# 肉欲の檻
## 第一章 初めての出会い
午後七時を過ぎたコミュニティジムの空気は、汗と消毒液の混じった独特の匂いに満ちていた。林浩はランニングマシンの上で一定のリズムを刻みながら、視界の端に映る一人の女性を無意識に追っていた。
彼女は四〇代後半といったところか。胸元の開いた紺色のタンクトップからは、豊かな双丘が覗いている。運動用のタイツに包まれた太腿は、若い女性のような引き締まりはないが、むしろその柔らかそうな肉付きが林浩の視線を釘付けにした。
特に、彼女がストレッチで前屈するたびに、腹部にうっすらと乗った贅肉がタンクトップの下で揺れる様子に、彼の喉は思わず鳴った。
林浩は二十五歳。同年代の女性にはまるで興味が持てず、こうした年上の女性たちの、人生の重みを帯びた肉体に強く惹かれる性癖を持っていた。
「あの……すみません」
彼女がランニングマシンの横に立っていた。サラサラとした黒髪を後ろで束ね、化粧っ気のない顔には気遣わしげな表情が浮かんでいる。
「この機械、もうすぐ終わりますか? 他のマシンが全部使われていて」
林浩は慌てて走行を止めた。
「あ、すいません。もう終わるところです」
彼はタオルで額の汗を拭いながら、一歩下がってマシンを譲った。その拍子に、彼女から立ち上る微かな化粧品の香りと、運動後の体温を含んだ体臭が混ざり合って鼻孔をくすぐる。
「ありがとうございます。お若いのに、こんな遅くまで運動されてるんですね」
彼女はマシンの設定をいじりながら、何気なくそう言った。
「仕事が終わってから来ると、どうしてもこの時間になっちゃうんです。同じマンションなのに、今までお会いしたことなかったですね」
林浩は隣のマシンに移動しながら、自然に会話を続けた。
「あら、そうなんですか? 私、ここの住人なんですけど、旦那が長期出張でね。最近は時間を持て余して、ジムに通い始めたんです」
彼女の指にはめられた結婚指輪が、蛍光灯の光を反射してちらりと光った。
旦那が長期出張——その言葉が林浩の耳に心地よく響いた。彼はウエイトトレーニングのベンチに座りながら、鏡越しに彼女のランニング姿を盗み見た。
ランニングマシンの上で上下に揺れる乳房は、年齢を感じさせる重力に従って、豊かな弧を描いている。腰の周りにうっすらと浮かんだ肉が、タイツの上からでもはっきりとわかった。
「そうだったんですね。お一人だと、夕飯も適当になりがちじゃないですか?」
林浩はダンベルを持ち上げるふりをしながら、さらに話を広げた。
「もう、おっしゃる通り。今日だって、コンビニのおにぎりだけで済ませちゃいましたよ」
彼女は苦笑いしながらも、どこか嬉しそうな口調だった。誰かと話すことに飢えているのがありありとわかる。
「それじゃあ、栄養偏っちゃいますよ。もしよろしければ、今度、簡単な料理を教えてあげられますけど……一人暮らしなんで、そこそこ作れるんです」
林浩はさりげなく提案を口にした。彼の心臓は早鐘を打っていたが、声は落ち着き払っていた。
彼女はランニングを止めると、首をかしげて考え込む仕草をした。その喉元に浮かんだうっすらとした汗の粒が、照明にきらめいている。
「でも、初めてお会いしたばかりなのに、悪いですよ」
「いえいえ、同じマンションの住人同士ですし。それに、一人で食べるより、誰かと食べたほうが美味しいですから」
林浩の言葉に、彼女の表情が少し和らいだ。四十代半ばの女性特有の、人生経験を感じさせる落ち着いた微笑みが浮かぶ。
「そう言っていただけると、助かります……じゃあ、お言葉に甘えようかしら」
彼女は遠慮がちにそう言うと、自分の名前を名乗った。
「美智子と言います」
「林浩です。よろしくお願いします、美智子さん」
その瞬間、二人の間に何かが生まれたような気がした。林浩は確信した。この女は、自分の手で堕とせる——。
その後も二人はジムで何度か顔を合わせるようになった。林浩は毎回、さりげなく美智子に近づき、彼女の趣味や生活習慣を探った。美智子は夫が海外赴任で半年近く帰ってこないこと、このマンションに越してきてまだ一年も経っていないこと、そして何より、毎日の孤独に耐えかねていること——。
「今日、仕事が早く終わったんですけど、良かったらうちで夕食でもどうですか?」
ジムからの帰り道、エレベーターホールで林浩は思い切って声をかけた。
美智子の目が一瞬泳いだ。彼女は窓の外の夜景に視線を向け、何かを考え込むように唇を噛んだ。
「でも……旦那さんが帰ってくることもありますし」
「もう九月も帰ってこないって、先日おっしゃってましたよね。それに、ただの親切心ですから」
林浩はにっこりと笑い、最も柔和な表情を作った。その笑顔の裏で、彼の脳裏にはすでに様々な想像が渦巻いていた——この豊満な肉体を自分の好きなように弄り回す自分自身の姿が。
「……わかりました。じゃあ、お言葉に甘えて」
美智子はようやく決心したように頷いた。その頬には、うっすらと赤みが差している。
「着替えてから、三十分後に俺の部屋に来てください。部屋番号は八〇三号室です」
林浩はそう言い残すと、足早にエレベーターに乗り込んだ。ドアが閉まる直前、彼は美智子の顔をもう一度見た。そこには、迷いと期待が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいた。
エレベーターの中で、林浩は深く息を吐いた。ズボンの前が、すでに張り詰め始めている。彼は唇を舐めながら、今夜のプランを頭の中で練り始めた。
まずは食事。アルコールを適度に含ませる。そして、自然な流れで彼女の肉体に触れる——。
美智子のたるんだ肉穴を想像しただけで、林浩の下半身は痛いほどに膨張していた。