# 第一章: 異世界の扉
気がついた時、林逸は見知らぬ場所に立っていた。
目の前には古びた木造の旅館がそびえ立ち、漆黒の空にぼんやりと浮かび上がっている。周囲には何もない。ただ暗闇が広がるのみで、冷たい風が肌を撫でるたびに、現実ではない何かを感じさせた。
「ここは…どこ?」
隣で蘇婉清が震える声をあげた。彼女の腕にはまだ幼い林悦がしがみついている。娘の目には涙が浮かび、無意識に母の服の裾を握りしめていた。
「お兄ちゃん、私…怖いよ」
林小雨が後ろから林逸の袖を引いた。彼女の明るい瞳は不安に揺れ、普段の活発さは影を潜めていた。
四人はただ立ち尽くすしかなかった。財布も荷物もない。何もかもを失い、この異世界に投げ出されたのだ。
その時、旅館の扉がきしみながら開いた。
「おやおや、こんな夜更けに旅の方ですか?」
現れたのは中年の男だった。顔には柔和な笑みを浮かべ、瞳は優しげに細められている。だが、その奥で何かが光っていた。
「私はこの旅館の主人です。よろしければ、中でお休みください」
林逸は一瞬ためらったが、他に行く場所もない。家族の疲れ果てた様子を見れば、断る選択肢はなかった。
「ありがとうございます。助かります」
主人はにっこりと頷き、彼らを旅館の中へ導いた。薄暗い玄関を抜けると、ほのかに灯るランプの明かりが広間を照らしている。古びた調度品が並び、どこか陰鬱な空気が漂っていた。
「宿代は…」
林逸が恐る恐る尋ねると、主人は手を振った。
「お気になさらず。その代わり、少しここで働いていただければ結構です。裏庭に小屋がありますので、そこをお使いください」
そう言って案内された小屋は、あまりに質素だった。がたつく窓、軋む床、埃をかぶった布団が二組あるだけ。それでも、雨露をしのげるだけましだった。
夜が深まるにつれ、主人が温かい牛乳を持って現れた。
「奥様方、お疲れでしょう。どうぞお召し上がりください」
婉清は礼を述べて受け取り、小雨も悦も喉を潤した。甘い香りが漂い、三人はそれを一気に飲み干した。
「お父さんは飲まないの?」
悦が無邪気に尋ねる。林逸は首を振った。
「ああ、お父さんはいいよ」
なぜか胸騒ぎがした。主人の笑顔が、どこか不気味に見えたのだ。
その夜更け、婉清、小雨、悦は深い眠りに落ちた。異常なほどの深い眠りだ。林逸は布団の中で目を開けていた。心臓が早鐘を打っている。
ドアの外から微かな物音が聞こえた。林逸は息を潜めて耳を澄ます。足音が近づいてくる。複数の人間の気配だ。
「…効いてるか?」
「ああ、ぐっすりだ」
主人の声が聞こえた。続いて、別の低い声と、もう一つ、肥満体の男の息遣いが混じる。
林逸は震えながら立ち上がり、そっと戸の隙間から覗き見た。
暗がりの中、主人が婉清の寝床に近づいていく。彼の手には何かが握られていた。白い液体の入った器だ。
「綺麗な奥さんだねえ…」
主人は婉清の口を開かせ、その液体を流し込んだ。婉清は無意識にそれを飲み込み、喉が上下する。その様子を、主人は恍惚とした表情で見つめていた。
隣では、黒人の大男が小雨の体をまさぐっている。小雨は微かにうめいたが、目を覚ます気配はない。
「この娘さん、肌が柔らかいね」
男は小雨の首筋に顔を寄せ、同じように液体を飲ませた。
三人目の男——趙大胖と呼ばれた肥満体の巨漢は、悦の前にしゃがみ込んでいた。
「小さなお嬢ちゃんには、甘いお菓子をあげようね」
彼の手は、悦の小さな頬を撫で、次第に下へと滑り落ちていく。林逸は叫び出したい衝動に駆られたが、声が出なかった。
「覗いているのかい?」
突然、主人の声がした。顔を上げると、主人が真っすぐに林逸の隠れている戸の隙間を見つめている。その瞳には冷たい警告の色が浮かんでいた。
「黙っていなさい。さもないと、家族がどうなるか分からないよ」
林逸は身をすくめた。拳を握りしめ、爪が掌に食い込む。だが、何もできなかった。
主人は再び婉清に視線を戻し、その口元に自らの欲望を押し付けた。婉清の唇が開かれ、白い濁液が流れ込む。彼女の喉がごくごくと動き、無意識のうちに飲み干していく。
同じ頃、黒人の男も小雨の口に自分のものを押し込んでいた。小雨は夢の中で拒絶するような表情を見せたが、体は動かない。
趙大胖は悦の前に立ち、股間を握りしめている。
「お嬢ちゃん、これを舐めるんだよ」
悦の口が開かれ、幼い喉が異物を受け入れていく。
林逸はその光景に耐えきれず、目を閉じた。だが、耳を塞ぐことはできなかった。むせるような音、体液が混ざる嫌な水音、男たちの低い吐息が、闇夜に響き渡る。
どれだけの時間が経ったのか。男たちが満足げに立ち上がり、部屋を去っていく気配がした。そして、静寂が戻った。
林逸は震える手で戸を開け、家族の寝床に駆け寄った。婉清の顔は赤らみ、口元には白い跡が残っている。小雨も悦も同じだった。三人とも、深い眠りに落ちたままで、何が起きたのか知る由もない。
「どうして…どうしてこんなことに…」
林逸は床に崩れ落ちた。無力感が全身を蝕む。自分は父であり、夫であり、兄だ。守るべき家族が、目の前で穢されているのに、何もできなかった。
夜明けが近づくにつれ、冷たい風が窓の隙間から吹き込む。林逸は立ち上がり、家族の体を拭いてやった。婉清の首筋には小さな噛み跡が残り、小雨の服は乱れ、悦の唇は腫れていた。
「ごめん…ごめんな…」
林逸は声を殺して泣いた。この異世界で、彼らはただの獲物に過ぎないのか。生きるために、この屈辱に耐えなければならないのか。
しかし、窓の外で夜明けの光が差し始めていた。新しい一日が始まろうとしている。林逸は歯を食いしばり、決意を固める。
必ず、いつか、この屈辱を晴らしてやる。その日まで、俺は耐える。そして——。
彼は家族を見つめた。三人の寝顔は、まだ無防備だった。