蘇婉児は実習監督員として、今日初めて単独で奴隻登録状況の検査に赴いた。配属されたのは都心から少し離れた高級住宅街。広大な敷地に建つ豪邸の門前で、彼女は深呼吸を一つしてからインターホンを押した。
「はい、どちら様でしょうか」
「奴隷管理局のものです。登録状況の確認に参りました」
門が静かに開き、蘇婉児は舗装された庭園の小道を進んだ。両脇には手入れの行き届いた植木が並び、中央には噴水が設置されている。表向きは裕福な家庭の一軒だが、彼女はその奥に隠された真実を知っていた。
玄関をくぐると、広いリビングが広がっていた。家具はアンティーク調で統一され、重厚なカーテンが外光を遮っている。主人とおぼしき中年男性がソファに腰掛け、穏やかな表情で彼女を迎えた。
「監督官様、お待ちしておりました。どうぞ、お掛けください」
蘇婉児は軽く会釈をして応接セットの端に座った。スーツのポケットから検査票を取り出し、サインのスペースを確認する。その時、部屋の隅に人の気配を感じて視線を向けた。
そこにいたのは、一人の女奴隷だった。
彼女は床に四つん這いになり、犬のように項垂れている。鎖に繋がれた首輪が鈍く光り、その先は主人の足元へと伸びていた。顔を上げさせられた女奴隷は、無表情のまま主人の股間に顔を寄せる。そして、ベルトの留め金を歯で外し、ズボンのファスナーを慎重に下ろした。
蘇婉児は息を呑んだ。
女奴隷は主人の陰茎を取り出すと、それを両手で支えながら舌を伸ばした。先端を舐め、ゆっくりと根元まで口に含む。主人は何が起きているのか気にしていないように、蘇婉児に話しかけてきた。
「監督官様、お茶はいかがですか」
「い、いえ、結構です」
蘇婉児は震える声で答えた。視線は女奴隷から離せない。女奴隷の頭が規則正しく上下に動き、時折くぐもった吐息が漏れる。主人は自分の股間で行われている奉仕をまったく気に止めず、日常会話を続けた。
「最近の規制は厳しくなりましたね。登録証明書の提示だけでよかった時代が懐かしい」
「そうですね…」
蘇婉児は手元の書類を必死に見つめた。しかし、耳に届く水音が彼女の集中を削ぐ。女奴隷の唾液が絡み合う音が、静かな部屋に異様に響いた。
突然、主人が軽く手を叩いた。
「やめろ」
女奴隷は即座に口を離し、元の犬の姿勢に戻った。口元から透明な糸が垂れ、床に滴る。主人は彼女の髪を掴んで強引に顔を上げさせた。
「監督官様、よろしければ検査をお願いします。この奴隷は最近購入したばかりでして、ちゃんと登録されているかどうか確認してほしいのです」
蘇婉児は頷き、立ち上がった。女奴隷の前にしゃがみ込み、首輪の識別番号を確認する。書類と照らし合わせると、確かに登録済みだった。
「問題ありません。ただ、健康診断の記録が少し古いですね。更新をお勧めします」
「かしこまりました。ところで、監督官様、もう一つ確認していただきたいことが」
主人は立ち上がり、女奴隷の背中を足で軽く押した。女奴隷は素直に体勢を変え、四つん這いのまま臀部を高く上げる。主人が手を伸ばして、彼女の太腿の間に挟まった衣類をずらした。
「膣の状態も検査項目に入っていると聞きました。ご確認ください」
蘇婉児の心臓が激しく打った。彼女は女奴隷の局部を直視したくないと思ったが、業務として拒否する理由はない。ペン先を少し震わせながら、観察結果を記録用紙に書き始めた。
陰唇は薄く開き、内側は濡れていた。先ほどの行為の名残か、それとも別の理由か。蘇婉児は自分の指先が軽く震えているのを感じた。何故か、胸の奥が熱くなる。この光景に見覚えがあるような、ないような、不思議な既視感が彼女を包んだ。
「異常は…ありません」
「それは何よりです」
主人が女奴隷の衣類を元に戻し、蘇婉児はようやく立ち上がった。検査票にサインをして、一枚を主人に手渡す。
「ありがとうございました。お手数をかけました」
「いえ、こちらこそ」
蘇婉児は早足でその場を辞した。門をくぐり、外の空気を深く吸い込む。肺が冷たい酸素で満たされ、ようやく心臓の鼓動が落ち着いた。
管理局に戻る道すがら、彼女は考え込んだ。あの女奴隷の姿が瞼に焼き付いて離れない。従順な眼差し、主人の命令に一切の抵抗なく従う様子、そして自分が検査のために局部を覗き込んだ時のあの感覚。
嫌悪感だけならまだ理解できた。しかし、彼女が覚えたのはそれだけではなかったのだ。
「まさか、私…」
蘇婉児は首を振って嫌な想像を追い払おうとした。部署に戻ると、上司が書類に目を通していた。彼女が戻ってきたのを見て、顔を上げる。
「どうだった、初めての単独検査は」
「はい、特に問題はありませんでした。一件目は登録済み、健康診断の更新が必要ですが、それ以外は正常です」
「そうか。最初は誰でも緊張するものだ。慣れれば何てことはない」
上司は軽く笑い、別の書類を手渡した。蘇婉児はそれを受け取り、自分のデスクに向かった。しかし、椅子に座っても仕事に集中できない。手に取ったペンは動かず、視線は窓の外を彷徨う。
さっきの女奴隷の姿が脳裏に蘇る。犬の姿勢、濡れた局部、そして主人の股間に頭を埋める姿。それは確かに、嫌悪すべき光景だった。だが、なぜか蘇婉児の心の奥で、別の感情が渦巻いている。
自分もああなりたい、と微かに願う自分がいる。
「馬鹿な…」
蘇婉児は両手で顔を覆った。心臓がまた速くなる。あの感覚を思い出すだけで、身体が熱くなる。何が自分をそうさせるのか、理解できなかった。ただ、あの光景は、彼女の奥深くに眠る何かを目覚めさせてしまったのだ。
夕暮れが近づくまで、蘇婉児はその思考から逃れられなかった。机の上に積まれた書類は、未処理のまま彼女を責めるように鎮座していた。