# 禁断の夜
## 第一章 深夜の酔い
部屋には時計の秒針の音だけがかすかに響いていた。
陳依婷は一人、薄暗いリビングでグラスを傾けていた。冷めた空気が肌を刺すようで、彼女は赤ワインのボトルを手に取り、二杯目を注ぐ。窓の外にはネオンが瞬く街並みが広がっているが、その光は彼女の心の闇を照らすにはあまりにも弱々しかった。
夫の麦旺輝はまた出張だ。今週に入って三度目の不在。彼はいつもそうだ。仕事を言い訳に家を空け、彼女の存在などまるで空気のように扱う。結婚して三年、彼の心はすでに別のところにあるのかもしれない。いや、最初から彼の愛など形だけのものだったのか。
「旺輝、私のこと、本当に愛してるの?」
かつて彼にそう尋ねたことがあった。彼の返事はいつも曖昧だった。「もちろん愛してるよ」と言いながら、その目はスマートフォンの画面に釘付けだった。
グラスの縁に指を這わせながら、依婷は深く息を吐いた。胸の奥で燻る何かが、アルコールの熱で少しずつ膨らんでいく。もう何ヶ月も、彼からの触れ合いはない。夜になれば、隣で寝息を立てる夫を横目に、彼女は自分自身を慰めることしかできなかった。
時計が夜の十一時を指す。依婷は立ち上がり、ふらつく足取りで寝室へと向かった。頭はぼんやりとしていたが、それは酔いのせいだけではない。満たされない日々が積み重なり、彼女の感覚を鈍らせていた。
寝室のベッドに倒れ込むように横たわる。シーツの冷たさが背中に広がる。ワインの香りが口内に残り、甘く苦い余韻を残す。彼女はカーテンも閉めずに、天井を見上げた。薄明かりの中で影が揺れている。
「疲れた……」
ひとりごとを言いながら、依婷はゆっくりと目を閉じた。アルコールが血を巡り、身体が重くなっていく。思考の輪郭がぼやけ、心地よい眠気が彼女を包み込んだ。黒いストッキングに包まれた脚を組み、無意識のうちに体中の力が抜けていく。
彼女の唇からかすかな寝息が漏れ始めた。夢と現実の境目で、彼女はまだ完全には眠りに落ちていなかった。だが、その意識は次第に闇の中へと沈んでいく。
深夜、時計の針が二時を回った頃。
玄関のドアが静かに開く音がした。鍵は合っていた。誰かがこの家に入ってきたのだ。
足音は忍び足で、廊下を抜け、寝室へと向かう。その足取りはゆっくりと、しかし確実に。
扉の隙間から差し込む光が、一瞬部屋の中を照らし出した。
そこに立っていたのは、義父だった。
彼は七十歳を過ぎているとは思えないほど、目にぎらついた光を宿していた。痩せた体つきだが、その指先には異様なまでの執念が込められている。彼はベッドの上で眠る依婷を見下ろし、口元に卑猥な笑みを浮かべた。
「依婷……一人で寝ているのか」
彼の声はかすれていたが、その言葉には明らかな欲望が混じっていた。彼はゆっくりと部屋の中に入り、背後でドアを閉めた。鍵はかけなかった。誰かが来るとは思っていなかったが、もしもの時のためだ。
義父はベッドのそばに立った。依婷は横向きに寝ており、無防備な姿をさらしている。黒いストッキングが彼女の脚を優しく包み込み、スカートの裾は少し乱れて太ももの上部まで見えていた。ブラウスのボタンが一つ外れ、鎖骨がかすかにのぞいている。
「相変わらず綺麗だな……」
彼は喉を鳴らしながら、ゆっくりとベッドに上がった。マットレスが彼の体重で沈み、依婷の体がわずかに揺れる。彼女は微かに眉をひそめたが、目を覚ますことはなかった。
義父の手がゆっくりと伸びる。最初は依婷の足首に触れた。指が黒いストッキングの上を滑る感触に、彼は息を呑んだ。その生地は薄く、彼女の肌の温もりが透けて伝わってくる。
「ああ……なんて柔らかいんだ」
彼は指で彼女のふくらはぎを撫で始めた。ゆっくりと、じっくりと、まるで宝物を扱うように。ストッキング越しの肌はしっとりとしていて、彼の指を絡め取るようだった。
義父はさらに上へと手を這わせる。膝の裏まで指が到達したとき、彼は体をかがめ、舌を突き出した。
べろり。
彼の舌が、黒いストッキングに覆われた彼女の膝を舐めた。生地の上から伝わる感覚に、彼は目を細める。ワインと女の香りが混ざり合い、彼の理性をさらに侵食していく。
「ん……」
依婷の口からかすかな声が漏れた。それは寝言にも似た、曖昧なものだった。
義父はその反応に興奮を覚える。彼は舌を這わせる範囲を広げ、彼女の膝から太ももの内側へとゆっくりと進んでいった。黒いストッキングは唾液で濡れ、肌に張り付くように光る。
「ふふ……反応しているな」
彼の手は依婷の腰に触れ、そっと撫で始める。眠っているはずの彼女の体は、しかし確かに震えていた。長い間忘れていた刺激が、アルコールで麻痺した神経をかすかに刺激する。
依婷の心は夢と現実の狭間で揺れていた。
それは幻覚だろうか。いや、違う。これは現実だ。誰かが私に触れている。
そう思いながらも、彼女の体は動かなかった。いや、動けなかった。アルコールが彼女の手足を縛りつけ、意識はまだ深い眠りの底にある。しかし、その感覚は確かに彼女の内側に火をつけ始めていた。
(だめ……これはだめ……)
頭の中のどこかで警告の声が響く。しかし、その声は次第にかき消されていく。身体の奥深くで長い間眠っていた何かが、ゆっくりと目覚めようとしていた。
義父の舌がさらに上へと進む。彼女の太ももの内側、最も敏感な場所のすぐそばまで迫っていた。彼は黒いストッキングの生地を歯でそっと噛み、引っ張るようにしながら舐めた。
「んんっ……」
今度ははっきりと、依婷の口から甘い吐息が漏れた。彼女の指が無意識のうちにシーツを掴む。抵抗する意志と、身体が求める快感の間で、彼女の心は葛藤を続けていた。
(誰……? 旺輝……? いや、彼は出張に……)
意識がぼんやりとしている。頭の中に夫の顔が浮かぶが、すぐに消え去る。代わりに湧き上がるのは、身体を支配する奇妙な熱。
義父はその反応を見逃さなかった。彼は顔を上げ、依婷の表情を覗き込む。彼女のまぶたは震え、唇はわずかに開かれていた。完全な無意識ではない。だが、抵抗する力もない。
「そうだ……感じているんだな」
彼の声は低く、そして勝ち誇っていた。
義父は彼女のスカートの裾をさらにまくり上げ、腹部を露出させた。白い肌が薄明かりに浮かび上がる。彼はその上に手を置き、ゆっくりと撫で回した。冷たい指の感触が、アルコールで火照った彼女の肌を気持ちよく刺激する。
「あ……ああ……」
依婷の口から漏れる声が、次第にはっきりとしたものになっていく。夢の中で見る快楽は、現実のものよりもずっと甘く、そして苦い。彼女は身体の奥底で何かが崩れていくのを感じていた。長い間閉じ込めてきた欲望が、ゆっくりと檻から解き放たれていく。
義父の舌が彼女のへそを舐め、さらに上へと移動する。ブラウスの隙間から覗く胸の谷間も、彼の標的だった。
「もう少し……もっと味わわせてくれ……」
彼の手が彼女の胸に触れようとしたその時。
「……いや……やめて……」
依婷のかすかな声が、唇の隙間から漏れた。それはほとんど息のようなものだったが、彼女の中のわずかな理性が発した最後の抵抗だった。
しかし、義父は動きを止めなかった。むしろ、その声に興奮を覚えたようだった。
「嫌がるのか? だが……お前の身体はそう言っていないぞ」
彼の指が彼女の腹部を滑り、再び太ももの内側へと戻る。黒いストッキングの上から、彼女の一番敏感な部分に触れる。
「あっ……」
依婷の体が弓なりに反り返った。それは反射的な反応であり、同時に彼女の身体が忘れかけていた快感の記憶だった。
彼女の心の中で、何かが決壊した。
(もう……どうなってもいい……)
その思考は、まるで他人のもののように彼女の中を流れていった。抵抗する力はもう残っていない。いや、最初からなかったのかもしれない。
義父は満足げに笑い、再び彼女の脚に舌を這わせ始めた。今度はより執拗に、より丁寧に。黒いストッキングが唾液で濡れて光る様子は、彼の欲望の証のようだった。
「これからじっくりと……味わわせてもらうぞ……」
彼の声が、暗闇の中で不気味に響いた。
依婷の意識は、もうほとんど夢の中に沈んでいた。しかし、身体だけは確かに目覚めていた。彼女は感じていたのだ。禁忌の味を、その舌先でなぞるように。
夜はまだ長い────。