鳳囚龍闕

站点:NovelAI.one内容:前8章在线试读ID:61cca26a更新:2026-07-20 12:16
# 第一章 龍闕初臨、四美を抱く 天闕皇朝、永和元年。新たな皇帝の即位式が、帝都・天京の太和殿で執り行われた。 凌淵は玉座に坐していた。二十二歳の若き皇帝は、金糸で龍を刺繍した黒絹の礼服に身を包み、頭上には十二旒の冕冠を戴いている。旒の先で揺れる玉の音が、大殿の厳かな空気をより一層引き締めていた。 百官が整然と列をなし
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龍闕初臨、四美を抱く

# 第一章 龍闕初臨、四美を抱く

天闕皇朝、永和元年。新たな皇帝の即位式が、帝都・天京の太和殿で執り行われた。

凌淵は玉座に坐していた。二十二歳の若き皇帝は、金糸で龍を刺繍した黒絹の礼服に身を包み、頭上には十二旒の冕冠を戴いている。旒の先で揺れる玉の音が、大殿の厳かな空気をより一層引き締めていた。

百官が整然と列をなし、三跪九叩の礼を捧げる。その声が殿内に谺した。

「陛下万歳、万歳、万万歳!」

凌淵は微動だにせず、冷ややかな眼差しで臣下たちを見下ろしていた。その瞳の奥には、幼い頃から培われた帝王の威厳と、しかし同時に――何かを見透かすような、底知れぬ空虚さが潜んでいる。

「平身」

低く響く声が大殿に満ちる。その声音には、若さに似つかわしくない沈着さと、かすかな倦怠が混じっていた。

即位の儀式が終わりに近づいた時、太常寺卿が進み出て奏上した。

「陛下、四方の諸侯より、即位を祝う献上物が参っておりまする。中でも特に、北境・南疆・東海・西域の四大勢力より、四人の絶世の美姫が捧げられました。陛下の後宮を飾るに相応しい佳人との由、ぜひお目通り頂きたく存じます」

凌淵の眉が微かに動いた。彼は内心で冷やかに嗤った。四大勢力が美人を送り込む。それは表向きは恭順の意を示すものだが、実際は――それぞれの思惑を孕んだ諜報の駒に過ぎない。

「見せよ」

凌淵の声に感情はなかった。

まず現れたのは、北境氷原より来たという霜華だった。白銀の長衣に身を包み、その肌は雪のように白く、瞳は氷河のように冷たく澄んでいる。彼女は一歩進むごとに周囲の温度が下がるかのような錯覚を与えた。その歩みは優雅でありながら、獲物を値踏みする猛獣のそれにも似ていた。

次に、南疆の緋煙が現れた。彼女の装いは薄紅色の紗を幾重にも重ねたもので、歩くたびに肌が透けて見え、官能の極みと言えた。瞳は潤んでいて、唇は熟れた果実のように赤い。彼女は玉座の凌淵を見上げ、蠱惑的な笑みを浮かべた。その笑みには、男を骨抜きにする毒が仕込まれているようだった。

三番目は東海仙島よりの青黛。彼女は清らかな青衣をまとい、その姿はまるで仙境から降り立った天女のようだった。顔立ちは柔和で穏やかだが、目を覗き込むと、深い湖底のような暗い知性が感じられた。彼女は恭しく礼を取ったが、その仕草の一つ一つに計算された優雅さがあった。

最後に、西域魔門の紫棠が進み出た。彼女の肢体は豊満で、露出の多い紫紺の衣装がその曲線を強調している。肌は小麦色に焼け、瞳は野性的な光を宿していた。彼女は他の三人とは違い、頭を下げることなく、まっすぐに凌淵を見据えた。その視線には、挑戦とも屈服ともつかない何かがあった。

凌淵は四人を一瞥し、冷ややかな笑みを浮かべた。

「よく来た。お前たちは朕の後宮に迎え入れられる。それぞれに宮殿を賜う。霜華は氷雪宮、緋煙は煙霞閣、青黛は青霄殿、紫棠は紫微宮に住まうがよい」

四人の妃は一礼した。その瞬間、凌淵の胸中に奇妙な予感が走る。何かが――これからの日々が、単なる後宮の繁み以上のものになるという予感が。

だが、その予感はすぐに、即位式の儀礼の波に飲み込まれていった。

***

即位式の夜。凌淵は霜華の氷雪宮を訪れた。

彼はまだ若かったが、女というものを知らなかったわけではない。先帝の後宮にも、幾人かの女官や側室がいた。しかし、今夜は何かが違う。凌淵はその違和感を言葉にできぬまま、重々しい足取りで氷雪宮の閾をまたいだ。

宮殿の中は、外の春の温かさとは打って変わって、ひんやりとした空気が満ちていた。白い紗が風もないのに揺れ、部屋の中央には薄い氷の板を敷き詰めた寝台があった。

霜華は既に寛ぎの装いに変えていた。白絹の寝衣は、彼女の肢体に柔らかく絡みついている。彼女は凌淵を見ると、優雅に一礼したが、その目は笑っていなかった。

「陛下、お越しくださいましたか」

「うむ」

凌淵はできるだけ威厳を保とうとした。しかし、この女の前では、なぜかその威厳が砂のように崩れていくのを感じる。

霜華はゆっくりと近づいてきた。彼女の手には、細い銀色の糸が巻かれていた。

「陛下は、今日の即位式、お疲れになったでしょう」

「そうだな」

「ならば、臣妾が陛下を労わって差し上げます」

そう言うと、霜華は凌淵の手を取った。その手は冷たく、凌淵は思わず身を引こうとしたが、なぜか身体が動かない。

霜華は銀糸を凌淵の手首に巻き始めた。その動きはゆっくりと、しかし確実だった。

「これは……何だ?」

「北境の氷糸です。絡めれば絡めるほど、身体が温まります。陛下は今、お疲れだから、少しだけ……」

凌淵は抵抗しようとしたが、霜華の手つきは優雅で、まるで子をあやすかのようだった。その優しさに、凌淵の警戒心は徐々に解けていった。

「陛下は、今日、四人の妃を見て、どう思われましたか?」

「……それぞれに、美しいと思った」

「美しいだけですか?」

霜華の声には、微かな嘲笑が含まれていた。彼女は凌淵の両手首に氷糸を巻き終えると、今度はその糸を自分の手に巻きつけた。

「陛下は、誰かに支配されたことはありますか?」

その問いはあまりに唐突で、凌淵は一瞬息を呑んだ。

「朕は皇帝だ。誰にも支配などされぬ」

「そうですか」

霜華は微笑んだ。その微笑みは、氷の下に潜む暗流のように、底知れぬものを感じさせた。

「では、今、少しだけ体験してみませんか?」

彼女が手を引くと、氷糸がぴんと張られた。凌淵の手が自然と霜華の方に引き寄せられる。その力は強くはなかったが、確かに凌淵の自由を奪っていた。

「やめ……」

「陛下は、この感覚をお嫌いですか?」

霜華は凌淵の耳元に顔を近づけ、囁くような声で言った。その息は冷たく、凌淵の耳朶を刺すようだった。

「いや、これは……」

凌淵の言葉は途中で途切れた。なぜなら、その冷たい感覚が、身体の奥底で何かを目覚めさせ始めたからだ。それは支配されることへの――禁断の悦びだった。

霜華は凌淵の反応を見逃さなかった。彼女は更に糸を引き、凌淵の身体を寝台に引き倒した。

「陛下、今日はここまでにしましょう。しかし、明日もまた、臣妾がお相手致します」

彼女はそう言うと、氷糸を解いた。凌淵は自分の手首に残った赤い跡を見つめ、複雑な表情を浮かべた。

この夜、凌淵は氷雪宮で初めて、支配されるという感覚を味わった。そして、その感覚が、彼の奥深くで眠る何かを呼び覚ましたことを、まだ自覚していなかった。

***

第二夜。凌淵は煙霞閣に向かった。

昨夜の出来事が頭から離れず、彼はほとんど眠れなかった。あの冷たい感覚、糸に絡め取られた自由、そして――霜華の嘲笑を含んだ声。それらが脳裏に焼き付いて離れない。

だが、彼は皇帝だ。弱みを見せるわけにはいかない。今夜は、緋煙という別の妃と過ごすことで、昨夜の感覚を打ち消そうと考えた。

煙霞閣は、南方の楼閣を模した造りで、部屋中に甘い香りが漂っていた。香炉からは薄紫色の煙が立ち上り、視界を霞ませている。

緋煙は薄紅色の紗を纏い、寝台に寄りかかっていた。その脚が露わになり、足先まで優雅に伸びている。彼女は凌淵を見ると、ゆっくりと身体を起こし、蠱惑的な笑みを浮かべた。

「陛下、よくおいでくださいました」

その声は柔らかく、砂糖を溶かしたかのように甘い。凌淵はその声に誘われるように、一歩、また一歩と近づいていった。

「今夜は、陛下に特別なものをお見せしましょう」

緋煙は立ち上がり、香炉の傍らに歩いていった。彼女は素足で、絨毯の上を音もなく歩く。その足首は細く、足の形は完璧だった。

彼女は香炉に新たな香を加えた。たちまち、部屋中に濃厚な甘い匂いが満ちる。凌淵の意識が微かに朦朧とし始めた。

「これは南疆の秘香です。陛下の疲れを癒し、心を開かせるもの」

緋煙は凌淵の前に跪き、彼の足元に座った。そして、自分の素足を凌淵の脚に絡ませ始めた。その足は柔らかく、肌触りは絹のようだった。

「陛下は、昨夜は氷雪宮にお泊まりでしたね。霜華様は、陛下に何をなさいましたか?」

「……何も」

「そうですか」

緋煙の足が徐々に上へと這い上がる。その動きは蛇のように滑らかで、凌淵の身体を絡め取った。

「臣妾は、もっと優しい方法で陛下を癒します」

彼女の足の指が、凌淵の太腿の内側を撫でた。その感覚に、凌淵は思わず息を呑んだ。

「これは……!」

「嫌ですか?」

緋煙の目は、獲物を弄ぶ猫のように細められていた。彼女は足の動きを緩めず、時折強く押し当てたり、軽く撫でたりした。

凌淵の身体は、その官能的な刺激に正直に反応した。彼は抵抗しようとしたが、香のせいか、身体に力が入らない。

「陛下は、自分から動くよりも、動かされる方がお好きなのではないですか?」

緋煙の言葉は、凌淵の奥深くに突き刺さった。彼は否定しようとしたが、舌がもつれて言葉にならない。

「臣妾は陛下を、もっと楽しませて差し上げられます」

彼女はそう言うと、足の動きを更に激しくした。凌淵は耐えきれず、声を漏らした。

その夜、凌淵は緋煙の足の技に翻弄され、自ら快感を求めるようになった。彼は自分が徐々に、この四人の妃に絡め取られていくのを感じていた。

***

第三夜。凌淵は青霄殿を訪れた。

二夜連続の奇妙な体験に、彼の心は乱れていた。しかし、それを認めたくはなかった。彼は皇帝だ。誰かに支配される謂われはない。

青黛は清らかな青衣をまとい、静かに凌淵を迎えた。その態度は恭しく、昨夜の緋煙のような蠱惑的な雰囲気は一切ない。

「陛下、今夜はゆっくりとお休みください。臣妾がお話しをお聞きします」

その言葉に、凌淵は安堵した。ようやく普通の妃と過ごせると思った。

青黛は凌淵を寝台に導き、自らもその隣に座った。彼女の手には、小さな香袋があった。

「これは東海の仙草を詰めたものです。安眠を誘います」

凌淵は香袋を受け取り、匂いを嗅いだ。清涼な香りが鼻腔を抜け、心身が落ち着くのを感じた。

「陛下は、最近お疲れのご様子。何かお悩みでも?」

「……いや、何でもない」

凌淵はそう言ったが、青黛の問いかけが、昨夜までの出来事を思い出させた。彼の心に焦りが生まれる。

「お悩みがあるなら、臣妾がお解きしましょう」

青黛の声は優しかった。しかし、その優しさの奥には、計り知れない深い知性が潜んでいた。彼女は手を伸ばし、凌淵のこめかみを優しく撫でた。

「陛下、目を閉じてください」

凌淵は素直に従った。その瞬間、意識が急速に遠のいていくのを感じた。

目が覚めると、凌淵は見知らぬ場所に立っていた。

そこは巨大な宮殿のようだったが、天井も壁も無く、ただ白い光が無限に広がっている。周囲には、無数の人影が立っていた。それらは皆、彼を見下ろし、嘲笑っていた。

「皇帝陛下、お目覚めですか?」

声がした方向を見ると、そこに青黛が立っていた。しかし、その青黛は普段とは違い、手に鞭を持ち、目は冷たく光っていた。

「これは……夢か?」

「夢であり、夢にあらず。陛下の内面の世界です」

青黛は優雅に歩いてきた。その一歩一歩が、凌淵の心臓を強く打つ。

「陛下は誰かに支配されることを望んでいます。しかし、それを認めたくない」

「違う!」

凌淵は叫んだが、声は虚しく響くだけだった。

青黛は鞭を振り上げた。それが凌淵の身体を打つ。しかし、痛みはなかった。代わりに、強烈な羞恥と、それに伴う奇妙な快感が身体中を駆け巡った。

「これは罰ではありません。解放です」

青黛の声が、夢中に谺する。

凌淵は夢の中で何度も鞭打たれ、嘲られ、辱められた。しかし、その辱めの中に、彼は確かな安らぎを見出していた。

目が覚めた時、凌淵は全身に汗をかいていた。青黛は静かに彼の傍らに座り、何事もなかったかのように微笑んでいる。

「陛下、お休みになれましたか?」

凌淵は答えなかった。ただ、心の中で激しい葛藤が渦巻いていた。この夢は、単なる夢だったのか?それとも――。

***

第四夜。凌淵は紫微宮を訪れた。

三日間の経験が、彼の心に深い傷と、同時に新たな渇望を刻んでいた。今夜こそ、何の仕掛けもない普通の夜を過ごしたい。そう願いながら、彼は紫微宮の門をくぐった。

しかし、紫棠は普通ではなかった。

彼女は黒革の衣装に身を包み、手に鞭を持っていた。その鞭は細く、先端が数本に分かれている。凌淵を見る目は、獲物を狙う猟犬のようだった。

「陛下、よく来たな」

紫棠は言葉遣いすらも粗野だった。彼女は一歩近づき、鞭を軽く振るう。鞭が空気を切り、鋭い音を立てた。

「西域では、男を一人前にするには、鞭の一打ちが必要だと言われている」

「朕は……既に成人だ」

「そうか?だが、陛下の目はまだ、子供のように迷っている」

紫棠は鞭を振りかざした。凌淵は思わず身を固くした。しかし、鞭は彼の太腿に軽く当たっただけだった。痛みは軽かったが、その衝撃は身体中に広がった。

「どうだ?痛いか?」

「……痛くはない」

「ならば、もっと強く打ってもいいな」

紫棠は二度目の鞭を振るった。今度は先ほどより強く、凌淵の太腿に赤い筋が浮かんだ。凌淵は痛みに顔を歪めたが、同時に――その痛みの中に、何か充足感のようなものを覚えた。

「陛下は痛みに快感を覚えるようだな」

紫棠は嘲笑を浮かべ、更に鞭を振るった。三度、四度と打たれるたびに、凌淵の身体は震え、しかしその震えは次第に快楽へと変わっていった。

「もう一度……打て」

凌淵は気づけば、そう口にしていた。紫棠は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに残酷な笑みを浮かべた。

「望み通りにしてやろう」

その夜、凌淵は紫棠の鞭に打たれ続けた。痛みと快感の狭間で、彼は自分が何かに大きく変わろうとしているのを感じていた。

***

朝議の日。

凌淵は玉座に坐していたが、心はここになかった。昨夜の紫棠の鞭の感触が、まだ身体に残っている。

臣下たちの奏上が続く。しかし、凌淵の耳にはその声が遠くに聞こえるだけだった。

「陛下、辺境の叛乱について、如何に……」

「……うむ」

凌淵は曖昧に答えた。その時、突然、頭の中に霜華の声が響いた。

『陛下、昨夜は紫棠と楽しんだようですね。臣妾は少し寂しいです』

凌淵ははっとした。周囲を見渡すが、霜華の姿はない。しかし、声は確かに聞こえた。

『これは……念話か?』

『ええ、臣妾の得意とするところです。陛下が今、何を考えているか、臣妾には全て分かります。臣妾が鞭で打たれるのを想像していたでしょう?』

凌淵の顔が一気に赤く染まった。臣下たちは異変に気づき、顔を見合わせる。

『やめろ……ここは朝議だ』

『ならば陛下、臣妾に謝りなさい。そうすれば、今夜は優しくして差し上げます』

凌淵は唇を噛みしめた。朝議の最中に、妃からの念話で辱められる。この屈辱は、しかし同時に甘美でもあった。

『……すまなかった』

『よく言えました。今夜、氷雪宮に来なさい』

凌淵はこっそりと溜息をついた。朝議が終わるまでの間、彼は霜華の念話に何度も苛まれ、顔を真っ赤にしながら答弁を続けた。

この日の朝議は、凌淵にとって最も長いものとなった。

***

その夜、霜華の氷雪宮。

凌淵は一人で訪れた。霜華は既に準備を整え、氷糸を手に待っていた。

「陛下、今日の朝議はお疲れでしたね」

「……お前のせいだ」

「ええ、臣妾のせいです。しかし、陛下も楽しんでいたでしょう?」

凌淵は答えなかった。しかし、その沈黙が答えだった。

霜華は氷糸を凌淵の手首に巻き始めた。今回は前回よりも強く、凌淵の自由を完全に奪う。

「陛下は、もう抵抗する気はないのですか?」

「……もう、どうでもいい」

凌淵の声は諦めにも似ていた。実際、彼はもう自分を偽ることができなくなっていた。支配されることへの渇望が、日に日に強くなっている。

霜華は満足そうに微笑んだ。そして、氷糸を引っ張り、凌淵を寝台に引き倒した。

「よろしい。今夜は、臣妾が陛下をしっかりと調教して差し上げます」

その夜の調教は、これまで以上に激しかった。霜華は言葉で凌淵を辱め、氷糸で彼の自由を奪い、時には冷たい氷の板の上に彼を座らせた。

凌淵は最初は恥ずかしさで一杯だったが、次第にその辱めに酔いしれていった。

「陛下、明日からは、臣妾の言うことをよく聞くのですよ」

「……はい」

凌淵は素直に頷いた。その姿を見て、霜華は更に調教を深めた。

***

一方、その夜遅く。

霜華、緋煙、青黛、紫棠の四人は、青霄殿の奥の間で密かに集まっていた。

「どうやら、陛下は我々の調教に完全に嵌ったようだ」

霜華が口火を切った。彼女の手には、凌淵から取り上げた龍紋の玉佩があった。

「まだ十分ではない。陛下はまだ葛藤している。完全に屈服させるには、もっと深く調教する必要がある」

青黛が静かに言った。彼女は香炉の香を整えながら、思索に耽っていた。

「私はもっと鞭で打ちたい。陛下のあの苦痛に歪む顔が、なんとも可愛らしい」

紫棠が獰猛な笑みを浮かべた。

「私はもっと陛下を惑わせたい。あの官能に溺れる姿は、この上なく美しい」

緋煙もまた、蠱惑的な笑みを浮かべた。

四人は互いに目を合わせ、頷き合った。

「では、決まりだ。我々はこれからも調教を続け、陛下を完全に我々のものにする。そして――」

霜華は言葉を切った。その瞳には、何か底知れぬ野望が宿っていた。

「やがては、この天闕皇朝すらも、我々の掌中に収める」

その言葉に、他の三人も深く頷いた。

***

その後、凌淵の変化は明らかだった。

彼は自ら進んで妃たちの宮殿を訪れるようになった。最初は霜華の氷雪宮、次に緋煙の煙霞閣、青黛の青霄殿、紫棠の紫微宮と、日替わりで通い詰めた。

「陛下、今日は臣妾のところに来てくださるのですか?」

霜華がからかうように言った。凌淵は赤面しながらも、素直に頷いた。

「ああ。今日は……お前の調教を受けたい」

その言葉に、霜華は満足そうに微笑んだ。彼女は部屋の奥に用意してあった特別な調教具を取り出した。

「では、陛下。今夜は特別な調教を致しましょう」

その夜、凌淵は霜華の調教具に翻弄され、言葉にならない声を上げた。しかし、その声には苦痛よりも快楽が混じっていた。

日を追うごとに、凌淵の妃たちへの依存は深まっていった。彼は朝議の最中にも調教のことを考え、夜になると我先にと妃たちの宮殿に駆け込んだ。

「陛下、最近は政務がおろそかになっております。どうかお心を引き締められますように」

老臣が諫言した。しかし、凌淵の耳には入らなかった。

「うむ、分かっている。しかし、朕にも必要な休息がある」

そう言いながら、彼の心は今夜どの妃を訪ねようかで一杯だった。

葛藤は確かにあった。自分は皇帝だ。誰かに支配されるべき存在ではない。しかし、その支配される感覚が、どうにも忘れられない。

「なぜだ……なぜ、朕はこんなにも……あの女たちに惹かれるのだ」

夜、一人寝台に横たわりながら、凌淵は自問した。しかし、答えは出ない。ただ、身体が、心が、あの支配される瞬間を求めている。

***

ある夜のこと。

凌淵は霜華の調教を受けた後、一人で寝宮に戻った。身体中には、氷糸の跡や鞭の跡が生々しく残っている。

彼は鏡の前に立った。そこに映るのは、若き皇帝の姿。しかし、その目は昔のような威厳を失い、代わりに何か甘やかで、そして空虚なものが宿っていた。

凌淵は引き出しから、一つの首輪を取り出した。それは霜華から与えられたものだった。銀色の細い輪で、内側には「凌淵」の名が刻まれている。

彼はその首輪を手に取り、そっと撫でた。そして、苦笑いを浮かべた。

「朕は……いつから、こんなになったのだろう」

答えは出ない。しかし、その首輪の感触が、なぜか心地よかった。

彼は首輪を自分の首にはめようとした。しかし、そこで手が止まる。

「まだ……まだだ。朕は皇帝だ。こんなものに頼るべきではない」

そう言いながらも、彼の手は首輪を離さなかった。葛藤が渦巻く。しかし、その渦巻く感情すらも、彼にとっては快感の一部だった。

その夜、凌淵は首輪を握りしめたまま、眠りに落ちた。夢の中で、四人の妃たちが彼を包み込み、支配し、そして――愛していた。

***

朝日が昇る。凌淵は目を覚ました。

彼は手にした首輪を見つめ、深く息を吐いた。そして、ゆっくりと首輪を自分の首にはめた。

「もう、戻れないな」

その言葉には、諦めと、そして悦びが混じっていた。

彼は立ち上がり、今日の朝議の準備を始めた。しかし、その胸中には、今夜どの妃の宮殿を訪ねようかという期待で一杯だった。

天闕皇朝の新たな皇帝は、今、確かに四人の妃たちの掌中にあった。そして、その事実を、彼は心の奥底で悦んでいるのだった。

帝心次第に迷い、妃たちが布石を打つ

霜華の指は、凌淵の頬を滑るように撫でた。冷え冷えとした指先、その温度が皮膚の表面をかすめると、凌淵は無意識に息を止めた。彼女の唇は耳元に寄せられ、吐息は冷ややかに耳朶を打った。

「陛下、あなたは生まれながらにして、支配される側の人間です。」

凌淵の瞳が揺れた。言い返そうとした言葉は喉の奥で詰まり、かすかな呻きに変わった。

「違う…朕は皇帝だ…」

「皇帝であればなおさら。」霜華の声は冬の凍てつく風のように冷たく、容赦がない。「高いところに立つ者ほど、誰かに引きずり下ろされる快感を知るべきです。」

凌淵は唇を噛んだ。抗おうとすればするほど、身体の奥底で何か疼くような感覚が沸き起こるのだ。彼女の言葉が毒のように深く浸透していくのを感じながら、彼はその毒に抗う気力を失いつつあった。

「今夜、宴を開きます。どうか陛下もお越しくださいませ。」

緋煙の声が不意に割り込んだ。振り返れば、彼女は既に部屋の隅で優雅に佇んでおり、その瞳には蠱惑的な光が宿っている。

「どんな…宴だ?」凌淵の声は掠れていた。

「もちろん、陛下のための宴でございます。」

緋煙の笑みは甘く、その言葉の裏には何か危険な匂いが潜んでいた。凌淵は彼女の意図を察しながらも、断ることができなかった。拒絶すれば、それは自分の弱さを認めることになる。そう思ったからだ。

宴の席は、宮殿の奥にある広間で開かれた。灯りは燭台の揺らめく炎だけ。暗がりの中、四人の妃はそれぞれの席に座っていた。凌淵は上座に据えられていたが、その位置に落ち着きはなかった。妃たちの視線が、見えない糸のように絡みつき、彼の一挙一動を縫い留めている。

緋煙が杯を掲げた。酒の香りとともに、彼女が口を開く。

「陛下、本日はご自身のことをお話しいただけませんか? 例えば…自分はどのような皇帝に映っているのか、とか。」

凌淵の心臓が跳ねた。答えられない。まともに答えれば、それは彼女たちの掌中に落ちることと同じだ。しかし無視すれば、さらに鬱屈した沈黙が漂うだけだ。

「朕は…ただ国を思うだけだ。」絞り出すように凌淵は答えた。

「ふふ、国を思うだけの陛下は、なんと薄ら寒いのでしょう。」青黛が口を挟んだ。その声音は清らかで、まるで調べを奏でるようだ。「陛下が本当に思っているのは、誰かに支配されることではないのですか?」

凌淵の手が震えた。無意識に杯を握りしめると、酒が零れ落ちた。その時、卓の下から何かが彼の足を撫でた。柔らかく、しなやかな感触。咄嗟に膝を閉じようとするが、それは膝の間に入り込み、巧みに撫で上げる。

凌淵は息を呑んだ。卓の下の影は深く、それが誰の仕業かは明らかだった。緋煙は表面上は何もなかったかのように振る舞い、周囲の妃たちも平然としている。

「陛下、お顔が赤いようですが、お加減でも?」霜華の冷笑が響く。

凌淵は首を振ったが、声が出なかった。膝の上を這う足の指は、まるで生き物のように蠢き、彼の太腿を撫で、腰へと登っていく。抵抗しようとすれば、さらに深く入り込まれそうな危険な快感が、彼の理性を溶かしていった。

その時、青黛が立ち上がった。手には微かに湯気の立つ茶器を持っている。

「陛下、どうぞこちらをお召し上がりください。喉を潤すものでございます。」

凌淵は茶器を受け取った。青黛は何気なく彼の手の甲を撫で、その指が一瞬触れた。彼は茶を一口含んだ。葉の香りは清々しいが、どこかに苦味が混ざっている。不思議な感覚が喉を通過すると、声帯が鉛のように重くなった。

「…っ」

次の瞬間、凌淵の喉からは掠れた吐息しか出てこなかった。声が出ない。必死に声を絞り出そうとしても、空気が喉を通り抜けるだけだ。

「陛下、何か御用ですか?」青黛の微笑は優雅そのものだった。「もしお困りであれば、わたくしが代わりに申し伝えますが。」

凌淵は手を振った。だが、彼の仕草は意味を成さない。妃たちの視線は冷たく、その瞳の奥で嘲笑が踊っている。自分が完全に嵌められてしまったことを悟った時、彼の背筋に冷たい汗が伝った。

翌朝、朝議の場で凌淵はさらに屈辱を味わった。声は出ず、口を開いてもかすかな風の音しか生まない。臣下たちはざわつき、互いに顔を見合わせる。

「陛下、ご体調が優れないのであれば、わたくしが代わりに勅旨を伝えましょう。」

青黛が立ち上がった。堂々とした足取りで、凌淵の前に進み出る。彼女は一枚の帛書を取り出し、優雅な声でその内容を読み上げ始めた。臣下たちは異様な空気を感じながらも、何も言えずに跪いた。

凌淵はその様子を、ただ座して見守るしかなかった。玉座の上で、彼は鳥籠の中の鳥のように閉じ込められ、妃たちに操られる姿を臣下の前で曝される。

朝議が終わり、凌淵は御花園を歩いていた。誰にも会いたくない。しかし、その思いは叶わなかった。花の陰から紫棠が現れ、彼の前に立ちはだかる。

「陛下、ご機嫌斜めのようですね。」

凌淵が眉をひそめると、紫棠の手に鞭が握られているのが視界に入った。細長い籐の鞭。彼の血管が一気に凍りつくのを感じた。

「何を…」

言いかけて、声が出ないことを思い出した。凌淵は後退るが、紫棠は一歩、また一歩と迫る。

「陛下が最近、わたくしの調教を避けておられるようで。本日は、その帳尻を合わせていただきます。」

紫棠はそう言って、鞭を振るった。空気を裂く鋭い音とともに、凌淵の臀部に走る衝撃。痛みは鮮烈で、思わず声を上げようとしたが、掠れた呻きしか出てこない。

「っ…!」

「陛下の悲鳴は、実に官能的でございます。」紫棠はそう言いながら、さらに鞭を打った。凌淵はよろめき、花壇の縁に手をついた。痛みで視界が歪む中、遠くから侍女たちの囁く声が聞こえる。

「あれは…陛下の?」

「しっ…聞かなかったことに…」

凌淵の耳は焼けるように熱くなった。自分の恥辱が宮中に広がっている。それを知った瞬間、なぜか心の奥底で安堵に似た感情が湧き上がるのを感じた。誰かに知られること、晒されること、それこそが彼の渇望していたものかもしれない。

その夜、凌淵は奏折の山に埋もれていた。仕事に没頭すれば、今日の出来事を忘れられるかもしれない。しかし、彼の心は落ち着くどころか、さらに沸き立っていた。

部屋の扉が音もなく開いた。霜華が佇んでいる。その手には何も持っていないが、彼女の存在自体が重圧となって凌淵に迫る。

「陛下、お疲れのようです。」

凌淵は声が出せないまま、ただ彼女を見つめた。霜華は優雅に歩を進め、彼の背後に回る。

「奏折は後回しで結構。まずは、正しい姿勢を学んでいただきます。」

彼女の手が凌淵の肩を掴んだ。強い力で、玉座に座る彼を押さえつける。

「跪け。」

その一言は短く、命令的だった。凌淵は一瞬の逡巡の後、体が勝手に動くのを感じた。膝が折れ、玉座の前に身を沈める。霜華は彼の後ろに立ち、彼の首筋に手を当てた。

「その姿勢を保て。わたくしが命じるまで、動いてはならぬ。」

凌淵の視界は床の冷たい石畳で満たされていた。自分の置かれた状況が、羞恥と恐怖、そして一方では甘美な快感をもたらす。彼は自分を受け入れたかのように、ゆっくりと息を吐いた。

その時、物音がした。凌淵が顔を上げると、扉の隙間から少女がこちらを覗いている。柳如煙だ。彼女の目は驚愕に見開かれ、口元はわずかに震えていた。

凌淵は彼女を見た。彼女が見ているのは、玉座に跪く皇帝の姿。その事実が、彼の胸をつき刺す。しかし、逃げ出したい気持ちの一方で、もっと見てほしいという願望が顔を出す。

柳如煙はその場から静かに立ち去ろうとした。しかし、彼女の足は一歩も動かなかった。霜華が、柳如煙に気づいていないように振る舞いながら、凌淵の頭をさらに深く下げさせる。

「もっと深く。」

凌淵は震えながら、地面に額を付けた。この姿を大臣の娘に見られている。その事実が、彼の中で何かが崩れ落ちる音を立てた。

柳如煙が去った後、霜華は凌淵の耳元で囁いた。

「よかったな、陛下。新しい観客が一人増えた。」

その言葉に、凌淵の心臓が大きく跳ねた。彼は何も言い返せず、ただ地面の冷たさに身を預けた。

翌日、凌淵は四人の妃を自ら呼び集めた。室の中央に立ち、彼は決然とした表情を浮かべている。しかし、その内側は震えていた。

「朕は…お前たちに、もっと深いところまで調教してほしい。」

すべてを言い終えた彼の瞳には、もはや皇帝の威厳はなかった。そこにあるのは、懇願する子犬の目だった。

霜華は冷笑を浮かべ、緋煙は扇子で口元を隠して笑った。青黛は優しい微笑みを見せ、紫棠は鞭を手に取りながら、満足げに口元を歪めた。

「それでは、わたくしどもが正式に計画を立てましょう。」霜華が口火を切る。「わたくしは精神操作の責めを受け持つ。」

「わたくしは感覚責めを。」と緋煙。

「わたくしは催眠と心理暗示を。」と青黛。

「わたくしは恥辱と鞭打ちを。」と紫棠。

四人は互いに視線を交わし、一つの輪を作る。その輪の中心で、凌淵はただ俯いていた。服従の姿勢を身体が覚え始めていた。

その夜、凌淵は夢を見た。夢の中で、四人の妃が彼を取り囲んでいた。霜華は冷たい声で呪文を唱え、緋煙は絡みつく蛇のように妖しく踊り、青黛は囁くように暗示をかけ、紫棠は鞭を鳴らしながら笑っている。

彼は動けず、息もできなかった。しかし、その圧迫感の中で、彼は温かいものを感じていた。孤独ではない。誰かに支配されることで、彼は初めて自分の存在を確かめることができる。そんな歪んだ安心感が、彼を包み込んだ。

「陛下、ここがあなたの場所です。」

霜華の声が夢の中で響いた。

凌淵は目を覚ました。汗で寝巻きがびっしょりと濡れている。心臓は激しく鼓動し、呼吸は荒い。しかし、彼の顔にはなぜか柔らかな笑みが浮かんでいた。

「そうだ…ここが朕の場所だ。」

彼はそう呟き、再び目を閉じた。これから始まる調教の日々が、恐怖でありながらも待ち遠しく感じられた。自分の意志とは無関係に、その期待に胸が踊る。

霜華は別室で、四人の妃とともに計画表を広げていた。羊皮紙の上には、細かな字で日々の調教スケジュールが書き込まれている。

「第一週は、陛下に我々の支配を浸透させる。第2週からは、肉体と精神の境界を曖昧にする段階に入る。」

「最終段階では、彼に何の抵抗もさせず、ただ服従だけを求めるようにする。」

青黛が言葉を継ぐ。

「柳如煙も気づいたようですね。」紫棠が何気なく言った。

「ああ。」霜華は頷く。「彼女もおそらく、すぐに仲間になるだろう。あの目は、覚醒し始めている。」

緋煙が扇子を揺らしながら笑う。

「これでますます、楽しくなりそうですね。」

霜華は窓の外を見上げた。月は高く、冷たく澄んでいる。皇帝の部屋からは、かすかな寝息が聞こえてくる。全てが計画通りに進んでいることを確信しながら、彼女は口元に冷ややかな笑みを浮かべた。

凌淵は夢の中に戻っていた。今度の夢は、前よりも鮮明で、深く、抗いがたい。彼は自分が鎖で繋がれ、四人の妃に囲まれている姿をはっきりと見つめていた。そして、その中で自分が笑っている。

支配されることに、酔いしれている自分がいた。

霜華の氷獄、精神崩壊

# 霜華の氷獄、精神崩壊

氷室の重厚な鉄の扉が閉ざされると同時に、外の喧騒は完全に遮断された。凌淵は薄暗い室内に立ち、吐く息が白く染まるのを感じていた。壁も床も天井も、全てが分厚い氷で覆われている。中央に置かれた氷の台座からは、冷気が立ち上り、まるで生き物のように彼の足首に絡みつく。

「陛下、こちらへ」

霜華の声が氷の結晶のように澄んで響いた。彼女は氷色のロングドレスを纏い、白い長靴を履いている。その姿は氷の精霊のように美しく、同時に冷徹だった。彼女の手には、繊細な氷の鎖が握られている。

凌淵は震える足で一歩を踏み出した。床の冷たさが革靴越しに伝わってくる。彼は皇帝の威厳を保とうと背筋を伸ばしたが、霜華の前ではそれが無意味であることを知っていた。

「陛下、お手を」

霜華の指が彼の手首に触れる。その冷たさに凌淵は息を呑んだ。氷の鎖が手首に巻き付けられ、カチカチと音を立てて固定される。それはまるで生きているかのように、彼の体を締め付けていった。

「これは...」

「北境の氷晶石で作られた鎖です。あなたの体温で溶けることはありません」

霜華は優雅に笑った。その笑顔には、獲物を前にした捕食者の愉悦が滲んでいた。

彼女の指が凌淵の頬を撫でる。その冷たさに彼は震えた。

「さあ、跪きなさい」

その言葉には抗えない力があった。凌淵の膝がゆっくりと曲がり、氷の床に触れる。冷気が膝から全身に広がり、骨の髄まで凍らせるようだった。

霜華は彼の前に立ち、白い長靴の先を彼の胸に当てた。その圧力は軽かったが、彼の心臓を直接踏みつけられているような感覚があった。

「陛下、あなたは弱い」

彼女の声は優しかった。優しすぎて、むしろ残酷だった。

「幼い頃から、あなたは常に怯えていた。父上の影に怯え、兄弟たちの陰謀に怯え、臣下たちの裏切りに怯えていた」

凌淵は唇を噛み締めた。彼女の言葉は、彼が最も隠したい過去を暴いていく。

「違う...朕は...」

「黙りなさい」

霜華の足が彼の胸を強く押した。凌淵は後ろに倒れそうになるが、氷の鎖が彼を支える。

「私はあなたの全てを知っている。皇太子だった頃、夜になると泣いていたこと、父上の前で震えていたこと、裏切られるのが怖くて誰も信じられなかったこと」

彼女の言葉が氷の針となって、彼の心臓を刺す。凌淵の目から涙がこぼれ落ちた。

「なぜ...なぜそれを...」

「あなたが私のものだからよ。私はあなたの全てを知る権利がある」

霜華は膝を曲げ、凌淵の顔に自分の顔を近づけた。その瞳は氷のように澄み、同時に深い情熱を宿していた。

「今日から、あなたは私の前では皇帝ではない。ただの凌淵、私が支配する存在だ」

彼女の指が凌淵の顎をつかみ、顔を上げさせる。

「目隠しをしてあげる。そうすれば、あなたは私の声と感覚だけに集中できる」

霜華は氷色の布を取り出し、凌淵の目を覆った。視界が奪われた瞬間、彼の他の感覚は鋭敏になった。氷の冷たさ、彼女の存在の気配、自分の心臓の鼓動。

「まずは、あなたの体を清めましょう」

霜華の手に氷水の入った器が握られているのが、水滴の音でわかった。

「ひっ...」

氷水が彼の頭から浴びせられる。冷たさに凌淵の体が跳ねた。水は彼の髪を伝い、顔を伝い、服の中に浸み込んでいく。

「あなたが即位する前の夜、何をしていたか覚えているか?」

霜華の声が氷室に反響する。

「朕は...」

「思い出しなさい。あなたは父上の寝室の前で、一晩中震えていた。入る勇気がなくて、ただ立ち尽くしていた」

「違う...あれは...」

「あれは、あなたが父上に認めてもらいたかったからだ。でも、入れなかった。あなたは臆病者だった」

凌淵の歯がガチガチと鳴る。寒さのせいか、感情のせいか、自分でも分からなかった。

「あなたはいつもそうだ。決断を恐れ、責任を恐れ、愛されることを恐れる」

霜華の指が彼の濡れた髪を梳く。その優しさが、かえって残酷だった。

「でも、もう大丈夫。私がいるから。私が全てを決めてあげる。あなたはただ、従っていればいい」

彼女の言葉が、氷のように冷たく、同時に温かく彼の心に浸透していく。

「さあ、あなたの弱さを認めなさい」

凌淵は唇を震わせた。言いたくない。言ってしまえば、本当に自分が弱い存在になってしまう気がした。

しかし、霜華の指が彼の手首の氷の鎖を撫でる。その感触が、彼の抵抗を溶かしていく。

「朕は...弱い」

「もっと大きな声で」

「朕は弱い...弱い人間です」

その言葉を口にした瞬間、凌淵の中で何かが壊れた。涙が止まらず、体が震える。

霜華は満足げに微笑んだ。彼女は立ち上がり、新たな道具を手に取る。それは氷晶で作られた小さな櫛のようなものだった。

「次は、あなたの肌を覚醒させてあげる」

氷晶の櫛が凌淵の首筋に触れる。その冷たさに彼の肌が粟立つ。ゆっくりと、彼の鎖骨を伝い、胸の上を滑る。

「あっ...」

痛みと快感が混ざり合った感覚が彼の体を走る。氷の刃が皮膚を傷つけるわけではないが、その冷たさが神経を刺激する。

「美しい肌ね。でも、まだ十分に目覚めていない」

霜華の櫛は彼の胸の頂点に触れた。凌淵の体がビクンと跳ねる。

「感じる?この冷たさ」

「はい...感じます」

「あなたの乳首が、こんなに硬くなっている。氷のせい?それとも、私のせい?」

凌淵は答えられなかった。答えが分かっていたからだ。彼女のせいだ。彼女の存在そのものが、彼を狂わせる。

霜華は櫛を脇に置き、新たな道具を取り出す。それは氷で作られた小さな球体だった。

「これをあなたの中に入れてあげる」

凌淵は息を呑んだ。彼女が何を言っているのか理解できた。

「嫌ですか?」

「いや...朕は...」

「あなたは嫌がる権利はない。私が与える全てを受け入れなさい」

霜華の指が彼の唇を開く。氷の球が口の中に押し込まれた。冷たさに凌淵の歯がガチガチと鳴る。

「舐めなさい。溶かすまで」

凌淵は従った。舌で氷の球を転がす。冷たさと甘さが混ざり合い、彼の口の中で広がる。

「よくできました。あなたは良い子だ」

霜華の手が彼の頭を撫でる。その優しさに、凌淵の涙が再び溢れた。

「さあ、次はあなたの過去と向き合いましょう」

霜華は彼の前に座った。目隠しをしていても、彼女の存在を感じることができた。

「あなたが最も恐れていることは何ですか?」

「朕は...」

「正直に答えなさい」

凌淵は深く息を吸い込んだ。彼の心の奥底に眠る恐怖が、氷室の冷気と共に浮かび上がってくる。

「朕は...愛されることを恐れている」

「なぜ?」

「愛されれば、いつか失うから。裏切られるから。信じれば、傷つくから」

霜華は静かに頷いた。彼女の目に一瞬、憐れみの色が浮かんだが、すぐに消えた。

「あなたの父親に愛されなかったから?」

「はい...父上は...朕を愛していなかった。朕は...ただの駒だった」

「そして、あなたの母親は?」

「母上は...朕を残して逝った。朕は...一人で生きることを強いられた」

凌淵の声が震える。彼の心の傷が、氷室の中で露わになっていく。

「あなたは今、愛を求めている。でも、愛されることを恐れている。その矛盾が、あなたを苦しめている」

霜華の指が彼の頬を撫でる。

「私はあなたを愛さない。私はあなたを支配する。だから、あなたは私に依存できる。裏切られる心配はない。私はあなたの全てを支配するから」

その言葉に、凌淵はなぜか安堵した。愛されるよりも、支配される方が安全だと感じた。

「私はあなたの痛みを全て引き受ける。あなたの恐怖を全て取り除く。その代わり、あなたは私に全てを捧げる」

「はい...朕は...あなたに全てを捧げます」

霜華は微笑んだ。そして、彼の目隠しを外した。

凌淵の目に、氷室の光が飛び込む。彼の瞳は涙で濡れ、赤くなっていた。

「さあ、立って」

霜華は彼に手を差し伸べた。凌淵はその手を取って立ち上がる。しかし、彼の足は震え、体は冷え切っていた。

「もう十分だ。今日はここまで」

「しかし...まだ...」

「あなたはよくやった。初日としては十分だ」

霜華は彼の氷の鎖を外した。彼の手首には、赤い跡が残っていた。

「お風呂に入りなさい。そして、休みなさい。明日も続けるから」

その言葉に、凌淵は複雑な表情を浮かべた。恐怖と期待が混ざり合ったその表情は、霜華の心を満足させた。

「あなたは私のものだ。決して忘れてはいけない」

霜華は彼の額にキスをした。その冷たい唇の感触が、凌淵の心に深く刻まれる。

彼が氷室を出る時、彼の瞳には一瞬の依存の光が宿っていた。霜華はそれを確認し、満足げに微笑んだ。

氷室の扉が閉ざされ、霜華は一人その場に立つ。彼女の足元には、凌淵が流した涙の跡が凍りついていた。

「これからが、本当の調教の始まり」

彼女の声は、氷室の冷気に溶けて消えた。

緋煙の香閣、感覚の溺没

緋煙の香閣は、いつも通り甘やかな薫香に満ちていた。凌淵が重い扉を押し入ると、視界はすぐに紫色の紗幕に遮られ、奥からは水音とも衣擦れともつかない微かな音が漏れてくる。

「陛下、お待ちしておりました。」

緋煙の声は、まるで蜜を溶かしたように甘く、紗幕の向こうから漂ってくる。凌淵は喉を鳴らし、無意識に足を進めた。床には柔らかな獣毛の絨毯が敷き詰められ、一歩踏み出すごとに足首が沈み込むようだ。

香閣の中央には低い寝台が置かれ、その周りには幾つもの香炉が立ち並んでいた。青い煙が蛇のように立ち昇り、空気を重く、甘ったるく変えていく。凌淵は気づかぬうちに呼吸が浅くなり、頬がほんのりと赤らんでいる。

「今日は、陛下に特別な心地よさを味わっていただきます。」

緋煙は寝台の端に腰かけ、赤い紗のドレスが彼女の肢体に絡みついていた。裾から覗く細く長い脚には、黒いレースのストッキングが艶めかしく光っている。彼女はゆっくりと立ち上がり、裸足のまま凌淵の前に歩み寄った。

「どうぞ、こちらへ。」

彼女の手が凌淵の胸に触れる。その指先はひんやりと冷たく、凌淵の肌に小さな戦慄を走らせた。凌淵は抵抗する間もなく、寝台に押し倒される。緋煙は彼の上にまたがり、ゆっくりと体重をかけてきた。

「陛下、お目を閉じてくださいませ。」

声は命令でありながら、甘く囁くよう。凌淵は素直に目を閉じた。直後、柔らかな絹が彼の目を覆う。視界が暗くなり、他の感覚が一層鋭くなる。

「何を…」

「黙っていて。」

緋煙の声は冷たく、それでいて熱を帯びている。凌淵は唇を噛み、身を委ねた。

最初に感じたのは、かすかな風。何かの羽根が、彼の頬を撫でていく。頬から顎、顎から首筋へと、ゆっくりと時間をかけて這う感触。凌淵の肌が粟立ち、思わず息を呑む。

「陛下の肌は、本当にきめ細やかですね。」

緋煙の声が耳元で響く。羽根はさらに下へ、鎖骨、胸の中心を辿り、彼の胸筋の上で小さな円を描く。凌淵は身を捩り、その刺激から逃れようとしたが、緋煙の体重が彼を押さえつけている。

「逃げてはいけません。」

言葉と同時に、羽根が彼の乳首を掠めた。凌淵の全身が跳ねる。敏感な部分に触れられた快感が、一瞬にして彼の理性を揺さぶる。

「ひ…」

「おや、感じていらっしゃいますね。」

緋煙の声に含み笑いが混じる。羽根は左右の乳首を交互に撫で、時には強く押し当て、時にはかすかに触れるだけ。凌淵は快感に息を詰まらせ、拳を固く握りしめた。

「陛下、どうしてそんなに力を入れていらっしゃるのです? もっとお楽に。」

彼女の手が、彼の拳に触れる。指を一本一本、丁寧に解きほぐし、掌を開かせる。その間も羽根は休むことなく、彼の肌の上を舞い続ける。

「あ…っ」

凌淵が声を漏らす。快感が彼の体を支配し始め、抵抗は無意味だと知らせている。緋煙は満足げに笑い、羽根をさらに下へと降ろしていく。

腹筋の上を撫で、臍の周りをぐるりと一周。凌淵は必死に腰を浮かせようとするが、緋煙がそれを許さない。彼女は彼の両手首を掴み、頭上に押さえつける。

「どうされました? 何かおっしゃりたいことが?」

「違う…違うんだ…」

「違う? では、何をお望みなのです?」

緋煙の声が、優しくも執拗に凌淵を追い詰める。彼女の指が、凌淵の唇を撫でる。凌淵はその指を噛もうとしたが、彼女は軽やかに避け、代わりに唇に触れるだけのキスを落とした。

「教えてくださいませ。どうすれば、陛下はお喜びいただけますか?」

凌淵は歯を食いしばり、答えを拒もうとした。しかし、緋煙は構わず羽根を彼の太腿の内側へと移動させる。そこは最も敏感な場所の一つで、僅かな刺激にも反応する。

「あ、ああ…!」

「ここですか? それとも、もっと上?」

羽根が、彼の腿の付け根をなぞる。凌淵は全身を震わせ、首を振った。

「違う…違う…」

「では、ここ?」

突然、羽根が彼のモノの先端を掠めた。凌淵は悲鳴のような声を上げ、四肢をばたつかせる。緋煙は笑いを抑え、さらに刺激を強めていく。

「陛下は、本当に正直でいらっしゃいますね。もうこんなに…」

「言わないでくれ…!」

「ですが、私は陛下の本当のお気持ちを知りたいのです。どう扱われたいのか、ちゃんとお聞かせください。」

緋煙の声は甘く、しかし有無を言わせない。凌淵は快感に頭がくらくらし、答えを拒むことができなくなっていく。

「…縛って…くれ…」

「もう一度、おっしゃってください。」

「縛って…私を縛ってくれ…!」

凌淵の声は切実で、かすかに震えていた。緋煙は満足げに微笑み、ゆっくりと体を起こす。

「よくおっしゃいました。」

彼女は手近の棚から、細く柔らかな絹の紐を取り出す。凌淵は目隠しをされたまま、その感触を待つ。緊張と期待が彼の体を強張らせる。

緋煙は手際よく、凌淵の両手首を寝台の柱に結びつけた。続いて足首も、広げた状態で固定する。彼は完全に無防備な姿勢で拘束された。

「さあ、今こそお仕置きの時間です。」

彼女は寝台から降り、ゆっくりと体を動かす。黒いストッキングに包まれた彼女の足が、凌淵の視界の端に見える。

「ご覧くださいませ。」

彼女は彼の足の間、まさに最も敏感な場所の真上に、自分の足をかざした。ストッキングの網目が透けて、彼の肌がかすかに見える。

「…何を…」

「特別なご褒美を差し上げます。」

彼女の足が、ゆっくりと降りてくる。ストッキング越しの彼女の足裏が、凌淵のモノの先端に触れた。

「あっ!」

凌淵は全身をのけぞらせた。想像を絶する快感が、一瞬にして彼を貫く。緋煙は足を動かし、優しく、そして確実に彼の欲望を足の指で弄ぶ。

「陛下のモノが、こんなに熱くなって…」

彼女の声は嘲るように甘い。足の動きは徐々に速くなり、凌淵は為す術もなく快感に流される。

「ああ…もっと…」

「もっと? 何を?」

「あ…あ…もっと強く…」

「強く? よろしい。」

緋煙は足に力を込め、彼の欲望を握りしめるように足の指を動かす。凌淵は声にならない悲鳴を上げ、体を激しく震わせる。快感が彼の理性を飲み込み、あと一歩で絶頂に達しようとしている。

その瞬間、緋煙の足が止まった。

「…え?」

「まだですよ。」

彼女は足を離し、彼の目尻にそっと触れる。凌淵は絶望の色を浮かべ、荒い息を吐き続ける。

「なぜ…なぜ止める…」

「まだ陛下の本当の姿を見せていただいていません。」

緋煙は彼の耳元に顔を寄せ、囁くように言う。

「どうか、もっと素直におなりくださいませ。」

彼女は再び足を使い始める。今度はさらに優しく、もどかしいほどの触れ方で。凌淵は快感に耐えかね、涙を流しながら許しを乞うた。

「もう…許してくれ…」

「まだでございます。」

緋煙の足は止まらず、彼の全身を満足させることなく焦らし続ける。凌淵は快感のサイクルに陥り、もがけばもがくほど深みに嵌まっていく。

「ああ…ああ…もう、だめだ…」

「陛下は強い。もっと耐えられます。」

彼女の声は優しく、しかし容赦がない。凌淵は何度も絶頂の手前まで連れて行かれ、その度に引き戻される。彼の意識は朦朧とし、時間感覚も失われていく。

その時、香炉から立ち上る煙が、急に濃くなった。甘い香りが凌淵の鼻腔を満たし、視界に幻影が浮かび始める。

彼の周りに、無数の美女たちが現れる。緋煙だけではなく、霜華、青黛、紫棠、そして柳如煙まで。彼女たちは皆、異なる衣装を身にまとい、異なる表情で彼を見下ろしている。

「陛下、お楽しみください。」

「おとなしくしていて。」

「私たちのものになりなさい。」

声が四方から聞こえてくる。凌淵は幻覚の中で、彼女たちに調教され、弄ばれ、完全に支配される。彼は抵抗する気力も失い、ただされるがままに身を任せた。

気がつくと、現実に引き戻されていた。凌淵は自分の体が冷たい汗で濡れていることに気づく。目隠しは外され、視界が開けた。

彼は香閣の中央に立つ、細く白い柱に縛られていた。周りには十数人の女官たちが立ち並び、彼を好奇の目で見つめている。

「どうやら、お目覚めのようですね。」

緋煙は彼の前に立ち、優雅に笑った。凌淵は羞恥と絶望で頬を染め、顔をそらそうとする。しかし、体は拘束されて動かない。

「陛下、あなたはもう私たちのものです。おわかりでございましょう?」

凌淵は答えられない。頭の中は混乱し、快感と羞恥が入り混じっている。女官たちの視線が彼に突き刺さる。

「お縄を解いてあげましょう。」

緋煙が手を鳴らすと、女官の一人が駆け寄り、凌淵の拘束を解いた。自由になった四肢は、しかし震えが止まらない。凌淵はその場に崩れ落ちそうになる。

だが、彼はそうしなかった。

代わりに、彼はゆっくりと膝をついた。緋煙の前に跪き、伏せた頭が床に触れる。

「…妃様…」

「はい?」

「あなた様の…足に…」

凌淵は震える手を伸ばし、緋煙の靴先に触れた。彼女の足は細く、甲の曲線が美しい。凌淵はその靴先に、そっと口づけを落とした。

「許していただき、ありがとうございます…」

緋煙は満足げに微笑み、彼の頭を撫でる。

「よろしい。これこそ、私が望んだ姿です。」

香閣の中では、再び薫香が立ち込め始める。凌淵はその香りに包まれながら、自分の堕落が完璧であることを悟った。彼はもう、元の皇帝には戻れない。この香閣の中で、この妃たちの手中で、初めて自分の居場所を見つけたのだ。

緋煙は彼の頬を両手で包み、優しく顔を上げさせる。凌淵の目には涙が浮かんでいるが、その瞳の奥には一筋の安堵の光が宿っていた。

青黛の幻境、心理的服従

青黛の密室は、常に薄暗い紫檀の香が漂っている。今夜はさらに異様な気配が満ちていた。凌淵は彼女に連れられて部屋の中央に立ち、周囲の紗幕が風もないのに揺れ動くのを感じた。青黛は彼の背後に立ち、冷たい指先で彼の後頸を撫でながら、低く呪文のような声を発した。

「陛下、あなたは疲れていらっしゃる。少しお休みになりたいでしょう?」

その声は陶酔させるように耳に沁み込む。凌淵は頭が重くなり、目の前の景色が歪み始めるのを感じた。紗幕がぐるぐると回り、床が柔らかくなり、まるで泥沼に足を取られたようだ。意識を保とうと必死に抗ったが、青黛の手が彼の肩を優しく押すと、彼の体は制御不能に前に倒れた。

落下する感覚は一瞬で、次に彼が目を開けた時には、荒涼とした戦場に立っていた。空は血のように赤く染まり、地面には折れた刃と旗が散乱し、遠くからは馬の嘶きと金属がぶつかる音が聞こえる。凌淵は自分の姿を見下ろした—鎧はぼろぼろで、至る所に傷があり、手に持った剣は半分に折れていた。

「ここは…どこだ?」

彼の声は掠れていた。答えは風の中の砂塵と共に舞い込んだひときわ冷たい笑い声だった。振り返ると、青黛が高い丘の上に立っていた。彼女は現実の部屋で着ていた月白の長衣を脱ぎ、青い紗の衣を纏い、白い長いストッキングがかすかに輝き、素足で地面を踏んでいた。彼女の瞳は遠くの山の雪のように冷たく澄んでいた。

「凌淵将軍、あなたの軍勢はすでに壊滅し、君は捕虜となった。」

青黛の声は戦場に反響し、まるで天から降り注ぐ宣告のようだ。凌淵は周りを見回すと、確かに自分は大軍に囲まれていた。旗には馴染みのない紋章が描かれ、兵士たちの顔はぼんやりとしていて、まるで幽霊のようだ。彼は剣を握りしめて戦おうとしたが、腕が重くて上がらない。傷口から血が滴り落ち、地面に暗赤色の跡を残した。

「降伏しろ。」

青黛が命令した。彼女は丘からゆっくりと歩いてきて、素足が砂利の上に立っているのに傷一つない。凌淵の前に立つと、彼女はそっと足を伸ばし、爪先で彼の胸の鎧を押した。その力はわずかだったが、凌淵は後ろに倒れ込み、背中を地面に打ちつけた。周囲の兵士たちが哄笑し、嘲りと軽蔑の声が四方から押し寄せる。

「跪け!」

複数の兵士が駆け寄り、彼の腕を捻り上げて無理やり跪かせた。凌淵は歯を食いしばって抵抗したが、体中の傷が悲鳴を上げ、膝がかろうじて地面に着いた。青黛はゆっくりと彼の背後に回り、素足を彼の背中にのせた。そのかかとが肩甲骨の間を押し、冷たく滑らかな感触が鎧越しに伝わる。

「負け犬は敗者の態度を取るべきだ。」

青黛の声は低く、耳元に心地よくなじむ。凌淵は彼女の足の重みを感じ、その圧力は体だけでなく、心の奥底まで重くのしかかる。彼は必死に顔を上げた。

「私は…皇帝だ…」

「ここは戦場だ、陛下。あなたの宮殿ではない。」

青黛は優しく笑った。その足はさらに力を増し、凌淵の上半身を地面に押しつけた。彼の頬が荒れた地面に擦れ、ざらついた感触と血の味が同時に広がる。兵士たちの嘲笑が耳の周りでこだまし、彼の威厳はこの瞬間、砂のように崩れ去った。

「許しを乞え。」

青黛が命じた。凌淵はだまった。すると彼女は足を上げ、今度は彼の後頭部を踏みつけ、無理やり地面に押しつけた。鼻の先が石にぶつかり、痛みで凌淵の視界がぼやける。

「許しを乞え。さもなければ、お前の兵は全滅だ。」

凌淵は震えた。幻境の中で、彼は確かに自分が敗将であることを信じ始めていた。記憶がぼんやりと歪み、まるで自分が元々この戦場に属し、この屈辱がずっと自分に課せられた定めだったかのようだ。彼は口を開き、声は掠れていた。

「許し…乞う…」

「うん?声が小さすぎる。」

「許しを乞います!」

凌淵は声を張り上げ、その声には嗚咽が混じっていた。青黛はようやく足を緩め、しゃがみ込んで彼の顎を掴み、無理やり自分の方に向かせた。

「良い子だ。だが、これだけでは足りない。」

彼女は指を振ると、周囲の風景が一瞬で変わった。戦場は消え去り、代わりに薄暗い帳の中に変わった。天井からいくつもの鎖が垂れ下がり、地面には苔の染みが浮かんでいる。凌淵は気づくと、自分は逆さまに鎖で吊るされ、両腕は頭上で縛られ、全身の重みが肩の関節にかかっていた。

「これは何だ…放せ…」

彼がもがくと、鎖が金属音を立てて軋む。青黛は優雅に歩み寄り、手に一本の細長い籐の鞭を持っていた。鞭の先は地面を引きずり、しなる音を立てる。彼女は凌淵の背後に立ち、鞭の先で彼の尻の割れ目をそっとなでた。

「陛下は良い体をしていらっしゃるが、もう少ししつけが必要だ。」

パシッ。

一撃が空気を裂いた。凌淵は全身を硬直させ、痛みが臀部から這い上がり、腰から脊髄を駆け抜けて脳天に達する。彼は思わず悲鳴を上げ、体をくねらせて鎖が激しく揺れた。

「数えよ。」

青黛の声は冷たく、新たな鞭が待ち構えている。凌淵は唇を噛みしめたが、次の一撃が来ると自然と口が開いた。

「一…」

「続けろ。」

「二…」

鞭の一打ち一打ちが正確に同じ場所に落ち、痛みは重なり合い、焼けるように熱く、やがて麻痺に変わる。凌淵の声は次第に掠れ、数える声は嗚咽に変わった。十を数え終えた時には、全身に汗が吹き出し、涙と汗が地面に滴り落ちていた。

青黛は鞭を置き、再び彼の前に立った。彼女は屈み込み、指で凌淵の濡れた頬をそっと撫でた。

「どう思う?自分は何者だと思う?」

凌淵の脳裏はぼんやりとしている。痛みと屈辱が彼の思考を侵食し、青黛の質問は彼の心の奥底に直接突き刺さる。彼の口が震え、声が出ない。青黛は優しく彼の髪を撫でた。

「考えろ。ゆっくりでいい。」

「私は…」

凌淵は息を呑んだ。記憶の中で、玉座や帝冠の映像がぼやけ、代わりに鎖と鞭、そして彼の前に立つこの冷たい女がはっきりと浮かび上がる。彼は自然に口を開いていた。

「私は卑しい奴隷です。」

「誰の奴隷だ?」

「あなたの…青黛様の奴隷です。」

青黛は微笑んだ。その笑みは氷山の裂け目のように冷たく美しい。彼女は凌淵を吊るしていた鎖を解除すると、彼の体はどさりと地面に落ちた。凌淵は這って彼女の足元に寄り、額を地面に擦りつけた。

「青黛様、許しを…お願いします…」

「お前はもう許されている。」

青黛はしゃがみ込み、手に一つの薬壺を取り、蓋を開けると草の香りが漂う。彼女は指で薬膏をすくい、凌淵の背中の傷口に塗りつけた。最初はひんやりと気持ちよかったが、すぐに薬膏が染み込み、焼けるような痛みが走る。凌淵は痛さに息を呑み、無意識に体を縮めた。

「動くな。」

青黛の指が傷口の縁を優しく撫でながら、時折力を込めて押す。痺れるような痛みと清涼感が交互に襲い、凌淵はもはや自分が幻境の中にいるのか現実にいるのかわからなくなる。もしかすると、この痛みと快感だけが本物で、他のすべては偽りなのかもしれない。

「お前は今、どう感じている?」

青黛が尋ねた。凌淵はうつ伏せになって地面に横たわり、彼女の指の動きを感じながら声が出せずにいた。青黛は待たず、自ら答えを出した。

「支配されるのは快感だろう?考える必要がなく、決断する必要もなく、誰かに導かれ、管理され、罰せられる。これがお前の望む場所だ。」

凌淵の涙が地面を濡らした。彼は言葉は出せなかったが、心の中で青黛の言葉が真実だと認めていた。玉座の上での孤独と緊張は、この地面に伏せて跪く瞬間の安らぎに勝るものではない。彼は初めて、自分が手放すことを覚えた人間だと感じた。

「さあ、叩頭しろ。お前の主に感謝の意を示せ。」

凌淵は両手と両膝を地面につき、青黛に向かって三度、深く頭を下げた。額が石の上で鈍い音を立てる。彼は三度目に頭を上げた時、涙と血が入り混じって顔を覆っていたが、目には異様な光が宿っていた。

「青黛様、ありがとうございます…ありがとうございます…」

「良い子だ。」

青黛は彼の後ろ首の襟元を掴み、優しく立たせてやる。そして彼の耳元でささやいた。

「今からお前を現実に連れ戻す。覚えておけ、お前はこれからもここで調教を続けるのだ。私はいつでもお前の主人だ。」

彼女が指を鳴らすと、周囲の帳が一瞬にして色あせ、天井の鎖も消え失せた。凌淵は自分が青黛の密室の中央にひざまずいていることに気づいた。窓の外からは微かな夜明けの光が差し込み、一晩中経ったことを示している。

しかし彼には三日間のように長く感じられた。

青黛は彼の前に立ち、手を差し伸べた。彼女の指は冷たく、凌淵の頬をそっと撫でた。

「陛下、目を覚まされましたか?」

その声は現実の口調で、敬語を使い、穏やかで礼儀正しい。しかし凌淵の耳には、その声がまるで戦場の上の宣告のように重く響いた。彼はぼんやりと顔を上げ、青黛の瞳を見つめた。その瞳は深い井戸のように奥深く、覗き込む者を底なしに吸い込む。

「私は…」

「陛下は少しお休みになりました。悪夢をご覧になったのでしょう。」

青黛は彼の腕を支えて立ち上がらせ、そっと寝台に座らせた。彼女は自分の袖で凌淵の額の汗を拭い、動作は優しく、まるで幼い子供を世話するようだ。凌淵は彼女の手にすがり、指をぎゅっと握りしめた。

「青黛…私から離れないでくれ。」

「陛下がお望みなら、私はいつでもおそばにおります。」

青黛は微笑み、その笑みは春の日差しのように温かい。しかし凌淵には、その笑みの奥に隠された冷たい刃が見えた。彼はそれが危険だと分かっていても、その手を離すことはできなかった。まるで溺れる者が藁にもすがるように。

青黛は立ち上がり、香炉に新しい香を加えた。紫檀の香りが再び部屋中に広がり、凌淵の意識は強制的に鎮められた。彼のまぶたが重くなり、青黛の声が遠くから聞こえてくる。

「おやすみなさい、陛下。目覚めた時には、すべてがもっと良くなっているでしょう。」

凌淵はうなずき、ゆっくりと目を閉じた。眠りに落ちる前の最後の瞬間、彼は自分が青黛の操り人形になったことを漠然と感じた。それでも彼は抵抗しなかった。なぜなら、人形になることこそが、彼が最も深く望む安らぎだったからだ。

青黛は寝台のそばに立ち、凌淵の寝顔を見下ろした。彼女の表情には微かな満足感が浮かんでいた。第一段階は成功。さて、他の姉妹たちがどんな手を使ってくるのか、楽しみなものだ。

紫棠の刑室、肉体調教

# 第六章 紫棠の刑室、肉体調教

刑室の空気は重く、血と皮革の匂いが混じり合っている。石壁に取り付けられた松明の炎が揺らめき、影を歪ませた。

凌淵は中央の鉄柱に両手を頭上で縛られていた。冷たい鉄鎖が手首に食い込み、腕はすでに痺れ始めている。即位して間もない皇帝の衣はすでに剥ぎ取られ、上半身は裸で、下半身も薄い絹の一枚だけが残されている。

「陛下、いかがですか?初めての刑室は」

紫棠の声が暗がりから響く。彼女は紫色のレザージャケットに身を包み、黒いロングブーツが石畳を踏む音が一歩ごとに近づく。その手には長鞭――細身だが、先端に行くほど鋭くなる。革の表面には細かな鱗のような加工が施され、一振りごとに空気を裂く音が鋭い。

「朕は…朕は皇帝だぞ…」

凌淵は声を絞り出す。震えを必死に抑えているが、喉の奥でひきつるような音が漏れた。

「ええ、知っています。天闕皇朝の至尊、万民の上に立つお方」

紫棠の唇が歪む。彼女は鞭の柄を弄びながら、ゆっくりと凌淵の背後に回った。

「でも、ここでは違います。ここではあなたはただの…調教されるべき存在」

言葉と同時に鞭が唸る。

パシッ。

鋭い音が石壁に跳ね返る。凌淵の背中に赤い線が一筋走り、一瞬の空白の後、焼けるような痛みが走った。

「ああっ!」

凌淵の体が跳ねる。鎖がガチャガチャと音を立てる。

「まだ一本目ですよ」

紫棠の声には嘲笑が混じる。彼女はゆっくりと歩き回りながら、次の狙いを定める。

「何せ、あなたは弱い立場の皇帝。四人もの妃に調教される…笑えますよね」

パシッ。

二撃目が腰の辺りを襲う。痛みの波が全身を駆け巡り、凌淵の膝ががくがくと震えた。

「戸部尚書の柳大人が知ったら、どう思うでしょうね?」

三撃目。今度は肩甲骨の間に当たる。

「や、やめろ…!」

凌淵の声が掠れる。汗が額から滴り落ち、石畳に小さな染みを作る。

紫棠は鞭を巻き取り、凌淵の正面に立った。ブーツの先で彼のあごをそっと上げる。

「陛下、あなたの目に、まだ少し誇りが残っていますね」

彼女は至近距離で囁く。その息が凌淵の頬にかかる。

「それは困ります。だって…」

ブーツが急に動く。

「あああっ!」

凌淵の腰が跳ね上がる。紫棠のブーツの先が、彼の股間を正確に蹴り上げたのだ。絹の布越しに鈍い痛みが広がり、凌淵はがくがくと震える。鎖が大きな音を立てて揺れた。

「どうですか?立派な皇帝様が、こんなにも簡単に屈服するのですね」

紫棠は冷たく笑う。彼女の目には嗜虐的な光が宿っている。

「許、許してくれ…頼む…」

凌淵の声はかすれていた。涙が目尻に滲み始める。

「許せ、と?もっと良い言葉があるはずです」

紫棠は鞭の柄を凌淵の頬に当て、優しく撫でるように動かす。

「自分が何者かを…おっしゃってください」

凌淵の唇が震える。葛藤が全身に現れている。だが、股間の痛みがそれを上回る。

「…わ、私は…」

「続けて」

「私は…皇帝でありながら…卑しい奴隷です…」

その言葉が口を突いて出た瞬間、凌淵の中で何かが崩れる音がした。だがそれと同時に、奇妙な解放感も湧き上がる。

紫棠は満足げに頷き、鞭を置いた。そして別の道具が吊るされた棚へと歩く。

「よろしい。それなら、次の段階に進みましょう」

彼女が手に取ったのは、先端が赤く焼けた鉄鎖だった。炎の中から引き出されたそれは、空気を歪ませるほどの熱気を放っている。

「や、やめろ!近づけるな!」

凌淵の目が恐怖に見開かれる。体を捻ってもがくが、鎖に阻まれて自由にならない。

「大丈夫ですよ、陛下。ただ…触れるだけですから」

紫棠の声は優しい。だがその手つきは確実で、冷徹だ。

鉄鎖が凌淵の背後に回る。そして――彼の尻の割れ目に、軽く押し当てられた。

「あああああっ!」

悲鳴が刑室に響く。肉の焼ける音と、焦げた匂いが一瞬で広がる。

凌淵の全身が激しく痙攣する。あまりの痛みに意識が飛びそうになる。だが紫棠はそれを逃さず、もう一度同じ場所に――今度は少し強く――鉄鎖を押し当てた。

「こんなに熱く焼かれる感覚、陛下は初めてでしょう?」

紫棠の声に優しさと残酷さが混じる。彼女は鉄鎖を離すと、凌淵の耳元で囁いた。

「でも、これで終わりではありませんよ」

彼女は天井から垂らされた滑車装置のロープに手をかけた。そして、凌淵の足首に別の鎖を装着する。

「何を…?」

凌淵の問いに答える代わりに、紫棠はロープを一気に引いた。

「うわあああ!」

世界が逆転した。凌淵は頭を下にした逆さ吊りの状態になり、血が頭に集まって顔が真っ赤に染まる。手首と足首の鎖が軋み、全身の重みが関節にかかる。

「良い眺めですね。天闕の皇帝が、まるで屠られる獣のように逆さに吊られている」

紫棠の声が頭上から降ってくる。彼女は新たな道具――幅広の皮の拍子を手にしていた。

「さて、お仕置きの時間です」

パシィン!

拍子が凌淵の尻を打つ。赤い痕が浮かび上がる。普通の鞭とは違い、幅が広いため、一撃一撃が重く響く。

「あぐっ!」

凌淵の声が震える。涙が逆流して鼻に落ちる。

パシィン! パシィン!

拍子が連続で振り下ろされる。凌淵の尻はみるみるうちに赤く腫れ上がり、皮が切れて血が滲み始める。

「数えてください。今の一撃で何回目です?」

「わ、わからない…」

「わからない?仕方のない皇帝様ですね」

紫棠の手が止まらない。打つたびに凌淵の体が激しく揺れ、鎖ががちゃがちゃと音を立てる。

「一から数え直しましょう」

パシィン!

「一…」

凌淵の声が嗚咽に変わる。涙と鼻水が混じり、醜い声が漏れる。

パシィン!

「二…」

「もっと大きく」

「二!」

パシィン!

「三…ぐすっ…三…」

凌淵の声は泣き声に変わり、言葉にならない音が混じる。天闕皇朝の至尊は、今や完全に打ちのめされた姿で逆さに吊られ、子供のように泣きじゃくっていた。

「はい、百五回目」

紫棠は拍子を置き、凌淵の顔の前にしゃがみ込んだ。逆さの視界に、彼女の美貌が映る。

「陛下、あなたは素晴らしいです。こんなに痛めつけられても、まだ抵抗の意志を見せていました」

彼女の指が凌淵の涙を拭う。

「でも、今は違いますね。あなたは完全に…私たちのものです」

凌淵は答えられない。口を開けば、嗚咽しか出てこないのだ。

紫棠は立ち上がり、別の準備を始める。彼女は小さな壺を取り出し、中からべたつく軟膏を取り出した。

「最後の仕上げです」

軟膏が凌淵のまだ痛む尻に塗られる。ひんやりとした感触が、火照った肌に染みる。

「これは何…?」

凌淵の声は掠れている。

「痛みを和らげ、感度を高めるものです」

紫棠の指が凌淵の後孔に触れる。軟膏が塗り込まれ、内部までゆっくりと染み込んでいく。

「あなたを、快楽の頂点に達せさせます」

指が中で曲げられ、凌淵の内壁を刺激する。凌淵の体が跳ねる。痛みと快楽の境界があいまいになり、頭が真っ白になる。

「あ、ああ…何か…変だ…」

「変ではありません。これこそが、あなたの求めるものだからです」

紫棠の指の動きが速くなる。凌淵の腰が無意識に動き、彼女の指を求める。

「陛下、あなたの卑しい部分が、こんなにも私を欲しがっていますよ」

彼女の声が笑う。凌淵の反応は、全て彼女の掌の上だった。

「許してくれ…もう…無理だ…」

「許す?あなたはまだ、この快楽の味を知ったばかりです」

紫棠の指が前立腺を圧迫する。凌淵の全身が弓なりに反り返り、声にならない叫びが漏れる。

「あああああっ!」

痙攣が全身を駆け巡る。凌淵の意識が一瞬途切れる。強制的な絶頂が、彼の全てをかき乱した。

凌淵が気づいた時、彼はすでに下ろされていた。石畳の上に横たわり、全身が傷だらけで動けない。

「お疲れ様でした、陛下」

紫棠の声が近づく。彼女は優しく、凌淵の髪を撫でる。

凌淵はゆっくりと顔を上げた。目にはまだ涙の跡が残る。だが、その瞳の奥には、何かが変わっていた。

恐怖と…敬意と。そして、言葉にできない信頼が混じり合っている。

「次は…いつだ?」

凌淵の声はかすれているが、確かに聞こえた。

紫棠は驚き、すぐに笑みを浮かべた。

「陛下、あなたはもう、私たちの虜になりましたね」

彼女は凌淵の頬にキスを落とす。

「すぐに、また来ます。あなたが私たちを必要とする限り、永遠に」

凌淵は答えない。ただ、目を閉じた。その唇の端には、わずかに笑みが浮かんでいるように見えた。

紫棠はゆっくりと立ち上がり、部屋を出て行く。最後に振り返り、凌淵の姿を見つめる。

傷だらけの皇帝は、それでも威厳の欠片を残していた。

だが明日には、その威厳も、また少し削られることになるだろう。

紫棠の口元に、深い笑みが刻まれた。

柳如烟初登場、偶然の乱入

柳如烟は、父の突然の失踪を探るため、闇夜に紛れて後宮の奥深くへと足を踏み入れた。侍女に化け、低い姿勢で廊下を進む。父は朝廷の重臣であり、何かの陰謀に巻き込まれたに違いない。その足取りは軽やかでありながら、心臓は激しく鼓動していた。

ふと、遠くから微かな喘ぎ声と、絹の擦れる音が聞こえてくる。柳如烟は息を殺し、声のする方へと近づいた。扉の隙間から、薄明かりに照らされた一室が覗ける。

そこには、天闕皇朝の皇帝・凌淵が、四人の妃たちに囲まれていた。彼は玉座ではなく、低い褥の上にうつ伏せに倒れ、衣服は乱れ、肌は露わになっている。霜華が冷たい指先で彼の背を撫でながら、低く囁く。

「陛下、もう少し力を抜かれませ。お体が強張っておりますよ」

緋煙は足元から絡みつくように寄り添い、足の甲で彼の脇腹を撫でる。青黛は優しい微笑みを浮かべながら、香炉から立ち上る煙を彼の顔の前で揺らす。紫棠は手に鞭を持ち、壁際で待機している。

柳如烟の手が震えた。これは…調教だ。皇帝が、妃たちに支配されている。驚愕と同時に、胸の奥で何かが疼く。彼女は見てはいけないものを見てしまった。そう思った瞬間、足元の床が微かに軋んだ。

「誰だ」

霜華の鋭い声が空間を切り裂く。柳如烟は凍りついた。次の瞬間、緋煙が優雅に立ち上がり、扉を開け放つ。

「あらまあ、可愛いお客様」

柳如烟は引きずられるように部屋の中へと連れ込まれた。凌淵が顔を上げ、彼女と目が合う。その瞳には羞恥と怒り、そしてかすかな困惑が混ざっていた。

「柳如烟…何故ここに」

「父が…父の行方を…」

言葉を継ぐ間もなく、紫棠が背後から彼女の両腕を掴む。

「どうやら、ご覧になったようね。ならば、お前も参加するがいい」

柳如烟は抵抗しようとしたが、青黛が耳元で優しく囁く。

「怖がらなくていいのよ。初めては誰でもそうだから」

そうして彼女は褥の上に座らされ、目の前で霜華が再び凌淵の調教を始めた。霜華は凌淵の顎を掴み、無理やり上を向かせる。

「お前に新たな見物人がいる。恥ずかしいか? だが、これからはお前の全てを見せるのだ」

凌淵の唇が震えた。柳如烟はその光景を目の当たりにし、心臓が早鐘を打つ。同時に、腹の底から甘い痺れが湧き上がるのを感じた。自分は何に興奮しているのか、理解できなかった。

紫棠が背後から柳如烟の目を絹の布で覆った。

「さあ、お前も参加しろ。感触だけで感じ取れ」

視界を奪われた柳如烟は、手探りで何かを触ろうとする。すると、誰かの手が彼女の足を導き、何か柔らかく温かいものの上に置かれた。人間の肉体だ。凌淵の背中だと気づいた時、柳如烟の足の裏が彼の肌の熱を感じ取った。

「こ、これは…」

「そのまま、踏みつけてやれ」

紫棠の声が耳元で響く。柳如烟は恐る恐る足に力を込めた。凌淵の身体が微かに震え、低い呻き声が漏れる。その声が、彼女の脳髄を直接刺激するようだった。怖い、けれど、止められない。彼女はもう一度、力を込めて踏みつけた。

すると、足が滑り、勢い余って凌淵の股間めがけて蹴り込んでしまった。

「ぐあっ!」

凌淵が悲鳴を上げ、身体を丸める。柳如烟は慌てて布を引きはがした。彼が苦痛に歪む表情を見て、最初に恐怖が走った。だが、すぐにその恐怖は甘美な快感へと変わる。自分が、この皇帝を傷つけた。その事実が、彼女の内なる何かを目覚めさせた。

妃たちは微笑みながら見守っている。霜華が口を開いた。

「どうやら、新たな仲間が増えそうだ」

その夜から、柳如烟は自ら調教技術を学び始めた。書物を読み漁り、妃たちに教えを乞う。表面は相変わらず無邪気で愛らしい娘を装いながら、その瞳の奥には危険な光が宿り始めていた。

数日後、再び調教の場に呼ばれた柳如烟は、今度は自らの手で凌淵の前髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「陛下、どうしてこんなに怯えたお顔をなさるの? 私、ただお仕えしたいだけですのに」

その声は甘く、しかし一言一言が刃のように凌淵の心を切り裂く。凌淵の自尊心は音を立てて崩れていった。彼は震える手で柳如烟の服の裾を掴む。

「もう…許してくれ…」

「まだ始まったばかりですよ」

柳如烟は優しく微笑みながら、彼の頬を指先で撫でた。

調教が終わり、妃たちが去った後、柳如烟はひとり褥に残された凌淵の側に座った。彼は全身の力を失い、荒い息を繰り返している。柳如烟はそっと彼の髪に手を伸ばし、優しく梳いた。

「陛下、お疲れでしょう。でも、これからもっと沢山、私がお仕えいたしますからね」

凌淵はその言葉に、涙を浮かべながら、彼女の手を取り、震える唇でその甲に口づけた。それは服従の証であり、同時に、彼が新たな支配者を受け入れた瞬間だった。

柳如烟の瞳が、暗く甘美な光を帯びて細められた。無邪気な娘は、もうそこにはいなかった。そこにいたのは、五人目の妃であり、新たな調教者である。彼女は静かに、次の調教の計画を胸に秘めながら、闇の中へと消えていった。

変装して宮外へ、公開辱め

# 第八章 変装して宮外へ、公開辱め

その朝、霜華は凌淵の前に一枚の粗末な布衣を差し出した。それは宮中にあるどの衣よりも質素で、所々に継ぎ当てが施されていた。

「陛下、本日は市井の者に扮していただきます」

凌淵はその衣を見つめ、一瞬ためらったが、すぐに頭を垂れた。霜華の冷たい視線が彼の決断を急かしたのだ。

「はい、お嬢様」

彼は既に役割を理解していた。宮中では皇帝として振る舞うが、妃たちの前ではただの調教される存在。その切り替えが、彼の中で次第に自然になりつつあった。

緋煙が滑らかな足取りで近づき、凌淵の顔に何やら粉末を塗り始めた。それは肌をくすませ、顔立ちを平凡にする薬だった。

「これで誰も陛下とは気づきますまい。市井の醜男に変わり果てたお姿、実に滑稽でございます」

緋煙の指が凌淵の頬を撫で、その感触に彼は微かに震えた。彼女の妖艶な笑みが、彼の心に不安と期待を同時に植え付ける。

「さあ、参りましょう」

青黛が優しく、しかし有無を言わせぬ口調で促した。四人の妃に囲まれ、凌淵は初めて宮門をくぐった。俗世の空気は彼にとって異様に新鮮で、宮中とは比べ物にならないほど生々しかった。

## 茶館の辱め

最初に足を運んだのは、都で一番賑わう茶館だった。二階の個室に通された凌淵は、窓から見下ろす街の喧騒に戸惑いを隠せない。霜華が彼の前に立ち、扇子を軽く広げた。

「跪け」

その一言は静かだったが、絶対的な命令として凌淵の耳に響いた。彼は周りの客の目を気にしながら、ゆっくりと床に膝をついた。平民の衣を纏った自分が、公然と跪く姿――その屈辱が凌淵の胸を焼いた。

「ほら、これを見よ」

霜華は扇子の先で窓の外を指した。そこでは荷車を引く年配の男が、店主に頭を下げていた。

「あの者のように、お前もただの下賤な民だ。皇帝の威光など、ここでは何の意味も持たぬ」

凌淵は唇を噛みしめた。彼の心の中で、皇帝としての誇りと、霜華に従いたい衝動が激しく戦っていた。

「もっと深く、頭を下げよ」

霜華の扇子が凌淵の後頭部を押さえつける。彼は抵抗できず、額が冷たい床に触れた。その時、茶館の給仕が通りかかり、一瞬驚いたような目を向けたが、すぐに何事もなかったように去っていった。

「よくできた。しかし、まだ足らぬ」

霜華はゆっくりと凌淵の周りを歩きながら、足元で立ち止まった。彼女の履く繍鞋の先が、凌淵の顎をそっと持ち上げる。

「このまま、私の足を舐めよ」

凌淵の顔が朱に染まった。ここは茶館の個室とはいえ、障子の向こうには他の客の気配が確かに存在する。誰かに見られたら――いや、見られなくとも、この状況自体が彼の尊厳を徹底的に踏みにじっていた。

「できませぬ……」

「何と言った?」

霜華の声が一段と冷たくなる。凌淵は震えながら、ゆっくりと頭を下げた。彼女の繍鞋に舌を触れさせる。革の冷たさと、ほのかに香る彼女の匂いが、彼の感覚を支配した。

「お前は良い犬だ。だが、まだまだ足りぬ」

霜華の足が凌淵の肩を軽く蹴った。彼はよろめき、床に手をついた。その姿勢はまさに四つん這いだった。

## 市場の羞恥

茶館を出た後、一行は市場へと向かった。人々の喧騒が一層激しさを増す中、緋煙が凌淵の腕を絡め取った。彼女の体温が布越しに伝わってくる。

「ここで少々、お楽しみを」

緋煙の手が素早く動き、凌淵の両手に細い絹の紐が巻き付けられた。それは巧みな手つきで、彼の手首を背後で固く縛り上げた。凌淵が慌てて辺りを見回すと、既に数人の通行人が好奇の目を向け始めている。

「何をなさるおつもりか……」

「黙っていなさい」

緋煙は凌淵の口を軽く押さえ、彼を市場の真ん中にある大きな石の台へと導いた。そこは日用品を売る商人が使う台だったが、今は人の目を集める舞台と化していた。

「皆様、こちらをご覧くださいませ」

緋煙の声が澄み渡って響く。瞬く間に十数人の人だかりができた。凌淵は顔を真っ赤にしてうつむいたが、緋煙は彼の顎をつかんで無理やり顔を上げさせた。

「この下男が、私の財布を盗もうとしたのです。ですから、こうして懲らしめているところでございます」

周りの人々が囃し立てる。凌淵は否定しようとしたが、言葉が出てこなかった。緋煙が彼の口に含ませた布が、それを妨げたのだ。

緋煙はゆっくりと自分の裙の裾をまくり上げた。現れたのは絹のように滑らかな白い足。彼女の足が凌淵の胸を軽く押すと、彼は後ろに倒れた。

「さあ、お前の罪を認めるなら、私の足に接吻を」

通行人たちの笑い声が凌淵の耳を刺す。彼は地面に倒れたまま、緋煙の足が自分の顔の上に迫るのを見上げた。その先には、彼女の足の裏が広がっている。

「お前が盗んだのはこれか?それとも……」

緋煙の足が凌淵の唇に触れる。彼は抵抗しようとしたが、縛られた手ではどうすることもできない。仕方なく、彼はその足に軽く口付けた。周りから拍手と笑いが起こる。

「もっとだ。もっと情けなく」

緋煙の足が凌淵の顔を踏みつける。彼の鼻が押しつぶされ、息苦しさの中に彼女の体温と香りが充満した。屈辱のあまり涙がにじむが、同時に身体の奥で熱いものが湧き上がるのを感じていた。

## 旅館の仮面

市場での出来事が一段落した後、青黛が凌淵を連れて小さな旅館に入った。そこは彼女の手配した場所で、すでに数人の女客が待っている。

「今日から三日間、お前はここで小間使いとして働くのだ」

青黛の声は優しかったが、目は全く笑っていなかった。凌淵に与えられたのは、粗末な下働きの衣と、顔を隠すための木製の仮面だった。

「どうして仮面を……」

「お前の醜い顔では、客が逃げてしまうからだ」

青黛はそう言って、凌淵に箒を手渡した。彼は言われるままに、旅館の廊下を掃き始めた。そこへ一人の女客が通りかかり、凌淵の姿を見て立ち止まった。

「おや、新しい下男かい?ずいぶんと不細工だね」

女は二十代半ばで、派手な着物を纏っていた。彼女は凌淵の前に立ちはだかり、顎をしゃくって見せた。

「私の部屋の掃除がまだだ。すぐに来い」

凌淵は青黛の視線を感じ、仕方なく女客の部屋へと向かった。部屋は乱雑で、衣服や布団が散らばっている。

「まずはこの布団を片付けな」

女の命令に従い、凌淵が布団をたたもうとすると、女が後ろから抱きついてきた。彼女の手が凌淵の腰を撫で回す。

「小僧、良い身体をしているじゃないか」

凌淵は慌てて身をよじったが、女はますます強く抱きしめる。その時、部屋の襖が開き、もう一人の女客が入ってきた。彼女は年嵩で、四十を過ぎているように見えた。

「何をしているんだい?私も混ぜておくれ」

二人の女は凌淵を挟み、彼の体を触り始めた。凌淵は抵抗しようとしたが、青黛が障子の陰から見つめているのが分かった。彼女の目は「従え」と言っている。

「この下男、なかなか感じているようだ」

女たちの手が凌淵の衣の中に入り込む。彼は唇を噛みしめ、声を殺した。しかし、身体は正直だった。辱められているのに、心の奥底で何かが目覚めていくのを感じていた。

## 妓楼の狂宴

夕刻近く、一行は都で最も大きな妓楼「紅燈閣」へと向かった。そこは紫棠の支配下にある場所で、女たちの笑い声と三味線の音が絶えない。

紫棠は早くも二階の広間で待っていた。彼女の周りには十数人の妓女たちが集まり、手に手に鞭や縄を持っている。凌淵がその光景を目にした瞬間、全身が緊張した。

「よく来たな、下男」

紫棠が手を打つと、妓女たちが一斉に凌淵を取り囲んだ。彼らは凌淵の衣を剥ぎ取り、下着一枚だけにする。凌淵は必死に腕を組んで隠そうとしたが、すぐに押さえつけられた。

「陛下(冗談めかしてそう呼ぶ)、本日は特別なご馳走を用意いたしました」

紫棠はそう言うと、大きな椅子に腰を下ろした。凌淵は妓女たちに連れられ、部屋の中央に立たされる。彼の周りに円ができ、それぞれの妓女が彼の身体に触れ始めた。

「まずは、予行演習だ」

紫棠が合図を送ると、最初の妓女が凌淵の前に進み出た。彼女は優雅にスカートをまくり上げ、太腿を見せた。そして、その太腿で凌淵の頬を叩いた。

「ほら、しっかり味わえ」

妓女の太腿が凌淵の顔を押し付ける。甘い香りと体温が彼の意識を曖昧にした。次々と妓女たちが近づき、それぞれの方法で凌淵を辱めていく。ある者は胸で彼の頭を抱え、ある者は足で彼の背中を踏みつけた。

「そろそろ本番だ」

紫棠が立ち上がり、凌淵の目の前に立った。彼女の手には一本の細い鞭がある。鞭が空気を裂く音がし、凌淵の背中に一筋の赤い跡が残った。痛みと同時に、彼の身体が熱くなる。

「もっと強く……」

凌淵が無意識に口にした言葉に、自分でも驚いた。紫棠はにっこりと笑い、鞭をさらに振り下ろした。

「お前は本当に良い奴だ」

次に紫棠が命じたのは、凌淵の股間を蹴らせることだった。妓女たちが一列に並び、一人ずつ足を振り上げる。凌淵は目を見開き、恐怖に震えたが、一方で身体は期待に震えていた。

最初の一撃。妓女の足の先が凌淵の股間に当たる。鈍い痛みが走るが、不思議と苦痛だけではなかった。次の一撃、さらに次の一撃。痛みが積み重なるごとに、凌淵の意識は混濁し、やがて快楽へと変わる。

「いっ……!」

凌淵の身体が激しく震え、そのまま床に崩れ落ちた。彼は絶頂に達していた。周りから妓女たちの笑い声が響く。紫棠が彼の顎をつかみ、無理やり顔を上げさせた。

「これがお前の真の姿だ。皇帝である前に、一匹の犬だ」

凌淵は涙とよだれで汚れた顔を晒しながら、うなずいた。彼の心の中では、もはや抵抗の意志は消えかけていた。

## 街頭の這行

妓楼を出た時には、すっかり夜の帳が下りていた。しかし、調教はまだ終わらない。

柳如煙が凌淵の前に立ち、優しい声で言った。

「陛下、もう少しだけお付き合いくださいませ」

彼女の手は凌淵の肩に触れていたが、その指の力は異様に強かった。柳如煙は凌淵を街の大通りに連れ出し、人通りの多い場所で立ち止まった。

「ここに、四つん這いになってください」

柳如煙の声は相変わらず優しかったが、その目は冷たく光っていた。凌淵は周囲を見回した。夜とはいえ、まだ多くの人が行き交っている。居酒屋から出てきた男たち、帰路を急ぐ商人、夜店の客たち。

「できませぬ、ここでは……」

「できぬことはありません。あなたは私たちの犬なのですから」

柳如煙が凌淵の背中を押す。彼はゆっくりと地面に手をつき、四つん這いになった。石畳の冷たさが手のひらに伝わる。通行人の何人かが足を止め、好奇の目を向けた。

「おやおや、何だあれは」

「酔っ払いか?」

人々の囁きが凌淵の耳に刺さる。柳如煙は彼の背中にブーツの先を置いた。

「さあ、歩きなさい。犬のように這って進むのです」

凌淵は歯を食いしばり、這い始めた。肘と膝が石畳に擦れ、痛みが走る。柳如煙はその後をゆっくりと歩き、時折ブーツで彼の背中を踏みつけた。

「止まるな」

彼女の声が冷たく響く。その時、近くの路地から子供たちが飛び出してきた。彼らは凌淵の姿を見て、指をさして笑い出した。

「見て見て、おじさんが犬みたいに歩いてる!」

「変な人だ!」

子供たちは凌淵の周りを走り回り、彼の頭を軽く叩いたり、服を引っ張ったりした。凌淵は顔を上げられず、ただ地面を見つめながら這い続けた。涙がこぼれ落ち、石畳に染みを作る。

その時、一人の子供が凌淵の正面に立ちはだかった。彼は五歳ほどの男の子で、無邪気な笑顔を浮かべている。

「おじさん、ワンワンって鳴いて!」

周りの子供たちが同調して囃し立てる。凌淵は唇を震わせ、声が出なかった。しかし、柳如煙のブーツが背中に強く押し付けられ、彼は観念した。

「……わん」

小さな声だったが、子供たちには聞こえたらしい。彼らは大喜びで拍手をし、さらに囃し立てた。

「もう一回!もっと大きな声で!」

「わん…わん…」

凌淵は繰り返し吠えた。その声が大きくなるにつれ、彼の心の中で何かが壊れていくのを感じた。同時に、解放されるような感覚もあった。

## 自覚と変化

街頭での辱めが終わり、一行は都の外れにある廃寺へと向かった。そこで妃たちは凌淵を解放し、平民の衣を脱がせた。

凌淵はぼんやりと座り込み、自分の身体を見つめていた。全身に傷と痕があり、肌は汚れている。しかし、彼の目は不思議と澄んでいた。

「どうだ、お前の気分は」

霜華が問いかける。凌淵はゆっくりと顔を上げ、彼女を見つめた。

「…気持ちよかった」

彼の口から出た言葉は、自分でも驚くほど素直なものだった。妃たちは互いに目を見合わせ、微笑んだ。

「お前はもう、私たちのものだ」

霜華が凌淵の頬に手を当てる。彼はその手に自ら頬を寄せた。今や抵抗の意志は完全に消え、代わりに彼女たちへの依存と信頼が芽生えていた。

「もっと…もっとお願いします」

凌淵の懇願に、四人の妃は満足げにうなずいた。そして、彼に新たな衣を着せた。それは今度は、立派な商人の衣だった。

「明日はまた別の姿で、別の場所へ行こう」

青黛が優しく言った。凌淵はその言葉に、心の底から喜びを感じていた。変装して様々な身分になるたび、彼は新たな自分を発見する。皇帝ではなく、ただの男として、犬として、奴隷として――その全てが彼に深い充足感を与えた。

## 帰宮

深夜、一行は密かに宮中へと戻った。凌淵は自分の部屋に通され、妃たちが付き添って体の傷を癒した。

「おやすみなさいませ、陛下」

霜華が最後にそう言い、部屋を出て行こうとした。その時、凌淵が彼女の袖を掴んだ。

「次の…次の調教はいつですか」

その目は真剣そのものだった。霜華は一瞬驚いたが、すぐに冷ややかな笑みを浮かべた。

「明日の朝、すぐにでも」

「お願いします。もっと…もっとたくさん、私を辱めてください」

凌淵の声には、もはや皇帝としての威厳は微塵も残っていなかった。霜華は彼の頭を優しく撫で、耳元で囁いた。

「良い子だ。明日は市場で、お前を豚のように扱ってやろう」

凌淵の目が輝いた。彼はその言葉を心待ちにし、初めて心からの安らぎを感じながら、眠りについた。

翌朝、霜華は妃たちを集め、凌淵の様子を報告した。

「あの方は完全に我々に従うことを決めた。これからが本番だ」

緋煙が妖艶に笑い、青黛は優しく、紫棠は獰猛に、そして柳如煙は無邪気に微笑んだ。

「公開調教という手段は、彼の心を完全に打ち砕くのに最適でした」

霜華はそう言って、新しい衣装を手に取った。それは豚小屋で使うような、粗末で汚れた布切れだった。

「今日はこれを着せて、市場の商人たちに公開で譲り渡す真似事をしましょう。あの方がどんな反応を見せるか、楽しみです」

五人目の妃、柳如煙が声を上げた。

「私は陛下に、街中で女装をさせてみたいです。きっと面白い反応を見せてくれますよ」

彼女の提案に、他の妃たちもうなずいた。凌淵を様々な姿に変え、様々な形で辱める――それは彼らにとって、何よりの楽しみだった。

やがて凌淵が連れてこられた。彼は期待と不安に満ちた表情で、妃たちを見渡した。その目は、皇帝としての威光を完全に失い、ただ支配されることを待つ、弱々しいものだった。

「さあ、今日の調教を始めましょう」

霜華の声が響く。凌淵は深く頭を下げ、全てを受け入れる覚悟を決めた。公開の辱めは、彼にとって苦痛ではなく、むしろ生きる意味そのものに変わりつつあった。

そして、新たな一日の調教が、幕を開ける。都の人々は知る由もない。自分たちの皇帝が、庶民の姿に変装し、妃たちの手で徹底的に辱められていることを。しかし、それが凌淵の選んだ道であり、彼が心から追い求める悦びだったのだ。