放課後の校舎は、薄暗い夕日が廊下に長い影を落としていた。林逸辰は生徒会室の窓際に立ち、手の中のスマホを軽く弄っていた。ガラス越しに映る自分の顔は、いつもの優等生の仮面を被ったままだったが、口元には微かな歪んだ笑みが浮かんでいた。
彼は偶然にも、蘇晩晴のスマホを拾った。あの教室の隅で、ぽつんと落ちていたそれを手に取った瞬間、運命が彼に新たな玩具を差し出したことを悟った。
ロック画面には彼女の笑顔があった。清らかで、純真で——壊すのにうってつけだ。
彼はスマホを操作し、チャット記録を開いた。不良グループとのやり取りは、いわゆる「曖昧な関係」だった。もっと興味深かったのは、彼女の父親に関するデータフォルダだ。内部の書類、不正の証拠——これらが流出すれば、蘇晩晴の家は即座に崩壊する。
林逸辰はスマホをポケットにしまい、優雅に背筋を伸ばした。彼は決断した。場所は屋上、時間は今だ。
蘇晩晴は呼び出しを受けて、何の疑いもなく屋上へ向かった。夕闇が迫る屋上で、林逸辰が手すりにもたれて待っていた。風が彼の髪を揺らし、制服のネクタイをなびかせている。彼女は不安を感じたが、笑顔を無理やり作った。
「会長、何かご用ですか?」
林逸辰は振り返り、その目は冷たく澄んでいた。彼はゆっくりとスマホを取り出した。「落とし物だよ。」
蘇晩晴の顔色が一瞬で青ざめた。彼女は二歩後退し、声が震えた。「それ…返してくれませんか?」
「もちろん返すよ。でもその前に、話をしよう。」林逸辰は近づき、スマホを彼女の目の前に差し出す。画面には、チャット記録と父親の証拠写真が映し出されていた。「放送室でこれを見た時は、本当に驚いたよ。まさか優等生の蘇晩晴が、校外のチンピラと付き合ってるなんてね。ましてや…偉いお父様は、裏でそんなことを。」
蘇晩晴は唇を噛みしめ、目の端が赤くなった。「それは誤解よ。彼らはただ…友達で、お父さんはそんなこと…」
「黙れ。」林逸辰の声は突然冷たくなり、すべての優しさが消えた。「この証拠を教育局に送ればどうなるか分かってるのか?お前の人生は終わりだぞ。」
「一体何がしたいの?」蘇晩晴の声は泣きそうだった。
「簡単なことだ。俺の言うことを聞け。」林逸辰は一歩前に出て、彼女の顎に手を伸ばす。その指は冷たく、まるで蛇のようだ。「毎週金曜の放課後、屋上に来い。俺が言うことをすべてやれ。そうすれば、このことは永遠に秘密だ。」
「嫌よ!」蘇晩晴は必死に首を振り、彼の手を振り払った。「そんなことできない!」
林逸辰の目に一瞬の怒りが走ったが、すぐに抑えられた。彼は冷笑を浮かべ、スマホを掲げた。「そうか。じゃあ今すぐにでも、お前のパパの同僚たちに、この写真を送ってやろうか?」
蘇晩晴の心臓が止まりそうになった。彼女は震えながら言葉を絞り出した。「お願い…やめて…」
「じゃあ従う気になったか?」林逸辰の声音には、抑えきれない勝ち誇った響きがあった。
沈黙が長く続いた。蘇晩晴は地面に崩れ落ちそうになり、涙が止めどなく溢れた。やがて、かすれた声で、ほとんど聞こえないほどに一言だけ発した。
「…わかった。」
林逸辰は満足げに微笑み、スマホを彼女に投げ返した。「賢い判断だ。じゃあ、金曜にまた会おう。」
彼は振り返り、屋上を去った。足音が遠ざかっていく。蘇晩晴はその場に立ち尽くし、冷たい風が彼女の涙を乾かしていく。彼女は自分の弱さを呪った。なぜあの時、ちゃんとパスワードを設定しなかったのか。なぜもっと早くスマホに気づかなかったのか。
だが、すべてはもう手遅れだった。林逸辰の影は、これからずっと彼女にまとわりつくだろう。夕闇が完全に彼女を包み込んだ時、彼女は地面に崩れ落ち、声もなく泣き続けた。
彼女は逃げ場を失っていた。従うことしか、自分を守る術はなかった。