二重の枷

站点:NovelAI.one内容:前8章在线试读ID:3f59e81d更新:2026-07-13 21:32
# 二重の枷 ## 第一章 逃亡と誤入 連邦暦三七三年、連邦政府は新たな債務処理法案を可決した。 この法案により、一般市民は自らの意思で債務返済のため、正式な手続きを経て奴隷となることが認められた。表向きは「自主奴隷制度」と呼ばれ、貧困に苦しむ者たちに最後の選択肢を提供するものだとされた。 しかし、その法の隙間を縫うよ
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逃亡と誤入

# 二重の枷

## 第一章 逃亡と誤入

連邦暦三七三年、連邦政府は新たな債務処理法案を可決した。

この法案により、一般市民は自らの意思で債務返済のため、正式な手続きを経て奴隷となることが認められた。表向きは「自主奴隷制度」と呼ばれ、貧困に苦しむ者たちに最後の選択肢を提供するものだとされた。

しかし、その法の隙間を縫うように、闇の組織が静かに牙を研いでいた。

蘇家も仇家も、この業界では名を知られた存在だった。両家とも連邦政府から認可された正規の奴隷売買組織として登録されている。表向きは自ら売りに出た者たちを仲介し、資産家の家庭に使用人や妾として送り込むのが商売だった。

「貧しい娘たちに、裕福な暮らしへの切符を。」そう謳う広告文句が、連邦中の情報端末に流れていた。

だが、その甘い言葉の裏には、違法な私兵組織が存在した。

両家の本当の収入源は、富裕層からの「特別注文」だった。権力者たちは金を払い、特定の女性を手に入れる。若くて美しく、反抗的で、屈服させがいのある獲物を。

蘇家の屋敷は連邦首都の郊外にあった。白亜の壁と緑豊かな庭園に囲まれたその館は、家族の秘密を隠すには十分すぎるほど広かった。

その夜、蘇晴は自室の窓辺で本を読んでいた。

雨が窓ガラスを叩いていた。時計は午後十一時を指している。両親は数日前から家を空けており、使用人のほとんどは早々に休んでいた。

異変は、雨音に紛れたかすかな金属音から始まった。

窓の外で何かが砕ける音がした。続いて、人間の悲鳴。

「何の音…?」

蘇晴が立ち上がろうとした瞬間、館の防犯警報がけたたましく鳴り響いた。

「お嬢様!お逃げください!」

老陳が部屋に飛び込んできた。蘇家に四十年仕えてきた老執事だ。その顔は青ざめ、礼服の襟元が乱れていた。

「何があったの、老陳?」

「仇家の者どもが…私兵を送り込んできました!」

「お父様とお母様は…」

「旦那様と奥様は…もう…」

老陳の声が詰まった。その表情で全てを理解した。

憎しみが胸を突き上げた。しかし、同時に恐怖が全身を駆け巡る。

「地下室の秘密の通路から裏庭へ!奴隷輸送車が出るはずです!」

老陳は蘇晴の手を掴み、部屋を飛び出した。廊下は既に煙が立ち込め、遠くで銃声が響いていた。

階段を駆け下りる。足音が迫る。誰かの怒鳴り声が響く。

「逃げたぞ!追え!」

老人と少女の足では、追手との距離は縮まる一方だった。

「お嬢様、こちらへ!」

老陳は中庭へ通じる扉を開けた。雨が容赦なく二人を打つ。地面はぬかるみ、足を取られる。

裏庭の門の向こうに、一台の大型トラックが停まっていた。荷台には商品を運ぶための檻が積まれている。

「すみません、お嬢様…これしか方法がなくて…」

老陳は蘇晴をトラックの荷台に押し上げた。檻の中は狭く、藁の臭いが充満していた。

「老陳、あなたも逃げて!」

「私は構いません。あなただけでも…」

黒服の男たちが中庭に雪崩れ込んできた。老陳はドアを閉め、追手に向かって立ちはだかった。

「早く!発進しろ!」

トラックのエンジンが始動する。蘇晴は檻の中で震えながら、後ろの窓から老陳の姿を見た。彼は腕を広げ、追手の前に立ちふさがっていた。

鈍い発砲音。倒れる影。

「老陳…!」

トラックは急発進した。雨の中を一直線に走り去る。

蘇晴は全身を丸め、必死に息を殺していた。心臓が激しく鼓動し、手の震えが止まらない。

どれくらい時間が経っただろうか。トラックは舗装された道を外れ、でこぼこした山道へと入っていく。

無理やり閉じ込められた檻の中。体は冷え切り、意識がぼんやりとかすんでいく。

両親の死。家の崩壊。全てが一瞬で奪われた。

涙が止まらなかった。声にならない嗚咽が喉の奥から漏れる。

やがて、運転手と助手席の男が会話を始めたのが聞こえてきた。粗い声。この業界の下働きの者たちだ。

「今回は特別注文だってよ。連邦議会の議員が若い娘を所望だそうだ」

「ほう。俺たちの島に運び込むのか?」

「ああ。しっかり調教しろってさ。反抗的なのがお好みらしい」

「了解だ。反抗的なお嬢様は、俺たちの腕の見せ所だな」

男たちの下卑た笑い声。

蘇晴ははっとした。

彼らは自分を、自家の奴隷島へ運んでいるのだ。普通の奴隷売買とは違い、特別注文の品として。

いや、違う。彼らは私を「注文された商品」と勘違いしている。

おそらく老陳が、混乱の中で私を奴隷輸送車に隠したのだ。だが、運転手たちは私が蘇家の令嬢だとは知らない。ただの集荷品だと思っている。

そう考えると、全身の血が凍るような恐怖が襲ってきた。

蘇家が運営する奴隷島。そこは調教師たちが、屈強な精神を誇る女性たちを徹底的に「訓練」する場所だ。

売られてきた娘たちは、まず島で数ヶ月から一年の調教期間を経て、客の元へ送られる。

「反抗的」な者ほど厳しい調教を受ける。精神を破壊され、自我を失うまで追い詰められる者も少なくない。

私はあの島の真実を知っている。自分の家が営む搾取の現場を。

今、その島の囚人になろうとしている。

トラックが停まった。雨音が弱まり、代わりに潮の香りが漂ってきた。海だ。

荷台の扉が開く。強い照明が目を射る。

「おい、新しい品だ。降りろ」

男の声。太く、威圧的だ。

蘇晴は檻の隅で縮こまったまま、顔を上げなかった。自分が蘇家の令嬢だと名乗ればどうなるのか。だが、ここでそれを言っても信じてもらえないだろう。それどころか、嘘をついて抵抗していると見なされれば、より激しい扱いを受けるだけだ。

「聞こえないのか?」

無理やり腕を掴まれ、引きずり出される。

港には小型の船が停泊していた。夜の闇に浮かぶその船は、まるで巨大な獣の口のように見えた。

乗せられる。波の揺れ。蘇晴の意識が徐々に遠のいていく。

恐怖と疲労で限界だった。冷たい床の上で、彼女は気を失った。

次に目を覚ました時、周囲は石の部屋だった。

天井からは一筋の蛍光灯がぶら下がり、壁は無機質なコンクリート。部屋にはベッドと簡素な机があるだけだ。窓はない。

「目が覚めたか」

女の声がした。振り返ると、厳しい表情の女性が立っていた。筋肉質な体格。鋭い目つき。制服の胸には「教官アリ」と書かれたバッジ。

「ここは…」

「奴隷島だ。お前は特別注文の品だそうだな。これからの生活について説明する」

教官アリは、冷徹な口調で続けた。

「ルールは簡単だ。命令に従え。反抗すれば罰がある。お前の感情や希望は、ここでは何の価値も持たない」

蘇晴は唇を噛みしめた。蘇家の令嬢として育った誇りが奥底で燃え上がる。だが、今ここで反抗すればどうなるかは分かっている。

「番号は七十七。お前の名前は、今日から七十七だ。それ以外の呼び名は許さない」

名前すら奪われる屈辱。血の気が引く。

「これから一週間の適応期間に入る。食事は一日二回。規則を破れば罰則だ。いいな?」

教官は命令口調で、蘇晴に制服を差し出した。くすんだ灰色の粗末な布地。

「着替えろ。五分後に最初の訓練だ」

部屋を出ていく背中。ドアが固く閉ざされる。

残された蘇晴は、手の中の制服を見つめた。

逃げ出さなければ。だが、どこへ? この島から泳いで逃げるのは不可能だ。船も通信手段もない。

親は殺された。家は焼かれた。自分は奴隷として、自分の家が経営する島に囚われている。

二重の枷。身分の枷。記憶の枷。

蘇晴は制服を握りしめ、静かに涙を流した。

だが、その涙はすぐに拭われた。

いつか、必ずここを出る。

その決意だけが、彼女の胸に灯った小さな炎だった。

身分の剥奪

目を開けると、見上げた先には錆びた鉄骨と低い天井があった。頭の奥に鈍い痛みが走り、蘇晴はゆっくりと体を起こした。周囲は見知らぬ空間だった。粗いコンクリートの壁、湿った藁の匂い、そして遠くから聞こえてくる波の音。

「ここは……どこ?」

声が掠れてうまく出なかった。記憶は断片的だ。あの夜、刺客から逃げ惑い、路地裏で鈍い衝撃を受け、その後は何も覚えていない。だが今、自分がいるのは明らかに蘇家の屋敷ではない。

鉄格子の向こうから、擦れた足音が近づいてきた。やせ細った男が一人、だらりと歩いてくる。よれた制服に名札はなく、手にしたクリップボードだけが無機質に光っていた。

「起きたか。よく寝てたな。お前は今日からここ、奴隷島の所属だ。蘇家から送られてきた下級奴隷、番号は0721だ」

男の声に感情はなく、彼はただ決められた台詞を口にしているだけだった。

蘇晴の胸が凍りついた。蘇家が私を奴隷に売った?そんなはずはない。父は、老陳は、私を守ってくれるはずだ。彼女は鉄格子にしがみつき、声を張り上げた。

「違う!私は蘇晴よ!蘇家の令嬢だ!何かの間違いだ!」

男はクリップボードに目を落とし、ペラリと一枚の紙をめくった。

「蘇晴?確かに書類にはそう書いてあるな。だがそれはここに来る前の名前だ。ここではお前は0721番。身分を証明したいなら、証明書を見せろ。ただし、お前の荷物はすべて没収済みだ」

蘇晴は自分の体を探った。ポケットは空っぽだ。スマートフォンも財布も、何もない。唯一残ったのは、首にかかった細い鎖だけだった。それもすぐに剥ぎ取られるだろう。

「証明がなければ、反抗と見なす。ルールだ。隔離室で反省しろ」

男が合図を送ると、後ろから屈強な男たちが現れ、蘇晴の腕を掴んだ。必死に抗うが、力は圧倒的だった。数分後、彼女は真っ暗な小部屋に放り込まれていた。重い金属のドアが閉まり、鍵がかかる音が響いた。

部屋の中は暗闇だけだった。壁は冷たく、床は濡れていた。蘇晴は膝を抱え、時間の経つのを数えた。恐怖が喉元まで込み上げてくるが、必死に飲み込んだ。泣いても、叫んでも、誰も助けてはくれない。それを理解するには十分なほど、彼女は育ってきた。

「生き抜くんだ」

声は震えていたが、その決意は揺るがなかった。いつか必ず逃げ出す。この島から、この境遇から。そのために、まずはこの島のルールを学ばなければならない。

どれだけ経ったか、ドアが開き、まぶしい光が差し込んだ。目を細めて外を見ると、先ほどの薄汚れた男が立っていた。

「0721番。出ろ。今日からお前の番号はこれだ。忘れるな。繰り返す、0721番だ」

蘇晴は無言で立ち上がり、番号の書かれた札を受け取った。それは小さく、軽かったが、その感覚は鎖のように重かった。

広場に出ると、同じような服を着た奴隷たちがずらりと並んでいた。顔は様々だが、どの目も死んでいた。その中で、ひと際異彩を放つ女が鞭を持って立っている。ガッチリとした体格、短く刈り込んだ銀髪、鷹のような鋭い目つき。教官のアリだった。

「新入りの0721番か。よく聞け、この島ではお前たちはただの数字だ。名前も過去も意味はない。意味があるのは規則に従うことだけだ。逆らえば、鞭が飛ぶ。覚悟しろ」

アリの声は低く、冷たかった。蘇晴は一度うなずき、列に並んだ。周りの奴隻たちは皆、うつむいて黙っている。誰一人助けを求めようとしない。この場所で生きるためのルールが、すでに彼らの体に染み込んでいるのだ。

だが蘇晴は違った。彼女の視線の奥にはまだ光があった。たとえこの場所で番号を刻まされようと、名前を奪われようと、心までは支配されない。

「0721番蘇晴、思い知らせてやる。この枷がいつか、お前の足かせではなくなる日が来ると」

全裸契約

蘇晴は無理矢理、冷たい床の上に立たされていた。周囲には数人の屈強な男たちが立ち、彼女の腕を固く掴んでいる。彼女の華やかな衣装は既に引き裂かれ、床に散らばっている。目の前には、冷酷な笑みを浮かべた教官アリが立っていた。

「さあ、次はお前の番だ。ここのルールを覚えろ、自分を売り込むんだ。」

アリの声は無感情で、まるで機械のように響く。蘇晴は唇を噛みしめ、震える手で目の前のカメラを見つめた。レンズは彼女の裸の体を写し、一切の情けもかけない。彼女はまだ抵抗しようとしていたが、腕を掴む男たちの力は強く、逃れることはできない。

「服を全部脱がせろ。」アリの命令に、男たちは迷いなく蘇晴の下着まで剥ぎ取った。

彼女の肌が空気に触れた瞬間、全身が粟立った。羞恥と恐怖が混ざり合い、彼女の思考をかき乱す。カメラの赤いランプが点灯し、録画が始まっていることを示している。

「台詞を言え。」アリが一枚の紙を蘇晴の眼前に差し出した。

そこには、自らを奴隷として売り渡す旨の文言が記されている。蘇晴は声を絞り出そうとしたが、喉が詰まって言葉にならない。アリは苛立ちながら彼女の髪を掴み、顔をカメラに向けさせた。

「言え。さもなければ、お前の家族の悪事をすべて公表するぞ。」

その言葉に蘇晴の心は打ち砕かれた。彼女は震える唇を開き、おどおどと台詞を読み上げる。声は小さく、かすれていたが、カメラはその全てを記録している。彼女の目からは涙が溢れ、頬を伝って床に落ちた。

「私、蘇晴は、自らの意志で…奴隷となります。」

その言葉を口にした瞬間、彼女の内側で何かが壊れる音がした。名家の令嬢としての誇りが、塵のように崩れ去る。

録画が終わると、アリは満足げに頷き、次の段階へと進む。男たちが蘇晴を机の前に連れて行き、そこに契約書が置かれていた。彼女は裸のまま、椅子に座らされる。アリがペンを差し出した。

「サインしろ。」

蘇晴の手は震え、ペンを握ることさえ難しい。文字は歪んでいたが、彼女は必死に署名を書き終えた。アリはそれでも足りず、指印を押すよう指示する。インクのついた指を契約書に押し付けると、赤い痕が残る。

「まだ終わりじゃない。」アリは冷たく言い放ち、別の道具を取り出した。それは膣に印を押すための器具だった。蘇晴は恐怖で体を縮めたが、抗う力は残っていない。

男たちが彼女の脚を開き、アリが無造作に器具を扱う。冷たい金属が彼女の内側に触れた瞬間、蘇晴は声にならない悲鳴を上げた。激痛が走り、意識が遠のきかける。それでもアリは手を緩めず、契約書の所定の位置に印を押した。

「これで完了だ。お前は正式に、ここでの所有物となった。」

蘇晴は床に崩れ落ち、その場で丸くなった。裸の体は震え、涙と汗で濡れている。彼女の心は完全に砕け散り、自分が二重の枷に繋がれたことを痛感した。ひとつはこの島の奴隷制度、もうひとつは自らが背負う家の秘密。彼女はもはや、どちらからも逃れられない存在になっていた。

アリは踵を返して去り、部屋には蘇晴だけが残された。彼女は静かに泣き続け、冷たい床の感触だけが、自分の存在を確かに伝えていた。

身体検査

蘇晴は両腕を屈強な看守に掴まれ、薄暗い廊下を引きずられるようにして連れて行かれた。足元の冷たいタイルが、裸足の裏に直接張り付く。さっきまでいた収容棟の喧騒はもう遠く、代わりに無機質な空気が彼女を包み込む。何度も息を飲み込み、恐怖で震える指先を必死に隠そうとした。

突き当たりの鉄製の扉が、電子音と共に横に滑る。中は、白一色に塗られた検査室だった。中央に一台の診察台が据えられ、その上には無数の器具が並ぶトレイが置かれている。蛍光灯の明かりが、無慈悲にすべてを照らし出す。

「服を脱げ。」

無表情な女医が、簡素な命令を下した。彼女の背後には、二人の看護師が直立し、何の感情も籠っていない目で蘇晴を見下ろしている。

蘇晴は唇を噛みしめた。声が出そうになるが、それを必死に飲み込む。いや、叫んでも無駄だ。ここでは誰も助けてはくれない。彼女はゆっくりと、震える手でワンピースの肩紐をずらした。布が滑り落ち、薄暗い照明の下に、彼女の白い肌が晒される。次に下着に手をかけると、看護師が無造作にそれを引き裂いた。布切れが床に落ち、冷たい空気が全身を撫でる。

「台に上がれ。」

女医が無機質な声で促す。蘇晴は一歩一歩、震える足で診察台に上がった。その瞬間、女医の手が彼女の胸に触れる。冷たい指が、形を確かめるように、そして無造作に押し広げる。

「ふん、このサイズでは需要がないな。Cカップに拡大する。」

そう言うと、看護師の一人が注射器を手に取る。蘇晴が逃げようとした瞬間、もう一人の看護師が彼女の腕を固定した。針が皮膚を貫く。麻酔がじわりと広がり、胸の感触が次第に遠のく。何かが変わっていく感覚。異物が自分の肉体に侵入する不快感。しかし、麻酔が効いているために、痛みはほとんど感じなかった。ただ、自分の体がもはや自分のものではないという虚無感だけが、彼女の中に広がっていった。

次に、女医は彼女の体全体にクリームを塗り始めた。それは脱毛剤だった。数分後、看護師が特殊なスキージーでそれを擦り取る。毛が根こそぎ引き抜かれる痛みに、蘇晴は声を押し殺した。自分の滑らかになった肌を触る。子供のように無垢な感触。だが、それは彼女の意志とは無関係に施されたものだ。

「次はチップの埋め込みだ。」

女医はそう言って、首の後ろを指した。蘇晴は嫌な予感がした。首を振ろうとしたが、看護師が彼女の頭を固定する。冷たい金属の器具が皮膚に触れた瞬間、鈍い痛みが走る。そして、微かな電子音。体内に、見えない鎖が埋め込まれた。

「これでお前は、正式に奴隷として登録された。このチップがあれば、どこにいても追跡できる。逃げようとするな。」

女医の声が、遠くから聞こえる。蘇晴は涙をこらえた。しかし、まだ終わりではなかった。

「さあ、次は最終検査だ。足を開け。」

その言葉に、蘇晴の全身が強張った。だが、看護師たちは無理やり彼女の太腿を左右に開かせる。冷たい器具が、彼女の最もプライベートな部分に差し込まれた。内壁の深さを測るためのプローブ。圧迫感と共に、彼女の体が無意識に反応する。女医は無表情で数値を読み上げ、看護師がそれを記録する。

「膣の深さ、十八センチ。収縮率、良好。弾力性、標準以上。」

その声が、まるで市場で野菜の品質を評価するように聞こえた。蘇晴は顔をそむけ、天井の白いパネルを見つめた。そこには、自分が映っていない。ただの商品としてのデータだけが、紙の上に並べられていく。

「さて、次は耐久性テストだ。」

女医はそう言うと、ゴム手袋を新しく取り替えた。そして、潤滑剤をたっぷりと塗った指を、再び蘇晴の中に挿入する。今度は、ただ測るためではない。一本、二本と指が増え、内壁を押し広げる。意図的に敏感な箇所を探るように動かされる。蘇晴の体が勝手に震え始める。快感と屈辱が混ざり合い、頭の中が真っ白になる。

「ふふ、感じやすいな。良い特性だ。」

女医の冷ややかな声。指が激しく動くたびに、蘇晴の腰が浮き上がる。自分でも制御できない。抵抗しようと力を込めれば込めるほど、体は敏感に反応する。そして、ある瞬間、一際強い波が彼女を襲った。視界が閃き、全身が硬直する。絶頂だった。

「到着した。タイム、一分二十秒。記録しておけ。」

女医は平然と手を引き抜き、手袋をトレイに投げ捨てた。蘇晴は台の上で息を切らせ、涙が頬を伝う。全身が震え、自分がもう自分でないような気がした。すべてが奪われた。肉体的な感覚さえも、商品価値を測るためのデータに変換されてしまった。

「検査は以上だ。次の工程に回せ。」

女医がそう告げると、看護師たちが蘇晴を台から引きずり下ろす。彼女はよろめきながら立ち上がり、渡された簡素な手術着を羽織った。その布の感触さえ、今はどこか遠く感じられる。

廊下に出ると、また冷たい空気が彼女を包む。だが、首の後ろに埋め込まれたチップが、彼女の存在を常に監視していることを知らせていた。二重の枷、いや、もう何重もの鎖が、彼女を縛りつけている。その事実が、重く、そして深く、彼女の心に沈んでいった。

フェラチオ訓練の開始

# 二重の枷

## 第五章 フェラチオ訓練の開始

薄暗いコンクリートの部屋に、消毒液と汗の混じった匂いが立ち込めていた。蘇晴は裸のまま、冷たい金属製の椅子に座らされていた。腕は背後で拘束され、足首も椅子の脚に固く縛られている。目の前には、無機質な表情をした女教官が立っていた。

「私の名前はアリ。これから君の訓練を担当する」

女教官は四十代前半だろうか。短く刈り込んだ金髪、鋭い目つき、引き締まった体躯。軍人のような雰囲気を纏っていた。彼女の手には、長さ二十センチほどの黒いディルドが握られている。

「口を開けろ」

アリの声に感情はなかった。蘇晴は唇を固く結んだまま、睨み返す。心臓は激しく鼓動していたが、それを悟られるわけにはいかなかった。

「聞こえなかったのか?口を開けろと言っている」

「……嫌です」

蘇晴は絞り出すように言った。声は震えていたが、意思ははっきりとさせた。この屈辱を受け入れてはならない。一度屈服すれば、二度と立ち上がれなくなる。

アリは何も言わず、腰に装着したリモコンを操作した。瞬間、蘇晴の首に嵌められた金属製のチョーカーが青白い光を放つ。

電気が全身を駆け抜けた。蘇晴の体が弓なりに反り返る。歯を食いしばったが、悲鳴が喉の奥から漏れ出た。痛みは止まない。五秒、十秒と続く。

「や、めて……!」

ようやく電撃が止んだ時、蘇晴は椅子にぐったりと凭れかかっていた。息が荒い。体のあちこちが痙攣している。

「次は十五秒にする」アリは淡々と言った。「口を開けろ」

蘇晴は首を横に振った。涙が視界を滲ませるが、それでも抗いたかった。自分にはまだ誇りがある。名家の令嬢としての矜持が、この程度の痛みで折れるはずがない。

「ふん」

アリは嘲るように鼻を鳴らした。再びリモコンを操作する。今度はより強い電流が流れた。蘇晴の意識が白く飛ぶ。体が激しく震え、椅子に固定された手首と足首が金属に擦れて痛い。

「あああっ!」

悲鳴が部屋に響く。十五秒が永遠のように長かった。電撃が止まった後も、蘇晴の体は小刻みに震え続けていた。口の中に血の味が広がる。唇を噛み切ったらしい。

「どうやら君は理解していないようだな」アリが蘇晴の顎を掴み、無理やり上を向かせた。「ここでは、お前たちは人間ではない。ただの訓練対象だ。お前の意思など、何の価値もない」

「……それでも」

蘇晴は掠れた声で言い返す。

「それでも、私は……屈しない」

「愚かだな」

アリは手を離し、後ろのテーブルに歩いていった。引き出しを開け、何やら器具を取り出す。金属が擦れる音がした。

「ならば、もっと直接的に教えてやろう」

彼女が手に持っていたのは、先端が二股に分かれた金属製の器具だった。バイブレーターのような形状だが、より禍々しい。

「これはな、膣と肛門の両方を同時に刺激する器具だ。電極も付いていて、内部から電流を流すことができる」

蘇晴の顔から血の気が引いた。

「お前が従わなければ、これを挿入する。そして、一時間かけてゆっくりと電流を流し続ける。内臓が焼ける感覚を味わいたくなければ、素直に従え」

「……そんなの」

「試すか?」

アリの目は本気だった。蘇晴は唇を噛みしめた。恐怖で全身が震えている。それでも、簡単に折れるわけにはいかない。自分は蘇家の娘だ。どんな屈辱にも耐え抜く強さを持っているはずだ。

「……やれるものなら、やってみなさい」

蘇晴は精一杯の虚勢を張った。

アリは無言で近づいてきた。そして、器具を蘇晴の股間に押し当てる。冷たい金属が肌に触れた。蘇晴は体を強張らせ、必死に抵抗しようとしたが、拘束されていて動けない。

「最後のチャンスだ。口を開けろ」

「いや……!」

アリは器具を押し込もうとした。その時だった。

「待ってください」

部屋のドアが開き、老陳が姿を現した。彼の顔には深い疲労の色が浮かんでいる。

「おい、誰だお前は」

アリが警戒した様子で器具を置き、老陳を睨みつけた。

「私は蘇家の執事です。この娘には、特別な配慮が必要です。主からの指示で、直接訓練の進行を確認するよう言われています」

「特別な配慮?ここでは全ての訓練対象は平等だ」

「承知しています。ですが、彼女は他の者とは少し事情が異なります。どうか、もう少し穏便な方法で訓練を進めていただけませんか」

老陳は恭しく頭を下げた。アリは不機嫌そうに眉をひそめた。

「穏便な方法だと?ここは奴隷島だ。甘やかす場所じゃない」

「重々承知しております。ただ——」

「いいだろう」アリは突然、口調を変えた。「ただし、妥協はしない。訓練の質を落とすつもりはない。お前が立ち会うなら、それでいい。俺のやり方を邪魔するなよ」

「ありがとうございます」

老陳は一礼し、部屋の隅に立った。彼の視線が一瞬、蘇晴に向けられる。その目には、無念と同情が混ざっていた。

「さあ、続けるぞ」

アリが再びディルドを手に取る。

「今度こそ、口を開けろ。さもなければ、さっきの器具を本当に使うことになる」

蘇晴は老陳を見た。彼は微かに首を振った。抵抗するな、と言っているのだ。

唇を噛みしめる。涙がこぼれ落ちた。自分の意思が、誇りが、少しずつ砕かれていく感覚。それでも、このまま死ぬわけにはいかない。生き延びなければ。いつか、必ず——。

蘇晴はゆっくりと口を開けた。

「そうだ。それでいい」

アリは冷たく微笑んだ。黒いディルドが、蘇晴の開かれた口に近づいていく。

「舌を出せ。まずは基本からだ」

蘇晴は震える舌を突き出した。ゴムの味がする。消毒液の匂いが鼻を突いた。

「そのまま、舐めろ。先端からゆっくりと」

言われるがまま、舌を動かす。ぬめる感触が不快だった。吐き気がこみ上げるが、必死にこらえる。アリの目が、一瞬の隙も許さないとばかりに、蘇晴の一挙一動を追っている。

「もっと深く。喉の奥まで入れる練習だ」

ディルドが口の奥へと押し込まれる。蘇晴は嗚咽を漏らした。反射的に吐き出そうとするが、アリがその動きを抑える。

「吐くな。飲み込むんだ」

いやだ。嫌だ。心の中で叫びながら、蘇晴は涙を流し続けた。老陳が俯いている。その姿を見て、さらに胸が痛んだ。自分は守られるべき存在だったのに。今は、この老執事にすら情けをかけられている。

訓練は一時間続いた。蘇晴の口は腫れ上がり、顎が外れるかと思うほど痛んだ。それでも、アリは容赦しなかった。

「今日はここまでだ。明日からは、実物を使って練習する」

アリはディルドを消毒液に浸しながら言った。

「実物?」

「生きた男のものだ。お前は、本物の男を満足させる技術を身につけなければならない」

蘇晴の体が凍りついた。

「まさか……本物の……?」

「当然だ。お前は娼婦になるための訓練を受けているんだ。ディルドで満足できると思ったか?」

アリは嘲笑しながら部屋を出ていった。老陳が蘇晴の拘束を解く。椅子から崩れ落ちた蘇晴の体を、老陳はそっと支えた。

「お嬢様……よく耐えられました」

「……もう、嫌だ」

蘇晴は老陳の腕の中で泣き崩れた。

「もう、嫌。こんなの……私、耐えられない」

「お嬢様」

老陳の声が震えていた。

「申し訳ございません。私には、あなたをお守りする力が足りませんでした」

「違うの……私が、弱いから。もっと強くなければ……こんなところで、負けてはいられないのに」

蘇晴は必死に涙を拭った。立ち上がろうとするが、足が震えてうまく立てない。老陳が肩を貸す。

「お嬢様、どうかご無理をなさらず。今は休息が必要です」

「……わかった。部屋に戻る」

蘇晴は老陳に支えられながら、訓練室を後にした。廊下は薄暗く、冷たい空気が流れている。壁にはカメラが設置されており、赤いランプが不気味に光っていた。

「お嬢様」

老陳が小声で言った。

「必ず、この島からお連れします。その日まで、どうか生き抜いてください」

「……老陳」

「私は、ご主人様と奥様に誓いました。あなたを必ず守り抜くと。たとえこの身がどうなろうと」

蘇晴は老陳の顔を見上げた。その目には、強い決意の光が宿っていた。

「ありがとう」

蘇晴は囁くように言った。

「老陳……あなたがいてくれて、よかった」

二人は黙って廊下を歩き続けた。遠くから、別の訓練室で響く悲鳴が聞こえてくる。この島には、蘇晴と同じ境遇の者たちが大勢いるのだ。彼女たちもまた、同じような苦しみを味わっている。

蘇晴は拳を握りしめた。いつか、この島を出た時——いや、出るだけでは足りない。このシステムそのものを、壊さなければ。そのために、今は耐え抜くしかない。

自分の内に巣食う屈辱と怒りを、復讐の炎に変えて。いつか必ず、全てを——。

性交訓練

部屋の空気は冷たく、蝋燭の灯りが揺れて壁に長い影を落としていた。蘇晴はベッドの端に座り、両手を膝の上に置いて、視線を一点に固定していた。無地の白い寝衣が彼女の痩せた体を包み、首元のリボンがきつく結ばれている。彼女はこれから何が起こるのかを理解していた。心臓は激しく打っているのに、それを抑える術はなかった。

扉が開く音がした。顔を上げると、老陳が立っていた。彼はいつもの執事服ではなく、落ち着いた色合いの着流しをまとっていた。彼の表情は変わらず、感情を読み取ることは難しい。しかし、その目だけは少し曇っていた。

「老陳…」蘇晴の声はかすれていた。

「お嬢様、どうかお座りください」老陳は部屋の中へ進み、扉を背後で静かに閉めた。彼は蘇晴の前に立ち、深く息を吐いた。「お伝えしなければならないことがあります」

蘇晴は彼を見つめた。老陳は口を開く。

「旦那様と奥様は…お亡くなりになりました。襲撃に遭われたのです」

言葉が蘇晴の耳に届いた瞬間、世界が止まったような感覚に陥った。息ができなかった。全身から力が抜け、ベッドの端に手をついた。

「そんな…」

「本当です、お嬢様。旦那様は最期に、あなたに家業を継いでほしいと仰っていました」老陳の声は低く、抑えられていた。「現在、表向きの事業である群芳閣などは、私が代行しております。あなたがここを出られれば、すぐにでもお引き継ぎいただけます。しかし、裏の事業は混乱状態にあります。仇家の手が回っているのです」

蘇晴は頭を振った。涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。

「では、私はなぜこんな場所に…」

「私には奴隷を直接解放する権限がありません。この島のシステムは絶対です。しかし、オークションであなたを買い戻すことができれば、そこから救い出せるのです。それまで、どうか耐えてください」

蘇晴は唇を噛んだ。彼女は全てを理解していた。彼女の立場、家の事情、そしてこの状況から逃れられないという事実。

「それで…今夜は?」

老陳は一瞬、目を伏せた。その沉默が答えだった。

「偽装のためです。私が普通の客として振る舞い、あなたの初夜を得る。それが最も安全な方法です」

蘇晴の指が寝衣の端を強く握った。彼女はゆっくりと立ち上がり、老陳の前に立った。

「わかりました」

老陳はためらいながらも、蘇晴の肩に手を置いた。その手は微かに震えていた。

「お嬢様、どうかお許しください。私も心苦しいのです」

「構いません。老陳、あなたを信じます。父と母のためにも、私は生き抜きます」

老陳はうなずき、蘇晴のリボンを解いた。寝衣がはらりと落ち、彼女の肌が露わになる。部屋の冷たい空気が肌に触れ、彼女は震えた。老陳は彼女をベッドに優しく横たえ、自らもその隣に身を置いた。

「痛みは伴います。しかし、私はできる限り優しくします」

蘇晴は目を閉じた。老陳の手が彼女の体を撫で、やがて彼の身体が重なる。彼の指が彼女の膣口に触れた瞬間、蘇晴は強く息を飲んだ。老陳はゆっくりと挿入した。痛みが彼女の下腹を貫いた。蘇晴は声を殺して耐えた。彼の動きは確かに優しく、しかしそれでも苦しみは避けられなかった。何かが破れる感覚とともに、温かい液体が太腿を伝う。老陳は動きを止め、蘇晴の顔を覗き込んだ。

「もう終わりました。よく耐えました」

蘇晴はゆっくりと目を開けた。老陳は彼女の頭を優しく撫でた。

「明日から、訓練が始まります。男性教官による性交訓練です。私はあなたを守るためにここにいますが、訓練自体は避けられません。どうか…自分を殺さないでください」

蘇晴はうなずいた。しかし、その目には冷たい光が宿っていた。

翌日、訓練が始まった。教官アリは厳しい女だったが、今日はさらに別の男が立っていた。がっしりとした体格で、無表情な顔。彼は蘇晴に命令を下した。

「服を脱げ」

蘇晴は従った。男は彼女の体を検めるように見つめた後、無造作にベッドに押し倒した。訓練は無機質だった。男は彼女の体を弄び、挿入を試みる。蘇晴は痛みに耐えながらも、指示通りに体を動かそうとした。しかし、彼女の心は完全に閉じていた。何度試みても、その体は硬直し、男は苛立った。

「お前は使えない」男は冷たく言い放った。「やり直しだ」

蘇晴は再度挑戦したが、同じだった。訓練は何度も行われ、蘇晴はそのたびに失敗した。自分の体が言うことを聞かない。彼女の精神が拒絶しているのがわかった。

ついにアリが現れた。彼女は鞭を手にしていた。

「跪け」

蘇晴は床に膝をついた。アリは彼女の背後に回り、鞭を振り上げた。一撃が背中を打った。鋭い痛みが走り、蘇晴は声を上げずに耐えた。二撃目、三撃目。背中に赤い筋が浮かび上がる。

「お前は奴隷だ。自分の意志は持つな。ただ命令に従え」

蘇晴の唇が血で濡れていた。彼女は歯を食いしばった。心の中で、彼女は誓った。いつか必ず、この屈辱を返してやると。

終わった後、アリは去っていった。蘇晴は床に倒れ込み、老陳が駆け寄って彼女を抱き起こした。彼の手が彼女の傷に触れる。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

蘇晴は答えなかった。彼女の目は虚ろで、しかしその奥には激しい憎悪の火が燃えていた。

それからの日々、蘇晴は訓練を続けた。痛みは続いたが、彼女は少しずつ体を動かすことを学んだ。男の指示に従い、体を開き、動きを合わせる。しかし、そのたびに心はさらに固く閉じていった。彼女は笑顔を見せず、声を出さず、ただ機械的に命令をこなした。

老陳は時折、彼女の部屋を訪れた。彼は食べ物や薬を持ってきて、蘇晴を世話した。しかし、彼の目には見えていた。蘇晴の中の憎しみが、日に日に大きくなっていることを。

「お嬢様、あまり自分を追い詰めないでください」

蘇晴は冷たく答えた。

「私は耐える。必ず生きてこの島を出る。そして、全てを終わらせる」

老陳は何も言えなかった。彼はただうなずき、部屋を去った。

夜、蘇晴は一人で床に跪き、傷ついた背中を壁に預けながら、月明かりを見つめた。その目は冷たく、暗く、かすかに光っていた。彼女は決して屈しない。どんな枷をかけられようとも、彼女の意志だけは決して折れない。

訓練不合格

蘇晴の身体はもう限界だった。筋肉は悲鳴を上げ、骨の一つ一つが軋むような痛みを伴っていた。しかし、それ以上に彼女を苛んだのは、教官アリの冷徹な瞳だった。

「不合格だ。」

その一言が、訓練場に冷たく響き渡った。蘇晴は膝をつき、荒い息を整えようとしたが、肺が焼けるように熱く、うまく空気を吸えなかった。周りの奴隸たちは、何事もなかったかのように訓練を続けている。彼女だけが取り残され、床に伏せた姿勢のまま動けなかった。

「立ち上がれ、蘇晴。お前の成績は基準に達していない。これで三度目だ。」

アリ教官は鞭を持った手を腰に当て、見下ろすように蘇晴を見つめた。彼女の声には一切の同情もなく、ただ規則に従うだけの機械的な響きがあった。

「もう一度…チャンスをください…」

蘇晴は擦り切れた喉から絞り出すように言った。しかしアリは首を振った。

「規則は規則だ。お前はこの島の訓練プログラムに適応できなかった。通常ならば、ここで終わりだ。だが、お前にはまだ一つの道が残されている。」

蘇晴は顔を上げた。アリの瞳には、どこか底知れない冷たさが宿っていた。

「『群芳閣』だ。そこに送られる。期間は一ヶ月。耐え抜けば、最後の卒業試験を受ける権利を与える。ただし、そこで何が待っているか、お前も知っているな?」

蘇晴の全身が一瞬で硬直した。群芳閣――奴隷島の中でも最も忌避される場所。肉体的な快楽を売り物にする施設であり、そこで奴隸たちは「肉便器」として扱われる。彼女が今まで耳にした噂だけでも、そこに送られた者の大半が精神を崩壊させ、戻って来てもまともではいられないというものばかりだった。

「…耐えれば、戻って来れるんですか?」

蘇晴は震える声で尋ねた。アリは無表情のままうなずいた。

「規則だ。耐えた者には、最後のチャンスを与える。だが、お前がそこを生き抜けるとは思わない。どちらにせよ、お前の運命は変わらない。」

その言葉には、嘲笑すら込められていなかった。ただ事実を述べているだけ。それがアリの全てだった。

その夜、蘇晴は狭い独房に戻された。壁は冷たく、空気は湿っていた。彼女は敷かれた藁の上に横たわり、天井のひび割れを見つめながら、必死に感情を押し殺そうとした。

「私は…負けない。」

自分に言い聞かせるように呟いた。しかし、その声は震えていた。

翌朝、二人の屈強な男たちが蘇晴の独房に現れた。彼らは無言で彼女の腕を掴み、引きずるようにして連れ出した。抵抗する力もなく、蘇晴はただ従うしかなかった。

島の中央には、白い漆喰の壁を持つ建物が立っていた。群芳閣と呼ばれるその建物は、外見だけは優雅で、まるで別世界のもののように見えた。しかし中に入ると、空気が一変した。甘ったるい香りとともに、どこか腐敗したような匂いが混じっていた。低い灯りの中、笑い声やかすかな悲鳴が交錯していた。

蘇晴は奥の小さな部屋に連れて行かれた。そこで待っていたのは、年配の女将だった。着物のようなものを着て、口元には常に笑みを浮かべているが、その目は獲物を値踏みするようだった。

「新しい子ね。噂は聞いてるわ。アリ教官の評価は低いけど、まあ、一ヶ月もいれば何か変わるかもしれない。」

女将は軽く手を叩いた。すると、二人の女性が現れ、蘇晴の服を剥ぎ始めた。

「待って…!」

蘇晴は反射的に腕を振り払おうとしたが、彼女たちの手は容赦なかった。抵抗すればするほど、拘束は強くなった。やがて蘇晴は裸にされ、壁際の台に座らされた。

「これから、お前はここで客を取る。言うことを聞けば、痛い思いはさせない。だが、逆らえば…分かってるわね?」

女将の言葉には、砂糖を塗った刃のような危険が潜んでいた。蘇晴は唇を噛みしめ、うつむいた。目頭が熱くなったが、涙は見せまいと必死にこらえた。

その夜、最初の客が来た。中年の男だった。彼は蘇晴を見るなり、にたりと笑った。蘇晴は身体を強張らせたが、逃げ場はない。彼女は自分に言い聞かせた。これは罰だ。耐えれば、終わりがある。そして、その先に、必ず復讐の機会が待っている。

男の手が彼女の肩に触れた瞬間、蘇晴の頭の中には、父の顔と、仇家の首領の笑顔が浮かんだ。彼女はそのイメージを、自分を支える唯一の力に変えた。

「私は、ここで終わらない。」

心の中で何度も繰り返した。その言葉が、彼女の身体を蝕む絶望を、かろうじて押し留めていた。

会所の壁娼

壁の中は冷たい。蘇晴は全身の自由を奪われ、首から上だけがかろうじて動かせる状態だった。両腕は頭上で鉄環に括りつけられ、脚は左右に大きく開かれて固定されている。彼女の身体は壁に埋め込まれた凹みに押し込められ、厚い木板が前面を覆い、下半身だけが丸く開けられた穴から露出していた。

「新人だな。今日からここがお前の居場所だ」

薄汚れた女将が蘇晴の顔を覗き込み、無造作に髪を掴んで後ろに引いた。女将の指は脂ぎっており、蘇晴の頬にべったりとした感触を残した。

「口は使うなよ。ここの女は声を出しちゃいけない決まりだ。声を出したら罰金、罰金が払えなきゃ尻に焼き印だ。わかったか?」

蘇晴は答えなかった。答える気力もなかった。彼女はただ、目の前の薄暗い廊下を見つめていた。油灯の明かりが揺れ、壁に映る自分の影が歪んでいた。

最初の客が来たのは、それから間もなくのことだった。肥えた男だった。酒の匂いが全身から漂い、よろめきながら近づいてくる。彼は壁の穴の前に立ち、蘇晴の下半身を一瞥すると、鼻で笑った。

「おや、新しい肉か。なかなかいい色をしてるじゃねえか」

男は帯を緩め、褲を下ろした。蘇晴は目を閉じた。来るべきものが来るのだと、自分に言い聞かせた。だが、その瞬間に感じた痛みは、想像をはるかに超えていた。男は無造作に彼女の膣に自身を押し込み、同時に太い指を肛門にねじ込んだ。

「うっ……」

蘇晴の喉が詰まった。声を出してはいけない。声を出せば罰金、焼き印。彼女は唇を噛みしめ、血の味が口の中に広がるのを感じた。

男は荒々しく腰を動かした。二つの孔を同時に使われる感覚は、言葉にできない苦痛だった。内臓が引き裂かれるようで、骨盤が軋む音が聞こえる気がした。男の汗が滴り落ち、蘇晴の腰に垂れた。

「いいぞ、締まりが良い。この壁娼、上物だな」

男は満足げに唸りながら、数分で果てた。そして褲を引き上げると、金貨を一枚、壁の台に置いて去っていった。

蘇晴の身体は震えていた。膣口からは精液が混じった体液が垂れ、太腿を伝って床に滴る。だが、休む間はなかった。次の客が既に待っていたのだ。

二番目の客は痩せた男だった。彼は無言で近づき、いきなり肛門に自身を突き入れた。先ほどの客とは違い、この男は粗暴だった。ただひたすらに突き、引き抜き、また突く。蘇晴の肛門は最初の客の指で既に拡げられていたが、それでも痛みは激しかった。腸壁が擦り切れるような感覚に、彼女は無意識に爪を手のひらに食い込ませた。

三番目の客は二人同時だった。一人が膣に、もう一人が肛門に入った。二人は互いに競い合うように腰を動かし、蘇晴の身体を挟み撃ちにした。内臓が押し潰されるような圧迫感。彼女の意識は何度も途切れそうになったが、そのたびに両側から激しく揺さぶられて引き戻された。

それが一日の始まりだった。

昼を過ぎ、夕方にかけて、客の数は増え続けた。蘇晴はもはや誰が何人目かも数えられなかった。ただひたすらに、開かれ、突かれ、注がれ、また開かれる。膣口は腫れ上がり、肛門はひりひりと焼けるように痛んだ。腿の内側は精液と血の混じった液体でべったりと濡れ、冷たく粘ついていた。

夜も更けた頃、女将が現れた。彼女は壁の蓋を開け、蘇晴の身体を引きずり出した。蘇晴の脚は既に感覚がなく、立つことすらできなかった。女将は彼女を隣の小部屋に連れて行き、桶の冷水を浴びせた。

「これで終わりだ。明日も早いぞ。さっさと休め」

そして、干しパンのかけらと水の入った碗を床に置くと、女将は出て行った。部屋の扉には錠がかけられた。

蘇晴は床に倒れ込んだ。身体中が痛みで悲鳴を上げていた。膣も肛門も、もはや自分のものではないようだった。内臓の位置さえも変わってしまったかのような錯覚に陥る。彼女は冷たい板の上で丸くなり、静かに泣いた。

翌朝、彼女は再び壁の中に封じ込められた。そして同じ日々が始まった。

三日目、四日目と経つうちに、蘇晴の身体は次第に麻痺していった。痛みは常にあり、それが当たり前になった。客の数は日に日に増え、時には一度に三人もの男が彼女の身体を同時に使うこともあった。膣と肛門、そして口までが同時に使われた時、彼女は初めて声を上げかけた。だが、寸前で歯を食いしばり、声を飲み込んだ。

ある日、壁に押し込まれている最中、蘇晴はふと、昔のことを思い出した。蘇家の令嬢だった自分。絹の着物をまとい、琴を奏で、詩を吟じていた日々。すべてが遠い夢のように感じられた。今の自分は、壁に開いた穴に過ぎない。名前もなく、顔もなく、ただ下半身だけが存在する道具として、男たちの欲望を受け止め続ける。

「おい、嬢ちゃん。元気出せよ」

ふと、耳元で声がした。隣の壁穴に封じ込められた年嵩の女だった。彼女は蘇晴の方を向き、かすれた声で囁いた。

「ここじゃあな、身体を殺すしか生き残る道はねえんだ。心を殺せ。そうすりゃ、痛くも痒くもなくなる」

蘇晴は返事をしなかった。だが、その言葉は彼女の心に深く刻まれた。心を殺せ。自分はもう人間じゃない。ただの壁、ただの穴だ。そう思えば楽になれるのだろうか。

その夜、客の一人が彼女の膣に自身を収めながら、ふと呟いた。

「お前、目が死んでるな。いいぞ、その目がいい。まるで人形みたいだ」

蘇晴はその言葉を聞いて、自分の中の何かが完全に壊れるのを感じた。それは痛みよりも、むしろ安堵に近かった。もう何も感じない。自分は既に人形になったのだ。

日が昇り、また日が沈む。壁の中の時間は流れもせず、ただ続くだけだった。蘇晴の身体は日に日に痩せ細り、膣や肛門は常に開きっぱなしで、閉じる力を失っていた。彼女はもはや食事もまともに取れず、女将が無理やり流し込む粥だけが命をつないでいた。

ある日、老陳の噂を耳にした。壁に貼り付けられたまま、聞こえてきた話だった。蘇家が完全に取り潰され、老陳も何処かへ追われたらしい。仇家の者たちが勝利を祝っているという。蘇晴はその報せを聞いても、何も感じなかった。蘇家も老陳も、もう遠い世界の話だった。

ただ、一つだけ彼女の心に残ったものがあった。それは復讐の炎だった。小さな、かすかな炎。しかし、それは決して消えなかった。壁の中の冷たさの中で、その炎だけが彼女を生かしていた。

いつか、この壁を破って出て行く。その時まで、自分は生き延びる。たとえ身体が壊れても、心が死んでも、その炎だけは消さない。

蘇晴はそう決意し、再び訪れる客たちの熱に身を委ねた。彼女の目は虚空を見つめ、口元には微かな笑みが浮かんでいた。それは生きるための笑みであり、死ぬための笑みでもあった。