地下牢は、冷たく湿った空気と、鉄の錆びた匂い、そして何より、女たちの汗と恐怖の匂いで満ちていた。壁に埋め込まれた松明の火が、揺らめきながら無数の裸体を照らし出す。彼女たちは皆、手首と足首に重い枷を嵌められ、鎖で壁につながれていた。若い娘もいれば、年かさの女もいる。その肌には無数の傷跡が刻まれ、鞭痕、火傷の痕、歯型まである。何人かは虚ろな目で天井を見つめ、何人かは俯いて震え、泣き声すら上げる力を失っていた。
地下牢の中央には、頑丈な鉄製の刑架が据えられていた。その両端には鎖と滑車が備え付けられ、吊るされた者の体重を自由に調整できるようになっている。今、その刑架に吊るされているのは玉娘だった。彼女は手首を頭上で縛られ、足首にも重い鉄球が括りつけられていた。全身の布はすべて剥ぎ取られ、白い肌が松明の光に晒されている。頬には一滴の涙が伝い、唇は震えていたが、声は出さない。彼女は周りの女奴隷たちの視線を感じていた。その視線には、同情もあれば、ある種のなじみ深い諦めも混じっている。
衛冬青はゆっくりと地下牢の階段を下りてきた。彼の足音は石畳に響き、牢内の女たちが一斉に体を強張らせた。彼は刑架の前に立つと、じっくりと玉娘の体を見渡した。その瞳には、欲望と復讐の愉悦が渦巻いている。
「玉娘、お前は美しい。」彼の声は低く、まるで刃物が鞘を擦るようだった。「初めてお前を見た時から、心に決めていた。いつか必ず、お前をこうして自分のものにしてやると。」
玉娘は顔を上げ、まっすぐに彼を見つめた。その瞳は強く、少しも弱気を見せない。「あなたは私を辱めることができる。でも、私の魂までは決して支配できない。」
衛冬青は笑った。その笑い声には狂気が混じっていた。「魂だと?ふん、お前はまだ何も分かっていない。人の魂はな、肉体を通じてしか支配できんのだ。お前はこれから何度も何度もそれを思い知るだろう。」
彼は振り返り、壁際の棚から一本の鞭を手に取った。それは黒い皮で編まれ、先端には細かい金属の針が仕込まれている。鞭を手の中で弄びながら、彼はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「お前に話してやろう。俺がどうやってここまで来たのかをな。」
彼は階段に腰を下ろし、鞭を膝の上に置いた。その目は遠くを見つめ、何か過去の記憶に囚われているようだった。
「俺は十四歳で、楚霸という男に引き取られた。表向きは、俺を養子にして武術を教えると言っていた。だがな、実際はそうじゃなかった。俺は奴の道具になるために、あの屋敷に連れて行かれたんだ。」
彼は鞭の先を自分の手のひらに当て、軽く押し込んだ。針が皮膚に刺さり、血が一粒浮かんだ。それを舐め取りながら、彼は続けた。
「最初の夜、師匠の妻――方美香という女が俺の部屋にやって来た。彼女は美しかった。優しい声で、俺の髪を撫でながら言ったんだ。『お前はこれから私のものになる』とな。その時は、その言葉の意味がよく分からなかった。」
彼は嗤った。その笑い声には自嘲が混じっている。
「毎日、俺は彼女の拷問の手伝いをさせられた。地下室に連れて行かれた女たちを、鞭で打ち、火で焼き、針を刺す。俺はそれを覚えなければならなかった。彼女が言うには、それは愛情表現の一つだと。本当の愛とは、相手のすべてを支配することだ。痛みは、その支配の証だと。」
玉娘は唇を噛み締めた。彼女の目に、かすかな恐怖がよぎる。
「五年間、俺は毎日彼女の手足となって、女たちを痛めつけた。そして同時に、彼女も俺を痛めつけた。俺の背中は彼女の鞭の跡で埋め尽くされている。」彼は上着を脱ぎ捨て、自分の背中を見せた。そこには古い傷痕が無数に走り、まるで地図のように絡み合っている。「これらはすべて、彼女の愛の証だ。」
「やがて、俺は彼女を愛するようになった。いや、愛していたのかどうかは分からない。ただ、もう彼女なしでは生きていけなかった。彼女の命令に従い、彼女の笑顔のために、何でもするようになっていた。」
彼は立ち上がり、再び玉娘の前に歩み寄った。「そして、ある夜のことだ。俺と彼女は、屋敷の庭園の隠れ家で関係を持った。だが、それは楚霸に見つかった。」
「その夜、俺は初めて、本物の復讐というものを知った。楚霸は俺を縛り上げ、三日三晩、地下室で拷問し続けた。その間、方美香は黙ってそれを見ていた。彼女の目には涙もあったが、一言も庇わなかった。」
彼の声が震えた。それは怒りか、それとも哀しみか。
「俺は運良く逃げ出した。全身傷だらけで、這うようにしてあの屋敷を出た。それから十年、俺は力を蓄え、天堂幫を作り上げた。弱い者が強い者に蹂躙されるこの世界の中で、俺が強者になるために。」
彼は鞭を握り締め、それを一振りした。空気を裂く鋭い音が牢内に響く。「そして今、俺はついに、あの時と同じように、お前を支配する立場に立った。玉娘、お前は俺の復讐の証人だ。」
玉娘は静かに彼を見つめていた。その瞳に浮かぶのは、恐怖ではなく、むしろある種の理解だった。「あなたは、自分が愛されたいだけなのではないですか?」
衛冬青の手が止まった。彼の顔に一瞬の動揺が走る。しかし、すぐに歪んだ笑みに変わった。「愛だと?ふん、そんなものは必要ない。必要なのは支配だ。そしてお前は、それを思い知るためにここにいる。」
彼は鞭を振り上げた。しかし、その時、地下牢の入り口から足音が聞こえてきた。楚天涯が姿を現したのだ。彼の顔は蒼白で、その目には怒りと哀しみが入り混じっている。
「もうやめてくれ、衛冬青。」彼の声は低く、しかし確かな力を秘めていた。「お前の過去はもう十分に聞いた。だが、お前の復讐はここで終わりにするべきだ。」
衛冬青は振り返り、楚天涯を見た。その目には、憎悪と驚きが同時に浮かんでいる。「楚天涯……お前、どうしてここに?」
「この地下牢は、天堂幫の者なら誰でも知っている。”お前が玉娘をここに連れて来たと聞いて、すぐに分かった。」楚天涯はゆっくりと前に進みながら言った。「そして、お前の話も、師匠と師匠の妻の話も、もう知っている。」
衛冬青の顔色が変わる。「お前は何を知っているというのだ?」
「すべてだ。お前が方美香に愛され、そして裏切られたことも。だが、その方美香こそが、俺の実の母親なのだ。」
その言葉に、衛冬青の手から鞭が滑り落ちた。彼の目が見開かれ、口が半ば開いたままだ。牢内の空気が一瞬で凍りついた。
「お前……何と言った?」
楚天涯は玉娘の傍らに立ち、彼女の枷を外そうとした。しかし、鍵は衛冬青の腰にある。彼は諦めて振り返り、衛冬青をまっすぐに見据えた。
「お前が愛した方美香は、俺の母だ。そして、お前を裏切った楚霸は、俺の父だ。お前の復讐は、もう終わらせるべきだ。母も、もう十分に苦しんできた。」
衛冬青の身体が震え始めた。彼の目が虚ろになり、何かを呟いている。その言葉は途切れ途切れで、誰にも聞き取れない。彼は地に膝をつき、両手で顔を覆った。
「嘘だ……そんなはずはない……お前は……お前は一体何者なんだ?」
楚天涯は答えず、ただ玉娘のそばに立ち、彼女の苦しみを和らげるように、そっとその頬に触れた。玉娘はその手に応え、微かに笑った。二人の間にある、見えない絆が、あの薄暗い地下牢の中で一筋の光のように輝いていた。