葉冬市の港には、潮の香りと油の匂いが混ざり合った夜気が立ち込めていた。波止場に立つ朴大根は、身高百五十五センチの頑丈な体を黒いスーツに包み、海の彼方を見据えていた。彼の顔はどこにでもいるような中年の風貌だが、その目だけは獲物を狙う獣のように鋭い。
「来たぞ」
彼の呟きと同時に、闇の中から一隻の船が姿を現した。船首には二人の人影。一人は長身の女性、もう一人はその隣に立つ小柄な男だった。
船が接岸し、タラップが下ろされる。まず降り立ったのは、波打つ褐色の長髪を風に揺らす伊美児だった。百七十五センチの長身に、黒のドレスが纏う豊満な曲線。特に胸元の膨らみは目を見張るものがあり、彼女が歩くたびに微かに揺れた。しかしそれ以上に印象的だったのは、その瞳の優しさだった。母性すら感じさせるその眼差しは、しかし同時に鋼のような意志の強さを秘めていた。
「お迎えありがとう、朴さん」
伊美児の声は低く、落ち着いていた。その後ろから、利青が現れる。伊美児より五センチ低い百七十センチの身長に、痩せた体躯。彼の顔は幼さを残していたが、その目には利発さが光っていた。
「よう、朴さん。初めて会うな」
「はい、初めまして。利青さん、そして伊美児さん。お二人を歓迎いたします。私は朴大根、現在大门帮の代理を務めております」
朴大根は深々と頭を下げた。彼の首筋には、太い血管が浮き出ていた。
「まずはお二人を、私が手配した宿泊先へお連れいたします。海岸沿いの小さな旅館ですが、落ち着ける場所です」
三人は朴大根の運転する黒塗りのセダンに乗り込んだ。車内は革の香りと、ほのかな芳香剤の匂いが混ざっていた。
「実は、お二人にお話ししたいことがあります」
朴大根がバックミラー越しに後部座席の二人を見た。伊美児は窓の外の街灯が流れる様子を眺めていた。
「竹奇組のことですね」
伊美児が静かに言った。朴大根は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに頷いた。
「ご存知でしたか。そうです。竹奇組はこの島での支配権を狙っています。彼らは我々大门帮が長年築いてきた地下のルートを、無理やり奪おうとしているのです」
「うちの情報網でも、竹奇組の動きは掴んでいる」
利青が口を挟んだ。彼の声は細く、しかし芯があった。
「竹奇組は、この島での中華系と韓国系のバランスを崩そうとしている。彼らは自分たちこそが島の支配者にふさわしいと宣言した」
朴大根の声には怒りが込められていた。
「父が彼らにやられたんです。卑怯な手で。だから私は、どうしても竹奇組と対抗したい。そのためには、青龙帮と玄武帮の力を借りたいんです」
車がカーブを曲がり、海が一瞬見えた。窓の外には、遠くに日本の漁船の灯りが見えた。
「朴さん」
伊美児が口を開いた。彼女の声は相変わらず優しかったが、その中には確かな重みがあった。
「我々も竹奇組の動きには注目しています。しかし、まだ彼らの本当の狙いは掴めていません。まずは様子を見る必要があります」
「しかし...」
「焦るな、朴さん」
利青が割って入った。
「竹奇組は確かに厄介だが、青龙帮はこの島でも最大の勢力だ。奴らが簡単に動ける相手じゃない。まずは俺たちもこの島を観光しようじゃないか。何せ、こうして上位の者が直接島に来るのは初めてなんだ。リラックスするのもいいだろう?」
朴大根は一瞬考え込んだが、やがてゆっくりと頷いた。
「...そうですね。お二人をお連れするのは、まずはそれぞれの幫派の島の支部へ立ち寄っていただくのが先決ですね。その後、宿へ」
車は港町の路地を抜け、やがて古びたビルの前に停まった。そこには「青龙帮・叶冬支部」と書かれた看板が掛かっていた。朴大根は車を降り、二人を案内した。支部の中は簡素だったが、壁には龍の刺繍が施された旗が掛けられていた。
「お久しぶりです、支部長の陳です」
中年の男が頭を下げた。伊美児が軽く頷く。
「ご苦労さまです。島の状況は?」
「はい、竹奇組が一部の地区で撹乱工作を行っておりますが、まだ大きな動きはございません。しかし、警戒は怠れません」
「よく分かりました。続けて報告を」
伊美児は淡々と指示を出した。その後、同じように玄武帮の支部にも立ち寄り、利青が自分の配下の者たちと打ち合わせを行った。
すべての用事が終わった頃には、空はすっかり暗くなっていた。朴大根は再び車を走らせ、海岸沿いの小さな旅館に到着した。旅館は古風な造りで、玄関には提灯がともっていた。
「本来ならば、グラス五星ホテルをご用意するつもりでした。しかし、現在改装中でして...また営業を再開しましたら、ぜひご宿泊いただきたく存じます」
朴大根は深々と頭を下げた。
「お気遣いありがとう」
伊美児が微笑んだ。朴大根はそれを見ると、車に戻り、闇の中へ消えていった。
旅館の部屋は、和室だった。障子の向こうには、小さな庭があり、竹が風に揺れていた。利青はベッドの上でテレビをつけ、何気なくニュースを眺めていた。すると、浴室のドアが開く音がした。
振り返ると、伊美児が立っていた。彼女は黒いレースの下着だけを身につけていた。透けるような素材が、彼女の白い肌を包み込んでいた。胸の膨らみは下着の上からでもはっきりと感じられ、その曲線は美しかった。
「お待たせ」
彼女がベッドに飛び乗り、伸びをした。その動きに合わせて、彼女の体がしなやかに動く。利青はテレビを消し、彼女の方を向いた。
「今日は疲れただろう」
「うん。でも、あなたと一緒だから平気」
伊美児が利青の体に寄り添った。彼女の体温が、彼の肌に伝わる。彼女の手が、ゆっくりと彼の下腹部に触れた。そこには、すでに大きくなり始めていたものがあった。
「俺のは、小さいけど...」
利青が言いかけると、伊美児が彼の口に人差し指を当てた。
「そんなこと、気にしない。私、あなたのこと大好きだから」
彼女の指が、彼のズボンのファスナーを下ろした。中から現れたのは、勃起しても八センチほどの細いものだった。伊美児はそれを手に取り、そっと口に含んだ。彼女の温かい唾液が、彼の肌を濡らした。
「はあっ...」
利青が思わず声を漏らす。彼女の舌が、繊細に動く。彼の体が震えた。彼女の口の中に、彼のすべてが収まっていた。彼女の唇が、彼の先端を優しく吸い上げる。
「うっ...いい...」
彼の体が弓なりになった。彼女の手が、彼の腰を支える。彼女の口の中に、彼の精がほとばしった。量は少なく、ほぼ透明で、匂いもほとんどなかった。
「ああ...」
利青の体が痙攣し、やがて力が抜けた。
「ふう...」
彼は深く息を吐き出した。
「必要なのは、半月休まないとな」
伊美児が微笑みながら、彼の顔にキスをした。彼女の唇は、まだ彼の味が残っていた。
「お疲れさま」
彼女が彼の頭を優しく撫でた。二人はそのまま、抱き合って眠りについた。窓の外には、海の波の音が聞こえていた。遠くで、何かの汽笛が響いていた。それは、新たな夜の始まりを告げているようだった。