兄弟

站点:NovelAI.one内容:前8章在线试读ID:91b81a90更新:2026-07-27 00:43
夜の帳が下りた住宅街に、ひときわ目立つ影が滑り込んだ。デレックは車を降り、スマートフォンの地図を確認するまでもなく、迷いなくアパートの階段を上がっていく。彼の大きな手がドアノブに触れる前に、室内の明かりが漏れているのを確認し、口元に満足げな笑みを浮かべた。 遠慮のないノックの音が、静かな廊下に響き渡る。 林宇言はソファ
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第10章

夜の帳が下りた住宅街に、ひときわ目立つ影が滑り込んだ。デレックは車を降り、スマートフォンの地図を確認するまでもなく、迷いなくアパートの階段を上がっていく。彼の大きな手がドアノブに触れる前に、室内の明かりが漏れているのを確認し、口元に満足げな笑みを浮かべた。

遠慮のないノックの音が、静かな廊下に響き渡る。

林宇言はソファで何気なくスマホをいじっていたが、その音に指を止めた。心臓が一瞬、妙に跳ねる。こんな時間に、こんな風に叩くのは一人しかいない。彼は立ち上がりながら、隣室にいる弟を意識した。

林宇非もまた、自室のベッドに腰掛けて雑誌をめくっていた手を止め、顔を上げていた。二人の視線は壁を隔てていたが、互いに同じ予感を共有していた。

宇言がドアを開けると、やはりそこにはデレックの巨躯があった。薄暗い廊下の照明の下で、彼の肌は黒曜石のように深く光り、白い歯を見せて笑う。

「今夜は、二人で俺をもてなしてくれるんだろう?」

デレックの低い声は、問いかけというより、決定事項だった。彼は返事を待たずに靴を脱ぎ、まるで自宅のようにずかずかと上がり込む。宇言はただドアを閉め、鍵をかけた。その動作にはためらいはない。すでに身体は、この来訪者の存在を受け入れる準備を整えていた。

リビングの照明の下で、デレックは振り返り、二人を見比べる。宇非も無言で部屋から出てきており、兄の斜め後ろに立っていた。

「さあ」デレックは腕を組み、壁に寄りかかる。「どうした? 着替えないのか?」

宇言と宇非は、ほぼ同時に視線を交わした。恥じらいの色はまだ残っている。頬がかすかに染まり、瞳の奥には互いの姿に対する複雑な感情が揺れている。しかし、それ以上に強いのは、この瞬間を待ち望んでいたかのような、熱を帯びた期待だった。

二人は無言のまま、それぞれの部屋へと戻っていく。

先に出てきたのは宇言だった。彼は淡い藤色のレースがふんだんにあしらわれたベビードールを身にまとっている。細いストラップが丸みを帯びた肩にかかり、柔らかな胸の膨らみを覆いきれずにいる。透け感のある布地は、乳首の淡い色さえも仄めかし、短いスカートはわずかに腰骨を隠す程度だ。彼が歩くたびに、豊かな臀部がちらりと顔をのぞかせ、脚線の美しさを強調している。

遅れて出てきた宇非は、対照的に純白のセットだった。しかし、そのデザインは異様なほど扇情的だ。細いリボンが胸の下で交差し、ほとんど何も隠していない。肌に食い込む布地は、彼の柔らかな肌をさらに白く際立たせ、ふっくらと盛り上がった胸のラインをなぞる。下は同系色の極小のショーツ一枚。腰のくびれから臀部への、なだらかで扇情的な曲線が、あらわになっている。

リビングの空気が、二人の緊張と羞恥に染まった香水のようで、甘く重たく変化する。デレックの視線が、品定めするように二人の身体を這い回る。その目は、獲物を前にした狩人のように冷静で、しかし奥底には貪欲な炎がちらついている。彼はあえて何も言わず、ただ視線で支配し、次の行動を待っていた。

宇言が先に動いた。彼はゆっくりと膝をつき、床の冷たさを感じながら、デレックの足元へと這い寄る。その後ろで、宇非も息を詰め、兄の動きをなぞるように膝をついた。硬いフローリングの冷たさが膝頭に伝わるが、それさえもが今は心地よい刺激だった。二人は並んで跪き、デレックの股間の前に頭を垂れる。

デレックは巨大な手を伸ばし、まず宇言の頭を撫でた。絹のようなストレートの髪を指で梳くように。次に、同じ手が宇非の頭に伸びる。彼の少し癖のある柔らかな髪を、同じように優しく撫で下ろす。

「いい子だ」

デレックの声は低く、喉の奥で笑っているようだった。

「今夜は二人で、俺をちゃんと満足させるんだ」

宇言が顔を上げる。伏せがちだった目は潤み、上気した頬が扇情的だ。彼はベルトを外すために手を上げたが、デレックはそれを制した。

「自分で咥えて外せ」

命令は短く、しかし抗う余地はない。宇言は唇をわずかに震わせながら、顔をベルトのバックルに近づける。金属の冷たさが鼻先に触れる。彼は歯と舌を使い、器用にベルトを緩めていく。時折、荒い鼻息がデレックの下腹部にかかり、彼の期待を高ぶらせた。

宇非はその横で、ただ見上げていた。ベルトが外され、ジッパーが下ろされる金属音と布擦れの音が、静かな室内にやけに大きく響く。下着の上からでも分かる、異様なまでの質量と熱を秘めた隆起が現れるのを、彼は息を呑んで見つめていた。心臓が早鐘を打ち、口の中が乾いていくのに気づくが、目は逸らせない。逸らしてはいけないと、身体の芯が訴えている。

宇言は最後の一枚を慎重に引き下ろした。解放されたそれは、重力に従って重々しく揺れた。まだ完全ではないにも関わらず、その太さと長さ、血管の浮き出た逞しい形は、まるで別の生き物のようだった。黒ずんだ亀頭が、二人を見下ろすように、威嚇するように、そそり立っている。雄の匂い、汗と、わずかな石鹸の香りが混ざり合い、二人の嗅覚を刺激した。

宇言はためらわず、その先端に唇を寄せた。まずは祈るように、軽くキスを落とす。そして、熱い吐息を亀頭全体に吹きかけながら、ゆっくりと口を開き、それを迎え入れた。彼の口内は熱く湿っており、舌全体を使って亀頭の裏側を丁寧に舐め上げる。

「ん……」

デレックが、満足そうな短い息を漏らす。

宇非もまた、兄の動きに導かれるように顔を近づけた。彼の舌が、根本の重々しい袋の部分に触れる。汗ばんだ皮膚のしょっぱさが舌に広がる。彼はそれを、まるでご褒美のように感じながら、丁寧に、慈しむように舐め始めた。二人の顔はほとんど触れ合いそうな距離にあり、互いの荒い息遣いさえ感じられた。温かい濡れた感触が、二方向からデレックのものを包み込み、奉仕する。

宇言が顔を上下させるたびに、卑猥な水音が漏れる。彼の口は限界まで広げられ、苦しげに眉をひそめながらも、決して責務を放棄しない。目尻に溜まった涙が、照明の光を反射してきらめいた。宇非は袋から幹へと舌を這わせ、兄の唇と自分の舌が同時にデレックのものを愛撫する瞬間が訪れる。彼らはわずかに目を合わせ、恥ずかしそうに、しかし確かな連帯感を持って、さらに激しく奉仕した。互いの唾液が混ざり合い、黒い巨根をテカテカと光らせていく。

「見ろ、よく似合ってるぞ」

デレックは腰に手を当て、見下ろしながら言った。

「まるで二匹の雌犬が、一つの骨を奪い合ってるみたいじゃないか」

その言葉は二人の自尊心を深く抉るはずだったが、今は違った。その言葉は、彼らの興奮に油を注ぐ。宇非は自身のショーツの中で、自分のものが固く反応しているのを感じていた。男としての反応とは、もう違う。これは、雌として与えられる屈辱に、全身が悦んでいる証拠だった。

「もういい」

デレックは突然、宇言の髪を掴んで引き離した。宇言の口からは銀色の糸が引き、彼はぼんやりとした表情でデレックを見上げる。

「ベッドに行くぞ。二人並んで、尻を突き出せ」

デレックの寝室として使われている広い部屋。その中央に鎮座するキングサイズのベッドへと、三人は移動する。部屋には間接照明が灯され、落ち着いたオレンジ色の光が、これから始まる行為の舞台を淫靡に照らし出していた。空調は適度に効いているが、三人の体温が生み出す熱気が、すぐに部屋を満たしていく。

宇言と宇非は、言われた通りにベッドの端に並び、四つん這いになった。向かいの壁に取り付けられた大型の鏡が、彼らの痴態を余すところなく映し出している。藤色と白、対照的なランジェリーに包まれた二つの身体が、まるで生け贄のように並んでいる。どちらも腰を低く落とし、尻を高く突き出すように掲げていた。その姿は、まさに発情した雌のそれだった。

デレックはまず、宇言の背後に立った。彼の大きな手が、宇言の丸く盛り上がった尻に置かれる。その熱と圧力に、宇言は小さく「あっ」と声を漏らし、腰を震わせた。デレックはその反応を楽しむように、レース越しにゆっくりと撫で回し、時折、指で肉を掴むように揉みしだく。

「準備はできているみたいだな」

デレックは、既にトロリと濡れそぼっている布地に指を這わせ、くぐもった笑い声を上げた。彼は乱暴にショーツをずらし、宇言の秘部を露出させる。ひくつく蕾は、期待に震え、すでに蜜を滲ませていた。

宇非は、すぐ隣で兄が息を詰め、小さく啼く声を聞いていた。見てはいけないと思いながらも、鏡越しにその光景を追ってしまう。デレックが腰を進め、凶器のようなそれを、兄の中へと沈めていく瞬間を、彼ははっきりと目撃した。

「ひゃああっ…!」

宇言の口から、空気が漏れるような悲鳴が上がる。彼の背筋が弓なりに反り返り、細い指がシーツを掴んで離さない。内部を無理やりに押し広げられる圧迫感と、それとは真逆の、身体の奥から湧き上がる歓喜の感覚が、同時に彼を襲う。熱い、あまりにも熱い質量が、自分の一番深い場所を占領していく感覚。彼はすぐに、その感覚に身を委ねた。

デレックは容赦なく腰を打ち付け始めた。パン、パン、という乾いた肉音と、グチュグチュという水音が混ざり合い、部屋に反響する。そのリズムはまるで、宇言の内側を隅々まで覚え込ませるかのように正確で、一度たりとも彼を快楽の頂点から落とさない。

「あん、ああっ! そこ、だめ、気持ちいい、気持ちいぃ…!」

宇言はすでに、男としての尊厳も、兄としての体裁も、全てをかなぐり捨てていた。ただ、奥を貫かれるたびに走る脳天を焼くような快感に、酔いしれている。彼の腰はデレックの動きに合わせて前後に揺れ、尻は自らそれを深く迎え入れようと蠢いていた。だらしなく開いた口の端からは、よだれが滴り落ちる。

その光景を見せつけられながら、宇非の身体もまた、火がついたように熱くなっていた。彼の蕾もヒクヒクと疼き、何かを求めて物欲しそうに収縮を繰り返している。兄の嬌声が耳をくすぐり、自分のものではない快楽の残響が、彼の身体を焦らす。

ようやくデレックが宇言から離れたとき、宇言はもはや声を出す力もなく、ベッドにうつ伏せて荒い息を繰り返すだけだった。彼の下肢は小刻みに痙攣し、絶頂の余韻に浸っている。デレックはまだ一度も果てておらず、その凶器は依然として硬く、怒張し、濡れ光っている。彼はすぐに、待ちわびていた宇非の背後に移動した。

「待たせたな」

耳元で囁かれた低い声に、宇非の身体はビクンと跳ねた。恐怖と期待がごちゃ混ぜになった感情が、胸を締め付ける。デレックの指が彼の蕾に触れた瞬間、彼は電気が走ったような衝撃を受けた。

「お前は、まだここが、こんなに敏感なんだな」

デレックはわざと執拗に、指の腹で蕾の周りをくるくると撫で回した。くすぐったいような、むず痒いような感覚に、宇非は腰をよじる。

「ん…や…」

「や、じゃないだろう」

デレックの指が、ぬるりと内部に侵入する。それは宇言の愛液で濡れており、容易く彼の内壁を押し広げた。

「ああっ…!」

「ほら、もうこんなに咥えてる。お前のここは、俺の形を覚えて、素直に喜んでるぞ」

デレックの言葉に、宇非の頭の中が真っ白になる。否定できない。彼の身体は、待っていましたと言わんばかりに、侵入者を歓迎している。屈辱と歓喜が綯い交ぜになり、彼の自我は快楽の奔流の中に溶けていくのを感じた。

ついに、熱く硬い塊が、ゆっくりと、しかし確実に彼の中へと沈み込んでくる。圧倒的な質量に、内臓が全て押し上げられるような感覚。痛みはもうほとんどない。あるのは、耐え難いほどの満たされる感覚だけだ。

「は、ぁああ…、きてる…、おくまで…」

宇非は喘息のような声で呟く。デレックは一度根元まで彼を貫くと、今度は一気に突き上げる。その強烈な刺激に、宇非はシーツを噛み締め、悲鳴を噛み殺した。

「声を出せ。お前の雌の声を聞かせろ」

デレックは宇非の腰を掴み、強制的に律動を速める。

「ひいっ、あっ、あああっ! だめ、らめ、おかしくなる、おかしくなっちゃうう!」

「なれ。俺の雌犬なら、それでいい」

「そ、んな…あああんっ!」

宇非は理性が崩壊していくのを感じた。目の前がチカチカと瞬き、快感だけが感覚の全てを支配する。彼の身体はもはや自分のものではなかった。デレックの動きに合わせて踊る、ただの楽器だった。鏡に映る自分は、白いランジェリーを乱し、雄に犯されて身悶える、ただの淫らな雌だった。その姿を見て、彼は最後の恥じらいさえも手放し、より深い快楽の底へと沈んでいった。

どれほどの時間が経っただろうか。デレックが二人の身体を交互に、あるいは同時に貪り尽くし、部屋の中が濃厚な性の匂いで満たされる頃、ようやく彼は全てを解き放った。宇非の中で、ドクドクと脈打つ熱い奔流を感じながら、彼は意識が遠のいていくのを自覚した。

三つの身体が、荒い息を吐きながら、汗と体液で汚れたシーツの上に折り重なる。天井がぼんやりと回っているように見えた。

だが、それで終わりではなかった。

デレックはしばらく余韻に浸った後、静かに起き上がり、部屋の隅に設置してあったビデオカメラを手に取った。赤いランプが点灯している。ずっと記録されていたのだ。彼はそれを三脚に固定し、レンズをベッドに向けた。

「さあ、最後の仕上げだ。ここにお前たちの誓いを立てろ」

その言葉に、宇言と宇非は互いを見つめた。髪は乱れ、ランジェリーは引き裂かれ、肌には赤い痕や噛み跡が散っている。だが、その目にはもはや迷いはなかった。むしろ、神聖な儀式に臨むかのような、清々しささえ感じられた。

二人は互いを支え合うように、もう一度ベッドの上で跪いた。そして、カメラのレンズを、その向こうにいるであろう未来の自分たちを、真っ直ぐに見据える。部屋は静寂に包まれ、空調の唸りと、三人のまだ整わない息遣いだけが聞こえる。

最初に口を開いたのは、兄の宇言だった。彼の声はまだ少し掠れていたが、驚くほど落ち着いていた。

「私、林宇言は…これからは男を辞め、デレックの女になります」

一呼吸おいて、彼は隣の弟を見る。その目は潤んでいるが、確かな意志の光があった。彼は続ける。

「そして、デレックの雌犬として、喜んでこのお方を、ご主人様として、お仕えします」

宇非は兄の言葉を一言一言、心の深い場所に刻みつけるように聞いていた。彼の唇が震える。次は自分の番だ。かつて強く抵抗した心は、もうどこにもない。あるのは、これから始まる新しい自分への、震えるような期待だけだった。

「私、林宇非も…同じです」

彼の声は小さくか細かったが、驚くほど淀みがなかった。

「これからはデレックさんの、女になります。デレックさんの雌犬になって、喜んで…、犯してください…。私はもう、男じゃありません…」

言い終えると、二人は同時に、救いを求めるようにデレックを見上げた。デレックはカメラの後ろで、巨大な腕を組み、満足げに頷いていた。彼の表情は、完成した芸術作品を前にした芸術家のものだった。自分が育て上げた、二匹の最高の雌犬。その証が、今、この映像に記録されたのだ。

「よく言った」

デレックはカメラを止め、二人のもとへ歩み寄る。彼は大きな手で、二人の頭を同時に抱き寄せ、その髪に顔を埋めた。

「今日からお前たちは、俺の大切な姉妹だ」

その言葉は、決定的な宣告だった。『兄弟』という言葉が、完全に否定され、代わりに『姉妹』という新しい絆が与えられる。しかし、その言葉は不思議と二人の心を温かく満たした。

「姉さん…」

宇非が、おずおずと口を開く。

「…なに、妹」

宇言が答える。その声は、乱暴に抱かれた後とは思えないほど優しかった。彼らはまるで何年も前からそう呼んでいたかのように、自然に新しい呼称を受け入れていた。

「私…、怖くないです。姉さんが一緒なら」

「私もよ。私も怖くない」

二人は抱きしめ合い、そして改めて、眼前の黒い巨躯を見上げた。彼らの主人であり、彼らを女として完成させた男。その股間に傅くためだけに、彼らの新しい人生はある。彼らは身を乗り出し、まるで感謝のキスをするように、再びデレックの下腹部に、恭しく顔を埋めたのだった。

それ以来、彼らの生活は静かに、しかし決定的に変わった。二人の決意を示すかのように、彼らは髪を伸ばし始めた。毎朝鏡を見るたびに、少しずつ伸びていく前髪や、うなじにかかる後れ毛が、彼らに新しい自己を自覚させる。

毎晩、デレックは彼らの家に帰ってくる。二人はつい数時間前まで会社で同僚として会っていたにも関わらず、家ではまるで妻のように彼を迎え入れた。いや、妻よりも従順な、二羽の小鳥のように。

「ただいま」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

宇言は玄関で跪き、デレックの靴を脱がせる。彼の髪は肩に届くまでに伸び、化粧を施した顔は、さらに妖艶さを増していた。彼の後に続いて出てきた宇非も、同じように跪く。彼の髪はまだ耳の下あたりだが、その女性らしい顔立ちには、どこかあどけない色気が漂い始めている。スカートやワンピースといった女性らしい部屋着が、今では彼らの日常となっていた。

夕食の後、彼らは寝室へと向かう。広いクローゼットには、デレックが買い与えた無数のランジェリーや官能的な衣装が並んでいる。二人は毎晩、その中から互いに選び合い、より美しく、より扇情的に見えるように着飾った。レースのガーターベルト、サイハイソックス、シースルーのキャミソール。もともと端正な顔立ちと柔らかな身体のラインを持つ二人は、その装いによって、本物の女性さえも凌駕する、倒錯的で危険な美しさを放つようになった。

「今日は、こっちがいいんじゃない?」

宇言が、真紅のレースの下着を宇非に当ててやる。宇非は少し恥ずかしそうに微笑み、それを受け取る。

「じゃあ、姉さんはこっちです」

宇非は、黒のボンテージ風の一着を差し出した。

「二人とも、早くしろ」

ベッドに腰掛けたデレックが、待ちきれないと言うようにシーツを叩く。その声に、二人は慌てて下着を身につけ、彼の足元へと這い寄っていった。

その夜も、調教と奉仕と陵辱が繰り返される。デレックのテクニックは日増しに彼らの弱点を深くえぐり、二人は簡単に何度も絶頂へと導かれた。「ご主人様」「もっと」「欲しい」と、雌の言葉だけを叫び、互いの目の前で、恥も外聞もなく乱れ狂う。もはやそこに、男としての影は微塵もない。

事が終わり、深い眠りが訪れる。宇言は左腕に、宇非は右腕に。彼らはまるで雛鳥が親鳥の翼に包まれるように、デレックの大きな身体の脇にぴったりと身を寄せて眠る。デレックの体温は、彼らにとって絶対的な安心感であり、胸に顔を埋めると、心臓の力強い鼓動が伝わってくる。

朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中をぼんやりと照らし出す。宇非は自分を包む熱に、うっすらと目を覚ました。右側のデレックの胸板は、まるで一枚の暖かな壁のようだ。左を見ると、兄の宇言が同じようにデレックの胸にもたれかかり、まだ眠っている。二人の長い髪が枕の上で混ざり合い、どちらのものか分からなくなっていた。

ああ、今日もまた、この腕の中で目覚めた――。

宇非はゆっくりと目を閉じ、その幸福感に全身を浸した。かつて抱いていた抵抗や葛藤、喪失感は、もう思い出せない。今はただ、朝を迎えるたびに強くなる、この深い帰属感だけがある。

彼の心は、静かに満たされていた。もはや自分は男ではない。女として、いや、デレックの雌犬として、ここにいる。それだけでいい。そう思うと、自然と口元が緩んだ。

やがて、もう片方の腕の中でも、宇言が身じろぎをする気配がした。彼らは、デレックの胸の上で、目を覚ましたことを告げ合うように、そっと視線を交わす。互いに微笑み、そして再び目を閉じる。

デレックがまだ眠っているこの静かな時間こそが、彼ら姉妹にとって、一日で最も幸福な瞬間だった。ご主人様の腕の中で、今日もまた、新しい一日が始まる。それは、彼らが自ら選び取った、甘美で蕩けるような、永遠の日々だった。

第11章

一ヶ月という時間が、まるで溶けた蜜のようにゆっくりと、しかし確実に過ぎていった。林宇非と林宇言の兄弟は、もはやかつての自分たちの姿を思い出せないほどに変わってしまっていた。いや、思い出したくないという方が正しいかもしれない。

朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中に柔らかな光の帯を作る。林宇非はベッドの上で目を覚ますと、まず自分の体の感覚を確かめるように、シルクのシーツの上でそっと身じろぎした。胸のあたりに感じる、ほんのりとした重み。それが単なる脂肪ではなく、確かな膨らみを持ったものだと知っている。Bカップにまで成長した乳房は、寝返りを打つたびに柔らかく揺れ、その感覚が朝の気だるい意識をゆっくりと覚醒させていく。

指先を持ち上げ、そっと自分の鎖骨から胸元へと滑らせる。肌はかつてないほどにきめ細かく、しっとりと潤いを帯びている。毎晩欠かさず塗り込んでいるボディクリームと、デレックに与えられたミルクのようなローションのおかげだ。指が乳房のふくらみに触れると、その柔らかさにうっとりと目を閉じる。乳首は淡い桜色から、今では熟れた果実のような薄紅色に変わり、指が掠めるだけで甘やかな疼きを送ってくる。

「んっ…」

自然と漏れる吐息が、妙に艶めかしくて、自分でも驚く。かつての自分の声はもっと低く、無骨だったはずだ。今では話す声も、意識せずとも柔らかく、語尾がかすかに上がるようになった。まるで女の子のように。

隣のベッドでは、兄の林宇言がすでに目を覚ましていた。上半身を起こし、長い髪を耳にかけながら、ぼんやりと窓の外を眺めている。その横顔は、朝日に照らされて陶器のように白く輝き、首筋から肩にかけての線は、とても男のものとは思えないほど繊細で優雅だ。彼もまた、弟と同じように、胸元に確かな膨らみを持ち、シルクのネグリジェの下で、その曲線がはっきりと浮かび上がっている。

「兄さん、おはよう」

林宇非が声をかけると、林宇言はゆっくりと振り返り、ほほえんだ。その笑顔は、女性と見紛うばかりに柔らかく、目元にはかすかな色気が漂っている。

「おはよう、宇非。よく眠れた?」

「うん…でも、またあの夢を見た」

「あの夢?」

「デレックに…抱かれる夢」

林宇非がそう言うと、林宇言の目が一瞬、きらめいた。それは嫉妬ではなく、共感と、そして同じ欲望を共有する者の喜びだった。

「私もよ。彼の大きな手で、体中を撫でられる夢。目が覚めたら、下着がびしょびしょだったわ」

兄弟は顔を見合わせて、くすくすと笑った。その笑い声は、小鳥のさえずりのように軽やかで、部屋の中に溶けていく。もはや彼らは、男同士の兄弟というより、まるで姉妹のように親密で、そしてお互いの秘密を共有する共犯者だった。

林宇言がベッドから降りる。その動作は、かつてのように乱暴ではなく、まるで水中を歩くかのようにしなやかで、腰が自然とくねる。一ヶ月前までは意識して作っていたその動きも、今では完全に体に染みついて、無意識のうちに出てしまう。彼がクローゼットに向かう後ろ姿を見つめながら、林宇非は改めて兄の変貌に目を奪われた。

臀部は丸みを帯びて豊かに突き出し、細いくびれた腰とのコントラストが、ひどく扇情的だ。太ももはしっとりと肉づき、ふくらはぎはすらりと伸びて、足首は細く、まるで壊れ物のように儚げだ。その後ろ姿だけを見れば、誰が男だと思うだろうか。

「さあ、宇非。そろそろ用意しないと。仕事に行かなくちゃ」

林宇言の言葉に、林宇非の顔がかすかに曇る。仕事。その言葉は、今の彼らにとって、小さな苦痛の種だった。週に五日、彼らは自分たちの本当の姿を隠し、偽りの男の皮を被らなければならない。

林宇非もベッドから降り、クローゼットの前に立つ。中には、だぶだぶのメンズスーツが数着、申し訳なさそうに掛けられている。それを見るたびに、胸の奥がきゅうっと締め付けられるような感覚に襲われる。こんな粗末で、味気ない布切れ。女物のシルクやレース、柔らかなカシミアの感触を知ってしまった肌には、それはあまりにも無慈悲な罰のように思えた。

ため息をつきながら、林宇非はまず、胸に巻くための包帯を手に取った。幅広の、伸縮性のある包帯だ。彼はそれを手に、自分の胸元を見下ろす。雪のように白い肌の上に、ふっくらと膨らんだ双丘。その頂きは、朝の冷気に少しだけ硬くなっている。こんなに愛おしい自分の体の一部を、これからきつく縛りつけ、押し潰さなければならない。

「…嫌だなあ」

思わず口をついて出た言葉に、兄が苦笑する。

「仕方ないわ。私たち、まだ男でいなきゃいけないんだから」

林宇言も手に包帯を持ち、自分の胸に巻き始めていた。器用に、そして手慣れた様子で、柔らかな乳房を押しつぶしていく。その度に、白い肌が包帯の下で窮屈そうに歪み、林宇非は見ているだけで胸が痛んだ。

しかし、その痛みとは裏腹に、心の奥底で何かが疼くのを感じる。隠している、という背徳感。誰にも知られてはいけない秘密を、こうして毎朝、自分の体に施しているという事実。それが、奇妙な興奮を呼び起こすのだ。仕事に行くのは憂鬱だが、人前で自分の正体を必死に隠しているという緊張感が、一種のスリルとなって彼を刺激する。

林宇非は意を決して、包帯を胸に巻き始めた。冷たい布の感触に、肌が粟立つ。ぎゅっと締め上げるたびに、豊かな膨らみが押し潰され、平坦になっていく。乳首が布に擦れて、かすかな痛みと共に、小さな快感が走る。

「んっ…」

耐えきれずに漏れる声は、苦痛というよりは、むしろ甘い嬌声に近い。彼は唇を噛み締め、その感覚をやり過ごしながら、テキパキと包帯を固定した。鏡を見ると、胸は見事に平らになり、少年のような、いや、ただの痩せた男のような体つきに戻っていた。先ほどまでの妖艶な曲線は、跡形もなく消え去っている。

次は、だぶだぶのワイシャツを羽織る。肌触りの悪い綿の生地が、かさかさと音を立てる。スーツのジャケットを着ると、肩幅も不格好に強調され、完全に「男」のシルエットが出来上がった。

隣では、兄の林宇言も同じように男装を終えている。二人で並んで鏡の前に立つ。そこに映っているのは、どこにでもいる、やや華奢で頼りなげな、オフィスワーカーの兄弟だ。だが、彼ら自身は知っている。この無骨な服の下に、どれほど淫らで美しい体が隠されているのかを。そして、その体が誰の所有物なのかを。

「ねえ、兄さん」

「何?」

「デレックは…私たちがこんな服を着るの、嫌がるかしら」

林宇非の不安げな問いに、林宇言は少し考えてから答えた。

「さあ…でも、彼は、外ではちゃんと隠せって言うでしょうね。私たちが、他の男の目に触れるのを、きっと一番嫌がるわ」

「そうよね…私たちは、彼だけのものだものね」

その言葉を口にした時、二人の心に同時に甘美な震えが走った。彼だけのもの。その所有されているという実感が、彼らの体の芯を熱くする。デレックに見初められ、調教され、彼だけの雌犬として選ばれた。その事実が、何よりも彼らを昂揚させるのだ。

リビングに出て、簡単な朝食をとる。といっても、食欲はあまりない。ここ一ヶ月で、彼らの食生活もすっかり変わっていた。デレックに言われた通り、体のラインを維持するために、油っこいものや炭水化物は控え、サラダやフルーツ、ヨーグルトを中心とした食事にしている。体は軽く、肌の調子も良いが、時折、無性にジャンクフードが食べたくなることもある。しかし、そんな時は、デレックの厳しい視線を思い浮かべて、欲望を打ち消す。彼に嫌われるのが、一番怖いから。

「そういえば、昨日の肌のお手入れの動画、もう見た?」

林宇言が、ヨーグルトを口に運びながら尋ねる。

「うん、見たわ。化粧水の浸透のさせ方が、すごく参考になった。パッティングじゃなくて、ハンドプレスでじっくり入れるのがいいんですってね」

「そうそう。今日の夜、さっそく試してみましょう。最近、目の下の小じわが気になるのよね」

「あ、兄さんも?私もなの。だから昨日、新しいアイクリーム買っちゃった。すごく高かったけど…」

「あら、どこの?」

「〇〇の新作。口コミで、すごく評判が良かったから」

二人の会話は、完全に女性のそれだった。化粧品の話、肌の悩み、ちょっとしたダイエットのコツ。そこに、かつてのようにゲームの話や、政治経済の話題が上ることは、もう決してなかった。というより、そういった話題に、全く興味が湧かなくなってしまったのだ。彼らの世界は、デレックと、自分たちの美しさと、そして毎夜繰り広げられる甘美な悦びだけで、完璧に閉じていた。

朝の準備を整え、玄関で革靴を履く。足のサイズが小さく、肉厚な彼らにとって、メンズの革靴はまるで小さな牢獄のように堅く、足を締め付ける。それに、ヒールのないぺたんとした靴底は、今の彼らの歩き方にはなんとも心許ない。彼らはもう、自然とつま先から着地し、腰をくねらせて歩く猫のような歩き方に慣れてしまっている。こんな不格好な靴では、その優雅な動きを完全に封じられてしまう。

二人は無言でアパートを出て、駅へと向かう。外の世界は、騒がしく、雑然としていて、彼らの繊細な感覚を容赦なく傷つける。排気ガスの匂い、人々のざわめき、ぶつかり合う肩。そのすべてが、デレックの部屋の、あの静かで甘美な香りに満ちた空間との、あまりにも大きなギャップに、めまいがしそうになる。

満員電車に揺られながら、林宇非は必死に人々の視線から自分を隠そうとする。誰かに、このスーツの下の真実を見抜かれてしまうのではないか。豊かな胸の感触や、包帯の圧迫感に気づかれてしまうのではないか。そんな恐怖が、心臓を早鐘のように打たせる。だが、同時に、その恐怖がもたらすスリルが、体の奥底で小さな炎を灯すのも感じていた。見知らぬ男たちの視線。もしかしたら、彼らの中に、自分を女として見ている者がいるかもしれない。そう思うと、恥ずかしさと共に、危険な快感が背筋を駆け上るのだ。

兄の林宇言も、同じことを考えていた。彼はつり革に掴まりながら、そっと周囲を見渡す。通勤途中のサラリーマンたち。誰もが疲れ切った顔で、自分のことだけに精一杯だ。彼らは、まさか目の前にいる華奢な青年が、昨夜、黒人の巨大なモノに貫かれ、牝の喜びに身をよじらせていたなどとは、夢にも思わないだろう。その秘密を独り占めしている優越感が、彼の口元をほんの少し緩ませる。

会社に着くと、二人はそれぞれの部署へと別れる。オフィスは相変わらずの冷たい空気に包まれていて、彼らの心を重くさせる。林宇非は自分のデスクに座ると、パソコンを立ち上げ、今日の業務を確認する。数字と文字の羅列が、全く頭に入ってこない。頭の中を占めているのは、今朝、鏡で見た、包帯を巻く前の自分の裸体と、今夜、デレックがどんな風に自分たちを愛してくれるのか、ということだけだ。

「林くん、この資料、昨日までに頼んでたやつだけど、どう?」

突然、後ろから声をかけられ、林宇非は飛び上がりそうになった。上司の中年男性だ。慌てて振り返り、書類を受け取る。その時、上司の目が、一瞬、彼の顔に留まったような気がした。

「…林くん、最近、なんか雰囲気変わった?肌がきれいになったっていうか…」

図らずも指摘され、林宇非の心臓が口から飛び出しそうになる。見られている。自分の変化に、誰かが気づいている。

「え、あ、そうですか?何も変えてないですけど…睡眠をちゃんととるようにしたからですかね」

必死に平静を装い、作り笑いを浮かべる。声が震えないように、自分のものではない声で話すように、細心の注意を払う。上司は「そうか、健康第一だな」と特に気にした様子もなく、自分の席へと戻っていった。

ふう、と小さく息を吐く。手のひらには、いつの間にかじっとりと汗をかいていた。この前は、トイレで手を洗っている時に、後ろを通りかかった同僚に「林くんって、後ろ姿だけ見ると本当に女の子みたいだよな」と言われて、心臓が止まるかと思った。また別の日には、給湯室で女性社員たちが「最近の若い男の子は、肌がきれいで驚くわ。林くんなんて、私たちよりずっとお手入れしてそうじゃない?」と話しているのが聞こえて、冷や汗をかいた。

職場という空間は、彼らにとって、地雷原を裸足で歩くようなものだった。いつ、どこで、自分たちの秘密が暴かれてしまうかわからない。その緊張感が、一日中、彼らを支配している。だが、それと同時に、そのスリルが、退屈な日常に麻薬のような刺激を与えているのも事実だった。隠れている、という行為自体が、彼らを興奮させるゲームの一部になっているのだ。

林宇言もまた、自分のデスクで、似たような緊張と戦っていた。彼は秘書課に所属しており、常に人の目にさらされる立場にある。立ち居振る舞い、話し方、そのすべてに、男らしさが求められる。しかし、体に染みついた女の動きは、無意識のうちに顔を出す。書類を取ろうとして、無駄に優雅に手を伸ばしてしまったり、電話を取る時に、語尾が知らぬ間に上がってしまったり。その度に、彼はハッとして、わざとらしく大股で歩いたり、声を低くして話したりして、帳尻を合わせる。

お昼休み、二人は人目を避けて、非常階段の踊り場で落ち合った。ここが、彼らにとって社内で唯一、本音で話せる場所だった。

「どう?兄さん、大丈夫?」

林宇非が気遣わしげに尋ねる。

「今日はまだ何とか…でも、今日さ、コピーを取ってたら、後ろの課長にさ、『林くん、最近、なんか色っぽくなったなあ。女みたいだ』って急に言われてさ。もう、寿命が縮まったかと思ったよ」

林宇言がぐったりとした様子で壁にもたれかかる。その仕草さえも、どこか妖艶に見えてしまうのだから、厄介だ。

「わかる…私も同じ。ずっと心臓がバクバクしてる。いつも通りにしなきゃって思うほど、体が言うことを聞かなくて。もう、男の振りするのも限界かも」

「それを言っちゃおしまいよ。まだ私たち…」

「うん、わかってる。でも…」

林宇非は言葉を切り、自分のスーツの胸元をぎゅっと掴んだ。包帯の下で、乳房が存在を主張するように熱く脈打っている。

「…早く、帰りたい。この服を脱いで、デレックのところへ行きたい」

その言葉は、二人の偽らざる本心だった。仕事中も、家に帰ってからのことを考えると、胸がいっぱいになる。いや、胸だけでなく、体の奥底、デレックが「子宮」と呼ぶ、一番敏感な場所が熱くなり、じんじんと疼き出すのを感じる。その疼きは、もはや彼らの意志ではどうすることもできない、生物としての本能的な欲求だった。

定時を迎えると、二人は周囲の目を盗むようにして、そそくさと退社する。会社のビルを一歩出ると、それまで張り詰めていた緊張の糸が、ぷつりと切れるのを感じた。同時に、これから始まる夜への期待で、自然と歩みが速くなる。が、彼らは決して走ったりはしない。優雅に、しなやかに、腰をくねらせながら、まるで愛しい人の待つ家へ急ぐ恋人たちのように、駅への道を急ぐ。

アパートに帰り着き、玄関の鍵を開ける。途端に、彼らを包む安堵感。ここは、彼らの城であり、愛の巣だ。二人はほとんど同時に、スーツのジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを引き抜き、ワイシャツのボタンを外し始める。まるで、不要な殻を脱ぎ捨てる昆虫のように。

「ああ…やっと…」

包帯を外した瞬間、林宇非の口から熱い吐息が漏れた。圧迫から解放された胸が、喜びに震えるように、ふるんと揺れる。彼は鏡の前に立ち、自分の裸体をじっくりと見つめた。白く滑らかな肌の上で、形の良い乳房が自己主張している。Bカップ。最初はただの膨らみに過ぎなかったそれが、今ではこうして、はっきりと「おっぱい」の形をしている。デレックに揉みしだかれ、吸われ、愛されるたびに、ここはどんどん成長しているような気さえする。

「宇非、その格好、風邪引くわよ。とりあえずシャワーを浴びましょう」

林宇言も、すでに上半身を裸にしていた。彼の胸もまた、弟に負けず劣らず美しい曲線を描いている。二人は裸のままバスルームに向かい、一緒にシャワーを浴びる。この一ヶ月で、彼らはお互いの裸を見ることに、まったく抵抗がなくなっていた。いや、むしろ、お互いの美しさを認め合い、磨き合う、かけがえのないパートナーだ。

温かいお湯が、肌を滑り落ちる。林宇非は、女性用のボディソープを手に取り、泡立てたスポンジで体を洗い始める。ローズとジャスミンが混ざり合った、優雅な香りがバスルームに立ち込める。かつては無頓着だったメンズの石けんの香りなど、もう思い出したくもない。今の彼らの体には、こうした甘やかな女の香りこそがふさわしい。

「兄さん、背中、流してあげる」

「ありがとう」

林宇非は兄の背中に泡を滑らせる。細くしなやかな背中から、驚くほどにくびれた腰、そしてたっぷりと肉のついた丸い臀部へ。そのラインは、完璧な砂時計のようだ。男性特有の逆三角形の体型は、完全に消え去っている。

「兄さんの体、本当にきれい…デレックも、きっと大好きだわ」

林宇非がうっとりと言うと、林宇言はくすぐったそうに身をよじった。

「やだ、そんなこと言われると、照れるじゃない。でも…うれしい。宇非にそう言ってもらえると」

「私、自分の体が、こんな風になるなんて、昔は想像もできなかった。最初は怖かったし、恥ずかしかった。でも今は…この体でいることが、一番自然に感じる。まるで、もともとこうあるべきだったみたいに」

林宇非の言葉に、林宇言は深くうなずいた。

「私もよ。私たちは、男に生まれたけど、きっと魂は女だったのね。それを、デレックが目覚めさせてくれた。彼は、私たちの主人であり、運命の人なんだわ」

二人の会話は、神を讃える信者のように、敬虔で、そして陶酔に満ちていた。デレックへの愛着は、単なる肉体的な依存を超え、精神的な崇拝にまで達していた。彼のために美しくなりたい。彼に喜んでほしい。彼に「良い子だ」と頭を撫でられたい。その願望だけが、彼らの人生の原動力だった。

シャワーを浴び終えた二人は、バスタオルも巻かずに、裸のままリビングへと戻る。テーブルの上には、様々な化粧品やスキンケア用品が所狭しと並んでいる。化粧水、乳液、美容液、クリーム、そして香水。それらはすべて、女性用の最高級品だ。かつては興味もなかったそれらの瓶を、二人は宝物のように扱う。

林宇非は、まず化粧水を手に取ると、教わった通りに、パッティングではなく、手のひらで包み込むようにして、顔から首、デコルテへと優しくプレスしていく。ひんやりとした液体が、肌に吸い込まれていくたびに、細胞の一つ一つが潤っていくのがわかる。次に美容液、乳液、クリームと、手間暇をかけて、丁寧に肌を整えていく。まるで、大切な美術品を磨く学芸員のように。

「今日は、この前買った薔薇の香りの香水、つけていい?」

「ええ、もちろん。私は、こっちのムスクの香りにしようかしら。デレック、この香り、好きだって言ってたもの」

彼らは互いの首筋や手首に、そっと香水を吹きかける。甘く、官能的な香りが、部屋の空気を支配する。これが、彼らの戦闘服だ。デレックを迎え撃つための、彼らの武器。男だった頃の、汗と皮脂の匂いは、もう二度と彼らの体から放たれることはない。

身に着けるのは、無論、女性用のランジェリーだ。この一ヶ月で、彼らの下着のコレクションは驚くほど充実した。レース、シルク、サテン。様々な色や形のブラジャーとショーツが、クローゼットの一角を占めている。林宇非は、淡いピンクのレースのブラジャーを手に取り、自分の胸に当てる。ホックを背中で留める仕草も、今では完全に板についている。ふっくらとした乳房が、ブラジャーによって形を整えられ、さらに魅力的な谷間を作り出す。それに合わせて、同じレースのショーツを履く。もはや、男性用のトランクスやボクサーパンツを履くことは、彼らの選択肢にはなかった。

林宇言は、黒のシルクのランジェリーを選んでいた。彼の白い肌に、黒は妖艶な輝きを放ち、見る者の目を釘付けにする。細いストラップが、華奢な肩にかかり、そのまま胸元へと流れるラインは、まさに芸術品だ。彼は最後に、お気に入りのガーターベルトを腰に巻き、スモークグレーのストッキングを慎重に履いていく。その一連の動作は、どこかの貴婦人が侍女に手伝わせて身支度を整えるかのように、優雅で、そして官能的だった。

準備が整うと、二人はソファに並んで座り、ただじっと、デレックが来るのを待つ。部屋の照明は、間接照明だけにして、ほの暗く落としてある。空気には、彼らが焚いたアロマキャンドルの、甘ったるいバニラの香りが漂っている。テーブルの上には、デレックの好物の赤ワインと、三つのグラスが用意されている。心臓は、期待と悦びで、早鐘のようにトクントクンと音を立てている。体の中心は、すでに熱く潤み始めている。彼らが待っているのは、恋人であり、主人であり、自分たちを完全な「女」にしてくれる、唯一の男。

やがて、玄関の鍵が回る音がした。二人の体が、同時にビクッと跳ねる。顔を見合わせ、無言でうなずき合う。そして、玄関のドアが開き、偉大な主人がその姿を現した時、林宇非と林宇言は、ソファから立ち上がり、まるで調教された猫のように、しなやかに床に膝をついた。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

第12章

ある秋のよく晴れた静かな午後、林宇非は偶然にも一枚の古い写真を見つけた。

それはアパートの寝室、クローゼットの一番奥にしまわれていた段ボール箱の底に、他の雑多な書類や古い携帯電話と一緒に紛れ込んでいた。引っ越しの時に適当に詰め込んだまま、もうずっと開けていなかった箱だ。何かを探していたわけではない。ただ、デレックに言われて冬物のコートを出そうと手を突っ込んだ指先が、硬い紙の角に触れただけだった。

何気なく引き抜いて、裏返した瞬間、林宇非の指がぴたりと止まった。

写真の中の青年は、不器用そうに黒いスーツを着て、大学の卒業式に臨んでいた。髪は今よりずっと短く、耳の上できっちりと切り揃えられ、前髪を固めたワックスが光に照らされて少し不自然に光っている。顔立ちは相変わらず繊細で女顔ではあったが、眉の間にはっきりと緊張と戸惑いが浮かんでいて、まるで自分の写るレンズに対して落ち着かない気持ちを隠せずにいた。唇はわずかに引き結ばれ、笑顔を作ろうとしているのにどうしてもぎこちなくて、肩はスーツのパッドで無理やりに形を整えられ、かえって身体の線の細さを強調してしまっている。

見覚えのある、それでいて遠い記憶の彼方にあるような顔だった。

林宇非はしゃがみ込んだまま、長いあいだその写真を見つめていた。窓の外から差し込む午後の陽射しが、フローリングの床に薄く伸びて、写真の表面に積もった埃を金色に光らせている。空気は少し乾いていて、秋特有のどこか寂しい匂いが部屋の中に漂っていた。

かつての自分。まだ何も知らなかった頃の、自分。

その写真の中の青年は、同性愛者ではないと信じていた。いや、そもそも自分の性的指向について真剣に考えたことすらなかった。ただ密かに、誰にも言えない趣味を抱えていた。夜、誰もいない自室で、こっそりとストッキングを履き、きつすぎるワンピースに腕を通して、鏡に映る女装した自分の姿に興奮し、恥辱と快楽の狭間で自慰に耽った。それだけの話だった。そうやって密かに愉しみ、現実の生活には決して影響を与えない、ただの小さな秘密。そう思っていた。

それが、どうして、こんなことになったのだろう。

指先が写真の上でかすかに震えた。卒業証書を握りしめた自分の手は、今の自分の手よりもずっと骨ばっていて、血管が少し浮き出ている。今の自分の手はというと、肌はもっと白くきめ細かくなり、指の節々さえ丸みを帯びて柔らかくなったような気がする。デレックに言われて伸ばした髪は耳の下まで届き、肩にかかるようになり、毎朝丁寧にブラッシングを欠かさない。肌の手入れも怠ったことはない。化粧水に乳液、たまにデレックが買ってきた美容液を使って、肌はますます滑らかになり、触れると陶器のような冷たさとしっとり感が指に伝わる。

心のどこかで、警鐘が鳴っているのが聞こえた。

こんなはずじゃなかった。自分は男だ。男に生まれて、男として育ってきた。たとえ女のような顔立ちをして、人に間違えられることが多かったとしても、心の中ではずっと自分を男だと思っていたし、男としての自尊心を持っていた。それが今はどうだ。毎晩のように女物の下着を身につけ、男に向かって自ら腰を振り、甘えるような声を上げ、恥辱にまみれながらも快楽に溺れている。デレックに言われるがままに振る舞い、叱られることを恐れ、褒められることに歓喜し、まるで飼いならされた雌犬のように、主人の顔色を窺って尻尾を振っている。

違う、違うんだ。

心臓が早鐘を打ち始める。こめかみのあたりがずきずきと痛み、手のひらにじっとりと汗が滲んだ。林宇非は写真を握りしめたまま立ち上がり、無意識のうちに部屋の中を歩き回った。この部屋もまた、かつての自分とはかけ離れた場所だ。クローゼットの中には、男物の服よりも多い女物の衣装がきちんとハンガーにかけられ、ドレッサーの上にはスキンケア用品がずらりと並ぶ。ベッドサイドの引き出しを開ければ、きっとデレックが買い与えた玩具の類や、恥ずかしい下着がしまわれているに違いない。

どこにも逃げ場なんてない。

窓の外に目をやる。街路樹の葉が黄色く色づき始め、遠くの空は青く高く澄んでいる。アパートから見える景色は穏やかで、どこにでもある日常の風景だ。その向こうに、かつて自分が目指していた未来があったはずだ。普通に就職して、いずれは結婚して、人並みの家庭を築いて。男として、当たり前の人生を。

でも、そんなものはもう幻想でしかなかった。

わかっている。わかっているんだ。

林宇非は深く息を吸い込むと、思い切ってスマートフォンを手に取った。画面をタップし、デレックとのメッセージの履歴を開く。最後のやりとりは昨夜のもので、内容は思い出すだけで顔から火が出るようなものだった。写真も何枚か送っている。デレックに言われて撮った、自分でも信じられないような卑猥なポーズの、恥辱にまみれた自分の姿がそこに並んでいる。

これが、現実だ。

「もしもし、あの、急に用事を思い出して……」

会社の同僚に電話をかける。声が少し上ずった。適当な理由をつけて、今日は外に出るから少し遅れるかもしれないと伝えると、相手は特に気にした様子もなく「了解」と短く返して電話を切った。林宇非はほっと息をつき、ジャケットを手に取って部屋を出た。

とにかく、今はこの空間から離れたかった。自分を取り戻したいと思ったわけではない。そんなことができるとは思っていない。ただ、このままでは息が詰まってしまいそうで、少しでも距離を置きたかった。写真の中の自分と、今の自分の間にある、あまりにも大きな断絶に、頭がついていかなくなりそうだったからだ。

アパートを出て、通りを歩く。秋の日差しはまだ暖かく、風は涼しさと生暖かさが入り混じっている。平日の昼下がりということもあって人通りは少なく、街はまったりとした空気に包まれていた。

スマートフォンが震える。ポケットから取り出して画面を見ると、デレックからのメッセージだった。

「今どこにいる?」

心臓がぎゅっと縮み上がる。何かを察したのだろうか。いや、そんなはずはない。たまたまだ。たまたま今、連絡をしてきただけだ。指が小刻みに震えながら、画面に文字を打ち込む。

「ちょっと外を歩いてます。すぐ戻ります」

送信ボタンを押した直後から、後悔がじわりと広がった。こんな返事でよかったのか。もっと丁寧に、自分の状況を説明するべきだったのではないか。彼を不快にさせただろうか。怒らせてしまっただろうか。

だめだ。だめなんだ。

自分が情けなくて、吐き気がする。こんなにも怯えている。デレックのたった一言に、こんなにも心を掻き乱されている。自分で自分を保つことができない。かつての自分なら、少なくとも表面上は平然を装うことができたはずだ。相手が誰であれ、必要以上にへりくだることはなかったはずだ。それなのに今は、たった一言のメッセージだけでこんなにも動揺している。

これが、調教の結果だ。支配されることに慣れきった心が、主人の顔色を窺うことを最優先にしている。そうすることでしか、安心を得られなくなっている。

林宇非は小さく息を吐き、歩き続けた。街角のカフェの前を通り過ぎ、小さな公園の脇を抜ける。どこへ行くあてもない。ただ、歩いているあいだだけは、何も考えずに済むような気がしていた。

公園のベンチに腰を下ろし、ぼんやりと前を見つめる。向かいには古びたブランコがあり、小さな子どもが一人、ぎこちない動きで揺れている。そのそばで母親らしき女性が微笑みながら見守っていて、時折「危ないわよ」と優しい声をかける。

当たり前の光景だ。

ふと、自分の身体に視線を落とす。細身のジーンズに包まれた脚は、かつてよりもずっと女性的な曲線を描いている。腰のくびれは日に日に深くなり、ヒップは丸みを帯びて少し上向きに突き出るようになった。デレックはそれを「いい尻になった」と褒め、よく背後から抱きしめてはそこに手を這わせた。そうされるたびに身体の芯が熱くなり、腰が勝手に動いてしまう自分がいた。

抵抗しなければ、と思う。

このままでは、本当に何もかも失ってしまう。男としての尊厳も、自分の意志も、かつての自分自身さえも。

頭では理解している。理解しているのに、体はもう、支配されることの快楽を知ってしまっている。痛みと快楽の境界線が溶けて混ざり合った、あの陶酔の瞬間を体が覚えている。強く抑えつけられ、自由を奪われ、すべてを委ねることの、あのどうしようもない安堵感を。

デレックの掌の感触を思い出すだけで、胸の奥がきゅうっと疼いた。太くて節くれだった指が、自分の肌の上を這いずり回る感覚。あの手で頭を撫でられるときの、全身が溶けてしまいそうな幸福感。もっと激しく、もっと乱暴に扱ってほしいと願ってしまう自分自身の浅ましさ。

違う、違うんだ。こんなこと、おかしいんだ。

林宇非は唇を噛みしめながら、固く目を閉じた。

頭の中に、昨夜の記憶が勝手に蘇る。デレックはいつものようにソファに深く腰掛け、脚を大きく広げていた。林宇非はその足元に跪き、言われるままに彼のベルトに手をかけた。黒い革の感触がまだ指に残っている。バックルを外す金属音は、いつ聞いても背筋に冷たいものが走るのに、同時に下腹部がじんわりと熱くなるのだ。

「待たせたな」

デレックはいつもそう言う。その声には焦らされていることへの嗜虐的な悦びが滲んでいて、林宇非はそれを聞くたびに身を竦ませる。それでいて、心臓は期待に跳ね上がる。矛盾した感情が渦を巻いて頭の芯を痺れさせる。

ジッパーを下ろす音が、静かな部屋に妙に大きく響いた。下着の上からでもはっきりとわかる隆起に、指先がかすかに震える。顔を近づけると、むわりとした雄の匂いが鼻を突き、思考がぼやけていく。

「自分から咥えろ」

命令は短い。けれどその一言だけで、体は自動的に動き出す。下着をずらし、そそり立つ黒い肉塊を露わにさせる。大きさに圧倒され、一瞬息を呑む。いつまで経ってもこれだけは慣れないのに、それなのに口の中には唾液が溢れてくる。

舌を伸ばし、先端にそっと触れた瞬間、デレックの太い指が髪の毛を掴んだ。優しく、しかし有無を言わせない強さで、頭を引き寄せられる。

「焦るなよ。ゆっくり、全部咥えさせてやるからな」

その声が、耳の奥でこだまする。怖い。苦しい。それなのに、もっと近づきたいと思う。根元まで喉の奥に押し込まれて、息ができなくなって、涙が滲んで、それでも顔を離せない。離したくない。

「いい子だ」

そう囁かれた瞬間の、背筋を走り抜ける甘い痺れ。

ああ、だめだ。

ベンチに座ったまま、太腿をぎゅっと擦り合わせている自分に気づいて、林宇非はぞっとした。ほんの少し思い出しただけで、もう下半身がじくじくと疼き始めている。ジーンズの股間のあたりが湿っているかもしれない。確かめたくない。確かめなくてもわかる。こんなにも淫らで、蕩けた身体になってしまっている。

抵抗しようとした。逃げ出そうとした。そして、すぐに諦めた。

そんなこと、できるわけがない。

もう手遅れだ。体も心も、すべてデレックに染め上げられてしまった。今さらもがいたところで、抜け出せるはずがない。それに、抜け出したいと本気で思っているのかどうかさえ、自分ではわからなくなっている。

スマートフォンが再び震えた。画面を見ると、今度は兄の林宇言からのメッセージだった。

「どこにいるの?デレックが心配してたよ」

心配。その言葉に、胸の奥がきゅっと締め付けられる。デレックが心配している。それはつまり、自分の行動が彼の目に留まり、彼の感情を動かしたということだ。恐怖と歓喜が同時に押し寄せて、吐き気がするほどだ。

「公園にいる。すぐ戻る」

短く返信して、立ち上がる。夕暮れが近づき、空の色が少しずつオレンジ色に変わり始めていた。風が冷たくなってきて、薄着で出てきたことを少し後悔する。

アパートに戻ると、玄関のドアを開ける前に深呼吸を一つ。鍵を差し込み、ゆっくりと扉を開く。

リビングには、デレックと林宇言がいた。

デレックはいつもの指定席である大きなソファの中央に腰掛け、片手に缶ビールを持ってテレビを眺めている。林宇言はそのとなりにちょこんと座り、デレックの肩にもたれかかるようにしてテレビ画面を見ていた。二人の姿はあまりにも自然で、まるでどこにでもいる恋人のようだった。

林宇非が部屋に入ると、デレックがゆっくりと顔を向けた。その瞳は深く沈み込むような黒さで、無表情に近いのに、なぜかすべてを見透かされているような気分になる。

「おかえり」

たった一言。されどその声の響きには、もっと多くの意味が込められている。どこに行っていたのか。なぜ勝手に外に出たのか。何を考えているのか。すべてを問い詰めるような圧力が、静かな声の奥に潜んでいる。

「ただいま……」

林宇非はうつむき加減に答え、靴を脱いでそっと部屋に上がる。そのままリビングの隅に向かおうとしたとき、デレックが空いている反対側の席を手のひらで軽く叩いた。

「こっちに来い」

逆らうという選択肢は、脳裏をかすめることすらなかった。林宇非はデレックの隣に腰を下ろす。ソファのスプリングがぎしりと軋み、デレックの体温がすぐ近くに感じられる。大きな手が伸びてきて、林宇非の髪をそっと梳いた。

「冷えてるな。ずいぶん長く外にいたのか」

「ごめんなさい」

自分でも驚くほど素直に、謝罪の言葉が口をついて出ていた。抵抗の意志はすでに消え失せ、ただ許しを乞う気持ちだけが心を占めている。こんな自分が情けないはずなのに、デレックの手の温かさに触れていると、張り詰めていたものがゆっくりと解けていくのを感じる。

林宇言が横から身を乗り出し、弟の顔を覗き込んだ。兄の顔立ちはかつてよりもさらに女性的になり、目元には柔らかな色気が漂っている。肩にかかる長さの髪は丁寧にブローされていて、ほのかに甘いシャンプーの香りがした。薄手のカーディガンを羽織った肩のラインは丸みを帯び、襟元から覗く鎖骨のくぼみが妙に艶めかしい。

「宇非、大丈夫?なんだか顔色が優れないけど」

心配そうな声。しかしその瞳の奥には、何かを察しているような鋭さがちらりと光っている。林宇非は言葉に詰まり、ただ曖昧にうなずいた。

デレックはしばらく林宇非の髪を撫でていたが、やがて手を離し、缶ビールをテーブルに置いた。

「今日は何があった」

問いかけというより、確認に近い口調だった。

林宇非は口を開き、そして再び閉じた。何を言えばいいのかわからない。写真を見つけたこと。かつての自分を思い出したこと。ほんの少しの間だけ、この生活から逃げ出したいと思ったこと。そんなことを正直に話せば、デレックはどう思うだろうか。怒るだろうか。それとも、そんなことで悩むこと自体を笑うだろうか。

「なんでもありません。ただ、ちょっと外の空気を吸いたくなっただけで……」

嘘だ。デレックにも、兄にも、おそらく自分自身にさえも、それは嘘だとわかっている。けれど今は、そう言うことしかできなかった。

デレックはしばらく林宇非を見つめていたが、やがて口元に薄く笑みを浮かべた。

「そうか」

それだけ言って、再びテレビに視線を戻す。追及されないことに安堵しつつも、その一方で、見透かされているような不安が胸の奥に残った。

夜が訪れるまで、三人はなんとなくそれぞれの時間を過ごした。林宇非は自室にこもり、ベッドに横になって天井を見つめていた。壁一枚隔てた向こう側からは、時折兄のくぐもった笑い声や、デレックの低い声が聞こえてくる。その声を聞いているうちに、いつしか心は凪いでいった。混乱は消えない。けれど、少なくとも、今はここにいたいと思っている自分がいることも、確かだった。

日付が変わる頃、林宇非は一人でリビングのソファに座り、部屋の灯りを落とした薄暗がりの中でぼんやりと窓の外を眺めていた。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、床に細く白い線を描いている。

足音もなく、林宇言が隣に腰を下ろした。兄はバスローブ姿で、濡れた髪からシャンプーの清潔な香りが漂っている。風呂上がりの肌はほんのりと赤みを帯び、湯気のせいか瞳が潤んで見えた。

「眠れないの?」

林宇言の声は静かで、けれどどこか確信めいた響きを持っていた。弟が何に悩んでいるのか、おそらく見抜いているのだろう。

「兄さん……」

「いいよ、無理に話さなくても。ただ、何かあったんだろうなっていうのは、見てればわかるから」

林宇言は膝を抱えるようにしてソファに座り、バスローブの裾からしなやかな脚がのぞいた。その脚のラインは女性のように滑らかで、ふくらはぎのあたりの柔らかな膨らみが薄暗がりの中でもはっきりとわかる。

「昔の写真を見つけたんだ」林宇非はぽつりと呟いた。「大学を卒業したときの」

林宇言は少しだけ目を見開き、それからゆっくりとうなずいた。

「そう。それで、いろいろ考えちゃったんだね」

「自分が、どこで道を間違えたのかなって。こんなはずじゃなかったって」

声が震えるのを止められなかった。泣いているわけではない。けれど胸の奥に溜まっていたものが言葉とともに溢れ出し、どうにも抑えがきかなくなっていた。

「こんなはずじゃなかった。男として生まれて、男として生きていくはずだった。それが今は……自分がなんなのか、もう全然わからない」

林宇言は黙って弟の言葉を聞いていた。窓の外で風が吹き、カーテンがふわりと揺れる。遠くで車の走り去る音が聞こえた。

「宇非」林宇言は静かに口を開いた。「私もね、昔は同じことを考えてた」

「兄さんも?」

「うん。デレックに初めて抱かれたとき、すごく抵抗した。自分は男だって、心の中で何度も叫んでた。でもね、体は正直だった。すごく気持ちよくて、自分でもびっくりするくらい。それで思ったの。自分は男として生きることに、そんなにこだわる必要があるのかなって」

林宇言は遠くを見るような目で窓の外を見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いでいく。その横顔は驚くほど穏やかで、迷いの欠片さえ感じられない。

「私はね、逃げようとしたことがあるの。一度だけ。デレックに抱かれて、あまりにも気持ちよくて、それが怖くなって、自分の部屋に閉じこもった。デレックと顔を合わせるのが怖くて、会社も休もうかと思った。でもね、一日も経たないうちに、自分からデレックに電話をかけてた。そばにいてほしいって。抱いてほしいって」

「そんな……」

「自分でも驚いたよ。私、こんなに弱い人間だったんだなって。でも、違うんだよね。弱いんじゃなくて、本当の自分を見つけたんだって、今は思う。デレックに支配されることで、むしろ自由になれた。自分を偽る必要がなくなった。男でいなきゃいけないとか、人並みの人生を歩まなきゃいけないとか、そんなの全部、他人が決めたルールでしかなかったんだよ」

林宇言は弟のほうに身体を向け、そっと手を伸ばした。細くしなやかな指が、林宇非の手の甲に触れる。その指先は温かくて、少しだけ湿っていた。

「ねえ、宇非。私たちはもう、昔の自分には戻れないんだよ。それは悲しいことかもしれない。でも、新しい自分になれたことも、きっと悪いことばかりじゃない」

「新しい自分……」

「私は今、幸せだよ。心からそう思う。デレックに叱られるのも、褒められるのも、抱かれるのも、全部ひっくるめて、今の自分が好き。女になって、雌犬になって、恥ずかしいことをいっぱいして、それでも、こんなに満たされることがあるんだって、知らなかった」

林宇非は何も言えずにいた。兄の言葉は嘘偽りのない、真実の告白だった。そこには一片のためらいもなく、ただ静かな確信だけが輝いている。

「宇非の気持ちはわかるよ。私だって、完全に吹っ切れるまでには時間がかかった。でもね、一度受け入れてしまえば、すごく楽になれるんだ。私たちはデレックのもの。それでいいじゃない。誰かのものになることで、かえって自分自身を取り戻せることもあるんだよ」

「……兄さんは、強いんだね」

「強くなんかないよ。ただ弱さを受け入れただけ。デレックの前で無理に強がらなくてもいいんだって、気づいただけ」

林宇言は立ち上がり、弟の頭をそっと撫でた。その仕草には母親のような慈しみがあり、同時に、どこか姉のような親密さも感じられた。彼の手からは柔らかな温もりが伝わってきて、張り詰めていた林宇非の心をゆっくりと解きほぐしていく。

「今夜はもう遅いし、ゆっくり休みなよ。明日も仕事だしね」

そう言って兄が寝室へ戻ろうとしたとき、林宇非は思わず呼び止めた。

「兄さん」

「俺も……私も、兄さんのようになれるかな」

林宇言は振り返り、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔はあまりにも自然で、美しくて、まるで長年女性として生きてきたかのように板についている。

「なれるよ。だって私たち、兄弟でしょ。ううん、姉妹、かな」

くすりと笑う声が静かな部屋に響き、林宇言の足音が遠ざかっていく。

リビングに一人残された林宇非は、しばらくそのまま座り込んでいた。胸の奥で何かが静かに崩れ落ち、同時に何かがすっきりと晴れ渡っていく。今まで心の隅でくすぶっていた抵抗の炎が、兄の言葉によって消し止められてしまった。それは寂しいことではなく、むしろ重荷が取れたような、不思議な解放感だった。

もう戻れない。戻る必要もない。

これが自分の居場所だ。兄とともに、デレックの雌犬として、恥辱にまみれ、快楽に溺れ、それでも満たされて生きていく。それが自分に与えられた道なのだと、林宇非はようやく素直に認めることができた。

ふと顔を上げると、リビングの入り口にデレックの巨大な影が立っていた。いつからそこにいたのかはわからない。けれどその表情は、この場の会話をすべて聞いていたことを物語っている。デレックは何も言わず、ただゆっくりと口元を歪めて笑った。それは獲物を完全に手中に収めた狩人の、深い満足に満ちた笑みだった。

林宇非はその笑みをまっすぐに見返し、そして自分から立ち上がってデレックの足元に歩み寄った。自分の意思で。誰に命令されたわけでもなく。

デレックの目の前で床に膝をつき、うつむき加減に頭を垂れる。それは完全なる服従のポーズだった。心臓は静かに、しかし確かな鼓動を刻んでいる。

デレックの大きな手が伸びてきて、林宇非の頭をそっと撫でた。その感触は、いつもと変わらず温かい。

「いい子だ」

低く響く声が耳の奥まで染み込み、全身が甘く痺れる。自分はこの瞬間のために生まれてきたのかもしれないと思えるほど、深い充足感が胸を満たしていった。

それから半年の月日が流れた。

冬が過ぎ、春が訪れ、夏の暑さが過ぎ去って、再び秋が巡ってくる。街路樹の葉が色づき始める頃には、林宇非と林宇言の変化はもはや誰の目にも明らかだった。もっとも、会社の同僚たちはその変化を「最近なんだか雰囲気が柔らかくなった」程度に捉えているようだったが。

二人は仕事では以前と変わらず有能な会社員として振る舞い、それぞれのデスクで業務をこなし、会議に出席し、取引先と交渉する。林宇非のデスクは窓際にあり、パソコンの画面に向かう横顔は相変わらず繊細で美しい。隣の席の同僚が書類を手渡すとき、その指先の白さに一瞬目を奪われることもあったが、まさかその指が毎晩のように男の身体を這い回っているなどとは誰も想像しない。

林宇言はさらに巧みに振る舞っていた。元々の物腰の柔らかさに加えて、立ち居振る舞いの一つひとつが洗練され、時折見せる笑顔には同性さえどきりとさせる色気が漂う。女子社員たちからは「林先輩って、なんだか素敵になりましたよね」と囁かれることも多くなった。本人はそれを聞くたびに、ほんの少し口元をほころばせるだけだったが。

しかし退社時間が近づくにつれて、二人の表情には微妙な変化が現れ始める。時計の針が五時を指す頃には、もう心は会社にはなく、早く自宅に戻りたいという欲求で胸がいっぱいになる。定時になるとそそくさとデスクを片付け、他の誰よりも早くオフィスを後にする。同僚たちは「兄弟仲がいいんだな」と微笑ましく思う程度で、彼らの本当の関係に気づく者はいなかった。

アパートのドアを開けると、そこから先はまったく別の世界だ。仕事着のスーツを脱ぎ捨て、クローゼットから選び抜かれた衣服に着替える。柔らかな素材のワンピースだったり、体の線を強調するタイトなカットソーだったり、時にはデレックが特に好む極端に短いスカートだったりもする。

化粧もまた、日々の儀式の一部だった。最初は兄の手を借りながら覚えた化粧の手順も、今では二人とも手慣れたものだ。下地を伸ばし、ファンデーションで肌のトーンを整え、眉を描き、アイラインを引き、マスカラで睫毛を長く見せる。頬にはほんのりとチークをのせ、唇には淡いグロスか、あるいはデレックの好みに合わせて深紅のルージュを引く。

鏡の前に立つ二人の姿は、もはやどこからどう見ても美しい姉妹だった。肩にかかる髪、丸みを帯びた肩のライン、ふっくらと柔らかな胸元、くびれた腰、長く均整のとれた脚。鏡の中の自分たちを見つめながら、二人はなんの違和感も抱かなくなっていた。むしろ、この姿こそが本当の自分だとさえ思えるようになっていた。

デレックが帰宅するのはたいてい七時過ぎだ。ドアの開く音がすると、二人は揃って玄関へと向かう。床に膝をつき、両手を前に揃え、うつむき加減に頭を垂れる。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

声を揃えての挨拶は、もはや完璧に息が合っている。

デレックは満足げに二人を見下ろし、まず林宇言の頭を撫で、それから林宇非の頭を撫でる。順番は決まっていて、必ず兄が先だ。それは暗黙の了解であり、二人ともその序列を当然のこととして受け入れている。

「いい子にしてたか」

「はい。ご主人様の帰りを、ずっとお待ちしておりました」

答えるのはいつも林宇言の役目だ。弟は黙ってうつむいたまま、デレックの手が頭に触れる瞬間をじっと待っている。手が触れると、全身を幸福感が駆け抜け、それまでの緊張が一気に解けていく。

夕食の時間は、三人にとって安らぎのひとときだった。デレックはソファに座り、二人はその両脇にぴったりと身を寄せる。テレビをつけ、とりとめのない話をしながら、デレックの箸が伸びるのを待つ。時にはデレックが直接、箸で摘んだおかずを二人の口元に運ぶこともある。そんなとき、二人はまるで雛鳥のように小さく口を開け、差し出されたものを受け入れる。その仕草には一片のためらいもなく、ただ純粋な信頼と歓びだけが込められていた。

食事が終わると、次は身体の手入れの時間だ。デレックは風呂場に二人を呼び、自らシャワーを手に取る。細かい霧状の湯が二人の裸体を濡らし、ボディソープの泡が白く肌の上を滑っていく。デレックの大きな手が、林宇非の胸元から腹部、そして腰のくびれを経て、丸みを帯びた臀部へと這い回るとき、林宇非は小さく身を震わせながら、されるがままに身を委ねる。

「感度がよくなったな」

耳元で囁かれる低い声に、膝が震える。もう恥ずかしさはない。あるのはただ、もっと触れてほしい、もっと支配してほしいという渇望だけだ。

隣では林宇言が同じようにデレックの指を受け入れている。背中から抱きしめられ、胸の膨らみを優しく揉まれながら、兄はうっとりと目を閉じていた。その口元には微かな笑みが浮かび、時折漏れる吐息には甘い色が混じっている。

湯船に浸かる順番も、寝室へ向かうタイミングも、すべてはデレックの気分次第だった。けれど二人はその不確定ささえ愉しむようになっていた。予測不能な命令に従うこと、自分では決められないこと、そのすべてが支配されている実感を強め、それがまた新たな快楽の源泉となるのだった。

ある夜のこと。

秋も深まり、窓の外から虫の声が聞こえる静かな晩だった。月が高く昇り、青白い光がアパートの一室に差し込んでいる。部屋の照明は落とされ、月明かりだけが三人の姿をぼんやりと浮かび上がらせていた。

デレックは広々としたベッドの中央に腰掛け、ゆったりと背を凭れさせていた。上裸の上半身は黒光りする筋肉で覆われ、月明かりの下でぶ厚い筋肉の起伏がくっきりと影を刻んでいる。太い脚を開いて座る姿は、まるで古代の王が奴隷の奉仕を待つかのような威圧感に満ちていた。彼の目の前、床の上に、二人の兄弟が跪いている。

いや、もはや姉妹と呼ぶべきだろうか。林宇言と林宇非は、薄手のネグリジェ一枚を身にまとうだけの姿で、揃ってデレックの股間に顔を近づけていた。ネグリジェの布地はシルクのように滑らかで、月光を受けて艶めかしく輝いている。細いストラップが肩から滑り落ちそうになり、それすらも計算されたかのように色っぽかった。

「さあ、今夜もたっぷり可愛がってやる」

デレッ

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第1章

都会の喧騒に包まれた高層マンションの一室。遮光カーテンが外界の光を完全に遮断した薄暗い部屋の中で、かすかな衣擦れの音と、抑えきれない吐息だけが静寂を破っていた。

林宇非は、全身を覆うように取り付けられた姿見の前に立っていた。鏡に映る自分自身の姿に、彼は息を呑む。そこに立っているのは、スーツをきっちりと着こなした一流企業のエリート社員ではなく、純白のレースがあしらわれたバニーガールのコスチュームに身を包んだ、一人の妖艶な「女性」だった。

元々の素材が良いのだ。男として生まれながら、その顔立ちは驚くほど繊細で、女性的な柔らかさを帯びている。小作りな顔の輪郭、陶磁器のように白くきめ細やかな肌。耳のあたりで切り揃えられた黒髪が、動くたびにさらりと揺れて、長いまつげに縁取られた瞳を隠したり覗かせたりする。肩幅は狭く、ラインは角張ることなく丸みを帯びて、力強さよりも庇護欲をそそる華奢さを演出していた。

そして、その体型こそが、彼を単なる「女顔の男」から「男の娘」へと昇華させる最大の要因だった。コスチュームの胸元は、男性のそれとは思えないほどふっくらと、雪のような双丘を形成している。筋肉質な硬さは微塵もなく、まるで思春期の少女のような、柔らかく豊かな膨らみがそこにはあった。細くくびれた腰から、ヒップにかけての曲線はため息が出るほど美しい。臀部は平たく痩せ細ることなく、丸みを帯びて豊かに、そしてわずかに上向きに突き出し、雌の魅力を雄弁に物語っている。バニースーツから伸びる脚は長く均整が取れ、網タイツに包まれた肌は見る者を誘うように滑らかだった。手足は小さく、指は肉付きが良く、ほんのりと赤みが差していて、全身のシルエットが完璧なまでに女性的な柔らかさと起伏を描き出している。

「はぁ……っ」

宇非は熱い吐息を漏らすと、その小さな手を、そっと自身の胸元へと這わせた。男性器を覆う貞操帯の冷たい感触が、逆に彼の内なる熱を煽る。彼はこの感覚に、抗いがたい悦びを見出していた。

心の中では、頑なに否定している。俺は同性愛者なんかじゃない。これはただの、個人的な、特殊な嗜好だ。そう、自分に言い聞かせるように。しかし、鏡に映る自分を舐め回すように見つめ、男たちの視線を想像すると、体の芯が震えるような快感に包まれる。女装して一人で慰める時、彼の妄想の中にはいつも、力強い「男」の影があった。決して自分から望んだわけではない、気がつけばそうなっている。心の奥底では抵抗しながらも、体は正直に、支配され、蹂躙される想像に悦んでいた。

ディルドを手に取り、後孔にあてがう。すでに慣らされたそこは、異物を難なく飲み込んでいく。前立腺を掠めるたび、背筋を電撃が走るような快感が彼を貫いた。彼は、ネットで知り合った黒人の「ご主人様」から教え込まれた通りに、ゆっくりと、しかし確実に、自らの体を開発していく。これは恥ずべき行為だと頭では分かっていながら、止められない。ディルドを出し入れするたびに、彼の口からは女のような甘い嬌声が漏れ、羞恥心は快楽のスパイスへと変わっていくのだった。

一方、その隣室でも、同じような光景が繰り広げられていた。

兄の林宇言は、弟よりもさらに一歩進んだ、淫靡な装いで鏡の前に立っていた。彼もまた、弟に勝るとも劣らない、天性の「雌」の器だった。顔立ちは繊細で優しげでありながら、眉目にはとろけるような色香が漂っている。骨格は元々華奢で、髪は弟と同じく耳のあたりで切り揃えられ、透き通るように白い肌と相まって、儚げな印象を与える。しかし、その体つきは弟以上に妖艶で、熟している。乳房はより柔らかく、自己主張するかのようにふっくらと隆起し、女性用のレースのブラジャーがなければ、その重みでスーツのシルエットを崩してしまうほどだ。腰は細くしなやかで、触れれば折れてしまいそうな危うさを持ちながら、臀部は驚くほど幅広く、丸みを帯びて豊かに突き出している。その肉感的な曲線は、明らかに男性のものではない。細く長い脚、丸く豊かな足の輪郭。彼はしばしば街中で女性に間違えられ、振り返られることもしばしばだった。

「んっ……ふぅ……」

宇言は、チャイナドレス風の黒いミニのワンピースを身にまとい、編み上げのロングブーツを履いていた。彼の手には、弟が使っているものより二回りは大きい、ずっしりと重みのある黒いディルドが握られている。彼はすでに、自身の後孔が単なる排泄器官ではなく、快楽を生み出す性器であることを完全に理解していた。ディルドの先端が窄まりに触れるだけで、期待に体が震える。

彼もまた、ネット上で黒人の「ご主人様」に調教されている。弟よりも早く、この倒錯した快楽に溺れた。最初は弟と同じように、自分は同性愛者ではないと思っていた。女装も、アナルでの自慰も、ただの一時的な遊びだと。しかし、その考えは、リモートでの調教が進むにつれて脆くも崩れ去った。相手の命令に従い、恥ずかしいポーズを取らされ、自分の体を晒す。その度に感じる、支配される悦び。彼の心は、「男としての矜持」から「雌としての幸福」へと、急速に塗り替えられていった。

彼はディルドにたっぷりとローションを塗りつけると、鏡に向かって腰を突き出し、自らの窄まりにあてがった。すでに拡張され、敏感になりきったそこは、容易に巨根の先端を飲み込んでいく。

「あああっ……!」

ずぶぶぶ……という淫猥な水音とともに、ディルドが根元まで埋め込まれる。前立腺を直撃する圧迫感と、直腸を満たされる異物感が、脳を蕩けさせるような快感となって全身に広がる。彼は自らの腰を振り、最も気持ち良い場所を探り当てると、激しく抜き差しを始めた。鏡の中の「女」が、淫らに腰をくねらせ、雄を求める。普段は冷静沈着なエリート社員の面影はそこにはない。ただ、快楽に忠実な一匹の雌犬がいるだけだった。

二人はもちろん、互いの秘密を知らない。だが、彼らがネット上で「ご主人様」と呼び、奉仕している相手は、奇しくも同一人物だった。そして、その相手が、自分たちのすぐ近くにいることなど、露ほども知らなかった。

---

翌朝。林宇非と林宇言は、いつもと変わらぬ様子で、高層オフィスビルのエントランスをくぐった。タイトなスーツに身を包み、ネクタイをきっちりと締めた二人の姿は、誰の目にも有能な若手ビジネスマンにしか見えない。低く落ち着いた声で同僚と挨拶を交わし、手際よく業務をこなす彼らは、まさしく「出来る男」の鑑だった。

しかし、そのスーツの下には、誰にも言えない秘密が隠されている。

宇非は、全身に汗が滲むのを感じていた。ただの暑さではない。羞恥と背徳感、そして言いようのない興奮によるものだ。彼のスーツの下には、黒いレースのフルセットのランジェリーが肌に張り付いている。ワイヤー入りのブラジャーは、彼のふっくらとした胸をやさしく包み込み、その中心にあるリボンが、服の上からでも分かるのではないかという倒錯感を煽る。股間は、小さなピンク色の貞操帯が男性器をがっちりと拘束し、その奥には、シリコン製のアナルプラグが異物感を主張していた。歩くたびに、プラグが前立腺を刺激し、甘い痺れが腰に響く。彼は、トイレに行くたびに鏡を見て、自分の変態的な姿を確認せずにはいられなかった。心は不安でいっぱいなのに、体は確かにこの状況を喜んでいる。

それは兄の宇言も同じだった。いや、彼の方がより過激ですらあった。彼のスーツの下の下着は、臙脂色のオープンクロッチのボディストッキングだ。背中と臀部が大きく開き、胸の部分だけがレースで覆われている。股間の貞操帯は弟のそれよりも小さく、ペニスを根本から折り曲げるように固定しており、激しい苦痛と快感をもたらす。そして、彼が挿入しているアナルプラグは、リモコンバイブ付きの金属製のものだった。冷たい金属の感触が、彼の内壁を常に犯し続けている。

昼下がり、宇非は我慢できずにトイレの個室に駆け込んだ。前立腺への刺激が蓄積し、貞操帯の中でペニスが痛いほどに勃起し、先走りが溢れ出している。彼は便器の前に立ち、スラックスとボクサーパンツを一気に下ろした。正確には、ボクサーパンツの下に履いた、黒いレースのTバックをずり下ろしたのだ。

「はぁ……はぁ……んっ……」

彼は壁に手をつき、前かがみの姿勢で、自身の臀部を手で広げた。そこには、肛門にぴったりと密着した、ハート型の宝石が煌めくアナルプラグの基部が見えている。彼はそのプラグをゆっくりと引き抜き始めた。ズルリ、という感触とともに、拡がりきった窄まりが空気に触れ、ヒクヒクと可愛らしく収縮する。そして彼は、小さなポーチからローションを塗ったディルドを取り出すと、再び自らの窄まりにあてがい、一気に奥まで突き入れた。

「うっ、くぅ……!」

あまりの快感に、声を殺すので精一杯だった。

行為を終え、ぐったりとしながら身支度を整えようとした、まさにその時だった。バランスを崩し、前のめりに倒れそうになり、慌てて足を踏ん張る。その拍子に、まだ完全に上げきれていなかったスラックスの腰の部分がずり下がり、シャツの裾がめくれた。

鏡越しに、彼の白く細い腰のラインが露わになる。そして、その腰骨のすぐ上、スラックスとシャツの隙間から、黒いレースのストッキングの、幅広の飾りゴム部分が、はっきりと覗いてしまったのだ。

その瞬間、ガチャリと個室のドアが開く音がした。

「おっと、失礼。……ん?」

入ってきたのは、同じ部署の同僚、デレックだった。筋骨隆々とした巨漢の黒人男性で、その存在感は圧倒的だ。彼は一瞬、林宇非の腰元に視線を釘付けにした。黒いスーツと純白のシャツの間に、あまりにも場違いな、官能的な黒いレース。それは明らかに、女性用の高級ストッキングの一部だった。

時間が凍りついたかのように、二人は見つめ合った。宇非の顔からは血の気が引き、心臓が握り潰されるような恐怖が襲う。

「り……林、ちょっとペーパーを取ってくれないか」

デレックは何事もなかったかのように、軽い口調で言ったが、その目は確かに、宇非の露出した肌とレースを捉えていた。宇非は慌てて服を整えながら、「ど、どうぞ……」と声を震わせてペーパーを差し出した。

デレックはそれを受け取ると、口元に意味深長な笑みを浮かべ、何も言わずに個室を出て行った。後に残された宇非は、絶望的な羞恥心と、それとは正反対の、言い知れぬ興奮に震えていた。

デレックはトイレを出ると、手を洗いながら、野生の獣のような、狡猾で危険な笑みを深くした。彼は知っていた。いや、確信していたのだ。

実は、彼こそが、林宇非と林宇言の兄弟をネット上で調教している、謎の黒人の「ご主人様」だった。

もともと彼は、同じコミケのコスプレイヤー仲間から「すごい男の娘がいる」という噂を聞きつけ、彼らの写真を見て、そのあまりの完成度の高さに目を付けた。観察力に優れた彼は、ネット上で画像検索を駆使し、二人の投稿写真から、彼らが勤める会社や、生活圏を特定した。そして、なんと同じ会社の同僚だったのだ。この偶然に、彼は運命を感じ、すぐさま獲物を手中に収めるための罠を張り巡らせた。彼らを一人ずつ、別々のアカウントで巧みに言葉巧みに誘導し、心の奥底にある被支配願望を聞き出し、徐々に調教を施していったのである。彼らの体つき、些細な仕草、声のトーン。目の前で働く二人の男性が、ネットの向こうで自分の命令に従い、雌犬のように喘いでいる「アイツら」である可能性には、最初から気づいていた。

今日のトイレでの出来事は、彼の確信を決定的なものにした。あの腰のライン、レースの質感。それは間違いなく、彼がネットで「穿け」と命令した下着だった。

「やっと見つけたぞ……俺の可愛い雌犬たち」

デレックは心の中で呟き、オフィスへと戻っていった。彼はまだ、この獲物をすぐに喰らい尽くすつもりはなかった。むしろ、これからが本当の調教の始まりだ。今日の出来事をネタに、ネット上でどのように追い詰め、恥辱を与え、彼らの心の壁を破壊していくか。その想像だけで、彼の股間は熱く滾り始めていた。

あの兄弟に、もっと過激で、もっと恥ずかしい「課題」を与えよう。彼らが羞恥と興奮に震えながら、それでも従わざるを得ない状況を作り出し、ゆっくりと、しかし確実に、自分なしでは生きていけない体と心に作り変えていく。デレックの頭の中では、すでに新たな調教メニューが組み立てられ始めていた。まるで、獲物をいたぶる狩人のように。

第2章

林宇非と林宇言は、もはや後ろの孔を弄る快楽なしでは一日も過ごせなくなっていた。最初は恐る恐る指を挿し入れていただけの行為が、今ではアナルプラグという異物を常に体内に留めることを求め、その満たされる感覚に酔いしれるようになっていた。彼らは毎晩のように、第三の性・男の娘と題されたサイトを隅々まで閲覧し、そこで紹介されている様々なSM調教の道具や方法に、目を奪われ、心を奪われた。縄で縛られ、目隠しをされ、鞭で打たれる動画を見るたびに、彼らの胸の奥底では、名状しがたい渇望が、まるで毒々しい蔓草のように、ゆっくりと、しかし確実に心臓に絡みついていくのを感じていた。

「兄さん……これ、見て」

林宇非は、薄暗い部屋の中で、ノートパソコンの画面を指さした。液晶の光が、彼の女性的な曲線を帯びた白い肌を青白く照らし出し、その繊細な顔に陰影を落としている。画面には、男性同士でありながら、一方がまるで少女のように扱われ、甘く切ない声で啼く動画が流れていた。

「この子、すごく気持ちよさそう……」

林宇言は弟の肩越しに画面を覗き込み、その桜色の唇をわずかに開いた。彼の妖艶な目元は、画面の中の光景に釘付けになっている。もともと華奢な骨格に、女性のように柔らかな乳房、そしてくびれた腰。彼自身が、すでにその動画の中の人物と自分を重ね合わせてしまっているかのようだった。

「本当だ……私たちも、もっと、こういうことをしてみたいね」

林宇言の声は甘く掠れており、その言葉は単なる同意ではなく、深い共犯関係への誘いだった。彼は弟よりも一足早く、この禁断の快楽の深淵へと足を踏み入れていた。デレックという名の、巨大な黒い影に心を支配される喜びを知ってしまった彼にとって、もはや普通の快感では物足りない身体になりつつあったのだ。

彼らは毎日、出勤前に互いの後孔にアナルプラグを挿入し合うことを日課とした。浴室の鏡の前で、二人は裸になり、向かい合う。鏡には、まるで二人の少女が寄り添っているかのような、背徳的で美しい光景が映し出される。肌は透き通るように白くきめ細かく、腰のくびれは優雅で、臀部は丸く豊かに突き出ている。

「宇非、力を抜いて……」

林宇言は、冷たいシリコンの塊に潤滑ゼリーをたっぷりと塗り込みながら、優しく囁く。林宇非は鏡に映る自分の姿を見つめながら、小さく震えた。兄の細くしっとりとした指が、自分の窄まりに触れる。その瞬間、身体の芯がきゅっと甘く疼くのを感じる。

「んっ……」

異物がゆっくりと体内に押し入ってくる感覚は、いつまで経っても慣れることはない。最初は違和感と、排泄感にも似た異様な圧迫感。しかし、それが最も深い場所にまで達し、括約筋がきゅうっと閉まってプラグの根元をしっかりと咥え込む瞬間、下腹部の奥底から、耐えがたいほどの甘い痺れが、じわじわと全身に広がっていくのだ。

「入ったよ……どう?」

林宇言が耳元で尋ねる。その吐息が肌に触れるだけで、林宇非の背筋にぞくぞくと快感が走る。彼はもう、自分の身体が自分のものではないような感覚に陥っていた。

「いっぱい……お腹の中、いっぱいになってる……」

声は、自分でも驚くほどに甘く、色っぽく震えていた。

彼らはその埋められる異様な感覚を楽しみながら、会社へと向かう。スラックスの中で、プラグが一歩歩くたびに内部の敏感な場所を優しく、あるいは時に強く圧迫する。その刺激に、二人は歩く速度を緩め、無意識のうちに腰をくねらせ、尻を振って刺激を和らげようとした。その歩き方は、端から見れば、ひどく婀娜っぽく、扇情的だった。

そして、その日は朝から慌ただしかった。いつもより遅く起きた二人は、儀式のようにゆっくりとプラグを楽しむ余裕もなく、大急ぎでそれを挿入し、リモコンを無造作にカバンに放り込んで家を飛び出した。

会社に着き、始業のチャイムが鳴る直前だった。林宇非が血の気の引いた顔でトイレから戻ってきた。

「兄さん……リモコン……トイレの洗面台に……」

彼の声は、今にも消え入りそうなほどか細かった。林宇言も、その言葉を聞いた瞬間、心臓が氷の手で握りしめられたかのように、ぎゅっと収縮するのを感じた。あのリモコンは、彼らにとって、ただの電子機器ではなかった。それは、彼らの淫らな秘密そのもの。もし誰かに拾われて、中身を知られたら……想像するだけで、全身の血が凍りつくような恐怖が走る。

「すぐに取りに行こう」

林宇言はそう言ったが、時すでに遅し。トイレの方から、彼らの同僚であるデレックが、意味深長な笑みを浮かべて歩いてくるのが見えた。彼の大きな手には、見覚えのある、二つの小さなリモコンが握られている。その歩き方は、まるで獲物を追い詰める黒豹のようだった。

德瑞克は、手にしたリモコンの型式を見て、かつて自分が仕掛けた「ストッキング事件」のことを思い出していた。あの時も、ネット上で獲物を見つけ、観察し、そして罠を仕掛けた。今回も、獲物は自ら正体を露呈したのだ。彼は口の端を吊り上げ、にやりと笑う。それは、あの時ネット越しに自分を「黒い雄犬」と呼び、調教を懇願していた卑猥な雌犬たちの、本当の姿がわかった瞬間の、勝利の確信だった。

「なるほどな……お前らだったのか」

彼は楽しそうに呟き、親指でリモコンのスイッチを、ゆっくりと、まるで愛撫するかのように押し込んだ。

その瞬間、自分のデスクで仕事の準備をしていた林宇非と林宇言の身体に、同時に、激しい衝撃が走った。体内に埋め込まれた異物が、突然、意思を持ったように激しく唸りを上げ、振動し始めたのだ。

「ひっ……!」

林宇非は不意を突かれ、思わず小さな悲鳴を上げそうになり、慌てて自分の口を押さえた。彼の華奢な身体がびくんと跳ね、椅子の上で大きく震える。下腹部の奥深く、前立腺を狙い澄ましたかのように、強烈な振動が襲いかかる。その刺激は、快感というにはあまりにも暴力的で、しかし確実に彼の身体の奥底に眠る雌の本能を呼び覚ます。

「な、に……どうして……」

隣の席の林宇言も、同様だった。彼はデスクに突っ伏すようにして、必死に耐えようとした。普段は冷静な彼の切れ長の目が、驚愕と混乱に見開かれている。顔には見る見るうちに紅潮が広がり、桜色の唇からは熱い吐息が漏れる。頭では状況を理解しようと必死になるが、身体はすでに、この振動を与えてくる支配者を求め始めていた。

(誰かが……リモコンを……拾った……!)

その事実が、恐怖と共に彼らの脳裏をよぎる。

(誰? 掃除のおばさん? それとも他の社員? もしバレたら……もう会社にはいられない……)

しかし、その恐怖と同時に、彼らの心の奥底では、暗く、歪んだ期待が、まるで闇に咲く花のように、その不気味な花弁を開き始めていた。

(誰かが……私の、私たちのお尻を、自由に動かしてる……)

德瑞克は、離れた場所から二人の反応を冷たく、しかし熱く観察していた。頬を染め、机にしがみつき、必死に声を殺そうとする二人の姿は、この上なく彼の支配欲を満たした。彼はまるで、精巧なラジコン人形を操るように、リモコンのスイッチを段階的に押していく。振動は、弱、中、強へと、容赦なくその強さを増していく。

「うっ……く……」

林宇非は、両脚を固く閉じ、机の下で太腿を小刻みに震わせた。肛門を激しく震わせる異物は、彼の思考力を根こそぎ奪い去っていく。彼は書類に目を落とそうとするが、文字が一つも頭に入ってこない。全身の神経が、すべて後ろの孔に集中し、甘く痺れるような快感だけが、ノイズとなって脳内を満たしていく。息が荒くなり、顔は火が出るように熱い。彼は唇を強く噛み締め、漏れ出そうになる甘い喘ぎを必死に押し殺した。自分の身体から聞こえる、ブブブという小さな振動音が、誰かに聞こえてしまうのではないかという恐怖が、快感をさらに何倍にも増幅させる。

林宇言の様子はもっと艶めかしかった。彼はもはや、隠すことを半ば諦めているようでもあった。長い髪が耳元で汗で濡れ、伏せた目尻は赤く染まり、切なげに潤んでいる。彼はデスクの下で、無意識に腰を動かしていた。内部で暴れるプラグを、もっと奥に、もっと強く押し付けようとするかのように、腰がゆっくりと円を描く。

(ああ……この感覚……誰かに、知らない誰かに見られながら、犯されてる……)

彼の心は、恐怖よりも、征服されることへの甘美な陶酔でいっぱいになりつつあった。デレックに抱かれた時の、身体の奥深くまで支配されるあの感覚が、今、再び、しかも見知らぬ誰かによってフラッシュバックされる。その背徳的な快楽は、彼の理性を容易に溶かしてしまう。

昼休みのチャイムが鳴った時、彼らは通常ならばプラグを外す時間だとわかっていた。しかし、二人は顔を見合わせると、目に見えない合図を交わした。外すわけがない。むしろ、この誰かに支配されているという状況を、もっと味わいたい。彼らの心は異常な期待で満ち溢れていた。恐怖は、もはやスリルへと変質している。誰かが、自分の一番恥ずかしい場所を、自由自在に操っている。その事実が、彼らの被虐的な性癖を激しく刺激した。

午後の仕事中も、德瑞克の狡猾なゲームは続いた。彼は二人が仕事に集中し始めた頃合いを見計らって、不意にスイッチを押す。もしくは、会議中、誰かが発言している静かな瞬間に、ごく短く、弱く振動させる。

「……んっ!」

林宇非は、突然の刺激にまたしても小さく声を漏らし、慌てて咳払いをする。隣の席の女性社員が不思議そうな顔で彼を見た。彼はなんとか愛想笑いを浮かべようとしたが、紅潮した顔と潤んだ瞳は、どうにも隠しようがなかった。

林宇言は、電話応対中に振動が強くなり、一瞬息が止まりそうになる。受話器の向こうの相手に、自分の乱れた息遣いが聞こえてしまうのではないかと、生きた心地がしなかった。

德瑞克は、その全てを影から見て、愉悦に浸っていた。彼が振動を与えるたびに、二人の兄弟の身体がびくんと跳ね、顔を紅潮させ、いやらしく腰を震わせる。まるで、自分が彼らの身体の主導権を完全に握っているかのようだった。彼にとって、これは最高に刺激的な狩猟の時間だった。

その夜、二人は言葉少なに家に帰り着いた。玄関のドアを閉めた瞬間、社内で必死に押し殺していた緊張の糸が、音を立てて切れた。彼らはお互いの顔を見ると、そこには疲労と同時に、信じられないような高揚感が浮かんでいるのを発見する。

「……今日は、すごかったね」

林宇言が、熱に浮かされたような、かすれた声で言った。彼の目は、まだ潤んでいて、瞳孔が異常に開いている。

「うん……怖かったけど……でも……」

林宇非は、その先を言うのをためらった。スラックスの中は、一日中染み出し続けた腸液と先走りで、ひどく湿っていた。身体は疲れ果てているのに、心は異様な興奮でざわついている。

「でも、また、ああやって誰かにされてみたい……」

彼は、顔を真っ赤にして俯きながら、消え入りそうな声で本音を告白した。それは、彼自身が初めて自覚した、深く暗い欲望の言葉だった。

「私も……」

林宇言は、弟の手を握った。その手は、欲望と恐怖で冷たく震えていた。

「誰かに支配されてるって思ったら、身体が、もう自分でいられなくて……頭がおかしくなりそうなくらい、気持ちよかった……」

二人は、自分たちの身に起きたことをベッドの中で何度も反芻した。暗闇の中で、体内にまだプラグが入っているような錯覚に囚われる。天井を見つめながら、彼らは一睡もできずに寝返りを打ち続けた。今日一日、自分たちを嬲り続けた、あの見えない手の感触を、何度も、何度も、思い返す。

(あれは、一体誰だったんだろう……)

考えるたびに、心臓が早鐘を打ち、後孔がきゅんと疼く。恐怖や不安よりも、病的な刺激への抗いがたい渇望が、彼らの中で静かに、しかし確実に、肥大化していった。彼らはもう、普通の自慰では満たされない身体になり果てていた。

朝が来た。

二人は、ほとんど眠れぬままにベッドから起き上がった。鏡に映る自分たちの顔は、どこか憔悴しているようでありながら、その目は異様な輝きを放っている。彼らは無言のまま、洗面所の棚から、一晩中充電器に繋がれていた二つのアナルプラグを手に取った。充電完了のランプが、静かに緑色に点灯している。それは、彼らを新たな快楽のステージへと誘う、危険なシグナルだった。

冷たく硬いシリコンの感触を指で確かめながら、二人は複雑な表情で見つめ合った。羞恥、期待、恐怖、そして自分たちの変態的な行為への甘美な陶酔。それらが混ざり合った、形容しがたい表情だった。

「……入れるよ、宇非」

林宇言の声は、決意に満ちているようで、どこか震えていた。林宇非は、何も言わずに、ゆっくりと頷き、洗面台に手をついて腰を突き出した。彼の白く豊かな双臀が、朝の光の中で、生々しく、いやらしく照らし出される。

潤滑ゼリーをたっぷりと纏ったプラグの先端が、昨夜の余韻でまだ柔らかく、ひくひくと収縮を繰り返している後孔に触れる。その冷たい感触に、林宇非は「ひゃっ」と小さく鳴き、全身を震わせた。

「……ああ……っ!」

昨夜の感覚がフラッシュバックする。誰かに見られているかもしれない、支配されているという感覚。その想像だけで、彼の窄まりは自ら異物を受け入れようとひくつき、プラグは先ほどよりもずっと簡単に、彼の身体の奥深くへと吸い込まれていった。満腹感と背徳感が同時に彼を襲い、彼はその場にへたり込みそうになる。

林宇言も、自ら同じことを行う。鏡を見ながら、自分の後ろの孔を異物でいっぱいに犯す。その行為自体が、もはや快楽の儀式だった。

「約束だよ、宇非。今日は絶対に、リモコンを誰にも渡さない。私たちだけで……」

「うん、でも……」

林宇非は、言葉を濁した。彼の心の奥底では、今日もまた、あの名も知らぬ誰かが、自分たちのリモコンを見つけて、スイッチを押してくれないかと、密かに願っている自分がいることに気づいていた。

彼らはその淫らな秘密を体内に秘めたまま、再び会社へと向かう。出勤のラッシュに揉まれながら、歩くたびに、階段を上るたびに、内部でプラグが場所を変え、敏感な肉壁を擦り上げる。昨日の記憶が身体に染みついているせいか、その刺激は10倍にも感じられた。

「ん……ふ……」

林宇非は歩きながら、無意識のうちに自分の唇を噛んだ。振動はまだないのに、身体の奥が疼いて仕方がない。彼は腰をくねらせ、尻を振って刺激を和らげようとしたが、その動作は彼の歩き方をますます妖しいものにしていた。スラックスの下で、豊かな臀部が左右に揺れ、細くくびれた腰が艶めかしくうねる。

林宇言の様子も同じだった。彼は弟の手をぎゅっと握りしめた。その手は震えていたが、それは恐怖のためではなかった。これから始まるかもしれない、甘美な責め苦への、抑えきれない期待の震えだった。彼らの目は、不安と期待が入り混じり、熱っぽく潤んでいた。今日も誰かに支配されてしまうのか、それとも自分たちだけでこの快楽を制御できるのか。そのどちらでさえも、彼らにとってはもはや、信じられないほど甘美な毒だった。

第3章

十数日という時間は、林宇非と林宇言の身体と心に、目に見える以上の変化を刻み込んでいた。それはまるで、見えない染料が布地の隅々まで浸透していくような、ゆっくりと、しかし確実な侵食だった。

彼らの眉目には、常に薄く色気が漂うようになった。自分たちでは気づかないうちに、視線は濡れたように潤み、物を見る角度さえも、どこかねだるような、相手の反応を窺うような下からのものに変わっている。何より顕著だったのは、その歩き方だ。リモートバイブが仕込まれていなくとも、歩くたびに腰が自然とくねり、丸みを帯びた臀部が左右に小さく振れる。まるで目には見えない尾を振るかのように。それはもはや習慣であり、身体に染みついた雌の所作だった。

林宇非は、自分の変化に薄々気づきながらも、認めようとはしなかった。会社のトイレの鏡に映る自分の顔を見るたびに、そこに浮かぶ女の表情から目をそらす。

(これは、脅されて仕方なくやってることだ……俺は、男が好きなわけじゃない……)

心の中でそう呟くが、その言葉はもう、かつてのような確かな響きを持っていなかった。内腿に触れるストッキングの感触だけで、アソコが疼き、下着の中にしまわれたままのモノが、解放を求めてじくじくと痛む。

(もっと……もっと激しくされたい……)

そんな被虐的な欲望が、恐怖と同じくらいの重さで心の中に居座っている。恐怖がそのまま、快楽への渇望に形を変えてしまうのだ。同性愛者ではない、そう言い聞かせれば聞かせるほど、身体はもっと強い刺激を、もっと徹底的な支配を、飢えた獣のように渇望する。その矛盾が、宇非をさらに追い詰めていった。

兄の林宇言もまた、弟とは別の方向で深みに嵌っていた。彼はすでに抵抗することをやめ、流れに身を任せることに、ある種の諦めにも似た快楽を見出し始めていた。深夜、スマホに映し出されるポルノ動画をぼんやりと見つめながら、宇言は自分の身体をまさぐる。隆起した胸の先端を指で転がすと、甘い痺れが背筋を駆け上がる。

「んっ……」

小さく漏れる声は、もう完全に女のものだ。

(デレック……)

心の中でその名を呼ぶと、子宮があったなら、そこがきゅうっと疼くような感覚に襲われる。もはや名前を呼ぶだけで、身体が反応してしまう。彼は、自分を女として見て、女として扱い、そして女として抱いてくれるデレックという存在に、恋にも似た感情を抱き始めていることに気づいていた。それは恐怖から生まれた歪んだ感情であると頭ではわかっていても、心はもう、デレックの優しい声と、時折見せる冷酷な支配者の顔を、同じだけ強く求めてしまうのだ。

デレックは、そんな二人の変化を、オフィスの離れた席から冷たく、しかし満足げに観察していた。林宇非が書類を取るために屈んだ時の腰の角度、林宇言が電話を取る時の、無意識に小指を立てる仕草。それらすべてが、自分の調教の成果であり、獲物が罠にかかりもがけばもがくほど、深く沈んでいく様を見ているようで、心が底から震えるような愉悦を覚えた。

(そろそろ、次の段階に進むか……)

彼の手には、最大の切り札が握られている。それは、これまでの調教の過程でこっそりと撮りためた、決定的な写真の数々だ。一人は自分の部屋で淫らに女装して自慰に耽る姿。もう一人は、会社の誰もいない会議室で、スカートを捲り上げストッキングを履いた脚を自撮りする姿。デレックはスマホを取り出すと、それぞれの写真を、それぞれの持ち主に送りつけた。

林宇非がそのメッセージを受け取ったのは、昼休憩でデスクに戻った時だった。見知らぬ番号からのメッセージを開き、そこに表示された画像を見た瞬間、頭の中が真っ白になった。自分の部屋で、レースのランジェリーを身につけ、淫らなポーズでカメラを見つめる自分自身の姿が写っている。

「……っ!!」

心臓が鷲掴みにされたように止まり、次いで全身の血の気が引き、指先が冷たくなっていく。すぐさま送り主を確認するが、番号に覚えはない。二枚目、三枚目と送られてくる写真は、どれもこれも、絶対に他人に見られてはいけないものばかりだ。続けて届いたメッセージには、ホテルの名前と部屋番号、そして今夜の日時だけが冷たく記されていた。

『来なければ、これらの写真を会社と家族にばら撒く』

その一文は、宇非の心に突き刺さり、ありもしない想像で彼を雁字搦めにした。会社での信用の失墜、家族からの軽蔑。すべてが一瞬で崩れ去る映像が脳裏をよぎり、恐怖で息ができなくなる。周りの同僚に悟られまいと、震える手でスマホを握りしめるのが精一杯だった。

同じ頃、別のフロアにいる林宇言のスマホにも、同様のメッセージが届いていた。会議室のガラスに映る自分の姿を撮影した、ストッキング姿の写真。心当たりがありすぎるその画像に、宇言は膝から力が抜けるのを感じた。

(どうして……こんな……誰が……?)

デレックの仕業ではないかという疑念が一瞬よぎるが、もし違ったら?そもそも、デレックにこんな写真を撮られる覚えはない。見えない相手からの悪意が、宇言の冷静な思考を奪い、ただただ言いなりになるしかないという絶望で頭を満たした。彼もまた、弟と同じホテルの、しかし違う部屋番号を指定される。震える手でメッセージを閉じ、彼は誰にも気づかれないように、静かに席を立った。

夜が訪れ、兄弟はそれぞれ、指定された都心の高級ホテルへと向かった。お互いに連絡を取り合い、助けを求めるということは、彼らの頭にはなかった。共有するにはあまりに恥辱的すぎる秘密であり、それ以前に、今の彼らは極度の恐怖で正常な判断力を失っていたのだ。

林宇非は、心臓が張り裂けそうなほど緊張しながら、指定された部屋のドアをノックした。返事はなく、ドアはわずかに開いている。まるで、逃げ場のない獲物を誘い込む罠のように。観念して中に足を踏み入れると、そこには広々としたリビングがあり、大きな窓の前に、こちらに背を向けて立っている大柄な男の姿があった。

振り返ったその男の顔を見て、宇非は言葉を失った。

「よぉ、リン。よく来たな」

それは、毎日会社で顔を合わせている同僚、デレックだったのだ。

「デ……レック……?」

「なぜ、お前がここに……まさか……あのメッセージは……?」

頭の中で様々な情報が繋がり、パズルが完成していく。あのネット上の黒人、自分を調教し、支配していた声の主、そして今自分の弱みを握って脅してきた相手。そのすべてが、目の前の同僚だったという驚愕の事実。その慄然とするような繋がりに、宇非はただ立ち尽くすことしかできなかった。

同じ時、別のフロアの部屋では、林宇言もまた、目の前の男がデレックであることに、声にならない衝撃を受けていた。

「お前……だったのか……」

すべてを理解し、震える声で宇言が呟く。デレックの口元には、相変わらずの余裕に満ちた笑みが浮かんでいる。

「よく来たな、ユイエン。待っていたよ」

その声は、電話越しに毎晩聞いていた、優しくも有無を言わせない、あのマスターの声そのものだった。宇言の心の中を、恐怖、怒り、そしてそれらを塗りつぶすほどの、抗いがたい安堵感と興奮が、嵐のように駆け巡った。

デレックは、それぞれの部屋で、まったく同じシナリオを演じた。彼はすぐに兄弟に肉体関係を迫ったりはしなかった。まず、彼らをソファに座らせると、まるでビジネスの契約を結ぶかのように、冷静な口調で話し始める。

「驚かせてすまないと思っている。しかし、私は君たちともっと深い関係になりたいんだ」

デレックの言葉は、優しく紳士的でさえあった。

「脅すような真似をしたことは謝る。だが、君たちを手に入れるためには、これが一番確実な方法だと思ったんだ」

そして彼は、一枚の紙をテーブルの上に滑らせた。

「これは、一ヶ月間の契約だ。この一ヶ月、君たちが私の雌犬として、私の命令に絶対服従することを誓うなら、一ヶ月後、写真のデータも秘密もすべて綺麗に消去する。会社にも家族にも、一切の迷惑はかけない。私が保証する」

契約書。そこには、雌犬としての振る舞いや服従を約束する、おぞましい内容が記されている。

「一ヶ月……雌犬……」

林宇非は、その言葉の一つ一つが、自分の男としての尊厳を粉々に打ち砕く屈辱の塊に感じられた。頭では拒否したい。だが、もし断ったら待っているのは社会的な死だ。抵抗できない弱みを握られ、与えられた選択肢は、今すぐ破滅するか、それとも一ヶ月間という期限付きの雌犬になるか。それは実質的に、選択肢など一つもないに等しい。

「……本当に……一ヶ月経ったら、きれいさっぱり、全部消してくれるんだな……?」

搾り出すような宇非の声には、もはや抵抗の意思はなく、無力な確認だけが込められていた。

弟と同じように、兄の林宇言も、極度の屈辱に震えながらも、首を縦に振るしかなかった。ただ、彼の心の奥底では、強制的な状況に、どこかほっとしている自分がいることも、認めざるを得なかった。これでもう、迷わずに済む。自分の意思ではなく、強要されたから。そう言い訳ができるのだ。

「……わかった。その契約……飲むわ」

その言葉を聞くと、デレックは満足そうに深く頷き、まるで子犬にするように、兄弟それぞれの頭を優しく撫でた。その手の温もりが、不思議なことに彼らの恐怖を少しだけ和らげた。

一ヶ月の雌犬調教契約が始まった。契約の履行として、デレックが最初に兄弟に与えたのは、小さなプラスチックのケースに入った、見慣れない器具だった。

「これは貞操ロックだ。今日から一ヶ月間、お前たちのペニスはここに閉じ込められる。許可なく勃起することも、射精することも許されない」

デレックは有無を言わさず、自らの手で兄弟の小さな男性器をむき出しにさせると、冷たい金属とプラスチックの器具を装着させた。カチリという小さな音が、彼らの男としての自由の終わりを告げる。

「……ぅ……」

リングが根元を締め付け、ケージが敏感な先端をむき出しにしたまま閉じ込める。今までは自由にできた勃起さえも、物理的に不可能になる。それは想像以上の不快感と絶望感を伴っていた。

最初の数日は、夜中に訪れる生理的な勃起のたびに、ペニスを締め付けるような痛みで目を覚ました。解放されたいのに、モノは檻の中でただじくじくと疼き、その欲求不満が全身を駆け巡る。満たされない性的な飢餓感が、常に彼らを苛み、思考を支配していく。かつてないほど、彼らはデレックの指先一つ、声一つで与えられる刺激を渇望するようになった。

それからのデレックの調教は、実践的なご奉仕のテクニックへと移行していった。週末、デレックのマンションにある、防音設備と様々な道具が整えられた「調教室」に二人は別々に呼び出される。巨大な鏡の前で、裸にエプロン姿という恥辱的な格好をさせられ、デレックはまるでダンスのステップを教えるように、フェラチオの技術を事細かに指導した。

「舌はただ動かせばいいんじゃない。まず先端で、鈴口を優しくノックするように舐めるんだ。飴玉を転がすイメージでな。そう……感じるか?ここが一番敏感な場所だ」

「んっ……ぅ……」

「次は全体を這わせろ。根元から先端まで、ねっとりと、まるでソフトクリームを舐めるみたいに、だ。手は使うな、舌だけで奉仕しろ」

兄弟は、歯を立てないように必死で唇をめくり、慣れない巨根にむせ返りながらも、デレックの指示通りに舌を動かした。口の中に広がる雄の味と匂い、そして喉を突かれる嘔吐感。すべてが彼らを服従へと導く儀式だった。

そんなある日、デレックは二人に同じ時間、同じ場所の集合を命じた。彼の自宅の調教室だ。約束の時間に扉を開けた林宇非は、そこに先に到着し、同じように床に正座させられている兄の林宇言の姿を見て、息を呑んだ。

「あ……兄さん……」

「宇非……」

言葉は続かなかった。二人都、裸にエプロンという、まったく同じ恥辱的な姿で、お互いの痴態を目の当たりにしたのだ。気まずさと恥ずかしさで、顔から火が出そうだった。

「さあ、これで全員揃ったな」

デレックは、まるでそれが当然の光景であるかのように、落ち着き払った声で言った。

「今日からお前たちは、兄弟でありながら、私の雌犬でもある。仲良く、協力して主人に奉仕してもらう。さあ、二人ともそこに並べ。今から、リンとユイエン、二人で私のチンポにご奉仕するんだ」

そう命じると、デレックはゆっくりとベルトを外し、すでに怒張した巨大な黒い陰茎を二人の前に晒した。それは、別々に跪いて見上げていた時よりも、さらに凶悪で、圧倒的な存在感を放っていた。

「……は、はい……」

「はい、マスター……」

兄弟は顔を見合わせると、どちらからともなくデレックの股間ににじり寄り、並んで跪いた。目の前にそそり立つ黒い巨塔は、彼らがこれから共に奉仕しなければならない、絶対的な主人の象徴だった。

二人は緊張の面持ちで、それぞれ左右からその肉棒に顔を近づける。吐く息が熱く、互いの頬に当たる。

「まずは、お前たちの舌で、私のチンポを隅々まで綺麗にしろ」

宇言が先に動いた。彼は少しだけ開いた唇から、熱い舌を差し出し、亀頭のくびれに沿って、ねっとりと舐め上げる。その動きはもう、初めての時のようにぎこちなくはなく、たどたどしい中にも、相手を喜ばせようとする雌の色気があった。

弟の宇非もそれに続く。彼は反対側から、竿の太い血管を一本一本味わうように、舌の先でなぞっていく。

「ん……ぅ……」

「はぁ……む……」

二人分の熱い息と、湿った舌の感触が、デレックの敏感な場所に同時に与えられる。それは、一人で受けるのとはまた違った、格別の刺激だった。

「そうだ、上手だぞ。お互いの息がかかる距離で、お前たちはもっと興奮するだろう?兄弟で主人のチンポを奪い合う、淫らな雌犬のようだ」

デレックの言葉は、彼らの羞恥心をこれでもかと煽り立てる。しかし同時にその言葉は、彼らの心の奥に確かな実感として響いていた。今、自分たちは確かに、兄弟で一つの男根にむしゃぶりつく、淫らな雌犬なのだ。

「次は、片方が咥えている間、もう片方は下の玉を舐め上げろ。連携して奉仕するんだ」

宇言は、言われた通りに肉棒の根元まで唇で咥え込むと、顔を上下に動かし始めた。その間、宇非は体をさらに屈めて、デレックの大きな陰嚢に顔を埋める。汗の匂いが鼻を満たすが、それさえも今は彼を興奮させる香りだ。彼はまるで仔犬が母犬の乳房に吸い付くように、陰嚢の皺を舌で丁寧に舐め、時折、口の中にそっと含んで転がした。

「ああ……いいぞ、宇非。上手だ、二人とも……」

デレックは満足げに目を細め、大きな手で二人の頭を同時に撫でた。まるで、芸を覚えたペットを褒めるかのように。

「お前たちは私の自慢の雌犬だ。これからも仲良く、主人のために尽くすんだぞ」

そう言われて、兄弟の心に、言い知れぬ安堵と幸福感が広がる。

(ああ……俺たちは、マスターに褒められた……)

それはもはや、脅迫から始まった関係性を超えた、支配と被支配の、奇妙なまでの絆だった。

毎晩、デレックは兄弟に、特注のパノラマVRヘッドセットを装着させ、そのまま眠らせることを日課にした。最初はただの寝かしつけのように思えたが、ヘッドセットの中で再生される映像は、彼らの意識を根本から変えていくための、悪魔的な洗脳プログラムだった。

映し出されるのは、筋骨隆々の黒人男性が、自分たちと同じように女性化したニューハーフを、様々な体位で激しく犯す映像だ。

「あぁん!すごい、マスターの黒いおちんぽ、奥に当たってるぅ!」

「もっと、もっと犯して!私、マスターの雌犬でいいんですぅ!」

画面の中の、戸籍上は男であるはずの彼らは、女よりも女らしい声で喘ぎ、自ら腰を振り、絶頂の快楽を貪っている。その圧倒的な映像と、耳元で直接囁きかけるような立体音響の喘ぎ声が、眠りにつく境界線上にある二人の意識に、直接刷り込まれていく。

(男でも、こんなに気持ちよくなれるのか……)

(あんな風に、マスターに抱かれたい……)

宇非も宇言も、寝ぼけた頭でそんなことを考え、気がつけば身体が熱くなっているのを感じる。それは、寝ている間も続く、終わりのない調教だった。映像の中で繰り返される「雌犬」「ご主人様」「おちんぽ」といった単語と、圧倒的な快楽のイメージは、彼らの深層心理にじわじわと浸透し、抵抗する意思そのものを溶かしていった。彼らは羞恥の中で、否応なく、自分たちの未来の姿を叩き込まれ、それに慣れていく。雌化は、もはや避けられない運命として、二人の魂を侵食していた。

第4章

薄暗い調教室に、林宇非はデレックに手を引かれて入ってきた。彼の心臓は激しく鼓動し、呼吸はかすかに乱れていた。何度もここに来ているのに、今日の雰囲気はいつもと違う気がした。空気には微かな甘ったるい香りが漂い、隅ではアロマランプが淡い煙を吐き出していた。壁の柔らかな灯りが部屋にぼんやりとした色を映し出し、床に敷かれた分厚い絨毯は足を沈み込ませるほどだった。

デレックがドアを閉めた。鍵穴に差し込まれる鍵の金属音が、静けさの中でやけに響き渡る。

「今日は兄さんはいないの?」林宇非は声を潜めて尋ねた。喉が少し渇いていた。

デレックは振り返り、濃い黒い顔に意味深長な笑みを浮かべた。彼はゆっくりと林宇非に歩み寄り、高い位置から見下ろす。その巨体の影が林宇非をすっぽりと覆い隠した。

「今日はお前だけだ」

彼は大きな手を伸ばし、指先でそっと林宇非の頬を撫でた。指の腹は熱く、硬くできたタコが肌をかすめると、かすかな痛みが走る。林宇非は無意識に少し震えたが、避けることはしなかった。もう何度も調教されているうちに、彼の身体はこうした接触に慣れ、むしろ期待して反応するようになっていた。

「ここ数日、すごくいい感じだったよ」デレックの声は低く深く、胸を自然と震わせる響きがあった。「前よりもっと、ね」

彼の視線はゆっくりと林宇非の身体をなぞる。その目の奥には、暗い欲望の炎が揺らめいていた。

林宇非は彼の視線の熱を感じて、頬が燃えるように熱くなった。自分がどんなふうになっているかはわかっていた——この数日間、身体はまるで見えない力に押されるかのように、耐えがたい変化が次々と起きていた。

彼はうつむき、額の髪がこぼれ落ち、視線は自分の胸元に落ちた。薄手の白いシャツの下で、胸が以前よりもさらにふっくらと盛り上がり、布地をほんの少し押し上げている。それはもう少年の薄っぺらい胸板ではなく、少女のように柔らかく丸みを帯びた双丘だった。乳首は布にこすれて敏感になり、少し硬くなってシャツに小さな突起を作っている。

腰はますます細くなり、背骨の両側が柔らかくくぼんで、ちょうど女性のようなくびれができていた。逆に尻は丸々と張り出し、タイトなズボンの中で弾力を秘めて突き出ており、長く均整のとれた脚とともに、くっきりとした曲線美を描いている。

彼は自分が女性のように発育しているのを感じていた——胸のふくらみは日に日にわずかに重みを増し、腰は柔らかくしなやかになり、歩くときは無意識のうちに腰が揺れた。そうした変化に怖さを覚える一方で、深い興奮も感じていた。

デレックの指が彼の顎に沿って下り、細い首筋をゆっくりと撫で、鎖骨の上で一瞬止まった。皮膚の上で指の腹がわずかに動くだけで、林宇非は思わず小さく息を漏らした。

「身体の反応が、どんどん敏感になってるね」

デレックの声には明らかなからかいのニュアンスが含まれていた。

林宇非は唇を噛み、顔を真っ赤に染めた。彼は「そうじゃない」と否定したかったが、何も言えなかった。なぜなら彼の身体は嘘をつかず、デレックの指が肌の上を滑るたびに、触れられた場所から電流が走るように感じてしまったからだ。

「さあ、ここへ」

デレックは手を引っ込め、調教室の中央を指さした。そこには新しい調教用ベンチが置かれていて、黒い革張りの表面が灯かりに照らされて鈍く光っていた。形状は前のものよりも複雑で、手足を固定する金具や、角度を調節できるクッションがついていた。

林宇非は少し躊躇したが、それでも足を踏み出してベッドのそばに立った。彼の手は両脇でぎゅっと握られ、手のひらは汗でじっとりと濡れていた。

「服を脱いで」

デレックの命令は簡潔で、有無を言わせぬ響きがあった。

林宇非は震える手で指を伸ばし、シャツのボタンを外し始めた。最初の一粒はとてもスムーズに外れたが、二粒目で指が震えて時間がかかった。彼はデレックの視線が肌に焼けつくように突き刺さるのを感じ、心の中が恥辱と妙な興奮で複雑に入り混じった。

三粒目のボタンを外すとき、彼の指が誤って胸の先端をかすめた。乳首はすでに硬く膨らみ、ほんのわずかな刺激でさえ快感を放って全身に広がった。林宇非はあまりの気持ちよさに小さくうめき声を漏らし、すぐに唇をぐっと噛みしめた。

デレックは低く笑った。笑い声にはからかいと満足が込められている。

「続けて」

シャツが脱がされ、絨毯の上に音もなく落ちた。空気がむき出しの肌に触れると、ほんのりと冷たさを感じ、細かな鳥肌が立った。林宇非は両腕を胸の前で組もうと無意識に動かしたが、デレックの視線がそれを押しとどめた。

「隠すな」

羞恥の赤みが耳の根元まで広がったが、それでも彼は手を下ろした。ズボンのボタンを外し、ファスナーを下ろすと、布地が太ももに沿って足元へと落ちていく。脚に沿ってパンティも滑り落ち、身体は完全に男の目の前にさらけ出された。

調教室の灯かりの下で、林宇非の全身が淡く柔らかな光を帯びていた。肌は滑らかで、微かな産毛が淡い絹のような光沢を放っている。ふっくらとした胸は呼吸のたびにわずかに揺れ、ピンク色の乳輪はまだ青さを残しつつも十分にふくらみ、中央の乳首は新鮮なベリーのようにぷっくりと突き出ていた。腰の曲線美はくっきりとし、ウエストとヒップのラインは女性のような優しい弧を描き、丸みのあるお尻はわずかに上向きに反り上がっている。

「振り返って」

林宇非は言われるままに従い、今度は背中を向けた。背中のラインはしなやかで引き締まり、肩甲骨の位置には繊細な輪郭が見え、腰のくぼみは浅く、背骨に沿ってお尻の割れ目へと続いている。お尻の肌は他の部分よりさらにきめ細かく白く、引き締まって形の良い後穴がかすかに恥ずかしそうに、その間でぎゅっと閉じている。

デレックは近づき、熱い手のひらが彼の尻の側面に押し当てられた。熱の感触が急にやってきて、林宇非は思わず小さく悲鳴をあげた。指がゆっくりとその上を這いずり回り、お尻の豊かな弾力を揉みしだく。

「前よりずっと、ふっくらしたな」

デレックは耳元に顔を寄せ、低くささやいた。吐く息が耳の裏にかかり、林宇非はまた戦慄した。

「他の場所も、ずいぶん変わったな」

そう言うと彼は片手を伸ばし、指の背で林宇非の胸の側面を軽く撫で、さらに先端へと這うように近づいた。指の下では、乳輪は少しざらついているが、胸全体の肌は信じられないほど滑らかで柔らかい。

「やめて……」

林宇非は息を詰まらせて頼んだが、その声は全く力を帯びていなかった。それはむしろ、艶めかしい喘ぎに近かった。

デレックはやめず、手の動きを止めなかった。指が先端でつまむように包み込み、ゆっくりと乳首を揉み始めた。敏感な突起は素早く、彼の指先でさらに硬くなり、甘い痺れが乳輪から乳房全体へと広がり、さらには小腹へと伝わって、込み上げる熱の波となった。

「あっ……ああっ……」

林宇非は思わず小さくうめき声を上げた。腰はかすかに震え、足はふらついて立っていられなくなった。この何日かで、胸は日増しに感じやすくなっていた。普通の衣服が擦れるだけでも、異様な快感を引き起こすのに、こんなに直接刺激されては、いっそう抑えがきかなくなる。

デレックのもう一方の手は腰を伝い、しなやかなくびれを執拗に撫で回し、まるでその曲線一つひとつを指先で覚え込もうとしているかのようだ。その手のひらは熱くて広く、背中の大部分を覆い尽くすほどで、まるで彼の全身を完全に包み込んで支配しているかのようだった。

「お前の兄さんは、この間はずいぶんと協力的だったんだ」

デレックは事もなげに言い放ち、同時に指で乳首の先端を軽く弾いた。

その思いがけない刺激に、林宇非は「あっ」と声を上げた。とっさに兄の姿が頭に浮かび、そのせいでいっそう恥ずかしさがこみ上げてきた。彼は知っていた。ここ数日、林宇言はデレックにどんどん夢中になっていて、その目つきまでもが柔らかく蕩けるように変わってしまったことを。兄を見るたびに、自分の将来の姿が映っている気がしてならなかった。

「お前たち兄弟は、日に日にどんどん綺麗になっていくな」

デレックの声には心からの賞賛が込められていた。「街ですれ違う男たちはみんな、振り返って見てるんだろう?」

林宇非はそれに答えようがなかった。確かに最近、外に出かけるたびに異性の視線を感じていた。ある時は、その視線に気づいて背筋が凍り、別の時には、逆にほのかな興奮を感じていた。自分が男性の目を引く存在になっているという事実が、怖くもあり、刺激的でもあった。

「さあ、ひざまずいて」

デレックは手を引っ込め、調教用ベッドの前を顎で指した。

林宇非はためらいつつも、おとなしくひざまずいた。膝下の絨毯は柔らかく、そこに敷かれた専用の膝パッドで負担はかからない。それでも床にひざまずくこの姿勢は、無条件の服従を象徴していて、心の奥底で深い恥辱と奇妙な満足感が湧き上がってきた。

彼は目の前のデレックの股間を見上げた。ズボンの生地はすでに大きく盛り上がっていて、中に秘められたものの巨大さを感じさせた。胸の鼓動は激しさを増し、喉は急速に乾いていった。

デレックは自分から下を脱がず、ただ林宇非を見下ろした。「服を脱がせて」

林宇非は震える手を伸ばし、指先でベルトの金具に触れた。冷たい金属の感触が、指先をぎゅっと震えさせた。一呼吸おいてから、意を決してバックルを外し、服を下ろし始めた。

次々と下がっていく服の布地、どんどん露わになっていく濃い黒色の肌、そして最後に、巨大なペニスが勢いよく飛び出してきた。それはすでに硬くそそり立ち、血管が浮き出た幹の陰影がくっきりとしており、亀頭部分は濃い紫色に膨らみ、わずかに上向きに反り返り、きらめく粘液がにじみ出ていた。

林宇非は息を呑んだ。何度も見ているのに、毎回その大きさに心が震えた。本能的な恐怖が湧き上がる一方で、それ以上に強烈な別の感情が体の奥底から外へと溢れ出ようとしていた。

「口を開けて」

デレックは彼の髪を撫でながら、その動作は驚くほど優しかった。

林宇非は唇を開き、そっと前に身を乗り出した。するとすぐに、強烈で生々しい雄の匂いが鼻をついた。彼はまず亀頭の先端を舐め、舌先でぬるりとした表面をなぞると、わずかに塩辛い味が広がった。それから口を大きく開け、大きなものを慎重に口の中へ導き入れていった。

「うっ……」

亀頭がやっと収まると、それだけでほとんど口の中がいっぱいになり、舌の動きは著しく制限された。林宇非は息継ぎのために意識して喉をゆるめ、少しずつ先端を喉の奥へと呑み込んでいった。溢れ出る唾液がペニスの表面を滑らかに濡らし、隅々まできらめかせた。

デレックは低く満足げなため息をもらし、大きな手のひらを林宇非の後頭部に置いたが、すぐには押し込まなかった。ただのせただけの圧力が、彼にこの調教の主導権を思い知らせた。

「だいぶうまくなったな」

彼の声には明らかな称賛の色があった。「前は歯が邪魔ですぐ痛がってたのに」

林宇非は恥ずかしさで耳の先まで真っ赤になった。デレックの言うとおり、彼のフェラチオの技術は確かに長足の進歩を遂げている。何度も調教されるうちに、舌の使い方を覚え、喉の奥をリラックスさせることを覚え、相手の反応から一番感じる場所を見つけ出すことも覚えた。しかし、こうした進歩そのものが、最大の羞恥の源だった。なぜならそれは、彼がこの辱めにすっかり適応し、それどころか上手になりつつあることを意味していたからだ。

彼は恥を捨てて、頭を前後に動かし始めた。唇は引き締めて幹に吸いつき、舌の先はペニスの裏にある一番感じやすい筋をくまなくなぞる。後退するときは口の中を強く吸い込み、前進するときは先端を限界まで喉の奥深くへと突き入れる。巧みな唇の動きと、ときおり漏れる甘い水音が調教室に響き、淫らなリズムを刻んでいた。

「うまい……本当にうまいぞ……」

デレックの呼吸は明らかに荒くなり、後頭部に置かれた手の力も次第に強まっていった。彼は腰を小さく前に突き出し、林宇非にさらに深く咥えさせた。巨大な幹が狭い喉道を満たし、林宇非は吐き気をもよおし、涙がにじんだ。

しかし彼はまったく抵抗せず、むしろさらに喉の奥を広げて、その無理な挿入を受け入れようと努めた。息苦しさから酸欠になった頭がぼんやりとし、その不快感の中に不思議な快感が含まれていることに気づいた。それは窒息に近い陶酔で、彼は全身を震わせ、股の間の小さな前身は知らぬ間に硬くそそり立ち、先端からは透明な愛液が滲み出ていた。

「よし、そろそろいいだろう」

デレックは突然、腰の動きを止め、林宇非の頭から手を離した。林宇非は一気に息をつき、口から離れたときに銀色の唾液の糸が引いたが、まだ名残惜しそうに最後の一口をすすると、舌で唇を舐めた。

デレックはまた低く笑い、その笑顔には林宇非の切なそうな様子を見て取れたようだった。彼は身をかがめて林宇非を抱き起こし、向かい合うように座らせた。彼はベンチに座り、林宇非はその太ももの上にまたがっていた。この距離の近い姿で、互いの体温がはっきりと感じられ、林宇非はますます熱くて落ち着かず、全身の肌がほんのりとピンク色に染まっていた。

デレックの手が彼の背中をなぞり、背骨の溝を伝い、最後に尻の割れ目に留まった。指先が後ろ穴の周りをかすめ、そのぴったり閉じた菊座は指の予告めいた接近に、かすかに震えていた。

「ここはまだ、誰も使ったことがないんだよな?」

彼の問いは、まるでいつもの雑談のように何気なかったが、林宇非の耳には特別に恥ずかしく響いた。

「……うん」

林宇非は声を潜めて答え、頭を上げることができなかった。

「あのネットの人たちが調教するときも、前しか触らなかったな?」

デレックは指先で菊座のしわを軽く押し、実際にはまだ侵入せず、ただの脅かしのような動きをした。

「うん……だから、入れさせなかった」

林宇非の声はかすかに震えた。確かに以前、ネットで見知らぬ人に調教されたときは、恥辱に耐えながらも最後の一線だけは守っていた。しかし今、その一線は破られようとしている。

「見せてごらん、本当はどんなにしたかったのか」

デレックの指がようやく少しだけ入り込んだ。第一関節だけの挿入だったが、林宇非は思い切り跳ね上がり、慌てた悲鳴をあげた。

「ああっ!」

後ろの穴は異様な侵入感に襲われ、肛門括約筋は自然に収縮し、指を外に押し出そうとした。しかしその締め付けは逆に、せっかく入りかけた異物をさらに中へと絡めとってしまう。器官の内部の温度は体表よりも明らかに高く、腸壁は柔らかく湿り、小さな襞が指の腹をきつく包み込んでいた。

「ほう、こんなに締まるんだな」

デレックは軽く驚嘆し、「前はもっと湿ってたんじゃないか?」と言いながらも、手はまったく止めず、さらに深く挿入していった。

「あ……ああ……やめて……」

林宇非は息を詰まらせて懇願した。体は無意識に跳ね退けようとしたが、腰をデレックの手でしっかりとつかまれて動けない。

「本当にやめるのか?」

デレックは動きを止め、じっと彼を見つめた。その深い目には暗い光が宿っていた。「本気で言ってるのか?」

林宇非は唇を噛みながら、答えを探して葛藤した。心の奥底で、自分が偽っていることに薄々気づいていた。後ろの穴は恥ずかしいほどに期待で震え、腸壁はこっそりと液体を分泌物し、指の侵入をスムーズにしていた。身体は完全に彼の本心を裏切っていたのだ。

デレックは彼のためらいを見て、指を一気に奥まで突き入れた。今度は完全に第二関節まで挿入され、後ろ穴の内壁を抜けるときに、はっきりと感じられた。

「ああっ!!」

林宇非は耐えきれずに叫び声をあげ、首をのけぞらせ、髪が背中に飛び散った。胸は荒く上下し、ふっくらとした双丘もまた揺れた。涙が目尻からこぼれ、頬を伝ったが、それが痛みによるものか、快感によるものかは、自分でもよくわからなかった。

デレックの指は後ろ穴の中でゆっくりと動き始めた。最初は回転し、腸壁をなぞり、内側の構造を探るかのようだった。そして次に浅く抜き差しを始め、一度抜いては再び深く挿し込み、指をわずかに曲げて、異なる角度と深さを試した。

「ふぅ……ふぅ……やめて……だめ……」

林宇非のうめき声はますます甘美になり、腰は無意識のうちに指のリズムに合わせてくねり、まるでより深い侵入を欲しがっているかのようだった。彼の前のものはすでに硬くそそり立ち、鈴口からは透明な粘液が途切れずに流れ落ち、デレックの服にいくつも濡れた跡をつくっていた。

「本物のペニスを味わいたいか?」

デレックは突然、核心を突く質問を口にした。その声は低く、誘惑的で、林宇非の耳元に届いた。

その一言が林宇非の全身の熱をさらにかき立て、頭はさらにぼんやりとし、身体中はまるで無数の蟻が這い回るようにかゆく、後ろの穴は締め付けるものを欲し、襲いかかるようなむずがゆさが腸壁全体に広がっていた。

「う……うん……」

彼はできうる限りの小さな声でうなずき、顔は焼けるように熱かった。

「どうしてほしいのか、言ってみろ」

デレックの指は突然動きを止め、ただ深く埋まったままで、内側でかすかに脈打っていた。

林宇非は息を詰まらせ、声が出せなかった。体内に渦巻く衝動は彼を泣きそうにさせたが、最後の羞恥心がその言葉を喉の奥で絡めとっていた。

「言え」

デレックが根気よく促した。「ちゃんと言えたら、ご褒美をやる」

「……突いて、ください」

林宇非はついに一言一言を搾り出すように言い、声は泣き声のように震えていた。

「どこに突くんだ?」

デレックはやはり満足せず、さらに尋ねた。

「……後ろの穴……後ろの穴の中に……」

言葉が終わらぬうちに、林宇非は耐えきれずに泣き出し、涙が糸を引くように落ち、声もむせび泣きにかすれた。

「いい子だ」

デレックはようやく満足そうにうなずき、指を後ろ穴から抜き取った。抜くときに小さな「ポン」という音がして、後ろ穴の口はすぐには閉じられず、小さく開いたままで、中の真っ赤な腸壁がほんの少し見えていた。

彼は林宇非を抱えて調教ベッドのそばに立った。そして彼の肩をベンチの上に押しつけ、膝かがみの姿勢をとらせるように手で誘導した。この体勢では上半身はベンチにもたれかかり、下半身は斜めに上がり、お尻は高く突き出され、後ろの穴は完全に露出していた。デレックはベンチのクッションの角度を調整し、林宇非の腰を最も快適な——いや、最も屈辱的な——高さにした。

「手すりをしっかり握れ」

デレックはベンチ両側の手すりを指さした。

林宇非は従って、革で巻かれた金属の手すりをぎゅっと握りしめた。手のひらは汗で湿り、冷たい感触がかえって彼をいっそう緊張させた。彼は目を大きく見開いて前を見つめたが、視界には何も映っておらず、ただ後ろの穴の位置に全神経が集中していた。

デレックは彼の背後に立ち、片手で自分のペニスを握り、亀頭を後ろ穴の入り口に当てがった。前の粘液が穴の口を十分に濡らし、大きな亀頭がキラリと光り、灯りの下で怪しい輝きを放っていた。

「いくぞ」

その声がまだ消えぬうちに、彼はゆっくりと腰を前に進めた。亀頭は後ろ穴のしわを少しずつ押し広げ、奥へと侵入していく。林宇非は肛門括約筋が強引に押し広げられるのを感じ、激しい裂けるような感覚が襲いかかり、思わず金切り声をあげた。

「あああぁぁぁ——!!!」

亀頭の先端が抵抗を押し開けると、入り口は信じられないくらい大きく広がり、全体の形がデレックの亀頭にぴったり合わさった。しかし、太さの違いが大きすぎるため、亀頭が完全に入った瞬間、肛門の縁はすでに極限まで引き伸ばされ、肉の輪はほとんど透明になりそうだった。

「痛い……すごく痛い……!!」

林宇非は全身を痙攣させ、額には冷や汗が滲み、手すりを握る手の骨が白く浮き出ていた。彼は無意識に前に逃げ出そうとしたが、腰をデレックの大きな手でしっかりと掴まれ、微塵も動けなかった。

「ああ、逃げるな」

デレックの声は冷たく、迷いがなかった。彼は挿入を続けはしなかったが、抜きもせず、ただ亀頭を後ろ穴の口に留めて、林宇非にこの膨張感に慣れる時間を与えた。痛みは相変わらず続き、腸壁は異物の侵入に自然に収縮していたが、デレックの亀頭は後ろ穴の入り口にしっかりと食い込んで、まったく動じなかった。

「お願い……抜いて……もう無理……」

林宇非は泣きながら、懸命に哀願し、涙と鼻水が混ざって流れ落ちた。彼はかつてない激しい痛みを感じていて、まるで全身が二つに裂かれるかのようだった。

それに対して、それまで調教の快楽で高くそそり立っていた欲望の象徴は、一瞬でしぼみ、力なく垂れ下がっていた。

「これくらいで音を上げるのか?」

デレックは冷たく笑い、腰をゆっくりと進め続けた。「さっきはあんなに、突いてほしいって頼んだじゃないか」

ペニスの本体が後ろ穴にゆっくりと差し込まれていく。その血管の浮き出た幹は腸壁とすさまじい摩擦を生み、進むたびに耐えがたい膨張感と裂けるような痛みをもたらした。林宇非は痛みで声にならない悲鳴をあげ、必死に背中を伸ばし、首をのけぞらせ、髪を振り乱して苦しみに耐えた。

「まだ半分も入ってないぞ」

デレックの声は平坦だったが、かすかな嘲笑を含んでいた。彼はわざとゆっくりと突き入れ、林宇非に亀頭が腸壁をかき分け、深部へと進んでいく過程をじっくりと味わわせた。未開の腸管はひとつひとつ押し広げられ、その異物が内臓を満たしていく感覚は、痛みと吐き気をもよおすほどの違和感に満ちていた。

「やだ……無理……壊れちゃう……お願い……」

林宇非はもはや取り乱して泣き叫び、身体は無意識のうちに踏ん張って抵抗したが、その抵抗はかえって狭い穴をよりきつく締めつけ、腸壁を異物にさらに密着させた。

「壊れたりしないさ」

デレックの腰の動きはまったく止まらず、ペニスは前進を続けた。「体はちゃんと、俺を求めてるんだ」

そう言って彼は、手を伸ばして林宇非の胸を揉んだ。指先で乳首をこねると、ふっくらとした胸は手の中で自由自在に形を変えた。痛みで動転している林宇非だったが、デレックは胸が信じられないほど感じやすくなっているのに気づき、ちょっと触れただけで硬くふくらみ、乳輪は充血して腫れ上がっていた。

デレックは突然、乳首に強烈なひねりを加えた。その刺激はとても強く、同時に痛みと快感が脳天に突き抜け、痛みによる抵抗を上回るほどだった。

「あっ!!」

林宇非は再び身体を震わせたが、今度は痛みによるものではなかった。前方でしぼんでいた蕾が、またもや少し持ち上がった。

この気の緩みに乗じて、デレックは一気に腰を突き入れ、完全にはいっていなかったペニスを再び一気に深部へと押し込んだ。巨大な陰茎が今度こそ根元まで一気に後ろ穴の中に没し、林宇非の腹部は目に見えて引きつり、腸壁が無理やり押し込まれる重い衝撃があらわだった。

「うっ……うぅぅ……!」

林宇非は今や絶望のうめき声だけを漏らし、涙は滝のようにあふれ、唇は血が滲むほど噛みしめられていた。後ろの穴はいっぱいに満たされ、下腹部にはこれまで感じたことのない異物感が広がっている。デレックのペニスは、まるで焼けた鉄の棒のように彼の体の奥深くに強烈に埋まり、血管の脈動さえもはっきりと感じられた。

自分自身の想像を超えるほど、体内深くまで埋め尽くされた異物感に、心の奥底から湧き上がってきたのは、完全に支配されたことへの恐怖と屈辱だった。それは彼を打ち震えさせ、心の奥底で積み上げてきた、しがない男としての自尊心さえも、この瞬間に粉々に打ち砕かれたのだ。

「これがお前の初めてだ」

デレックは彼の背中に覆いかぶさり、耳元でささやいた。その声には満足げな、残酷な響きが混ざっていた。

「覚えておけ、お前の最初の男は俺だ」

林宇非は声を詰まらせて泣き、震えが止まらなかった。彼はなぜ自分がこんな目に遭っているのか、なぜこんなはしたない姿になってしまったのかを必死に考えようとしたが、意識の全ては体内の異物感に集中していて、思考はまったく働かなかった。

デレックはしばらく動かなかった。巨大な亀頭が彼の最も深い場所をびったりとふさぎ、腸壁がきつく絡みつく感触を静かに堪能しながら。後ろ穴の内部は信じられないほど熱くてきつく、最も高級なベルベットのように幹全体を包み込み、完全に一体化したかのようだった。

「どうだ、悔しいか?」

彼は不意に口を開いた。声は柔らかく、まるで恋人に話しかけるかのようだったが、尋ねる内容は極めて残虐だった。

林宇非は涙にぬれた顔をふり、もごもごと口を開いたものの、完全な言葉は何一つ出てこなかった。

「後悔してるか? 自分がこんな雌犬にされてしまったことを」

デレックはゆっくりと言葉を続け、腰を小刻みに動かし、亀頭の縁で腸壁の最も敏感な部分をこすりつけた。

「う……ぅっ」

林宇非は思わずまた小さくうめき、その声には痛みがまだ残りつつも、他の何かが確実に混ざり込んでいた。

「答えろ」

デレックの声は突然厳しさを増し、同時に腰をぐっと前に押し込むように突き出した。

「ああっ……は……後悔してる……」

林宇非は泣きながら白状し、声は息も絶え絶えだった。

「何を後悔しているんだ?」

デレックは満足せず、追求を続けた。

「調教……調教に溺れたこと……ああ……あの時の快感に……」

林宇非の声はますますか細くなり、最後の方はほとんど聞き取れないほどだった。

しかしデレックはその答えにはっきりと満足し、低く笑った。腰の動きも次第にリズムを帯びはじめ、ゆっくりと浅く突くように出し入れを始めた。そのたびに、亀頭が腸壁をかき分け、内壁の襞を広げていく過程がはっきりと感じられ、後退するときには腸壁が一気に縮み、まるでむしろ侵入者をさらに深く招き入れるかのようだった。

「そして今も、すでに感じ始めている」

デレックは断定口調で問いただすと、意図的に亀頭で腸壁の一点をこすった。途端に、林宇非は全身をびくんと震わせ、喉の奥から抑えきれないうめき声が漏れた。そこは前立腺の位置であり、たったひと突きで耐えがたい快楽の波が沸き起こった。

「ほらみろ、ここの反応は本物だ」

デレックの声はからかうような響きを帯びていた。

林宇非は必死に否認しようとしたが、身体はすでに思いのままにはならなかった。前立腺の刺激による快楽が、後ろ穴の裂けるような痛みをほぼ覆い隠し、痛みと快楽が複雑に絡み合い、完全に慣れたことのない体験を作り出していた。彼は、次第に遠のく痛みの中で、沸き上がる快楽に直面しなければならなかった。屈辱の涙と被虐的な快感が奇妙に入り混じり、彼が自分が誰なのかを完全に見失わせた。

デレックの動きのリズムは次第に上がり、ペニスが速く、より深く後ろ穴に出入りするたびに、はっきりとした水音とかすかな拍動の音が響いた。林宇非の嗚咽はもはや痛みだけではなくなってきており、さらに複雑な感情がその声の響きに混じり始めていた。もはや自分が誰なのかを完全に見失い、ただその出入りのたびに操られるだけの存在と化していた。

「さあ、教えてくれ。お前は一体、何者なんだ?」

デレックは突然、動きを止め、巨大な亀頭を最も深い場所に置いたまま、腸壁の一点に突き刺してじっと動かずにいた。

林宇非は息を詰まらせ、後ろ穴が耐えがたいかゆさと虚無感に襲われるのを感じた。その静止は動きよりも彼を苦しめ、腸壁はむしろ自然に収縮し、侵入者をより深く包み込もうとした。

「私……私は……」

彼は力なく口を開いたが、声は出せなかった。最後のわずかな自尊心が、口にすべき答えを認めることを拒んでいた。

「言え」

デレックは腰をぐっと押し、前立腺を強烈に突き上げた。

「ああっ!! 雌犬……私は雌犬……!!」

強烈な快楽の下で、最後の砦が崩れ去り、林宇非はついに泣き叫びながら答えた。この自虐的な一言は、急流の決壊のように感情の濁流を押し流し、一気に彼を混乱させた恥辱と被虐的な快楽の深淵へと落とし込んだ。「ご主人様の雌犬……うう……お願い……私をぶって……こんな雌犬をもっとひどく犯してください……」

彼は泣きじゃくり、頭は首が折れたようにだらりと垂れ下がり、肩は激しく震えた。体はぐったりとベンチの上に伏せ、一番深いところだけが侵入者を受け入れるために高く持ち上げられた、まさに飼いならされた牝犬のように――まさに彼が今、口にした言葉そのものの姿だった。涙が目じりからとめどなくあふれ落ち、頬を伝い、革のベンチの表面をしっとりと濡らした。

第5章

後ろの孔がひくつくたびに、内壁がとろりとした液を滲ませ、異物を受け容れる準備を整えていく。林宇非はベッドの上でうつ伏せにされ、腰だけを高く突き出した格好で、熱い吐息をシーツに漏らしていた。膝はがくがくと震え、太腿の内側には自分のものとは思えぬほど粘ついた腸液がつうと伝い落ちている。デレックの太くて硬く燃えるような肉杭が、ゆっくりと、しかし確実に奥へと沈み込んでくる感触に、脳髄が痺れるような快感を撒き散らしはじめた。彼は思わず腰をくねらせ、自らそれを深く呑み込もうとしてしまう。

「ん……ぁ、あ……」

口からこぼれる声は、自分でも情けなくなるほどか細く、甘ったるい。背筋を走る震えが、全身の産毛を逆立て、肌という肌が熱を帯びてゆく。デレックはまだ本格的に抽送を始めていない。ただ、肉の杭をぬめりの中に置いたまま、林宇非の反応を楽しむように腰をぐりぐりと押しつけてくる。そのたびに、腸壁のひだひだが擦られて、内臓の位置がずれてしまいそうな異物感と、それを上回る甘い痺れがごちゃまぜになって襲いかかる。

「どうした、もう腰が揺れてるぞ」

背後から降ってくるデレックの声は低く、喉の奥で笑いを噛み殺したような響きがある。林宇非は羞恥に目の前が真っ赤になるのを感じた。自分がこんなふうに、雄の一物を求めて無意識に腰を振っているだなんて、信じたくなかった。しかし、奥の一点をごりっと抉られるたびに、腰は勝手に沈み、尻たぶは淫らに持ち上がって、もっともっとと訴えている。

「ちが、これは……あっ、やめ、動かさないで……」

「動いちゃいないさ。おまえが勝手に腰を振って、俺のちんぽに絡みついてるんだ。そんなにいいか? この、女みたいな体で、雌穴にされちまうのが」

デレックがわざとゆっくりと腰を引き、それからまたとろ火のようにじわじわと奥へ突き入れてくる。林宇非はその緩慢な抽送に耐えきれず、シーツを握り締めた指が白くなる。引き抜かれる時の、内壁がこそげ落とされるような摩擦と、押し込まれる時の、内臓を押し上げられる圧迫感。その二つが交互に繰り返されるうちに、苦しさはいつしか背徳的な快感へと変わっていった。彼の腰は低く落ち、背骨をしなわせてくねりながら、か細い喘ぎ声が絶え間なく喉を突いて出る。

「あっ、う……んんっ、はぁ……あ、あっ」

自分の声が、こんなに色っぽいものだったのかと、林宇非は呆然とする。デレックはその声に煽られたか、片手を伸ばして林宇非の顎を捉え、無理やり振り向かせた。涙で潤んだ瞳と、火照った頬、そして半開きの唇からは、銀色の唾液の糸が伝っている。デレックはその様をじっくりと眺め、満足げに口元を歪ませた。

「いい顔だ。まるで発情した雌そのものだな。お前はもう、俺に犯されるために生まれてきたみたいだ」

そう言われて、林宇非の胸の奥で、何かがぱちんと弾けた。それまでは、屈辱や抵抗、混乱といった感情が渦巻いていたのに、今はその言葉が妙に心地よく響く。彼は恥ずかしそうにまぶたを伏せ、それでいて口元にはうっとりとした笑みを浮かべて、自ら腰を前後に振りはじめた。

「あ……そうかも、しれない……私、デレックの、雌なんだ……あっ、もっと、動いて……?」

尻たぶを突き出すようにして、内腿をぴったりとデレックの腰骨に押し当てながら、ねだるような声が出た。デレックは低く笑うと、ようやく本格的な抽送を始める。ベッドのスプリングがぎしぎしと音を立て、ふたりの肌がぶつかる湿った音が部屋に満ちる。暗がりの中、壁に映る黒い大きな影が、小さな白い影を折り曲げて揺さぶっている。

林宇非はもはや、理性で自分を縛ることができなくなっていた。デレックの熱く太い楔が、彼の最も敏感なところをえぐるたびに、目の裏に火花が散る。彼はこれこそが自分の天性かもしれないと、うっすらと思いはじめていた。男に犯され、支配され、いいようにされること。それがこんなにも気持ちいいなんて。彼は征服される快感を、今まさに全身で浴びていた。

「すごい……あっ、奥、奥あたってる……! もっと、もっと激しくして……!」

デレックはその願いを聞き届けるかのように、腰の動きを一気に激しくした。獣じみた力で何度も何度も突き上げられ、林宇非の内臓が揺さぶられる。彼はもう、淫らな声を抑えることすらできず、シーツに顔をうずめながら、くぐもった悲鳴のような喘ぎを連発した。

「ひあっ! あっ、あっ、んんんっ! はげし、すぎ……! でも、やめないで……!」

ぐちゃぐちゃと奥を掻き回される感覚。腹の中を熱いものでいっぱいにされているような圧迫感。突かれるたびに、雌として屈服させられる被虐の快感が全身を貫き、彼の腰と尻はますます淫らに動いて、デレックの抽送に合わせて踊った。彼はもう、恥じらいや男としての自尊心などかなぐり捨てて、ただひたすらにこの快楽に溺れていた。

デレックは突然、林宇非の腰を抱え上げるようにして体位を変えた。横向きにされ、片足を高く持ち上げられた格好で、さらに深くまで肉棒が埋め込まれる。林宇非は息を詰まらせ、視界が白く滲む。デレックはそのまま腰を振りながら、空いた手を林宇非の胸元へと伸ばした。

「ここも、ずいぶん柔らかくなってきたじゃないか」

指が、男性としてはありえないほどふっくらと膨らみ始めた乳房を捉える。デレックが力をこめて揉みしだくたびに、白い肌が指の間からこぼれ、頂点の桜色の蕾は硬くしこって存在を主張した。デレックはその蕾を指の腹でぐりぐりと潰し、それから顔を近づけて、ぱくりと口に含んだ。

「ひ、あっ……! そこ、吸っちゃだめ……!」

ちゅう、と音を立てて吸われると同時に、下の孔を奥まで貫かれて、林宇非の腰が跳ねる。デレックはちょうど赤子のように乳房に吸いつきながら、腰の動きを緩めない。胸への愛撫と、後ろの孔への抽送が同時に与えられることで、快感は合わさって膨れ上がり、林宇非の全身はしっとりと汗に濡れそぼった。彼はもう、自分が男なのか女なのかもわからなくなっていた。ただ、デレックに与えられるすべてが気持ちよくて、頭の中がとろけていく。

「お前のここ、すっかり雌の乳だな。吸われるだけで、下の口があんなに締まる」

耳元で囁かれ、林宇非はかあっと全身を赤らめた。理性の欠片が、そんなはずはないと否定するのに、体は正直にデレックの言葉を肯定している。乳首を吸われれば吸われるほど、腸壁はぎゅうぎゅうと肉棒を締めつけ、奥からは新たな蜜がどくどくと湧き出してくるのだ。

「もう、イかせて……お願い、デレック……あっ、ああ……!」

林宇非は泣きそうな声で懇願した。ペニスはロックをかけられたまま、布の下で痛いほどに勃ち上がり、先端からは我慢汁がじわりと染み出している。解放されたくてたまらないのに、デレックはそれを許さない。そのもどかしさが、かえって後ろの孔の感度を際限なく高めていった。

デレックは無言でさらに動きを速め、肉と肉がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。体勢をまた変え、今度は林宇非をうつ伏せに押さえつけ、体重をかけて奥の奥まで抉じ開けるように突き入れた。その衝撃で、林宇非はついに限界を迎えた。

「――――っ!!」

声にならない叫びをあげ、視界が真っ白に染まる。背筋を走る激しい痙攣。それと同時に、ペニスからは熱い飛沫が下着の中で爆発し、後ろの孔はデレックの肉棒を締めつけながら、自分の意思とは無関係にびくびくと蠢き、大量の粘液を噴き出した。前も後ろも同時に達してしまい、彼はしばらくの間、呼吸すら忘れて痙攣し続けた。

その直後、デレックが低く唸り、林宇非の最奥に熱い奔流を叩きつけた。内臓が焼け焦げるかと思うほどの熱が、どくどくと注ぎ込まれる。林宇非はその感覚にさえ、かすかな快楽を覚え、胎の奥がきゅんと疼くのを感じた。

荒い息がしばらく続いたあと、デレックはゆっくりと自身を引き抜いた。ずるり、という感触とともに、塞がれていた孔からは白濁がとろりと溢れ出て、シーツに染みを作る。林宇非はくったりと身を横たえ、指一本動かせなかった。しかしデレックはそんな彼を許さず、ごそごそと何かを取り出すと、彼の尻たぶを割って、冷たい異物を押し込んできた。

「ひっ……! なに……?」

「栓だ。俺の精液がこぼれないようにな。せっかく注いでやったんだ、大事にしろよ」

アナルプラグがずっしりと孔を塞ぎ、内側から圧迫感を与える。デレックの精液が腹の中に閉じ込められているという事実が、林宇非を再び羞恥でいっぱいにした。だがそれ以上に、所有されているという感覚が、妙に彼の心を落ち着かせてもいた。

「さあ、次はお前の仕事だ」

デレックはベッドに腰掛けると、まだ硬さを残した黒光りする肉棒を林宇非の眼前に突きつけた。それは彼自身の体液と、林宇非の腸液でぬらぬらと濡れそぼっている。デレックの視線が、無言の命令を下していた。

林宇非はほとんど自動的に、よろよろと身を起こし、ベッドの下に膝をついた。まるで飼いならされた雌犬のように、おとなしくデレックの足の間に跪く。彼は両手で恐る恐る肉棒に触れ、それから顔を近づけて、ぺろりと舐め上げた。独特の塩辛さと生臭さが舌の上に広がる。それは決して美味しいものではなかったが、デレックの匂いと味が、彼の脳を痺れさせた。

「そうだ、上手だぞ。ちゃんと綺麗に掃除しろ」

デレックが頭を撫でるように髪をくしゃりとやる。その仕草が、なぜか無性に嬉しかった。林宇非は夢中で肉棒にしゃぶりつき、舌を這わせ、鈴口に残った残滓まで吸い出そうと、ちゅうちゅうと音を立てる。彼はもう、何の抵抗もなかった。デレックの雌犬として、命じられるままに奉仕することが、自分にとっての幸せなのだと、心のどこかで思っていた。

しばらくして、デレックが満足そうに息を吐くと、林宇非は解放された。彼はそのまま、床の上にへたり込む。体中が痛みと倦怠感に包まれ、意識は急速に闇の中へと沈んでいった。最後に覚えているのは、デレックの大きな手が、そっと自分の頬を撫でた感触だったかもしれない。

――――

翌朝、林宇非は鈍い痛みで目を覚ました。身体のあちこち、とりわけ腰回りと後ろの孔がじんじんと熱を持って疼いている。彼は自分の部屋のベッドに横たわっていたが、いつどうやって戻ったのか、全く記憶になかった。体を起こそうとして、あまりの痛みに顔を歪める。昨夜の出来事が、まるで濁流のように脳裏に蘇ってきた。

シーツに染みた体液の匂い。デレックにいいようにされ、あられもない声をあげて泣き叫んだ自分。あまつさえ、自ら腰を振り、雌だと認め、跪いて奉仕したこと。腸の奥にまだ、デレックの精液とプラグの違和感が残っている。彼はその感覚に、はっとして布団をめくった。プラグは外されていたが、後ろの孔はまだひくひくと開いたままのような気がする。

林宇非は両手で顔を覆った。あまりの屈辱に、胃の底からこみ上げてくるものがある。

(僕は……まるで、デレックの性奴隷じゃないか。好き勝手に弄ばれて、辱められて……)

頭ではそう思うのに、身体の奥底はもっと深く、もっと激しいものを渇望している。昨夜の、あの内臓を揺さぶられるような悦びを思い出すと、腹の底がきゅんと疼き、太腿がすり合わさりそうになる自分がいる。それがまた、彼を深い自己嫌悪に陥れた。

彼はなんとかベッドから這い出し、シャワーを浴びようと洗面所へ向かう。鏡に映った自分の姿は、どこか今までと違って見えた。肌はつやつやと輝き、瞳は潤んで、唇は熟れた果実のように赤く腫れている。なにより、その表情には、昨夜の痴態の名残がべったりと張りついていた。

(こんな顔……絶対に、誰にも見せられない)

特にデレックには。どうやって顔を合わせればいいのかわからない。あんなことをしておきながら、平然としていられる自信がなかった。林宇非はそれから、意識的にデレックを避けるようになった。会社でも廊下ですれ違いそうになると、慌てて別の道を選び、昼食もひとりでとるようにした。だが、避ければ避けるほど、デレックの視線や声を探している自分がいることにも、彼は薄々気づいていた。