# 新青春の淫動
## 第一章 新入生の絵の秘密
九月の初め、夏の名残がまだ強く残るある日、秦昊は大きなリュックを背負い、使い古したスーツケースを引きずって、大学の正門の前に立っていた。高くそびえるアーチには「華陽大学」という金字が燦然と輝いている。彼の故郷である小さな村では、この大学の名は一種の神話のようなものだった。
村で初めて大学に合格した者として、秦昊は出発前の夜、両親から何度も何度も繰り返し言い聞かせられた。「しっかり勉強しろよ」「先生の言うことをよく聞け」「都会の誘惑に惑わされるな」。母親は彼の服の襟を整えながら、涙ぐんでいた。父親は肩を叩きながら、ただ「頑張れ」と言ったきりだった。
秦昊は深呼吸をした。胸の奥で熱いものが込み上げてくる。十八年間住み慣れた村を離れ、初めて故郷を離れたこの少年は、好奇心と不安が入り混じった複雑な気持ちを抱えていた。キャンパスの中は、あちこちで新入生を歓迎する横断幕が掲げられ、先輩たちが忙しそうに行き交っている。あちこちから聞こえてくる笑い声や話し声に、秦昊は少し戸惑いながらも、心の奥底に抑えきれない期待が湧き上がるのを感じていた。
「新入生ですか?寮はどこですか?」
親切そうな先輩が声をかけてくれた。秦昊は慌てて案内図を取り出し、地図を指さしながら道順を尋ねた。先輩は丁寧に道を教えてくれ、さらに「何か困ったことがあったらいつでも聞いてください」と親切に言ってくれた。
秦昊は何度も頭を下げて礼を言いながら、案内図に従って寮へと向かった。並木道を歩きながら、彼はキャンパスの景色に目を奪われる。高層の校舎、広々とした運動場、そしてすれ違う学生たちの姿。その一人ひとりが自信に満ち、輝いているように見えた。
「ここが僕の新しいスタート地点なんだ」
秦昊は心の中でつぶやいた。同時に、故郷で期待を寄せる両親の顔が浮かび、彼の決意をさらに強くした。
寮は六号館の三階、三一二号室だった。案内板に従って部屋の前に立つと、中から話し声が聞こえてくる。秦昊は少し躊躇した後、ドアをノックした。
「どうぞ!」
中から明るい声が返ってきた。秦昊がドアを開けると、三人の同年代の男子学生がそれぞれベッドの上で荷物を広げていた。
「あ、新しいルームメイトだ!」
一番近くにいた、がっしりとした体つきの学生がすぐに立ち上がり、笑顔で近づいてきた。「俺は張磊、遼寧省から来たんだ。よろしく!」
秦昊も微笑み返し、自己紹介をした。「秦昊です。江蘇省の小さな村から来ました。よろしくお願いします」
「江蘇省?いいところだな!」窓際のベッドで本を読んでいた眼鏡の学生が顔を上げた。「俺は李想、浙江省の出身だ。これから四年間、一緒に過ごすことになるな」
もう一人の小柄で色白の学生も立ち上がり、軽くお辞儀をした。「陳明と言います。上海から来ました。みなさん、よろしくお願いします」
四人は簡単に挨拶を交わし、それぞれの出身地や専攻について話した。秦昊は張磊が体育学部、李想がコンピュータ科学科、陳明が経済学部だと知った。そして自分は芸術学部の油絵専攻だと伝えると、三人から「おお、芸術家だ」と感嘆の声が上がった。
秦昊は少し照れくさそうに笑った。自分の絵の才能は村では評価されていたが、この広い大学の中で通用するかどうかは自信がなかった。
荷物を整理していると、携帯電話が鳴った。クラス担任からのメッセージで、午後二時に第二校舎の一〇三教室でクラス会があると書いてあった。
「みんな、もうすぐクラス会だって。一緒に行かない?」
秦昊が声をかけると、三人もそれぞれの学部の連絡を確認し、慌てて身支度を始めた。秦昊は簡単に髪を整え、新しいシャツに着替えた。入学式のような格式ばったものではないが、初めて顔を合わせる担任やクラスメートにいい印象を与えたいと思ったのだ。
四人は一緒に寮を出て、キャンパスの中を歩きながら雑談した。張磊が「担任が男か女か知ってる?」と聞くと、李想が「確か数学科の教授だって噂だ。新入生のクラスを受け持つのは珍しいらしい」と答えた。
「数学科の教授か…厳しそうだな」陳明が顔をしかめた。
秦昊は何となく、数学の先生というと村の中学時代にいた白髪の老教師を思い浮かべ、少し緊張した。
第二校舎に着くと、すでに多くの学生が集まっていた。一〇三教室は広く、ゆうに百人以上が収容できる。秦昊たちは適当な席を選んで座った。周りを見渡すと、どの学生も期待と不安が入り混じった表情を浮かべていた。
しばらく待つと、教室のドアが開き、一人の女性が入ってきた。
瞬間、教室の中が静まり返った。
入ってきたのは見たこともないほど美しい女性だった。年齢は二十代後半から三十代前半くらいだろうか。黒いパンツスーツに白いブラウスという出で立ちは、彼女のスタイルの良さを完璧に引き立てている。身長は百七十センチはあるだろう、スラリと伸びた長い脚に、ウエストは細くくびれ、胸元は控えめながらも豊かな曲線を描いている。顔立ちは人形のように整っており、白磁のような肌に、大きな瞳が知性と気品を漂わせている。黒髪は後ろで一つに束ねられ、首元の白い肌が一層際立っていた。
「こんにちは、みなさん。私はあなたたちのクラス担任、夏知雪と言います。数学科の教授を務めています」
声は澄んでいて、少し低めのトーンが不思議な魅力を放っていた。彼女は教壇に立ち、教室を見渡した。その視線は穏やかでありながらも、どこか厳しさを秘めているように感じられた。
秦昊は呆然としていた。
そんなことがあるのだろうか?こんなに美しい人が教授で、しかも自分のクラス担任だなんて。彼女が教壇に立つ姿は一枚の絵のようで、一つ一つの動作が優雅で、一挙手一投足が計算され尽くしているかのようだった。
「今日は簡単に顔合わせと、学校生活についての注意事項をいくつかお話しします」
夏知雪はパソコンを開き、プロジェクターに資料を映し始めた。彼女が話す内容は、学校の歴史や規則、単位の取得方法、図書館の利用など、ごく普通の説明だった。しかし秦昊には、その声がまるで遠くから聞こえてくるようで、一言も頭に入ってこなかった。
彼の視線は夏知雪から離せなかった。
彼女が手を動かすたび、彼女が一歩踏み出すたび、首をかしげて資料を見るたび、すべてが彼の目に焼き付いた。彼女の上品な仕草、知的でありながらも女性らしい魅力、すべてが完璧だった。
秦昊は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。こんな感覚は初めてだった。村にいたときは、近所の娘や同級生の女子にも興味を持ったことがあったが、こんなふうに心の奥底から揺さぶられるようなことはなかった。
「それでは、最後にみなさんの自己紹介を簡単にしていただきます。一番前の列からお願いします」
夏知雪がそう言うと、教室にざわめきが広がった。学生たちは順番に立ち上がり、名前や出身地、趣味などを話し始めた。
秦昊の番が近づくにつれ、彼の緊張はピークに達した。ついに自分の番が来て、立ち上がったとき、夏知雪の視線がちょうど自分に向けられた。
「秦昊です。江蘇省の田舎町から来ました。趣味は…絵を描くことです」
声が少し震えていた。秦昊は自分でもわかるほど、顔が熱くなっていた。
夏知雪は軽くうなずき、微笑んだ。「絵を描くことはいいですね。芸術学部の油絵専攻ですか?」
「はい」
「素晴らしい。キャンパスには美しい風景がたくさんありますから、ぜひ描いてみてください」
その言葉は何気ないものだったが、秦昊には特別な意味を持っているように思えた。彼は深くうなずき、席に座った。心臓はまだドキドキと鳴り続けていた。
自己紹介が終わると、夏知雪は今後の予定や注意事項をいくつか伝え、「何かあればいつでも私のオフィスに来てください。数学科の三階にあります」と言って、教室を後にした。
彼女が去った後も、秦昊はしばらくその場に座り込んでいた。周りの学生たちが立ち上がり、ざわめき始めても、彼は動けなかった。
「おい、秦昊、どうしたんだ?帰るぞ」
張磊が肩を叩いて、ようやく我に返った。
「あ…ああ、わかった」
秦昊は慌てて立ち上がり、ルームメイトと一緒に教室を出た。しかし頭の中は夏知雪のことでいっぱいだった。
「担任の先生、すごく美人だな」張磊が興奮した様子で言った。「こんな先生が担任なんて、四年間楽しみだな」
「でも数学科の教授だろ?きっと単位を取るのは厳しいぞ」李想は慎重な口調だった。
「そんなの関係ないよ!」陳明も笑った。「あんな美人に教えてもらえるなら、数学の単位を落としても本望だ」
三人は笑い合った。秦昊は何も言わなかったが、心の中で同じことを思っていた。
その日から、秦昊の大学生活が始まった。授業に出て、図書館で勉強し、食堂で食事をする。一見普通のキャンパスライフだが、彼の心の中には、ある種の渇きのようなものが生まれ始めていた。
それはもちろん、夏知雪の存在だった。
秦昊は気がつくと、彼女のことを考えていた。数学科の校舎の前を通るたび、彼女に偶然会えないかと期待した。食堂で似たような後ろ姿を見かけるたび、心臓が高鳴った。夜になると寮のベッドで、彼女の顔を思い浮かべながら、何時間も眠れない夜を過ごした。
そんなある日、週末の夜、秦昊は一人で寮にいた。ルームメイトたちはそれぞれ出かけていて、部屋には彼だけだった。何となく手持ち無沙汰で、彼はパソコンを開き、適当に映画でも見ようと思った。
彼はある海賊版サイトにアクセスした。村にいるときからよく使っていたサイトで、新作の映画を無料で見られるのが魅力だった。しかし、ページを開いた瞬間、突然大きな広告が画面いっぱいに表示された。
「SM調教 初心者でも楽しめる秘密の世界」
秦昊は驚いて、慌てて閉じるボタンを探した。しかしその瞬間、広告に写っていた画像が彼の目に飛び込んできた。
それは女性が縄で縛られている写真だった。白い肌に赤い縄が絡まり、不思議な美しさを醸し出している。女性の表情は苦しそうでありながらも、どこか陶酔しているように見えた。
秦昊の手が止まった。
何だこれは?
彼は無意識のうちに、その広告をもう一度クリックしてしまった。ページが切り替わり、様々な写真や動画が表示された。すべて女性が縛られたり、目隠しをされたり、特殊な道具を使われたりするものだった。
秦昊の心臓が激しく打ち始めた。異常な興奮とともに、強い罪悪感も湧き上がってくる。こんなものを見てはいけない。親からも学校からも、そう教えられてきた。
しかし、彼の目は画面から離せなかった。
一枚一枚の写真を見ていくうちに、秦昊は自分でも驚くほどの集中力でそれらを観察していることに気づいた。特に、縄が女性の体を締め付ける様子、肌に食い込む縄の跡、そして女性の表情の変化。それらが彼の心に強烈な印象を残した。
なぜだろう。なぜこんなに惹かれるのだろう。
秦昊は自分自身に問いかけた。村で育った純朴な少年である自分が、こんな変態的な世界に興味を持つなんて、信じられなかった。しかし、その興味は確かに存在し、しかも日増しに強くなっていった。
彼はその後、何時間もかけてそのサイトを隅々まで見た。SMの種類、縛り方の技法、使われる道具、参加者の心理。一つ一つの情報が、彼の知らない世界への扉を開いていくようだった。
特に彼の心を捉えたのは、「緊縛」というカテゴリーだった。女性を縄で巧みに縛り上げるその技術は、まるで芸術作品のように美しく、しかも官能的だった。秦昊は画家を志す者として、その造形美に強く惹かれた。
そして、彼の頭の中に夏知雪の姿が浮かんだ。
もし彼女が…
秦昊は慌ててその考えを頭から追い出した。しかし、夏知雪の完璧なプロポーションと、縄が絡まるイメージが何度も頭の中に浮かんでくる。彼女の白くしなやかな首に縄が巻き付き、豊かな胸を縄が締め付け、細いウエストを縄が絡め取る。そんな想像が、彼の理性をどんどん蝕んでいった。
「いけない…こんなことを考えてはいけない…」
秦昊は頭を振り、強制的にパソコンを閉じた。しかし、その夜は一睡もできなかった。目を閉じるたびに、夏知雪の姿が縄に縛られて浮かんでくる。彼女の苦しげで、それでいて甘美な表情が、彼の想像の中で繰り返し再生された。
翌日から、秦昊の行動はさらに変わった。授業中も、食事中も、歩いているときも、常に何か考え込んでいるようだった。ルームメイトの張磊が「最近、元気ないけど大丈夫か?」と心配して聞いても、「ちょっと疲れただけ」とごまかしていた。
秦昊は図書館に行くと、今まで興味も持ったことのない心理学や性科学の本を借りて読むようになった。特にBDSMに関する部分を必死に探し、目を通した。その知識を深めれば深めるほど、彼の中である確信が芽生え始めた。
自分には、女性を縛りたいという強い欲求がある。
それは単なる性的興奮ではなく、もっと深い、根源的な何かだった。女性を縄で美しく飾り、その反応を見ながら、完全に支配する。それが彼の心の奥底にある、最も暗く、最も強烈な欲望だった。
そして、その対象として最もふさわしいのが、夏知雪だった。
彼女の優雅で、完璧で、高嶺の花のような存在。もし彼女が縄に縛られて、自分に服従する姿を見たら、どんなに美しいだろう。そんな想像が、秦昊の頭から離れなかった。
日が経つにつれ、秦昊の欲望は抑えきれなくなっていった。彼はノートを取り出し、授業中にもかかわらず、こっそりと絵を描き始めた。
最初は小さなスケッチからだった。女性の腕や首に縄が巻き付く様子を、細い線で丁寧に描く。次第に描く範囲が広がり、全身を縄で縛られた女性の像がノートのページに次々と現れた。
彼の絵は驚くほど正確で美しかった。幼い頃から絵を続けてきた技術が、この欲望の表現に完璧に活かされていた。縄の絡まり方、肌の質感、女性の表情。一つ一つのディテールが、彼の狂気とも言える集中力で描かれていた。
しかし、秦昊は常にその絵に誰かを特定できるような特徴を描くのを避けていた。自分でもそれが夏知雪を想像していることを認めたくなかったし、もし誰かに見られたら取り返しのつかないことになると思ったからだ。
だから彼の絵には、顔のない女性だけが描かれていた。縄に縛られ、苦しみと快楽の狭間で悶える、無数の無名の女性たち。
ある日の午後、秦昊は一人で教室で絵を描いていた。その日は時間割が空いていて、誰もいない教室で、彼は熱中してノートに向かっていた。今日のテーマは「後ろ手に縛られた女性」。両手を背中で組ませ、肘から手首までしっかりと縄で固定する。その姿勢が生み出す胸の強調、肩のライン、背中の曲線。秦昊は細心の注意を払って描いていた。
だが、そのときだった。
「秦昊君?」
突然聞こえた声に、秦昊は飛び上がった。振り返ると、そこに立っていたのは夏知雪だった。彼女は書類を手に、驚いた顔で秦昊を見ていた。
「あ…せ、先生…!」
秦昊は慌ててノートを閉じた。しかし、夏知雪の目は既にそのノートに向けられていた。
「何を描いていたの?見せてくれる?」
夏知雪が近づいてきた。秦昊の心臓は今にも破裂しそうだった。ノートを体の後ろに隠し、必死に平静を装おうとした。
「い、いいえ、別に…ただの落書きです」
「そう?」夏知雪の目が細められた。「でも、とても集中して描いているように見えたけど。あなたの絵、見てみたいな。芸術学部の学生の作品には興味があるから」
秦昊は冷や汗をかいていた。ノートを渡すわけにはいかない。もしあの絵を見られたら、自分はどうなってしまうのか。変態扱いされるのはもちろん、退学処分になるかもしれない。
「すみません、先生…まだ完成していなくて。完成したら必ず見せます」
秦昊はできるだけ自然な笑顔を浮かべようとしたが、顔は引きつっていた。
夏知雪はしばらく秦昊を見つめていたが、やがて軽くうなずいた。
「わかったわ。でも、約束してよ。完成したら必ず見せるって」
「はい、もちろんです」
秦昊は深くうなずいた。夏知雪が教室を出ていくと、彼はどっと疲れが出て、椅子に崩れ落ちた。
危なかった。本当に危なかった。
しかしその一方で、彼の心の中では別の感情が芽生え始めていた。夏知雪の反応は、本当にただの興味だったのか?もしかしたら彼女も何かに気づいているのではないか?あるいは…
秦昊は自分の中に広がる暗い興奮を感じた。彼は再びノートを開き、今度はより具体的に、より詳細に絵を描き始めた。今度は背景まで丁寧に描き込む。拘束される女性の背後に、微かに見える誰かの影—それは自分自身だった。
そして、彼はその絵にタイトルをつけた。
「先生の秘密」
それからというもの、秦昊の絵はさらに過激になっていった。彼はキャンパスのあちこちで夏知雪を観察し、彼女の動作や表情、服装を細かく覚えた。そして夜になると、その記憶を元に、彼女を縛る絵を描いた。
講義室で数学の授業をする夏知雪。彼女の背後に縄が浮かび、彼女の体を締め付けていく想像図。研究室で書類を整理する夏知雪。彼女の手首が机に縛り付けられた想像図。ヨガをする夏知雪。彼女の柔軟な体があらゆる方向に曲げられ、そのすべての関節が縄で固定された想像図。
秦昊のノートは、そんな絵で埋め尽くされていった。彼はもう自分を抑えることができなかった。授業中も、食事中も、歩いているときも、彼の頭の中は常に夏知雪を縛ることでいっぱいだった。
そして、彼の中で一つの計画が芽生え始めていた。
夏知雪を本当に縛る方法。彼女を服従させる方法。彼女が自分だけのものになる方法。
秦昊はパソコンの前に座り、検索エンジンで「緊縛 教室」「調教 方法」「女性 拘束 テクニック」などのワードを打ち込んだ。次々と表示される情報を、彼は必死に吸収していった。縄の種類、結び方の種類、注意点、危険性。すべてを学び、すべてを自分のものにしようとした。
彼の心の中では、夏知雪の姿が日に日に鮮明になっていった。彼女の白い肌に赤い縄が絡む様子。彼女の苦しげな声と、それでも抗えない表情。彼女の完璧な体が、自分の手で完全に支配される瞬間。
秦昊はその想像に震えた。同時に、強い罪悪感と恐怖も感じていた。しかし、それ以上に強かったのは、抑えきれない欲望だった。
もう戻れない。自分はこの世界に足を踏み入れてしまったのだ。そして、その欲望を現実のものにするために、手段を選んではいられない。
秦昊はノートを閉じ、パソコンの電源を切った。しかし、彼の計画は着実に進行していた。明日から、一歩ずつ、彼は夏知雪に近づいていくつもりだった。
彼女がいつ、どこで、何をしているのか。彼女の習慣、趣味、弱点。すべてを把握し、完璧なシナリオを描く。
その夜、秦昊はベッドの中で目を閉じた。彼の心は、夏知雪への執着と興奮で震えていた。
「先生、あなたは私のものになる」
彼は暗闇の中でそうつぶやき、口元に微かな笑みを浮かべた。
翌朝、秦昊は早めに起きて、数学科の校舎に向かった。夏知雪の研究室は三階の奥にある。彼は階段を上がり、その前を通りかかったふりをして、中の様子をうかがった。
ドアは少し開いていて、中から話し声が聞こえてくる。どうやら学生と話しているようだ。秦昊は壁に隠れ、声を聞き耳を立てた。
「それでは、この問題の解法はこれでいいですか?」
「はい、よくできましたね。あとは練習問題をしっかり解くことです」
夏知雪の声は穏やかで、教え方も丁寧だった。秦昊はその声を聞くだけで、心臓が高鳴った。
学生が出てきたのを見計らって、秦昊は深呼吸をし、ドアをノックした。
「どうぞ」
彼がドアを開けると、夏知雪は書類に目を落としていた。顔を上げて秦昊を見ると、少し驚いた表情を浮かべた。
「秦昊君?どうしたの?」
「あの…先生に聞きたいことがあって」
秦昊は練習問題のノートを手に持っていた。実際には、それはただの口実だった。彼は夏知雪に近づくための理由を作りたかったのだ。
「数学の質問ですか?」
「はい。昨日の授業でわからないところがあって」
秦昊はノートを開き、適当な問題を指さした。それは実際には簡単な問題だったが、彼は質問の形を借りて、彼女との時間を少しでも長くしたいと思った。
夏知雪は立ち上がり、秦昊のそばに歩み寄った。彼女の香水の香りがふわりと漂う。秦昊はその香りに一瞬、意識が遠のきそうになった。
「この問題ね。まずはここに注目して…」
彼女が説明を始める。秦昊は彼女の声を聞きながら、彼女の後ろ姿をじっと見つめた。スーツのスカートに包まれたふくらはぎのライン、腰のくびれ、細い指。一つの動作がすべて優雅で、美しかった。
「…これでわかった?」
「はい、ありがとうございます」
秦昊はうなずいたが、実は説明をまったく聞いていなかった。彼はただ、彼女のそばにいたかっただけだ。
「何か他に質問はある?」
「…あの、先生は週末は何をされているんですか?」
秦昊は思い切って聞いてみた。夏知雪は少し驚いたようだったが、すぐに微笑んだ。
「週末は主に研究をしているわ。たまにヨガをしに行くこともあるけど」
「ヨガ…」
秦昊の頭の中に、夏知雪がヨガマットの上で体を曲げる姿が浮かんだ。そしてその柔軟な体が、縄で縛られたとき、どんな反応を示すのか想像した。
「ヨガがお好きなんですか?」
「ええ、十年以上続けているのよ。体が柔らかくなるし、心も落ち着くから」
十年以上—秦昊はその言葉に心を躍らせた。そんなに長い間鍛えられた体なら、どんな複雑な縛り方にも耐えられるだろう。
「すごいですね。僕も体が硬くて、ヨガを始めようか考えているんです」
「それはいいわね。健康にもいいし、おすすめよ」
夏知雪の笑顔は、秦昊の心をさらにかき乱した。彼女は何も知らない。自分がどれほど危険な生徒に興味を持たれているか、まったく気づいていない。
秦昊はその日の会話を頭に刻みつけ、研究室を後にした。そしてすぐに、次の計画を練り始めた。
ヨガスタジオ。彼女が通っている場所を突き止めれば、彼女の習慣や行動パターンがもっとわかる。そして、いつか彼女を一人にさせるタイミングを見つける。
秦昊の欲望は止まらなかった。ノートに描かれた絵も、日に日にその数と質を増していった。ついには、部屋の引き出しの中には、二十枚以上の緊縛図が隠されるようになった。
彼は毎晩それらを取り出し、一枚一枚を食い入るように見つめた。そして、その絵の中の女性の顔に、次第に夏知雪の特徴を描き加えていくようになった。
ある夜、秦昊は一枚の絵を完成させた。それは、夏知雪が自分の研究室で、後ろ手に椅子に縛られ、口には布を噛まされている姿だった。彼女のスーツは乱れ、ブラウスのボタンがいくつか外れ、白い谷間がのぞいている。その表情は苦しげでありながら、どこか甘美な陶酔を帯びていた。
秦昊はその絵を見ながら、震える手でペンを置いた。
「いつか…必ず…」
そのとき、彼の携帯電話が鳴った。メッセージの着信だ。見ると、それはクラスのグループチャットで、明日の授業の予定が送られてきていた。その中に、夏知雪からのメッセージもあった。
「明日の午後、オフィスアワーを設けます。質問のある学生は遠慮なく来てください」
秦昊の鼓動が速くなった。
オフィスアワー。彼女が一人で研究室にいる時間。他の学生が来るかもしれないが、もし運が良ければ…
彼はすぐに返信を打った。
「先生、明日の午後、質問があります。伺ってもいいですか?」
数分後、返事が来た。
「いいですよ。お待ちしています」
秦昊はその短い文面を何度も読み返した。彼の頭の中では、様々な想像がぐるぐると回っていた。
明日、彼女に会う。そして、自分の計画を一歩ずつ進める。
彼はノートを閉じ、電気を消した。しかし、その夜は一睡もできず、朝が来るのを待ちわびていた。
翌日の午後、秦昊はいつもより早めに数学科の校舎に向かった。彼のリュックには、いつもの教科書の他に、一本の麻縄が隠されていた。それはネットで購入したもので、まだ使われていない新品だった。
心臓は激しく打ち、手のひらは汗で濡れていた。しかし、彼の目はいつになく鋭く、決意に満ちていた。
研究室の前に着くと、中から物音がする。どうやら前に他の学生がいるようだ。秦昊は壁に寄りかかり、順番を待った。
十分ほどして、学生が出てきた。秦昊は深呼吸をし、ドアをノックした。
「どうぞ」
夏知雪の声が聞こえる。秦昊はドアを開け、中に入った。
部屋の中は、数学の教科書や論文で埋め尽くされた書棚が並び、机の上には書類が山積みになっていた。夏知雪はパソコンの前に座り、秦昊を見ると微笑んだ。
「いらっしゃい。質問は何かしら?」
秦昊はリュックを背負ったまま、机の前に立った。彼の手はわずかに震えていたが、それを必死に抑えた。
「あの…先生。ちょっと個人的な質問があるんですが」
「個人?」夏知雪は少し驚いたようだったが、すぐにうなずいた。「いいわよ、言ってみて」
秦昊は一呼吸置いて、口を開いた。
「先生は…縛られることに興味はありますか?」