# 第五章 学校の性奴隷
蘇晩晴が中学校に通い始めたのは、秋も深まった十月の終わりだった。社会福祉施設の職員に連れられて訪れた校舎は、彼女にとって異世界のように見えた。廊下を走り回る生徒たち、教師の叱る声、チャイムの音――すべてが遠い国の出来事のようだった。
「ここがあなたの教室よ」
担任の女性教師が微笑みながら蘇晩晴の肩に手を置いた。その手の温もりに、彼女は無意識のうちに身を固くした。教師は一瞬、怪訝な表情を浮かべたが、すぐに柔らかな笑顔に戻った。
教室に入ると、四十人近い生徒の視線が一斉に蘇晩晴に注がれた。彼女は俯きながら、自分の席へと歩いた。スカートの裾が微かに震えている。後ろの席の男子生徒が何か囁き合う声が聞こえた。
「転校生だって」「なんか変な雰囲気だよね」
蘇晩晴は何も聞こえないふりをした。窓の外を見ると、校庭で体育の授業を受けている生徒たちが見えた。彼らは自由に走り、笑い合っている。その光景が、なぜか彼女の胸を締め付けた。
昼休み、蘇晩晴は一人で屋上に向かった。校舎の影から見上げる空は、灰色の雲に覆われていた。フェンスに手をかけ、遠くの山々を見つめる。風が髪を撫で、冷たい空気が肺に入り込む。
「ここにいたの」
振り返ると、先ほどの担任教師が立っていた。彼女の手には昼食の包みがある。
「食べないの? せっかく用意してもらったのに」
蘇晩晴は首を振った。教師はため息をつき、隣に立った。
「何か悩みがあるなら、話してくれていいんだよ」
その言葉に、蘇晩晴の口元が歪んだ。悩み? そんなものはとうに超えたところにいる。彼女の体に刻まれた烙印は、決して消えることのないものだ。胸の下、脇腹、太ももの内側――見えない場所に、いくつもの焼き印がある。
「大丈夫です」
蘇晩晴は機械的に答えた。教師は何か言いかけたが、結局何も言わずに去っていった。
その日の放課後、蘇晩晴は校長室に呼び出された。重厚な木製のドアを開けると、校長と二人の男性教師が待っていた。校長は五十代の男性で、鋭い目つきをしていた。
「蘇晩晴さん、君には特別な役割を任せたい」
校長は机の引き出しから一枚の書類を取り出した。そこには「性感処理担当」という文字と、詳細な業務内容が記されていた。蘇晩晴は文字を追ううちに、体中が冷えていくのを感じた。
「これは…」
「君の体に刻まれたものは、もう消えない。だったら、それを有効活用しよう」
校長の声は平然としていた。隣の男性教師たちも、何の疑問もなく頷いている。
蘇晩晴は書類を握りしめた。指先が震えている。しかし、拒否する言葉は出てこなかった。どこに行っても、彼女は同じ運命から逃れられない。むしろ、ここで役割を与えられたことで、少しは存在価値が生まれたような気がした。
「わかりました」
その答えに、校長は満足げに笑った。
翌日から、蘇晩晴の日常は一変した。授業の合間、放課後、時には夜間も、彼女は校舎の奥にある特別な部屋に呼ばれた。部屋にはベッドと洗面台、そして様々な器具が置かれていた。
最初の相手は、体育教師の田中だった。彼は四十代の男性で、筋肉質な体をしている。
「初めてだな。緊張しなくていい」
田中は蘇晩晴の制服のボタンを外し始めた。彼女はされるがままに、体を委ねた。冷たい空気が肌を撫でる。胸の下の烙印が、無言の証としてそこにある。
田中は彼女の体を撫でながら、無造作に脚を開かせた。何の前触れもなく、彼の指が膣に挿入される。蘇晩晴は息を呑み、体を硬くした。
「もう少し力を抜け」
田中の指示に従い、彼女は深く息を吐いた。彼の指が内部を探るように動く。かつて、何度も繰り返された行為だ。蘇晩晴の体は、もうとっくに慣れていた。痛みすらも、どこか遠い感覚だった。
「よし、じゃあ本番だ」
田中がズボンを下ろし、彼女の上に覆い被さる。彼の性器が膣口に当てられた。一瞬の間の後、強い衝撃が走った。
蘇晩晴は天井のシミを見つめながら、体が揺れるのに任せた。田中の荒い息遣いが耳元で響く。彼の汗が彼女の胸に滴り落ちる。すべてがどこか他人事のように感じられた。
終わった後、田中は満足げに服を整えながら言った。
「なかなかいい体してるな。また呼ぶ」
蘇晩晴は無言で、乱れた制服を直した。膣からは粘液が垂れ、太ももを伝った。彼女は備え付けの洗面台で体を洗い、次の授業に向かった。
教室に戻ると、周りの生徒たちは何事もなかったかのように振る舞っている。誰も彼女に話しかけようとしない。それでよかった。話しかけられても、何を話せばいいのかわからない。
そうして日々が過ぎていった。蘇晩晴は、自分の体が少しずつ変化していくのを感じていた。最初は痛みを伴っていた挿入も、今ではほとんど感じない。膣の筋肉は緩み、刺激に対する反応も鈍くなっている。
それでも、彼女は記録をつけ始めた。小さなノートに、日付と相手の名前、そして簡単な感想を書き留める。十一月五日、田中体育教師。十一月七日、山田数学教師。十一月九日、佐藤用務員…
ノートのページはすぐに埋まっていった。書き終えたページをめくりながら、蘇晩晴は考える。これは誰のための記録なのだろうか。自分の存在を証明するため? それとも、ただの習慣?
十一月の終わり、体育館で全校集会が開かれた。校長が壇上で何か話しているが、蘇晩晴の耳には入ってこない。彼女の視線は、前方の生徒たちの後ろ頭に釘付けになっていた。彼らはみな、同じように前を向き、同じように拍手をする。まるで機械のようだ。
集会が終わり、蘇晩晴は人混みに押されながら出口に向かった。その時、誰かの手が彼女の尻を撫でた。振り返ると、見知らぬ男子生徒がニヤニヤしながら通り過ぎていく。
廊下の掲示板には、「清潔で正しい学校生活を」というポスターが貼ってあった。その下で、二人の女子生徒が携帯電話を見ながら笑っている。何がおかしいのか、蘇晩晴にはわからなかった。
その日の放課後、いつもの部屋に呼ばれた。相手は三人の男子生徒だった。彼らは高校生くらいの年齢で、酒の匂いを漂わせている。
「お前が例のやつか」
一人が蘇晩晴の髪を掴み、無理やり床に跪かせた。別の者が彼女の口をこじ開け、性器を押し込んだ。嘔吐反射が起きるが、もう何度も経験している。喉の奥を締め付ける感覚に、彼女は上手く対応できるようになっていた。
三人は入れ替わり立ち替わり、蘇晩晴の口、膣、肛門を順番に使った。彼女は四つん這いになり、ベッドのシーツを掴みながら耐えた。肛門に挿入された時、わずかな痛みが走ったが、すぐに麻痺した。
「すげえ、中がもうグチャグチャだぜ」
「普通の女とは違うな」
「次、俺の番」
彼らの会話が、遠くで響いている。蘇晩晴の意識は、体から遊離し始めていた。天井の蛍光灯がちらつき、壁の時計の秒針がゆっくりと動いている。
終わった後、三人は満足そうに部屋を出ていった。蘇晩晴はその場に倒れ込み、冷たい床の感触を頬に感じた。体のあちこちが痛むが、その痛みすらも、もはや彼女の一部だった。
ゆっくりと体を起こし、洗面台の鏡を見る。そこには、無表情な少女が映っていた。瞳は虚ろで、何の感情も宿っていない。口の端からは精液が垂れ、制服は乱れている。彼女は無造作にそれを拭い、制服を直した。
ノートを取り出し、新しい行を書き加える。十一月二十八日、男子生徒三名(名前不明)。特記事項:肛門使用。
翌日、蘇晩晴は教室で授業を受けていた。黒板に書かれた数式が、目に入っても頭に入ってこない。教師の声は遠く、まるで水中から聞こえているかのようだ。
「蘇晩晴さん、この問題を解いてみて」
突然指名され、彼女は立ち上がった。黒板の前で、チョークを手に取る。しかし、何を書けばいいのかわからない。クラス中が注目している。彼女の手が震え始めた。
「先生、彼女はいつもああですよ」
前列の女子生徒が冷たい声で言った。周りから軽い笑い声が漏れる。
「座っていいよ」
教師の言葉に、蘇晩晴は無言で席に戻った。膝の上で握りしめた拳が、わずかに震えている。
放課後、校舎裏の水道で手を洗っていると、背後から声がした。
「おい、噂の性奴隷ってお前か?」
振り返ると、三人の女子生徒が立っていた。リーダー格の女子が、じろじろと蘇晩晴の体を見下している。
「どうせ男に使われてるんだろ? 気持ち悪い」
別の女子が、蘇晩晴のスカートを捲り上げた。冷たい風が太ももを撫でる。彼女たちは指を指して笑った。
「やっぱり、普通の女とは違うね」
「あんた、まともな恋愛もできないんでしょ」
蘇晩晴は何も言わず、スカートを直した。その無反応な態度に、女子生徒たちは不満そうな顔をしたが、やがて飽きて去っていった。
一人残された蘇晩晴は、水道の蛇口をひねり、冷たい水を顔にかけた。水が制服の襟元を濡らす。彼女はそのまま、しばらく動かなかった。
十二月に入り、寒さが本格化した。蘇晩晴の体は、頻繁な性行為によって疲弊していた。膣の内壁は常に腫れ、肛門は締まりが悪くなり、口の周りには切れた痕ができていた。それでも彼女は、毎日の業務をこなした。
ある日、新任の女性教師が蘇晩晴に話しかけてきた。彼女は若く、まだ二十代前半に見える。
「あなた、大丈夫? あまり顔色がよくないわね」
その優しい声に、蘇晩晴は一瞬、心が揺れた。しかし、すぐにそれは幻想だと気づいた。この教師も、遅かれ早かれ彼女の役割を知ることになる。
「大丈夫です」
いつもの答えを返すと、教師は少し寂しそうな顔をした。
「何かあったら、いつでも相談してね」
そう言って、教師は去っていった。蘇晩晴はその後ろ姿を、無表情で見送った。
十二月十五日、全校集会で、蘇晩晴は表彰された。理由は「学校の健全な発展に貢献した」というものだった。壇上で校長から賞状を受け取りながら、彼女は拍手する生徒たちを見渡した。彼らの顔は、どれも同じように見えた。まるで、マスクをかぶっているかのようだ。
その夜、蘇晩晴はノートを開き、今日の記録を書き加えた。十二月十五日、校内清掃員三名。その後、彼女はこれまでの記録を読み返した。ページの端は擦り切れ、インクは滲んでいる。
全部で百二十三回。相手は教師、生徒、用務員、そして時には外部から来た者たち。日付と時間、場所、そして簡単な感想。すべてが淡々と、機械的に記録されている。
蘇晩晴はノートを閉じ、枕元に置いた。窓の外では、雪が静かに降り始めていた。彼女はその白い世界を見つめながら、自分の内側が空っぽになっていくのを感じた。
かつては感じていた痛みも、屈辱も、絶望も、今ではただの感覚としてしか認識できない。涙はとうに枯れ果て、笑顔の作り方も忘れてしまった。残っているのは、与えられた役割を果たすことだけ。
彼女はもはや、自分が何者なのかわからなくなっていた。蘇晩晴という名前は、ただのラベルでしかない。本当の自分は、どこかに置き忘れてきてしまった。
雪は一晩中降り続き、翌朝には校庭を真っ白に覆っていた。蘇晩晴は窓からその景色を眺めながら、今日もまた、あの部屋に向かう。そこには彼女を待つ人々がいる。彼らは蘇晩晴の体を求め、使い、そして去っていく。
それが彼女の日常だった。そして、それが彼女の存在意義だった。
学校中が彼女の噂で持ちきりだった。「あいつは何人でも相手にする」「使い捨てのオナホールだ」――そんな言葉が、廊下のあちこちで交わされている。しかし、蘇晩晴にとって、もはやそれすらもどうでもよかった。
彼女はただ、機械的に日々をこなすだけ。与えられた役割を、忠実に遂行するだけ。その繰り返しの中で、かつてあった感情の欠片は、少しずつ削り落とされていった。
十二月二十四日、クリスマスイブ。学校では小さなパーティーが開かれていた。蘇晩晴も参加を促されたが、断った。代わりに、彼女はいつもの部屋で、待っていた。やがて、ドアが開き、校長が入ってきた。
「メリークリスマス、蘇晩晴さん」
校長は笑いながら、彼女の前に立った。その手には、ラッピングされた箱がある。
「プレゼントだ」
蘇晩晴が箱を開けると、中には新しいバイブレーターが入っていた。彼女はそれを無言で見つめた。
「気に入ったか?」
校長の問いに、蘇晩晴は微かに頷いた。彼女の口元は、笑っているのか泣いているのか、わからない形に歪んでいた。
その夜、蘇晩晴は部屋に戻り、新しいバイブレーターを箱から取り出した。冷たい感触が指先に伝わる。彼女はそれを自分の膣に挿入した。何の感慨もなく、ただ機械的な動作だった。
スイッチを入れると、振動が体内に広がる。しかし、もうほとんど感じない。感覚は麻痺し、強い刺激でなければ、何も感じ取れない。
彼女はベッドに横たわり、天井のシミを見つめながら、考えた。自分は今、どこにいるのだろう。何のために生きているのだろう。答えは出ない。ただ、窓の外で雪が静かに降り積もる音だけが、部屋の中に響いていた。
十二月が終わり、新しい年が始まった。蘇晩晴の日常は変わらない。彼女は学校の「伝説」となっていた。一年生から三年生まで、誰もが彼女のことを知っている。しかし、誰一人として、彼女の本当の姿を見ようとはしなかった。
ある日、一人の女子生徒が蘇晩晴に近づいてきた。彼女は一年生で、まだあどけない顔をしている。
「先輩、噂を聞きました。私も…私もあんたみたいになりたくて」
その純粋な目に、蘇晩晴は久しぶりに何かを感じた。それは怒りかもしれないし、哀れみかもしれない。しかし、彼女はただ静かに言った。
「やめておけ」
その言葉に、女子生徒は驚いた表情を浮かべたが、やがて理解したように頷き、去っていった。
蘇晩晴はその後ろ姿を見送りながら、自分の中にかつてあった何かが、まだ完全には消えていないことに気づいた。しかし、それはほんの一瞬の輝きに過ぎなかった。すぐに、虚無が彼女を飲み込む。
彼女は歩き出した。廊下の先には、いつもの部屋がある。今日もまた、誰かが待っている。蘇晩晴の足音は、無機質に響きながら、闇の中へと消えていった。