# 第三章 肉便器の役
スタジオの空気は重く、消毒液と汗の混じった異臭が充満していた。月月は薄暗い照明の下、真っ白なシーツの上に裸で立たされていた。彼女の身体は微かに震えていたが、それは寒さのせいだけではなかった。
「よし、始めるぞ」
阿杰の声がスピーカーから響く。彼はカメラの後ろに立ち、冷めた目でモニターを覗き込んでいた。周囲には五人ほどの男たちがいた。彼らはすでに服を脱ぎ、待機している。
月月は深く息を吸った。心臓は激しく打ち、耳元で血の音が聞こえる。しかし同時に、不思議な高揚感が彼女の内側から湧き上がっていた。恐怖と期待が混ざり合い、彼女の理性を蝕んでいく。
「最初のシーンだ。お前はただの器だ。何も考えず、ただ受け入れろ」
阿杰の指示が飛ぶ。月月はうなずき、ゆっくりと四つん這いになった。シーツの冷たさが膝に伝わる。彼女は目を閉じ、自分を無にしようとした。
最初の男が後ろから近づいてくる。彼の手が月月の腰を掴み、無造作に彼女の体を引き寄せた。月月は息を呑んだ。侵入の感覚が彼女の内側を引き裂くようだったが、同時に、ある種の充実感が広がっていく。
「もっと声を出せ。観客が聞きたがっている」
阿杰の声が鞭のように彼女を打つ。月月は従順に喘ぎ声を上げた。その声は自分でも驚くほど艶かしく、スタジオに響き渡った。
二番目の男が彼女の前に立つ。月月はさほど躊躇せずに口を開けた。かつて大富豪の令嬢として育った彼女の唇が、今や見知らぬ男の欲望を受け入れている。その倒錯した光景が、彼女の羞恥心をさらに刺激した。
時間が経つにつれ、月月の感覚は麻痺していった。複数の男たちが彼女の身体を隅々まで使い、彼女はただその動きに身を任せた。時折、意識が遠のきそうになるが、そのたびに阿杰の罵声が彼女を現実に引き戻す。
「次は排泄シーンだ。準備はできているか?」
月月の鼓動が再び速まる。彼女は幼い頃から徹底的に躾けられた排泄の作法を思い出した。それを今、見知らぬ男たちの前で、カメラの前で行わなければならない。胃の底が冷たくなる感覚がした。
しかし、彼女はうなずいた。
男たちが彼女の周りに輪を作る。月月はシーツの上にしゃがみ込み、全身の力を抜いた。恥辱の温かさが彼女の内側から溢れ出し、シーツの上に広がっていく。カメラのレンズがその光景を克明に捉えている。
「顔を見せろ。観客にお前の表情を見せるんだ」
月月はゆっくりと顔を上げた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった彼女の顔がモニターに映し出される。しかし、その瞳の奥には、苦痛の中にも奇妙な陶酔の色が浮かんでいた。
「よし、その調子だ。次はお前の体の上で…」
阿杰の指示は続く。男たちは月月の体を便器代わりに使い始めた。温かい液体が彼女の背中や胸、顔にかかる。月月は全身を汚されながら、ある種の解放感を覚えていた。すべてを捨て去った自由。それが彼女の心を満たしていく。
撮影が終わったのは、夜も更けてからだった。月月はシャワー室で必死に体を洗いながら、鏡に映る自分の姿を見つめた。そこには、かつて高慢だった令嬢の面影はどこにもなかった。代わりに、ある種の堕落した美しさを宿した女がいた。
彼女の指は自然と太腿の内側に触れていた。そこには複数の手形が赤く浮き上がっている。痛みはまだ生々しいが、それと同時に、あの感覚を再び求めている自分がいることに気づいた。
「ダメよ…私は…」
しかし、その言葉は途中で途切れた。彼女の口元には、無意識のうちに笑みが浮かんでいた。
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数日後、陳叔のオフィスで、阿杰と陳叔が向かい合って座っていた。机の上には販売レポートが広げられている。
「数字は散々だな」
陳叔が渋い顔でレポートを指差す。阿杰は苦い表情でうなずいた。
「ああ。予想よりもはるかに悪い。ダウンロード数は目標の三分の一にも達していない」
「原因は何だ?」
「月月の演技自体は悪くない。むしろ、初めてにしては光るものがあった。だが、この手のコンテンツは飽和状態で、競合作品に埋もれてしまっている。それに、彼女の名前はまだ無名だ」
陳叔は腕を組んで考え込んだ。窓の外には都会の夜景が広がっているが、彼の目はそれを見ていなかった。
「ならば、違う角度から攻める必要があるな」
「どういう意味だ?」
「月月は元々、有名な大富豪の令嬢だ。その事実を利用しない手はない。『元お嬢様の転落』というストーリー性を前面に出せば、話題性は格段に上がる」
阿杰の目が光った。
「なるほど…確かにそれは面白い。しかし、身元が露呈すれば、訴訟リスクが…」
「そこはうまくやる。顔は隠さず、しかし名前と具体的な企業名は伏せる。視聴者がネットで調べて、『あの娘じゃないか』と噂になれば、それがまた宣伝になる」
陳叔は冷徹なビジネスマンの顔で言い放った。彼の中では、月月はもはや単なる商品の一つに過ぎなかった。
「それと、次の作品のテーマだが…」
陳叔は引き出しから一枚の写真を取り出した。そこには、鎖に繋がれた女たちが写っていた。首輪にはそれぞれ番号が付いている。
「奴隷クラブとのコラボレーションだ。李という男が経営している。彼にはすでに話を通してある」
阿杰は写真をじっくりと見つめた。そこには、調教された女たちの虚ろな目と、それを見下ろす男たちの傲慢な笑顔が写っていた。
「月月はそこで何をさせられるんだ?」
「まずは基礎的な調教だ。公衆の面前での奉仕、屈辱的なポーズの強要、そして…一歩一歩だ。焦ることはない。良い作品を作るには時間がかかる」
陳叔はそう言って、冷めた笑みを浮かべた。阿杰もそれに応じて、口元を歪めた。
「月月はどんな反応をした?」
「彼女が何と言おうと、選択肢はない。すでにサインした契約書がある。違約金は、彼女の父親でさえ簡単には払えない金額だ」
陳叔は机の引き出しから、月月のサイン入り契約書を取り出した。彼の指が、その文字を優しく撫でる。
「あの娘は面白い。見ていて飽きない。おそらく、彼女の中に元々あった何かが、今、目覚めつつあるのだろう」
翌日、陳叔は電話で月月を呼び出した。彼女はいつもの高級ブランドの服に身を包み、優雅に振る舞おうとしていたが、その目には翳りがあった。
「陳叔、お呼びと聞きましたが…」
「ああ、座りたまえ」
陳叔は彼女にソファを勧め、自分も向かいに腰を下ろした。彼の目が、月月の全身を値踏みするように見渡す。
「前回の撮影、どうだった?」
月月は一瞬躊躇したが、すぐに答えた。
「…新しい経験でした」
「そうか。ところで、次の仕事の話なんだが」
陳叔は奴隷クラブのパンフレットを机の上に置いた。表紙には、革の服を着た女たちが鎖に繋がれた写真が載っている。
「ここで撮影を行いたい。君には、そのクラブの一員として、様々な…奉仕をしてもらうことになる」
月月の顔色が変わった。彼女の手が微かに震える。
「そ、そんな…私はまだ…」
「契約書の内容は覚えているか?君は雇用条件に同意したはずだ。断る権利はない」
陳叔の声は低く、しかし確固としていた。月月は唇を噛みしめ、うつむいた。
「…わかり、ました」
その声は、かすかで、しかし確かに聞こえた。陳叔は満足そうにうなずいた。彼の目には、勝利の色が浮かんでいる。
月月が部屋を出ていくとき、彼女の足取りは重かった。しかし、その心の奥底では、再びあの倒錯した快感を味わえることへの期待が、確かに芽生え始めていた。
彼女は自分がどこへ向かっているのか、もうわからなくなっていた。大富豪の令嬢としての未来は、遠い過去のもののように感じられる。今の彼女にあるのは、未知の快楽と苦痛の混ざり合った、暗く深い道だけだった。