テレビのニュースが報じる日中関係の悪化。領土問題、歴史認識、経済摩擦——画面の中のアナウンサーが緊張感のある声で伝えるそのすべてが、なぜか俺の心を滾らせた。中国の女性が、日本人の手に落ちる。その光景が頭の中に鮮やかに浮かび、下腹部が熱く疼く。
「ママ」
俺はリビングのソファに浅く座り、向かいで茶を啜る黄麗琼に声をかけた。彼女は四十五歳だが、手入れの行き届いた肌と豊満な肉体は、まだ三十代にしか見えない。特に、薄いカーディガンの下で主張する双丘の曲線は、息子である俺の視線すらも絡め取る。
「何だい、突然そんな改まって」
彼女は優雅にカップを置き、細めた目で俺を見た。その瞳の奥に、一瞬だけ期待めいた光が走る。彼女は知っている。俺がこういう態度を取るときは、何か特別な話があることを。
「大阪に、行かないか?」
「大阪?旅行かい?」
「ああ、ちょっと面白い場所を知ってるんだ。ママも気に入ると思う」
俺はスマートフォンを取り出し、事前にブックマークしておいたサイトを開いた。漆黒の背景に、金文字で『黒獄倶楽部』と刻まれている。その下には、簡体字と日本語が混在した説明文——「極限の調教、魂の屈服」。
黄麗琼の呼吸が一瞬止まった。彼女の指が震えながらスマートフォンを受け取り、画面を凝視する。長年彼女の性癖を知る俺にはわかる。彼女の体が、期待に震えている。
「ここは…」
「日本人が経営する、本格的なSMクラブだよ。セーフワードを設定すれば、どんな調教でも受け入れられる。ママがずっと求めていたものだろ?」
彼女は唇を噛み、うつむいた。頬がほんのりと赤く染まっている。それが何よりの返事だった。
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三日後、私たちは大阪の地下街にいた。駅から徒歩十分ほどの場所にある雑居ビル。エレベーターで地下二階に降りると、そこには外見からは想像もつかない重厚な黒い鉄扉が待っていた。
鉄扉の前で立ち止まる。壁に埋め込まれたカメラが、無機質な赤いランプを灯している。俺がインターホンを押すと、スピーカーから無機質な声が日本語で流れた。
「ご予約のお名前を」
「李。中国人だ」
一拍の沈黙の後、重々しい電子音と共に扉が開いた。中は真っ暗な廊下だった。壁も床も天井も、全てが黒一色で統一されている。足を踏み入れると、扉が背後で自動的に閉まり、外の世界から完全に隔絶された。
母親の手を握る。彼女の指は coldたく、かすかに震えていた。しかしその震えは恐怖だけではない。緊張と、期待——その両方だ。
廊下を数十メートル進むと、突然視界が開けた。そこは清潔なフロントだった。白い光が空間を満たし、黒い制服を着た男がカウンターの向こうに立っている。
「いらっしゃいませ。フロントアシスタントの龍山と申します」
流暢な中国語だった。彼は四十代前半だろうか。精悍な顔立ちに、プロフェッショナルな微笑みを浮かべている。その瞳だけは、私たち——特に母親を値踏みするように冷たく光っていた。
「息子さんからお聞きしています。こちらが黄麗琼様ですね」
龍山は母親を一目見て、微かに目を細めた。その視線が、彼女の豊かな胸元と、スカートの下の太腿を這うように撫でる。母親はその視線に気づきながらも、顔をそらさなかった。むしろ、少し胸を張ったようにさえ見える。
「はい。母が調教を受けたいと」
俺がそう言うと、龍山は頷きながら書類を数枚取り出した。
「承知しております。当クラブでは、様々なレベルの調教プログラムをご用意しております。また、ご希望があれば、VIP会員の方々が調教を見学、あるいは直接参加することも可能です」
「参加?」
母親の声が掠れた。彼女は龍山の顔を見上げる。
「ええ。当クラブには熟練した調教師はもちろん、高度な技術を持つVIP会員の方々も多数在籍しております。彼らが調教に加わることで、より深い——あるいはより苛烈な——経験が可能になります」
龍山の説明は淡々としていたが、その言葉の一つ一つが母親の体を震わせていた。彼女の太腿が微かに擦れ合う。興奮しているのだ。
「プログラムのレベルを選べます。初級、中級、上級——そして、特別級。特別級は、当クラブの全施設を利用し、複数の調教師とVIP会員が参加する、最も徹底した調教コースです」
「特別級で」
母親は間髪入れずに答えた。龍山が意外そうに眉を上げる。
「黄様、特別級は過酷です。身体的にも精神的にも、極限の負荷がかかります。過去に特別級を選ばれた方は、途中で中断を申し出る方も少なくありません」
「それでいいんです」
母親の声は静かだったが、確固たる意志を宿していた。彼女は俺の方を向き、薄く笑った。
「私は、もう十分悩んできた。ここに来た時点で、覚悟はできている」
龍山はまたあの値踏みするような目で母親を見つめ、口元に微かな笑みを浮かべた。
「かしこまりました。では、調教の進行方法についてご説明します。当クラブでは、二つの方式からお選びいただけます。一つは『段階進行方式』。これは、調教の進行状況に応じてセッションを区切り、受刑者の様子を見ながら段階的に負荷を上げていく方式です。もう一つは——」
龍山は一度言葉を切り、母親の目を正面から見据えた。
「『プロジェクト完了停止法』。これは、あらかじめ調教の全工程を計画し、いったん開始したら、その計画が完了するまで一切の中断を認めない方式です。もちろん、万一の体調不良などには対応しますが、それ以外の理由では、受刑者の意志による中止はできません。最長で七十二時間の連続セッションとなることもあります」
母親の喉がこくりと鳴った。彼女の指が、スカートの布地をぎゅっと掴んでいる。しかし、その目は怯えではなかった。
「プロジェクト完了停止法でお願いします」
龍山の目が一瞬、獲物を見つけた肉食獣のように光った。
「承知しました。では、まず健康診断を手配いたします。全身の状態を確認し、その上で最適な調教計画を立案します。本日は診断のみとし、本格的なセッションは明日からとなります」
彼はカウンターのボタンを押す。間もなく、奥の扉が開き、白衣を着た男性が現れた。
「山本首席、こちらが本日の受刑者です」
現れたのは、がっしりとした体格の中年男性だった。彼の目は鋭く、母親の全身を一瞥するだけでその価値を判断したようだった。彼の後ろには、さらに二人の男性が控えている。一人は筋肉質で無表情。もう一人は痩せ型で、細い目をさらに細めて母親を見つめていた。
「中国人か」
山本が言った。その中国語には、嘲笑と軽蔑が混じっていた。
「ええ」
母親が答える。その声は、かすかに震えていた。
「ふん。最近の中国は、なかなかいい女を送り込んでくるようになったな。よし、診察室へ連れて行け」
山本が顎をしゃくると、無表情の大男——渡辺——が母親の腕を掴んだ。
「ちょっと、待って」
俺が声をかけると、母親は振り返って微笑んだ。
「大丈夫だよ。約束だろ?私が帰ってくるまで、ちゃんと待っててくれるんだろう?」
その言葉に、俺の胸が熱くなった。彼女は本当に、すべてを理解している。自分が何を求められているかを、痛いほどよくわかっている。
母親は渡辺に連れられて、奥の暗い廊下へと消えていった。その後ろ姿を見送りながら、俺は全身が歓喜に震えるのを感じていた。日本人の手に堕ちる中国の女。しかもそれは、俺自身の母親だ。この屈辱と背徳が、何よりの快楽だった。
「あなたも、ご覧になりますか?」
龍山が言った。モニターのスイッチを入れると、複数の画面が映し出される。そこには、診察室の光景が克明に映っていた。母親が服を脱がされ、無数の視線に晒されている。検査器具が彼女の体に触れ、あらゆる反応を記録していく。
「明日からが本番です。あなたの母親が、どこまで耐えられるか——楽しみですね」
龍山の言葉に、俺は深く頷いた。この黒い扉の向こうで、何が始まるのか。その期待が、体中を灼熱の快感で満たしていた。