幾千年もの間、魔王として君臨し続けた龍右は、もはや何一つとして心を揺さぶるものがなかった。
戦場で敵将の首を跳ね飛ばす瞬間も、美女たちが湯浴みをする後ろ姿も、すべてが絵画の中の景色のように色褪せて見える。彼は玉座に深く腰掛け、指先で頬杖をつきながら、延々と続く石壁の模様を眺めていた。
あの模様も、もう何千回となく見つめていた。
まるで永遠に続く退屈な日々を象徴するかのように、石壁のひび割れは同じ場所に留まっている。彼は立ち上がり、王城の長い廊下を歩き始めた。足音は虚空に響き、まるで彼という存在がこの城の中で唯一の生き物であるかのようだ。
城を出ると、荒野が広がっている。風が砂塵を巻き上げ、彼の黒いマントの裾をはためかせた。かつてはこの風の匂いさえも戦いへの血湧き立つ予感をもたらしたものだが、今はただ鼻を刺激するだけの埃の匂いにすぎない。
龍右は低く呟いた。
「退屈だ……あまりにも退屈だ……」
彼は無意識のうちに、足を獣人の集落へと向けた。彼らは魔王の領土の辺境に住み、独自の習わしを持っている。龍右は彼らを支配してはいるが、その生活に干渉することはほとんどなかった――彼らに対して抱く感情は、ただの無関心だった。
しかし、この日は何かが違っていた。
集落の外れを通りかかったとき、彼の耳に微かな物音が届いた。茂みの向こうから、低いうなり声と、何かがもつれるような音が聞こえてくる。龍右は特に気に留めることもなく、ただその音の方向へと歩を進めた。
茂みをかき分けると、そこには二匹の雄の獣人がいた。
彼らは下半身を密着させ、互いに激しく体をぶつけ合っている。毛深い腕が相手の背中に食い込み、牙をむき出しにして相手の首筋を噛みしめていた。それは単なる争いではない――明らかに交尾の儀式だった。
龍右は息を呑んだ。
数千年ぶりに、彼の体に何かが走った。胸の奥が熱くなり、下腹部が微かに震える。自分でも理解できない感覚だった。彼は戦慄し、無意識のうちに後退したが、それでも目は二匹の獣人から離せなかった。
彼らの動きは激しく、荒々しく、しかしどこか神聖ささえ感じさせる。支配と服従、攻撃と受容――そのすべてが一瞬のうちに繰り広げられていた。龍右は唇を噛みしめ、己の反応を制御しようと試みたが、体は素直に従わなかった。
「なぜだ……なぜ、これに……」
彼の心臓は激しく鼓動し、長い間忘れていた生の感覚が蘇ってくる。何かに飢えているような、何かに犯されたいような、奇妙な渇望が彼を突き動かしていた。
龍右は震える手で胸を押さえ、自分自身に問いかけた。
「私は……今まで何をしていた?」
その問いに答える者はいなかった。ただ、荒野の風が彼のマントを揺らし、遠くの獣人の咆哮が響き渡るだけだった。
彼はゆっくりとその場を離れ、王城へと戻る道を歩き始めた。しかし、その足取りは以前とは違っていた。どこか迷いを含み、また、新たな目的を見つけた者のように、意志の光が瞳の奥に宿っていた。
長く退屈な年月は、ついに終わりを告げようとしていた。