シャンデリアの光がきらめく舞踏室には、上流社会のエリートたちが集っていた。黒のスーツをまとった男たちと、煌びやかなドレスを纏った女たちが、シャンパングラスを手に優雅な会話を交わしている。
唐志盛は白いスーツに身を包み、ワイングラスを手に部屋の端に立っていた。彼の美貌はこの場にいる誰よりも際立ち、まるで彫刻のように完璧なプロポーションと、漆黒の瞳はすべてを見透かすように冷たく光っている。彼は口元にわずかな微笑みを浮かべ、無意識のうちに周囲の視線を引き寄せていた。
その時、彼の目に二人の女性が映った。一人は黒のシルクドレスをまとった高貴な女性。雲曦だ。彼女は金髪を巻き上げ、宝石のように輝く翡翠のイヤリングをつけている。その目は知的で冷たく、この場の誰も彼女の心を読むことはできない。もう一人は白いチュールドレスを着た巫月玲。彼女はまるで森に迷い込んだ妖精のように無邪気な笑顔を浮かべ、雲曦の腕に絡みつくように立っていた。
唐志盛はグラスを置き、優雅な足取りで二人に近づいた。彼の動きはまるで猛獣が獲物を見つけたかのように、計算されていた。
「美しい方々。この夜の輝きは、あなた方のためにあるのでしょう」
彼の声は低く、甘い毒のように響く。雲曦は一瞬眉をひそめたが、すぐに冷たい微笑みで返した。
「お世辞は不要です。私たちはただお酒を楽しんでいるだけですから」
だが巫月玲は違った。彼女は瞳を輝かせ、まるで新しいおもちゃを見つけた子どものように唐志盛を見上げた。
「あなた、すごく面白い人ね!雲曦姉さん、この人、私たちを知ってるのかな?」
雲曦は巫月玲の腕を軽く引いた。「月玲、あまり無礼に振る舞わないで。失礼します」
しかし唐志盛は退くことなく、かわりに一歩前に出た。彼の手が自然に、雲曦の手首に触れる。それは優しくも、離さない力がこもっていた。
「私は唐志盛。あなた方の名前をお伺いしても?」
雲曦は手を振りほどこうとしたが、唐志盛の指の力は意外なほど強かった。彼女の心臓が一瞬、早鐘を打つ。この感じ、知っている。支配される危険の予感が、彼女の奥底にある何かを呼び覚ます。彼女は顔をそらし、声を硬くした。
「雲曦。そしてこれは私の友人、巫月玲。以上です」
「以上、ですか?」唐志盛は低く笑った。「それにしては…あなたの目はもっと語っているように見える。雲曦、あなたはこのような退屈なパーティーに、何を探しに来たのですか?」
雲曦の顔がほんのり赤くなる。彼女は自分の心が読まれたような恥ずかしさと、同時にそれが快感に感じられる自分の弱さに戸惑っていた。
巫月玲はそのやりとりを楽しむように、くすくす笑った。「ねえ、唐さん。雲曦姉さんはね、いつもこんな風。でも私は、あなたとお話ししたいな。とても面白そうだから」
「おや?月玲は私の何に興味があるのです?」
巫月玲は首をかしげ、無邪気な瞳で答えた。「あなたが何を隠しているのか、知りたいの。だって、あなたの目は…まるで、私たちを食い尽くそうとしているみたいだから」
唐志盛の口元がさらに歪む。彼は巫月玲の顎をそっと持ち上げた。「賢い子だ。だが、まだ子どもだな。すべてを知るには、あまりに純粋すぎる」
その瞬間、雲曦の胸が痛むようだった。彼女は知っていた。この男は危険だ。だが同時に、その危険が彼女の中の何かを激しく揺さぶっている。彼女は手首の拘束から逃れようとさらに力を込めたが、唐志盛はそれを無理に引き寄せた。
「今夜、私とともにもう一つの場所へ行きませんか。もっと…深い話をしましょう」
雲曦は声を震わせながら答えた。「お断りします。私は疲れたので、もう帰ります」
「疲れた?」唐志盛は嘲笑のように言った。「あなたの眼差しは、まだまだ闘う力を秘めている。あなたは本当に、帰りたいのですか?」
雲曦は言葉を失った。巫月玲はその隙に、唐志盛の腕に自分の腕を絡ませた。「じゃあ、私は行くね。雲曦姉さん、心配しなくていいよ。私はちゃんと帰るから」
「月玲!」雲曦の声が鋭くなる。
だが唐志盛はすでに巫月玲を連れ、振り返って雲曦を見た。彼の目は、暗闇の中で輝く星のように冷たく、深かった。「雲曦、あなたもまた、この迷宮に戻ってくるでしょう。私は待っています。永遠のように、長く待つこともできる」
そう言い残し、彼は巫月玲を連れてパーティー会場を去った。彼女の笑い声が、遠くからかすかに響いてくる。
雲曦はその場に立ちつくしたまま、自分の手首を握りしめた。そこにはまだ、唐志盛の指の痕が残っているような気がした。彼女の心は激しく鼓動し、自分の意志とは裏腹に、彼の言葉が耳に焼きついて離れない。
「私は…何を探しているの?」
雲曦は自分のつぶやきに答えが見つからず、ただ深いため息をついた。彼女は知っていた。この出会いが、ただの偶然ではないことを。そして、この男が持つ危険な魅力に、いつか抗えなくなる日が来ることを。彼女の心の奥底で、ある暗い欲望が静かに息をひそめていることに、彼女はまだ気づいていない。