# 第一章: 帰宅の夜
冬の冷たい風が頬を刺す。趙小天は大学の寮を出てから三時間、電車とバスを乗り継ぎ、ようやく見慣れた住宅街の入り口に立っていた。十二月の下旬、街灯の橙の光が雪のように冷たいアスファルトを照らしている。鞄を肩にかけ直し、彼はゆっくりと家路を歩き始めた。
半年ぶりの帰宅だった。夏休みはバイトに忙しく、ほとんど家に帰れなかった。母と叔母には何度か電話をしたが、実際に顔を合わせるのは久しぶりだ。心のどこかで、彼はその再会を待ち望んでいた。同時に、ある種の重圧も感じていた。
家の前に着いた時、彼は奇妙な感覚に襲われた。いつもなら母が暖かく出迎えてくれるはずなのに、今夜は妙に静かだ。二階の窓から漏れる明かりだけが、人の気配を伝えている。
鍵を開ける。ガチャリという金属音が静寂を破った。
「ただいま」
声をかけると、玄関の奥から微かな衣擦れの音が聞こえた。そして、彼の目に飛び込んできた光景に、小天は一瞬息を呑んだ。
母の趙婉美と叔母の趙婉麗が、玄関のタイルの上に正座で跪いていた。二人とも頭を深く下げ、両手を膝の上に揃えている。母は淡いクリーム色のワンピース、叔母は深紅のドレス。どちらも家の中で過ごすには優雅すぎる服装だった。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
母と叔母の声が重なる。その声には緊張と期待が混じっていた。
小天は鞄を玄関に置き、靴を脱ぎながら二人を見下ろした。彼の心臓は早鐘を打っていたが、それを表に出さないように努めた。
「顔を上げろ」
二人はゆっくりと顔を上げた。母の婉美は四十代後半だが、手入れの行き届いた肌と落ち着いた物腰で、まだ十分に美しかった。叔母の婉麗は三十六歳、姉よりも情熱的な目つきと、どこか挑戦的な笑みを浮かべている。
「休暇中、規則を守っていたな?」
小天の声は自分でも驚くほど落ち着いていた。彼はリビングに歩き出し、ソファに腰を下ろした。二人は立ち上がり、彼の前に跪き直した。
「はい、ご主人様。毎日、決められた時間に反省し、自慰を致しました」
母の婉美が答える。その声はかすかに震えていた。
「私もです、ご主人様。怠りなく、己の欲望をコントロールするよう努めました」
婉麗が続ける。彼女の目は姉よりも少しだけ挑戦的だった。
小天は二人の顔をじっくりと見つめた。彼の目は冷たく、評価するような眼差しだった。
「服を脱げ。確認する」
婉美と婉麗は一瞬躊躇したが、すぐに服のボタンに手をかけた。ワンピースが床に落ち、下着だけになった二人の身体が露わになる。部屋の暖房が効いているとはいえ、冬の夜の冷気が肌を刺すようだった。
「留守中は、ちゃんと手入れをしていたか?」
小天の問いに、婉美が頷いた。
「はい、毎日オイルを塗り、自分でマッサージを致しました。ご主人様に恥をかかせぬよう、肌の状態を保つよう心がけておりました」
「私もです」婉麗が付け加える。「ご主人様の指が滑らかに肌を撫でられるように、細心の注意を払いました」
小天は二人の体を一通り見回した。確かに肌は滑らかで、触れたくなるような弾力があった。彼は立ち上がり、二人の前に歩み寄った。
「では、告げよ。この二週間、どのような反省をしたのか」
母と叔母は顔を見合わせた。そして、婉美が先に口を開いた。
「私は…ご主人様に仕える身でありながら、時折、自分の意思で行動したくなることがございました。特に、夜中にふと目覚めた時、枕元に置いてあるご主人様の写真を見て、自分の中の欲望に抗えなくなりました。その度に、己の弱さを悔い、自慰をもって罪を償いました」
「自慰の回数は?」
「一日に…一度です。ご主人様が定めた上限を守っております」
小天は眉をひそめた。もう一度で十分だとは思わなかったが、規則は規則だ。
「婉麗、お前は?」
婉麗は一瞬、姉を横目で見てから答えた。
「私は、姉よりも欲望が強うございます。時折、ご主人様のいらっしゃらない夜に、自分を慰めることができず、苛立ちを覚えました。しかし規則を破ることはせず、代わりに鞭で自分の太腿を打ち、欲望を鎮めました」
「見せろ」
婉麗はゆっくりと脚を開いた。太腿の内側には、かすかな赤い線が数本走っていた。新しい傷ではないが、まだ完全には消えていない。
「よく守った」
小天の声に、婉麗の顔にほのかな安堵が浮かんだ。
「では、新しい調教計画を始める」
そう言って、小天はソファの背もたれから革製の鞭を取り出した。それは彼が出かける前に用意しておいたものだ。長い柄と細い革の先端、振るえば空気を裂く鋭い音を立てる。
「お前たちは今夜から、三つの新しい規則を守らなければならない。一つ、私が家にいる間は、常に下着だけの状態で過ごせ。但し、来客があればその限りではない。二つ、毎晩九時に、このリビングに集まり、その日の反省を口頭で述べよ。三つ、私の許可なく自慰をすることを禁ずる。違反した場合は、その度に鞭打ち十回を科す」
婉美と婉麗は顔を引き締めた。どちらも新しい規則の厳しさを理解していた。
「承知致しました」
二人の声が重なった。
「よし。では今夜はここまで。それぞれ自室に戻り、明日の準備をせよ」
二人は立ち上がり、軽くお辞儀をしてから部屋を出て行った。婉美は最後に一瞬だけ振り返り、息子の顔を見た。その目には複雑な感情が揺れていた。
小天は一人リビングに残り、手にした鞭を見つめた。革の感触は冷たく、硬い。彼は初めてこの鞭を手にした日のことを思い出していた。母と叔母に調教される側だった日々、そして今、彼は支配する側に立っている。その変化は、まるで一夜にして訪れたように感じられたが、実際には長い時間をかけてゆっくりと育まれてきたものだった。
彼はソファに深く腰を下ろし、天井の灯りを見上げた。冬休みが、始まった。