# 第一章 招かれざる客
黄昏の光が寧定城の石畳を朱色に染めていた。水戸銀子は薄汚れた長裙の裾を引きずりながら、街角の影に身を潜めていた。彼女の顔色は青白く、唇はわずかに震えている——まさに哀れな避難者の装いだった。
「助けてください…」
声はか細く、風に消え入りそうだった。実際、彼女の心の中は冷ややかな笑いで満ちていた。《この街の連中は皆、偽善者だ。特に上院の連中はな…》
足音が近づいてきた。水戸銀子はうつむいたまま、ちらりと視線を上げた。白い衣をまとった女性が立っていた。柔和な微笑みを浮かべ、目は慈愛に満ちている。その姿はまるで光そのもののように、周囲の暗がりを浄化していた。
「どうなさいました?」
百合は優しく問いかけた。彼女の鼻腔に、かすかな香りが届く——清潔な石鹸の香りに混じって、何か別の…甘く、蠱惑的な匂いが。
水戸銀子は声を震わせた。「賊に襲われて…所有物を全て奪われました。行く当てもなくて…」
彼女の瞳に涙がたまっていた。その演技は完璧だった。実際、彼女の全身から発せられる匂いは、百合の嗅覚をそっと撫でていた。百合は無意識に息を深く吸い込んだ。
「私の家で休んでください」
百合は手を差し伸べた。その手は震えていた——あるいは、震えているように見えた。水戸銀子はその手を取った。彼女の指先が、ほんのわずかに百合の手首に触れた。その瞬間、微かな緋色の光が走ったが、誰の目にも留まらなかった。
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邸宅は静かだった。白亜の壁、清楚な調度品。天痕はリビングのソファで本を読んでいた。彼女の紫色の瞳が来訪者を見上げ、一瞬、鋭い光を宿した。
「この方は?」
「避難者の方よ。今夜だけ泊めてあげたいの」
百合の声は柔らかかった。天痕は水戸銀子をじっくりと観察した。少女の服装は粗末だが、その仕草にはわずかな気品が感じられる。首元の肌は異様に白く、血管が透けて見えるようだった。
「…どこから来た?」
天痕の問いは短かった。水戸銀子はうつむき、声を詰まらせた。「北の小村から…魔獣に襲われて、村はもう…」
彼女の肩が震えた。百合はすぐに彼女の肩を抱きしめた。「もういいわ。休みましょう」
天痕は何も言わなかった。しかし、水戸銀子の体から発せられる匂い——それは百合の心を少しずつ惑わせていた。天痕にはそれが奇妙に感じられたが、百合の優しさを疑うことはなかった。
「おやすみなさい」
百合はそう言って、水戸銀子を客室へと案内した。扉が閉まる瞬間、天痕は目を細めた。
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深夜。寧定城は静寂に包まれていた。
水戸銀子は客室で、ゆっくりと黒いストッキングを脱いだ。部屋の灯りは灯されていない。しかし彼女の目は暗闇の中で輝いていた。
彼女は裸足で立ち上がった。足の指は優雅に動き、かすかに汗ばんだその肌から、独特の香りが漂い始める。それは甘く、芳醇で、本能を呼び覚ますような香りだった。
水戸銀子は微笑んだ。それは哀れな少女のものではなかった。獲物を見つめた捕食者の微笑みだった。
「あの女…嗅覚が異常に鋭い」
彼女は呟いた。廊下の先、百合の部屋から、かすかな呼吸の音が聞こえる。水戸銀子の嗅覚が捉えた——百合の匂いに混じった、わずかな興奮の香り。
「計画通り」
水戸銀子は脱ぎ捨てたストッキングを手に取り、廊下に投げ捨てた。それは暗がりの中に落ち、月明かりに照らされて、かすかに光っていた。
彼女はゆっくりと自室の扉を閉めた。心の中で笑いがこみ上げてくる。《お前たちの高慢な魂が、どれほど脆いか見せてやろう。私の足の下で、どれほど美しく哭くか…》
夜はまだ深い。百合の嗅覚はすでに、その香りに囚われ始めていた——無意識のうちに、抗えない力で。