監督員としての初めての実地検査は、蘇婉児にとって緊張と好奇心が入り混じるものだった。同僚の先輩が運転する公用車の助手席で、彼女は窓の外を流れる街並みを眺めながら、手元の端末に表示された検査対象のリストを何度も確認した。先輩はハンドルを片手で操り、軽い口調で話しかけてくる。
「緊張しなくていいぞ、蘇。今日はただの定期検査だ。奴隷登録の状況を確認して、異常がなければサインして終わりだ。お前は記録を取るだけでいい。」
「はい、先輩。初めてなので、何か見落としがないか心配で……」
「心配するな。俺がついてる。それに、実物を見ればすぐに慣れるさ。奴隷っていうのは、基本的にはただの所有物だ。感情を入れすぎると疲れるぞ。」
蘇婉児は曖昧にうなずいた。確かに、奴隷管理局の実習生として座学で学んだ知識はある。だが、実際の現場で奴隷を目にするのはこれが初めてだった。胸の奥がざわつく。自分の役割は、法律に従って奴隷の状態を確認し、異常があれば報告すること。それだけだ。そう自分に言い聞かせた。
やがて車は高級住宅街に入り、広い敷地を持つ豪邸の前に停まった。門扉は自動で開き、先輩は慣れた様子で車を中へと進める。駐車場には高級外車が数台並び、整備された庭には噴水が静かに水を吹き上げていた。
「ここの主人は、市議会議員の一人だ。政治的なコネもあるから、あまり強硬な態度は取るなよ。とはいえ、検査は検査だ。俺がやることを見ていろ。」
先輩はそう言って、車から降りる。蘇婉児も後を追い、端末を抱えて玄関へ向かった。インターホンを押すと、すぐに執事と思われる中年男性が出てきて、二人を中へ案内した。
広いリビングに通されると、まず目に飛び込んできたのは、床に敷かれた高級そうな絨毯の上で、四つん這いになっている女の姿だった。彼女は金髪を後ろで一つに束ね、黒い革製の首輪をはめられていた。衣服は一切身に着けておらず、その白い肌にはいくつもの鞭痕が赤く浮かんでいる。彼女はまるで犬のように、主人の股間の前にうつ伏せになり、舌を伸ばしてその陰茎を丁寧に舐めていた。
主人はソファにだらりと腰掛け、片手でワイングラスを揺らしながら、こちらに目を向けた。恰幅の良い中年男性で、口元には余裕のある笑みが浮かんでいる。
「おや、管理局の方か。ちょうどいいところに来たな。検査か?好きにしてくれ。」
先輩は軽く会釈し、蘇婉児に目配せした。彼女は端末を開き、登録番号を打ち込む。画面に表示されたプロフィールには、この女奴隷が昨年に登記され、飼育許可が出ていることが示されていた。年齢は二十四歳、元々は売春組織から没収された者だという。
「お手数ですが、検査のためにお嬢さんの状態を確認させていただきます。」
先輩がそう言うと、主人は手を振って「いいぞ」と答えた。そして、女奴隷に向かって命令する。
「おい、検査官の前だ。見せてやれ。自分の穴を全部開いて見せろ。」
女奴隷は言葉に従い、ゆっくりと上半身を起こし、両手を床について臀部を高く突き上げた。その姿勢で、彼女は自分の両手で陰唇を左右に開き、濡れた膣口を露わにした。さらに、もう一方の手で肛門の周りを広げ、その内部まで見えるようにした。
蘇婉児は息を飲んだ。生々しい人間の肉体が、ここまで無防備に、しかも自らの意思で晒されている光景に、頭の中が真っ白になる。しかし先輩は慣れた様子で、何の躊躇もなくその前にしゃがみ込んだ。
「うん、状態は悪くなさそうだ。ただ、登録写真と比べてちょっと痩せたか?栄養状態は問題ないか?」
「ええ、最近少し食事を制限しているんです。軽い矯正の一環で。でも健康には問題ありませんよ。医者の診断書も出ています。」
主人が軽く答える。先輩はうなずきながら、手を伸ばして女奴隷の膣口に中指を差し入れた。女奴隷は一瞬体を固くしたが、すぐにまた弛緩した。先輩は指を中で曲げ、内壁をなぞるように動かす。彼女の口から、押し殺したような甘い声が漏れた。
「うん、ちゃんと濡れてる。清潔に保たれてるな。肛門も見せろ。」
先輩がそう言うと、女奴隷はさらに腰を落とし、肛門を突き出すようにした。彼は今度は人差し指をゆっくりと肛門に挿入した。内部は温かく、括約筋が彼の指に絡みつくように締まる。彼は指を回しながら、数秒間そのまま留まった。
「異常なし。登録情報と一致している。蘇、これで記録を取れ。日付、時間、検査者の署名、奴隷の反応、すべて書き残せ。」
蘇婉児は慌てて端末を操作し、表示された項目に次々と入力していった。しかし、その指はわずかに震えていた。先輩が女奴隷の体内から指を抜くとき、彼女の陰部から透明な液体が糸を引いて滴り落ちるのを目撃した。その光景が、なぜか自分の体に焼き付くように残った。
検査が終わると、主人はにこやかに先輩と握手を交わした。蘇婉児はただ黙ってその横に立ち、端末の画面を閉じた。車に戻る途中も、彼女はほとんど言葉を発さなかった。
「どうした、まだ緊張してるのか?ああいうのは、慣れれば何でもない。女奴隷っていうのは、飼い主にとってはただの道具だ。俺たちはその状態を確認するだけだ。感情を込める必要はない。」
先輩はハンドルを切りながら、軽い調子で言った。蘇婉児はうなずいたが、心の奥底で何かがぐらついているのを感じていた。あの女奴隷の濡れた陰部、指を抜かれるときの彼女の虚ろな表情、そしてその光景を見ていたときに自分の下腹部に走った、かすかな疼き。それは、自分でも認めたくない種類の感覚だった。
事務所に戻り、デスクに座って報告書を清書しながら、蘇婉児の頭はあの場面を繰り返し再生していた。先輩の指が女奴隷の中に入っていく映像、彼女の体が震える瞬間、そして自分がそのすべてをただ記録していたという事実。ペンを持つ手が止まり、彼女は無意識に自分の太ももをぎゅっと押し合わせた。
胸が高鳴る。これは、単なる嫌悪感ではない。もっと、もっと見たい。あの女のように、自分もあの場所に立たされたら、どう感じるのだろう。その考えが頭をよぎった瞬間、蘇婉児は慌てて首を振った。バカなことを考えてはいけない。自分は監督員だ。奴隷になる側ではない。そう自分に言い聞かせたが、心の奥で炎がくすぶり続けているのを、彼女は否定できなかった。