第10章
刑場は、姉が切腹したのと同じ庭に設けられていた。あの年の桜の木は、かつて見事な枝を広げていた場所に、今は枯れ果てた影を落としている。冬の陽は低く、冷たい光が裸の枝を透かして地面に斑模様を描いていた。数十名の将校たちが、その庭をぐるりと取り囲み、粛然とした表情で中央を見つめている。彼らの制服はきっちりと整えられ、誰一人として動く者はなかった。ただ、凍てついた空気の中で、時折馬の鼻息が聞こえるだけだ。
ヒロインは白無垢をまとい、綿帽子は雪のように白く、彼女の顔を覆い隠していた。腰には白い結び帯が締められ、その結び目はしっかりと固められている。白い足袋を履き、下駄を踏む音が、静まり返った庭に響いた。彼女の足取りは重く、しかし一歩一歩が確かだった。将校たちの視線が彼女に注がれる。その中には、かつて姉の死を見届けた者たちもいた。彼らは、この光景が二度目であることを知っていた。
茣蓙の前に立った時、彼女は一瞬、足を止めた。枯れた桜の木を見上げる。あの年、姉が果てた場所。桜の花びらが舞い散る中で、姉は笑っていた。その記憶が、彼女の胸を焼いた。しかし、彼女は顔を上げ、将校たちの方を向いた。綿帽子の下から、かすかに息をつく音が漏れる。
「すべては、御家のため」
彼女はそう呟いた。声は掠れていたが、誰も聞き取れなかったかもしれない。彼女は茣蓙の上に膝をつき、丁寧に正座した。下駄を脱ぎ、白い足袋が茣蓙の縁に触れる。将校たちの一人が、一歩前に出て、低い声で言った。
「ご覚悟は、お決まりか」
彼女は微かにうなずいた。その仕草は、まるで舞を舞うように優雅だった。彼女は自分の前に置かれた白い布の上に置かれた冷たい懐剣を手に取った。刃は銀色に輝き、細身で鋭く、彼女の手のひらにぴたりと収まった。彼女はそれを両手で握りしめ、柄の感触を確かめた。冷たさが指先から腕へと伝わり、心臓を凍らせるようだった。
彼女は深呼吸をした。将校たちの息遣いが、彼女の耳に届く。誰もが、彼女の一挙手一投足を見守っている。彼女は綿帽子の端を指でつまみ、ゆっくりと引き上げた。白い布が滑り落ち、彼女の顔が露わになる。肌は青白く、唇はかすかに震えていた。しかし、その瞳はまっすぐ前を向いていた。
着物の前をはだけ、白い胸元と腹部が現れる。彼女は冷たい刃を自分の肌に当てた。刃先が下腹部に触れると、鋭い冷たさが彼女の全身を駆け巡った。その瞬間、強い恐怖が彼女の心を襲った。これまで抑え込んできた感情が、一気に堰を切ったように溢れ出る。涙が止めどなく流れ落ち、彼女の頬を伝い、白無垢の襟元を濡らした。
腹部が本能的に縮こまった。筋肉が硬直し、刃先を拒むかのように。彼女は歯を食いしばり、目を閉じた。姉の声が、遠くから聞こえてくるような気がした。「怖くないわ」と。彼女はもう一度、深く息を吸い込み、刃を力任せに突き刺した。
鈍い衝撃が彼女の手に伝わり、同時に、かつて味わったことのない激痛が炸裂した。まるで刃が体内で火を吹いたかのようだった。彼女は短い悲鳴を上げ、体が前のめりに崩れ落ちそうになった。しかし、彼女は必死に姿勢を保った。痛みが波のように押し寄せ、彼女の意識をかき乱す。しかし、その破滅的な苦痛の中で、彼女ははっきりと感じ取った。
姉が感じた異常な温かい流れ。
彼女の下腹部から、血が湧き出るように溢れ出す。切開された子宮と腸から、奔流の如く、温かくて粘り気のある液体が彼女の腿を伝い、白い結び帯を濡らした。その感触は、最初は恐ろしかった。しかし、すぐに痛みは変質した。彼女の全身を包み込むような、圧倒的な快感へと変わったのだ。まるで、彼女の内側からすべてが溶け出し、自由になるかのように。
視界がピンク色に染まった。枯れた桜の木が、突然、花を咲かせたかのように見えた。彼女は自分が白無垢とともに、その桜の花びらの中で開花していくのを感じた。体が軽くなり、痛みは遠のき、代わりに満ち足りた感覚が彼女を包む。
「まだ、終わっていない」
彼女は最後の力を振り絞り、懐剣をさらに深く押し込んだ。刃が下腹部を横に切り裂く。瞬間、二十年近く保ってきた腸と子宮が、切断された。彼女の体内から、内臓が滑り落ちる感覚があった。彼女は仰向けに倒れ込んだ。白無垢の上に、血と内臓が急速に広がっていく。赤い染みが、白い絹の上で花のように咲き誇った。
瀕死の中で、彼女は姉を見た。枯れた桜の木の下で、姉が微笑んでいた。あの年のように、桜の花びらが舞い、姉は優しく手を差し伸べている。彼女の口元も、同じ満足げな弧を描いた。この長い供物の儀式は、ついに彼女自身によって完結されたのだ。
彼女の瞳が、ゆっくりと閉じられた。息が止まり、体が動かなくなった。将校たちは、深く頭を下げた。庭には、再び静寂が訪れた。枯れた桜の木の枝が、微かに風に揺れた。