# 第三章
## 偽りの姿と聖槍の覚醒
魔王ドカは今、人間の剣士カドとして変装していた。頭の角は消え、190センチの筋骨隆々とした体躯はそのままに、赤い瞳だけは隠すことができず、常に目を伏せ気味にしている。そんな変装にも理由があった——娘のアリサに一目会いたい。そして、最愛の勇者エリカと共にいたい。それだけの願いを叶えるための偽りの姿だった。
街の中央広場に立つカドは、遠くに見える見慣れた金髪を見つけて足を止めた。勇者エリカだ。彼女は何やら若い男性冒険者と談笑している。カドはわずかに眉をひそめたが、平静を装って近づいた。
「おう、カド! ちょうど良かった!」
エリカが手を振る。その豊かな胸が揺れ、周囲の視線を集める。彼女は全く気にしていない様子で、隣の少年を紹介した。
「この子はガガットって言うんだ。最近うちのギルドに登録した槍使いの冒険者だよ」
ガガットは160センチほどの小柄な体躯で、顔立ちは決して整っているとは言えず、どちらかと言えば猿に似た印象を与える。しかし、その目はエリカに向けられた時、一際輝きを増していた。
「は、初めまして! ガガットと言います!」
カドは小さく頷いた。内心では、この少年に対してなぜか苛立ちを覚えていた。
「ガガットは家族がいなくてね、俺がギルドで少し面倒を見ているんだ」
エリカが説明する。さらに彼女は誇らしげに言葉を続けた。
「この前のゴブリン討伐の任務でな、ガガットは仲間を守るために腕を負傷したんだ。本当に勇敢な子だよ!」
そう言うと、エリカはガガットを突然抱きしめた。彼女の巨大な胸がガガットの顔全体を包み込む。ガガットの表情が一瞬で弛緩し、どこか恍惚としたものに変わる。
「本当に立派だ! 実力がどうあれ、弱い者を守ろうとする心こそが真の冒険者だ!」
カドの目が鋭く光った。ガガットの顔に浮かぶ微かな恍惚の表情——それが何を意味するか、男としては嫌というほど理解できた。
「勇者エリカ殿! そのような姿勢はお控えください!」
カドは声を張り上げ、間に割って入った。エリカは一瞬驚いた顔をしたが、我に返ってガガットから体を離した。
「あ、悪い悪い。つい感動しちゃってな」
「い、いえ……ありがとうございます……」
ガガットは顔を赤らめ、うつむいた。しかしカドは見逃さなかった。彼の目に一瞬宿った狡猾な輝きを。
*この小僧……*
カドは心の中で毒づいた。魔王ドカとしての本性が、怒りで制御を失いそうになる。
*ゴブリンの雑魚魔物を何匹か倒しただけだろうが! そんなことが何だというんだ!*
しかし、それ以上にカドを苛立たせたのは、エリカの無防備さだった。彼女は自分がどれだけの魅力を持っているか、まったく自覚していない。まるで無垢な子供のように、他人に心を開いてしまう。
「まあ、せっかくだし三人で街を回ろうぜ!」
エリカが明るく提案した。カドはため息を一つつき、頷いた。
## 運命の寺院
三人は都市を散策した。石畳の道は人々で賑わい、露店では様々な品が売られている。エリカはそのたびに立ち止まり、興味を示す。ガガットはその後ろを小さく歩きながら、エリカの後ろ姿を追っていた。
「ねえ、あの通りはまだ行ったことないな」
エリカが指さした方向は、街の外れに向かう細い路地だった。カドもその場所には見覚えがなかった。
「行ってみようぜ!」
エリカが先導して歩き出す。しばらく進むと、人気のない静かな場所に出た。そこには、苔むした古びた寺院が佇んでいた。明らかに長い間、手入れがされていない。崩れかけた石壁には蔦が絡まり、入り口の扉も半分ほど朽ちていた。
「何だ、こんな場所があったのか」
カドが呟く。エリカは好奇心に駆られて、躊躇なく寺院の中へ足を踏み入れた。
中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。しかし、中央にある祭壇だけは、なぜか異様なまでの気配を放っている。三人が近づくと、そこに一本の長槍が突き立っているのが見えた。
それは見事な装飾が施された槍だった。銀色の穂先は時を経てもなお鈍く光り、柄には細かい彫刻が刻まれている。
「これは……」
エリカの表情が一変した。彼女はゆっくりと近づき、槍をじっくりと観察する。
「初代槍の勇者……その聖槍だ」
「勇者って、エリカさんだけじゃないんですか?」
ガガットが疑問を口にする。エリカは首を振った。
「本来、勇者は剣の勇者と槍の勇者の二人が揃って、初めて真の力を発揮できると言われている。だが……初代槍の勇者は初代魔王に倒され、それ以来、誰もこの聖槍を手にすることはできなかった」
「ふん! 槍の勇者の方が絶対に強いですよ!」
ガガットが得意げに言い放った。
「初代魔王だって、正々堂々の一騎打ちじゃなくて、他の勢力と組んで数で押しただけだ! それだけ槍の勇者が脅威だった証拠です!」
カドの顔が一瞬で強張った。内心では、この生意気な小僧をひっぱたきたくなる衝動を必死に抑えている。
*よくもまあ、大口を叩くものだ……*
しかし、カドは知っていた。確かに魔王の記録には、初代槍の勇者の戦闘力が怪物級だったと記されている。もしかすると、自分を上回る力を持っていたかもしれない。だが、それも遥か昔の話。今となっては真偽を確かめる術もない。
「あ、あの……俺も槍使いなんですけど」
ガガットがおずおずと手を挙げた。顔は真っ赤になっている。
「もし……もし俺も槍の勇者みたいに強くなれたら……エリカさんと一緒に戦えるんですかね?」
エリカはその言葉に破顔一笑した。
「ははっ! そんなこと気にしなくていいさ。強くなくても、俺と一緒に戦えるさ!」
カドは眉をひそめた。
*この小僧……エリカに好意を持っているのか?*
いや、それ以上に問題なのは、エリカがまったくそのことに気づいていないことだ。彼女はただ単純に、後輩を励ましているつもりなのだ。
*まったく……この女はこういうところが本当に……*
カドは頭を抱えたくなったが、同時に、ガガットがどれほどの脅威になるのかを測定する必要があると考えた。
「〔鑑定眼〕」
カドは小声で呪文を唱え、ガガットの戦力値を確認した。
**【戦力値——ガガット】**
**力: 20**
**敏捷: 30**
**魔法: 18**
**防御: 21**
「……ふん」
カドは内心で嘲笑した。確かに新人としては悪くない。しかし、自分やエリカに比べれば、その差は歴然としている。到底、脅威になる存在ではない。
「安心したぞ」
カドはそう呟き、戦力を測るのをやめた。
## パーティ結成
数日後、冒険者ギルドにエリカが集めたパーティが発表された。
「俺の新しいパーティを結成する! メンバーは——」
エリカは堂々と宣言した。
「まず、俺! 剣の勇者エリカ! そして、剣士カド!」
カドが一歩前に出る。二人の圧倒的な存在感に、ギルド内がざわめいた。
「もう他のメンバーは必要ないだろ? あの二人だけで十分だ」
「ああ、S級の依頼だって余裕だろうな」
誰もがそう囁く中、一人だけ震える手を挙げた者がいた。
「わ、私も……! パーティに入れてください!」
それはガガットだった。彼は手に槍を握りしめ、決意の表情で立ち上がる。
ギルド中が一瞬の静寂に包まれた後、爆笑が巻き起こった。
「ははっ! 何言ってんだ、あのガキ!」
「エリカさんのパーティに入るなんて、百年早いぞ!」
ガガットの顔が真っ赤に染まる。しかし、エリカの表情は逆に厳しくなった。
「お前ら、笑うんじゃねえ!」
その一声で、ギルド内が水を打ったように静まり返る。
「このガガットって奴はな、先日のゴブリン討伐で自分の体を張って仲間を守ったんだ! お前らの中で、そんな真似ができる奴はどれだけいる?」
誰も答えない。エリカの言葉には重みがあった。
「だがな、ガガット——」
エリカは優しく、しかし現実的な言葉を続けた。
「実力の問題は別だ。お前はまだ、俺たちと共に戦うには足りないものがある。もう少し修行を積んでから——」
「待て」
そこにカドが口を挟んだ。
「ガガット、お前がもし本気で入りたいのなら、条件がある」
ガガットが目を輝かせてカドを見る。
「レベルと戦力を、十分な水準まで引き上げろ。それができれば、考えてやらんこともない」
「一ヶ月です!」
ガガットは即座に答えた。
「一ヶ月あれば、必ず強くなってみせます!」
そう言い放つと、ガガットはギルドを飛び出していった。
「大言壮語だな……」
カドは呟いた。しかし、どこかその態度に、自分が若かった頃の面影を感じた。
## 成長の軌跡
それからの一ヶ月、ガガットはギルドの掲示板を毎日のように確認し、次々と依頼をこなしていった。始めはゴブリンやスライムなど、低ランクのものばかりだった。しかし、日が経つにつれ、彼が討伐する魔物は徐々に強力になっていく。
「今日の成果だ」
ガガットは毎日のようにギルドに戻り、依頼達成を報告する。そのたびに、彼の装備や表情が変わっていくのがわかった。
そして、約束の日が来た。
ギルドの能力値測定石板の前に、ガガットが立つ。カドとエリカはその後ろで結果を見守った。
「さあ、測定開始だ」
ガイドが石板を作動させる。青白い光がガガットを包み、数値が浮かび上がった。
**【戦力値——ガガット】**
**力: 145**
**敏捷: 178**
**魔法: 112**
**防御: 136**
「何……!」
カドは思わず声を漏らした。一ヶ月前と比べて、数値は桁違いに跳ね上がっていた。まるで別人のような成長速度だ。
「ははっ! 見たか!」
ガガットは得意げに胸を張る。
「俺はちゃんとやればできるんだ!」
エリカも驚きを隠せない。
「すごいな、ガガット……たった一ヶ月でここまで成長するとは……」
カドは歯を食いしばった。確かに成長速度は異常だ。しかし、あの数値は嘘ではない。
「……約束は約束だ」
カドは渋々ながら認めた。
「お前をパーティに入れる。ただし、足を引っ張るなよ」
「はい!」
ガガットの声が、ギルド中に響き渡った。
## 雪山の激闘
新たなパーティとなった三人に、最初の大型依頼が舞い込んだ。
「雪山に出現した巨大山猪の討伐……か」
カドは依頼書を見ながら呟いた。確かに、S級には満たないものの、それなりに危険な依頼だ。
「問題ないだろ。俺たちなら」
エリカは軽く笑った。ガガットも自信満々に頷く。
三人は雪山へと向かった。吹雪の中を進み、目的地に辿り着いた時、彼らの前に巨大な山猪が姿を現した。それは体長が五メートルを超え、全身を鋼のような剛毛で覆っていた。
「でけえ……」
ガガットが息を呑む。
「油断するなよ」
カドは剣を抜いた。しかし——その瞬間、異変が起きた。
山猪の体が突然、黒い瘴気に包まれ始めた。その目が真紅に輝き、体からは邪悪なオーラが溢れ出す。
「何だ、これは……!」
エリカが叫ぶ。
山猪の姿が変貌した。体はさらに巨大化し、剛毛は刃のように鋭くなり、口からは炎が漏れ出している。
「まさか……邪神の四天王の一人——鋼毛天王!」
カドは思わず声を上げた。これはただの魔物ではない。邪神の配下として語り継がれる、伝説級の存在だ。
「くそっ……!」
エリカが斬りかかるが、鋼毛天王の剛毛は彼女の剣すらも弾き返す。
「効かない……!」
「エリカ!」
カドは駆け出そうとするが、鋼毛天王の尾が風を切ってエリカを襲う。彼女はギリギリで回避したが、体勢が大きく崩れる。
今だ——とばかりに、鋼毛天王の牙がエリカに迫る。
*このままでは……!*
カドの手が、変身の印を結ぼうとしたその時——
「うおおおおお!」
ガガットが雄叫びを上げ、槍を構えて鋼毛天王に突っ込んだ。
「ガガット! 危ない!」
エリカの声も届かない。ガガットは全く躊躇することなく、鋼毛天王の前に立ちはだかる。
「よくもエリカさんを!」
その一撃は見事に鋼毛天王の剛毛を貫いた。弾かれるかと思われた槍が、確かな手ごたえと共に魔物の体を捉えている。
「な……!」
カドは驚愕した。ガガットの動きは先ほどまでとはまるで別人のように洗練されていた。力強い踏み込み、正確な槍さばき——まるで、長年槍を振るってきた古強者のような風格すら感じさせる。
その時、遠く離れた港町イノックの寺院で、祭壇に突き刺さっていた聖槍が突然、青白い光を放った。
槍は自ら揺れ始め、やがて勢いよく祭壇から飛び出した。空中で一瞬停止すると、まるで意思を持つかのように方向を変え、一直線に飛び去っていく。
その聖槍は、まさにガガットの目前に現れた。
「これは……!」
ガガットは反射的に手を伸ばした。指が柄に触れた瞬間、聖槍は眩い光を放ち、ガガットの手に吸い付くように収まった。
体全体に電流のような力が奔る。ガガットの目が金色に輝き始める。
「はあああああ!」
ガガットは聖槍を振るった。鋼毛天王の剛毛が、まるで紙のように引き裂かれる。
「チャンスだ!」
エリカが背後から飛びかかる。彼女の剣が、ガガットが開いた隙間を正確に捉え、鋼毛天王の心臓を貫いた。
鋼毛天王の断末魔が雪山に響き渡る。そして、その巨体は力なく崩れ落ちた。
「……やった……のか?」
ガガットが呟く。その声は震えていた。力が抜けたのか、彼はその場に膝をつく。
「ガガット!」
エリカが駆け寄り、倒れ込もうとするガガットを受け止めた。しかし——その拍子に、ガガットの顔が彼女の巨大な胸に埋もれてしまう。
「むぐっ……」
ガガットの顔が、柔らかな感触と共に包まれる。そこから漂う母性を感じさせる乳香に、彼の意識は急速に遠のいていく。
「よくやった! 本当によくやった!」
エリカはガガットを抱きしめ、その頭を優しく撫でた。
「お前は立派な勇者だ!」
「…………」
ガガットは何も答えられなかった。だが、その顔には確かな満足感が浮かんでいた。
「おい、エリカ。そのくらいにしておけ。俺が背負う」
カドが割って入り、無理やりガガットをエリカの腕から引きはがした。彼の顔には明らかな苛立ちが浮かんでいる。
*この……この小僧……!*
カドは心の中で罵倒した。
*まさか、こんな形で聖槍に認められるとは……!*
## 歓喜の報せ
ガガットが目を覚ました時、彼は冒険者ギルドのベッドに横たわっていた。
「あ……ここは……」
「おおっ! 目を覚ましたか!」
周りにいたギルドの連中が一斉に歓声を上げる。
「ガガット! お前は新一代の槍の勇者だ!」
「伝説の聖槍を手にしたんだ!」
人々は口々に祝福の言葉を送る。そして、人混みをかき分けてエリカが現れた。
「ガガット!」
彼女は満面の笑みを浮かべ、ガガットを抱きしめる。彼女の胸元は大きく開かれた北半球開胸の服装で、ガガットの顔が再びその柔らかな谷間に埋もれる。
「よくやった! 本当によくやった!」
ガガットは目の前の光景に呆然としながらも、その柔らかさを堪能していた。
「お、落ち着いてください、エリカさん……!」
「何言ってるんだ! お前は英雄だぞ!」
周りからも拍手が起こる。エリカは立ち上がり、声を張り上げた。
「よし! 今日はこのガガットの誕生を祝って、宴会だ! 全員、俺の奢りだ!」
ギルド中が湧き上がる。しかし、一人だけ浮かない顔をしている者がいた——カドだ。
「……ちっ」
彼は舌打ちを一つし、黙ってその場を後にしようとした。
「おい、カド! お前も来いよ!」
「……ああ」
無理やり笑顔を作り、カドは振り返った。
## 海辺の夜
祝賀会の後、三人は港街の近くの海辺の砂浜に来ていた。静かな夜の海は、月明かりに照らされて銀色に輝いている。
「ふう……いい風だな」
エリカが伸びをすると、その豊かな体の曲線が強調される。ガガットはチラリとそれを見て、すぐに視線を逸らした。
「あ、ありがとうございます……今日は本当に……」
「礼はいいさ! お前が頑張ったからだ」
エリカが笑う。カドは少し離れた場所で、海を見つめていた。
その時——聖槍が突然、淡い光を放ち始めた。
「な、何だ!?」
ガガットが驚いて槍を見る。光は徐々に強くなり、やがて一つの影を形作った。
現れたのは、美貌の女性だった。艶やかな黒い長髪、蠱惑的な瞳、そして露出の多い服装。彼女の背後には、蝙蝠のような翼が生えている。
「ふふ……初めまして、槍の勇者様」
女は優雅に一礼した。
「私はリリス。この聖槍の看守者にして、迷える者を導く守護者です」
「リリス……?」
エリカが警戒しながら名を口にする。
「剣の勇者エリカと言います。まさか、聖槍に看守者がいるとは……!」
「ええ、私は古の誓いに従い、真の主が現れるまでこの槍を守ってきました」
リリスはそう言うと、突然エリカの胸元に飛びついた。
「わっ! 何をする!」
「いや〜、この巨乳! 何を食べたらこんなに育つんです?」
リリスは遠慮なくエリカの胸を揉みしだく。エリカは顔を真っ赤にして慌てるが、リリスの手は止まらない。
「や、やめろ! こんな場所で……!」
「あらあら、恥ずかしがらなくてもいいのに」
リリスは妖しく笑う。その光景を、カドとガガットはただ呆然と見守るしかなかった。
「…………」
「…………」
二人の男は、お互いに視線を逸らした。
## 魔王の秘密
夜も更け、カドは宿屋の自室に戻っていた。今日の出来事を思い返しながら、深いため息をつく。
「まさか……あの小僧が聖槍に認められるとはな……」
その時、部屋の空気が突然、重く変化した。
「おやおや、魔王様が人間の真似事とは、ご苦労なことです」
声と共に、リリスが影から姿を現した。
「……どういうつもりだ」
カドは平静を装いながら答える。
「私が何を言っているのか、お分かりでしょう?」
リリスの目が妖しく光る。
「あなたは魔王ドカ。変装しているつもりかもしれませんが、私の目はごまかせませんよ」
カドの顔色が変わった。彼は観念して、変装を解いた。
「……よくわかったな」
「ええ、私は聖槍の看守者。古の神に仕える者として、あなたの正体など一目瞭然です」
リリスは優雅に歩きながら、カドの前に立つ。
「あなたは知っていますか? 上古の神々が定めた鉄則——魔王と勇者は、近づいてはいけないという掟を」
「知っている」
カドの声が低くなる。
「だが、私は……エリカに会いたいんだ。娘のアリサにも……」
「娘?」
リリスの目が一瞬、驚訝の色を帯びる。
「なんと……剣の勇者との間に、子までもうけていたとは……これは面白い」
「笑い事じゃない!」
カドが声を荒げる。
「私はどうすればいい? この掟を破る方法はないのか?」
「ありますよ」
リリスの答えは、あまりにもあっさりしていた。
「……本当か?」
「ええ。ただし、代償があります」
カドの目に一縷の希望が灯る。
「何でもしよう。教えてくれ」
「落ち着いてください」
リリスは優雅に手を振った。
「まずは、あなたがなぜここにいるのか、すべて知る必要があります」
彼女の目が金色に輝き始める。カドは、その力の奔流を感じ取った。それは、計り知れない——神にも等しい力だ。
「全知全能……」
カドの背筋に冷たい汗が流れる。
「あなたは……その力を使えるのか……」
「ええ、私は聖槍の看守者。古の神々の力を一部、継承しています」
リリスはそう言うと、目を閉じた。数秒後、彼女が目を開けると、その表情には明確な理解が浮かんでいた。
「なるほど……あなたの過去、現在、そして可能性の未来……すべて理解しました」
「それで……方法とは?」
「ふふ……まずは、笑わせてもらいました」
リリスが突然、大笑いし始めた。
「ははは! こんなに面白い話は初めてです! 魔王と勇者が恋に落ち、子をなし、今もなお想い合っているなんて!」
カドは呆然とその様子を見守る。
「面白い! 実に面白い!」
笑い終えると、リリスの表情が急に真剣なものに変わった。
「いいでしょう。あなたに、上古の神々の掟を破る機会を与えます」
「本当か!」
「ただし、条件があります」
リリスは人差し指を立てる。
「あなたは神々の賭け——神の試練——に挑むことになります。与えられた課題をクリアしなければ、代償を支払ってもらいます」
「代償……それは何だ?」
「もしあなたが負けた場合——私があなたのペニスを吸い出します」
カドは一瞬、言葉を失った。
「な……何を言っている!?」
「落ち着いてください」
リリスは淡々と続ける。
「私が吸い込むたびに、あなたのペニスのサイズは縮小します。そして、その抽出したサイズ分は——槍の勇者ガガットに与えられます」
「ふざけるな! なぜそんなことを!」
「おやおや、あなたは知らないのですか?」
リリスは妖しく笑う。
「初代魔王が、他の勢力と組んで初代槍の勇者を倒した後、その力を奪い取ったことを。だからこそ、歴代の魔王は皆、通常の男性よりも大きなペニスを持っているのです。それは、初代槍の勇者の力の一部が、魔王の血筋に流れているからに他なりません」
カドは言葉を失った。
「つまり、あなたのペニスには、初代槍の勇者の力が宿っている。それを、正当な継承者に還元する——それだけのことです」
「……もう一つ、条件がある」
「何ですか?」
「試練の間、あなたは魔王の力を使ってはなりません。変身も禁止です。もし破れば、私は権限を発動してあなたを追放します。その場合、偽りの姿で剣の勇者エリカに近づくことも許されません」
カドは深く息を吐いた。
「……わかった。それで、その賭けに勝てば、掟は解かれるのか?」
「ええ。一度でも勝利すれば、上古の神々の隔離は解除されます。もちろん、負けても再挑戦は可能です——ただし、そのたびにあなたのペニスは削られていきますが」
「…………」
「どうしますか?」
カドはしばらく沈黙した。そして、決意の目を向けた。
「やる。その賭けに乗ってやる」
「賢明な判断です」
リリスは微笑んだ。
「では、最初の試練内容を発表しましょう」
## 最初の試練
「最初の試練は——雪山に再び現れた鋼毛天王を倒すことです」
リリスの言葉に、カドは眉をひそめた。
「あの山猪は、確かに俺たちが倒したはずだ」
「ええ。しかし、邪神が復活させました。前回よりも凶暴化しているでしょう」
「一人で倒せと言うのか?」
「いいえ。剣の勇者エリカは参加できません。あなたと、槍の勇者ガガットの二人で挑むのです。そして、あなた自身が鋼毛天王に止めを刺さなければなりません」
「あの小僧と……か」
カドは苦い顔をした。
「不服ですか?」
「……いや、構わない。やるだけやってみせる」
「では、明日から行動開始です。エリカには適当に地下城探索でも言いつけておくと良いでしょう」
リリスはそう言うと、部屋の影に溶けるように消えていった。
## 奇跡の再来
翌日、カドはエリカに「新しく発見された地下城の調査」を依頼した。エリカは快く承諾し、単独で向かっていった。
「よし……これでいい」
カドは深く息を吸い、ガガットを連れて雪山へ向かった。
「カドさん、今日の任務は何ですか?」
ガガットが尋ねる。
「鉱石を採掘するだけだ。大したことじゃない」
カドは平静を装って答えたが、あえて鋼毛天王のいる場所へとルートを変えていく。
そして、目的地に辿り着いた瞬間——
「来たぞ……」
目の前に現れた鋼毛天王は、確かに前回よりも巨大で、その全身から放たれる邪気も格段に強まっていた。
「ガガット、下がっていろ。俺がやる」
カドは剣を抜き、鋼毛天王に斬りかかる。しかし——鋼毛天王の尾が、瞬時にカドの体を捉えた。
「ぐあっ!」
カドの体が大きく吹き飛ばされ、雪の地面に叩きつけられる。
「カドさん!」
「うるさい! 下がっていろ!」
カドは必死に立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。魔王の力を使うわけにはいかない——その制約が、彼の本来の力を大きく削いでいた。
「俺がやります!」
その時、ガガットが聖槍を手に、鋼毛天王の前に立ちはだかった。
「おい、無茶をするな!」
「大丈夫です!」
ガガットは聖槍を構え、鋼毛天王の攻撃をひらりとかわす。そして、その隙を見逃さずに槍を突き出した。
「せいっ!」
槍の一撃が、鋼毛天王の急所を正確に捉える。魔物は断末魔の叫びを上げ、そのまま地面に倒れ込んだ。
カドは呆然とその光景を見ていた。
「…………」
「やりましたよ、カドさん!」
ガガットが笑顔で振り返る。その姿に、カドは自分が負けたことを悟った。
「……ああ。よくやったな」
心の中で、カドは深いため息をついた。
## 代償の夜
宿屋の部屋に戻ると、リリスが既に待っていた。
「おかえりなさい、魔王様」
「……見ていたのか?」
「ええ、全て」
リリスは優雅に微笑む。
「最初の試練は残念でしたね。ガガットが倒してしまいましたから」
「…………」
「さて、では代償をいただきましょうか」
リリスは手を伸ばし、カドのズボンに手をかける。
「少しの間、じっとしていてくださいね」
「待て——」
カドの制止も虚しく、リリスは一気にズボンを下ろした。
露わになった魔王のペニスは、外気に触れて微かに震えている。リリスはそれをじっくりと観察する。
「ふむ……確かに立派なものですね。18センチといったところでしょうか」
「見るな!」
「見るだけで終わらせるわけにはいきませんよ」
リリスはそう言うと、口を開けてカドのペニスを咥え込んだ。
その瞬間、カドの体に強烈な催淫魔法がかけられ、彼の意思とは無関係にペニスが一気に勃起する。
「んっ……!」
カドは思わず声を漏らした。リリスの舌が、巧みにペニスを舐め回す。そして、何かを吸い出すかのような動作を繰り返す。
「んうう……ちゅ……」
その度に、カドはペニスの内部が何かが抜けていく感覚を味わう。痛みと、それ以上の空虚感が、彼の体を襲う。
「ぐっ……!」
やがて、リリスが口を離した。
「ふう……いただきました」
「……何を、した?」
カドは荒い息をつきながら尋ねる。
「あなたのペニスのサイズを、少しだけ削りました。今は——16センチといったところでしょうか」
「…………」
「さて、では次の試練は明日、お伝えします」
リリスは優雅に立ち上がり、そのまま部屋を去っていった。
## もう一人の夜
同じ頃、ガガットは自分の宿屋で腕立て伏せをしていた。
「はあ……はあ……」
今日の戦いを思い出す。聖槍の力、そしてエリカの笑顔。それが彼の胸を熱くさせていた。
その時、窓が音もなく開き、リリスが現れた。
「やあ、槍の勇者様。お元気そうで何よりです」
「リリス? 何か用ですか?」
「ええ、少し——あなたの勇者としての成長を助けるために来ました」
リリスはそう言うと、一気にガガットのズボンを下ろした。
「な、何をするんですか!」
「静かにしていてくださいね」
リリスはガガットのペニスを口に含む。ガガットの体に電流のような衝撃が走り、ペニスが反応して勃起する。
「んんっ……!」
ガガットのペニスは、11センチほどのサイズだった。リリスはそれを口に含み、何かを体内に送り込むように動く。
「んう……ちゅ……」
やがて、ガガットはペニスの中に熱いものが流れ込んでくる感覚を覚えた。それはまるで、生命の躍動そのものだった。
「な、何が……!」
「じっとしていてください」
リリスの言葉に従い、ガガットはそのまま感覚に身を任せる。
数分後、リリスが口を離した。ガガットのペニスは、明らかに以前よりも大きくなっていた。
「15センチ……と、少し太くなりましたね」
「な、何をしたんですか?」
「槍の勇者の鍛練の一環です。心配しないでください」
リリスは涼しい顔で答える。
「あ、そうなんですか……?」
「ええ。では、明日も頑張ってくださいね」
リリスはそのまま、闇に消えていった。
ガガットは、自分の股間を見つめながら、不思議そうに首をかしげた。
「……なんか変な感じだな」
彼はそう呟き、再び腕立て伏せを始めた。
その夜、三人の運命は確かに動き始めていた。
——だが、その結末を知る者は、まだ誰もい
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