の眼差しもあった。だが、多くは恐怖と諦めの色を帯びていた。

「言え。」加藤一郎が李軒の背中を押した。「お前が、日出天皇陛下に逆らったことを、皆の前で認めろ。」

李軒は沈黙した。彼の口からは、言葉が出てこない。

「言え。」

加藤一郎の手が、李軒の肩を掴んだ。その指が、骨を砕かんばかりに食い込む。

「ぐっ…」

「言え!さもなくば、この女の命はないぞ。」

その言葉に、李軒は顔を上げた。加藤一郎の手は、未児の首に当てられている。

「やめろ…!」

「ならば、言え。」

李軒は唇を噛みしめた。血がにじむ。彼はゆっくりと口を開いた。

「…我、李軒は…日出天皇陛下に…逆らい…その罪を…認める…」

その声は、かすれていた。しかし、広場に確かに響いた。

民衆の間に、ざわめきが広がる。誰もが、その言葉を信じられない様子だった。

「もう一度。」加藤一郎が言う。「大きな声で。」

「我…李軒は…日出天皇陛下に逆らい…罪を認める…」

李軒は、震える声で繰り返した。その目からは、涙が溢れていた。それは、悔しさの涙だった。無力さの涙だった。

## 十九

その日、李軒は広場で晒し者にされた後、再び地下牢に戻された。彼の体は傷だらけで、心は打ち砕かれていた。

「殿下…」未児が彼の手を握る。「大丈夫ですか…」

「…大丈夫だ。」李軒は掠れた声で言った。しかし、その目は虚ろだった。

「殿下…泣いてもいいんですよ…」

「泣く…?」李軒は苦笑した。「泣いたところで、何も変わらない…」

「でも…」

「もういい。」李軒は頭を振った。「俺は…もう、何もできない…何も…」

彼は壁にもたれかかり、目を閉じた。その顔には、生気がなかった。

未児は彼の手を握りしめたまま、黙って寄り添った。二人は、暗い牢獄の中で、ただ時が過ぎるのを待っていた。

## 二十

その頃、皇宮の奥の間では、日出天皇と桜子が酒を酌み交わしていた。

「父上、今日の見せ物、いかがでしたか?」桜子が甘い声で尋ねる。

「なかなかのものだった。」日出天皇は笑った。「あの太子の絶望した顔は、実に愉快だった。」

「我々の力を、思い知らせることができましたね。」

「ああ。」日出天皇は酒杯を傾けた。「しかし、これで終わりではない。大夏の者どもには、もっと思い知らせねばならぬ。我々に逆らうことが、どれほど愚かなことかを。」

「その通りです。」桜子は微笑んだ。「我々は、この地を完全に支配する。そして、全ての者を我々の奴隷とする。」

二人は、高らかに笑った。その笑い声は、皇宮に響き渡り、まるで大夏の終焉を告げる鐘の音のようだった。

地下牢では、李軒がその笑い声を聞いていた。彼は拳を握りしめ、歯を食いしばった。

(必ず…必ず、この屈辱を晴らす…)

その決意は、しかし、今の彼には何の力も持たなかった。ただの、無力な反逆者の妄執に過ぎなかった。

夜は更け、星々は雲に隠れた。大夏の地には、暗い闇が広がっている。そして、その闇は、まだまだ続くのだった。

一郎の夫妻奴

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