厳喆珂の留学生活—主人の任務編

站点:NovelAI.one内容:前8章在线试读ID:beaf96a4更新:2026-06-14 22:31
# チャプター1 康城大学のキャンパスは、秋の陽射しを浴びて輝いていた。厳喆珂は図書館の窓際にある席で、金融工学の教科書を広げていたが、視線はスマートフォンの画面に釘付けになっていた。 画面には、楼成からのメッセージが表示されている。 「今日の試合、勝ったぞ!相手は職業6品だったけど、なんとか倒せた。お前の応援のおかげ
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チャプター1

# チャプター1

康城大学のキャンパスは、秋の陽射しを浴びて輝いていた。厳喆珂は図書館の窓際にある席で、金融工学の教科書を広げていたが、視線はスマートフォンの画面に釘付けになっていた。

画面には、楼成からのメッセージが表示されている。

「今日の試合、勝ったぞ!相手は職業6品だったけど、なんとか倒せた。お前の応援のおかげだ」

喆珂の唇がほころぶ。彼女の指が素早く画面を滑る。

「おめでとう!でも無理しないでね。怪我はなかった?ちゃんと食事は取ってる?」

送信してから、彼女は窓の外を見た。キャンパスには様々な国籍の学生たちが行き交っている。ここに来てから一ヶ月が経とうとしていた。

結婚してすぐの留学。周囲からは「新婚なのに」と驚かれたものだ。しかし、楼成は理解してくれた。彼女の金融への情熱を、そして彼女自身のキャリアを大切にしたいという思いを。

「自分の道を歩め。俺はいつでもお前の味方だ」

彼の言葉が今も心に響いている。

喆珂は再びスマートフォンを見ると、楼成から新しいメッセージが届いていた。

「怪我はない。食事もしっかり取ってる。お前こそ、ちゃんと食べてるか?海外の食事は合わないかもしれないけど、無理だけはするなよ」

喆珂は微笑みながら返信を打つ。

「心配性ね。私は職業9品武者よ。自分の管理くらいできるわ。それより、次の試合の相手は誰なの?」

彼女の指が止まる。ふと、周囲の視線を感じた。顔を上げると、数人の男子学生が彼女を見ていた。そのうちの一人、マークという名の同級生と目が合う。

マークはすぐに視線をそらしたが、その頬には赤みがさしていた。

喆珂は軽く眉をひそめた。彼女はこの一ヶ月で、自分に対するマークの態度に気づいていた。講義の後によく話しかけてくるし、昼食の時間になると必ず席を確保してくれようとする。最初は親切な同級生だと思っていたが、最近ではその視線にどこか違和感を覚え始めていた。

しかし、彼女は既婚者だ。そういうことはきちんと伝えなければ。

喆珂は立ち上がり、マークの席に歩いていった。

「マーク、ちょっといい?」

マークが驚いたように顔を上げる。その目には期待の色が浮かんでいた。

「うん、もちろん。どうしたんだい?」

「話があるの。よかったら、少し時間をもらえる?」

マークの顔が明るくなる。彼は喆珂の隣を歩きながら、キャンパスのカフェテリアへ向かった。

カフェテリアの隅の席で、喆珂はコーヒーを一口すすると、真剣な表情でマークを見つめた。

「マーク、あなたはとても親切にしてくれる。感謝しているわ。でも、知っての通り私は結婚しているの。だから、あなたの気持ちには応えられない」

マークの表情が一瞬で固まった。

「気持ちって……どういう意味だい?」

「誤解してほしくないの。あなたは優秀な学生だし、友人としてならこれからも仲良くしたい。ただ、それ以上は望まないでほしい」

マークはしばらく沈黙した。その目に、一瞬暗い光が走ったように見えたが、すぐに笑顔を浮かべた。

「わかったよ。君の言う通りだ。僕は少し熱くなりすぎていた。これからは友人として、普通に接するよ」

喆珂は安堵の息をついた。

「ありがとう。理解してくれて嬉しいわ」

しかし、その日の夜、マークは自室でスマートフォンの画面を睨みつけていた。そこには、先日こっそり撮影した喆珂の写真が表示されている。図書館で真剣に本を読む横顔。笑顔で友達と話す姿。そのすべてが、彼の心をかき乱していた。

「結婚している……か」

マークの唇が歪む。彼の指が写真を拡大し、喆珂の顔をなぞる。

「そんなの、関係ない」

彼の目に、狂気の光が宿った。

一方、喆珂は寮の自室で、楼成とビデオ通話をしていた。

「今日は何を食べたんだ?」

楼成の笑顔が画面に映っている。

「サラダとグリルチキンよ。ここはヘルシーな食事が多いの」

「ちゃんと食べてるか?痩せてないか?」

「大丈夫よ。それより、あなたこそ試合で無理してない?」

楼成は苦笑いしながら頭をかいた。

「ばれたか。実は今日の試合で軽く打撲をしたんだ。でも医者に見せたら問題ないって言われた」

喆珂の表情が曇る。

「楼成、約束して。無理だけはしないって」

「わかってる。お前のためにも、ちゃんと生きて帰ってくるよ」

二人の会話は夜遅くまで続いた。喆珂は通話を切った後も、しばらく天井を見つめていた。離れていても、楼成の存在が彼女の支えになっている。彼女は武者として生きることを決意したときから、自分の道を歩むと決めていた。留学もその一環だ。

しかし、彼女の平穏な日々は、すぐに崩れ去ることになる。

一週間後、クラスの一人が週末にパーティーを開くと言い出した。

「せっかく留学生が集まっているんだから、みんなで親睦を深めようよ!」

提案者はアメリカ人のジェームズだった。彼はクラスのまとめ役で、よくこうしたイベントを企画していた。

喆珂は最初、迷った。武道の練習もしなければならないし、課題も溜まっている。しかし、クラスメイトたちが口々に「来いよ」と誘うので、結局参加することにした。

「わかったわ。でも、早めに失礼するかもしれないわよ」

「大丈夫だって!楽しもうぜ!」

こうして、週末の夜、喆珂はパーティー会場となったジェームズのアパートに向かった。

会場はすでに学生たちで賑わっていた。音楽が流れ、飲み物や軽食が並べられている。喆珂は部屋に入ると、数人のクラスメイトに挨拶をしながら、飲み物を手に取った。

「やあ、来てくれたんだね」

振り返ると、マークが立っていた。彼は自然な笑顔を浮かべている。

「ええ、せっかく誘われたからね」

「いいパーティーだよ。楽しもう」

マークはそう言うと、自分のグラスを掲げた。喆珂もそれに応じて、グラスを合わせた。

数時間が経過した。喆珂はクラスメイトたちと会話を楽しみながら、時計を気にしていた。そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、ふと異変を感じた。

――なんだろう、この眠気は。

喆珂は頭を振った。武者として培った感覚が、何かおかしいと警鐘を鳴らしている。彼女は自分のグラスを見つめた。確かにもらった飲み物は、何度か飲み替えている。だが、そのどれかに何かが混入されていたのだろうか。

職業9品武者として、彼女は通常の人間より薬への耐性が高い。しかし、今回の薬は強力なものだった。徐々に意識がぼんやりとしてくる。

「大丈夫か?」

誰かが声をかけてきた。マークだ。

「ええ……ちょっと疲れたみたい。帰ろうかしら」

「一人で帰るのは危ないよ。送っていくよ」

「大丈夫。自分で帰れるから」

喆珂はそう言って立ち上がったが、足元がふらついた。マークが素早く彼女の腕を支える。

「やっぱり送るよ。遠慮しないでくれ」

喆珂は断ろうとしたが、意識はもうろうとし始めていた。このまま一人で帰るのは確かに危険かもしれない。しかし、マークに送ってもらうのも気が進まない。

「じゃあ……タクシーを呼んでくれる?それだけで大丈夫だから」

「わかった。外で呼ぼう」

マークは喆珂の腕を支えながら、アパートの外に出た。夜風が顔に当たると、少しだけ意識がはっきりした。喆珂はマークの手をそっと振りほどこうとした。

「ありがとう。ここで大丈夫だから」

「まだふらついているじゃないか。ちゃんとタクシーに乗るまで見送るよ」

マークの手が、再び彼女の腕を掴む。その力は、必要以上に強かった。

――やっぱり、おかしい。

喆珂の武者としての本能が、危険を察知した。彼女はできるだけ平静を装いながら、人通りの多い大通りに向かおうとした。

「人混みを避けて帰ろう。裏道のほうが近道だ」

マークが言った。彼の手が、喆珂の腕を引っ張る。

「いや……大通りでいいわ」

喆珂は抵抗しようとしたが、薬の効果で体が思うように動かない。彼女は歯を食いしばり、必死に意識を保とうとした。

しかし、その努力も虚しく、体から力が抜けていく。

「だめ……楼成……」

彼女の唇が、夫の名を紡ぐ。

マークはその声を聞くと、一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに冷酷な笑みを浮かべた。

「楼成?ああ、夫のことか。でも今は僕のものだ」

彼は喆珂の体を支えながら、人気のない路地へと足を進めた。周囲には誰もいない。街灯もまばらで、暗闇が二人を包み込む。

「ここで少し休もう」

マークはそう言うと、喆珂の体を壁に寄りかからせた。彼女の目は半分閉じかけている。意識はほとんどないようだった。

「美しいな……本当に美しい」

マークは喆珂の顔を両手で包み、その頬を撫でた。彼女の肌は白玉のように滑らかで、吐息はかすかに漏れるだけだ。

「最初から、君は僕のものになるべきだったんだ」

彼は自分のコートを脱ぐと、喆珂の頭を覆った。外からは誰だかわからないようにするためだ。そして、彼女の体を抱え上げ、小さなホテルへと向かった。

ホテルのフロントでは、マークが簡単にチェックインを済ませた。酔った彼女を連れてきたと言えば、何も疑われることはない。

部屋に入ると、マークは喆珂をベッドに横たえた。彼女の体は完全に弛緩し、深い眠りに落ちている。

「ついに……ついに僕のものになるんだ」

マークの手が震えていた。彼はカメラを取り出すと、部屋の隅に設置した。全てを記録するために。

彼は喆珂の服に手をかけた。その指は、彼女の肌に触れるたびに震えていた。

「こんなに美しい体……ずっと欲しかったんだ」

彼の手は、彼女のブラウスのボタンを一つずつ外していく。白い肌が露わになる。そこには、彼女が武者として鍛え上げた、しなやかで美しい肉体があった。

「楼成は、こんな素晴らしいものを独り占めしているのか」

マークの目に、嫉妬と狂気の色が浮かぶ。彼は喆珂の下着も取り去ると、その裸体をカメラに収めた。

「そうだ、この美しい姿を残さなければ」

カメラが回っていることを確認してから、マークは自分の服を脱ぎ始めた。彼の心臓は激しく打ち、呼吸は荒くなっている。

「すまないな、喆珂。でも、君が悪いんだ。僕の気持ちに気づきながら、結婚しているなんて言うから」

彼は喆珂の体の上に覆いかぶさった。彼女の安らかな寝顔が、歪んだ彼の欲望をさらに募らせる。

最初は無理やり口を開けさせた。そして、彼の欲望をその中に押し込む。

「これで君は、僕のものだ」

彼の腰が動き始める。無意識のうちに、喆珂の喉が嗚咽を漏らした。しかし、それに構うことなく、マークは行為を続けた。

次に、彼は彼女の股の間に手を伸ばした。そこはまだ濡れていない。彼は自分の唾液を指に塗り、無理やり侵入を試みた。

「痛いだろう?でも、慣れさせないとな」

彼の指が彼女の中をかき回す。そして、準備が整う前に、彼自身の欲望を押し込んだ。

「はぁ……すごい……噛みつくように締め付けてくる」

彼は激しく腰を動かし始めた。ベッドが軋む音と、彼の荒い息遣いだけが部屋に響く。

「そうだ……もっと感じろ……僕だけの牝になれ」

彼は何度も何度も彼女の体を貫いた。最初の情勢が終わると、すぐに次の体位に移る。彼女の体をひっくり返し、後ろからも犯した。

「ここも使うんだよ」

彼は彼女の肛門に自身の欲望をあてがった。そして、無理やり押し込む。

「あっ……!」

無意識のうちに、喆珂の口から悲鳴が漏れた。しかし、それもすぐにマークの手で塞がれた。

「静かにしろ。誰かに聞かれたら困るだろう」

彼はさらに激しく腰を動かした。彼女の体は彼の動きに合わせて揺れ、シーツは乱れに乱れた。

すべてを記録した後、マークは満足そうに笑った。彼はカメラのデータを確認し、ニヤリと笑う。

「これで君は、永遠に僕のものだ」

翌朝、喆珂は激しい頭痛と共に目を覚ました。体の節々が痛み、下腹部に異様な違和感がある。

彼女がベッドの上で体を起こすと、そこには見知らぬ部屋が広がっていた。

「ここは……どこ?」

彼女の記憶は、パーティーで具合が悪くなったところで途切れている。どうやってここに来たのか、何が起こったのか、全く思い出せない。

その時、部屋のドアが開いた。

「おはよう。よく眠れたか?」

そこに立っていたのは、マークだった。彼はにこやかな笑顔を浮かべているが、その目は冷たく光っていた。

「マーク……あなた、何を……」

「覚えていないのか?君はパーティーで酔ってしまってね。僕が介抱してあげたんだよ」

「そんな……私はお酒なんて……」

言いかけて、喆珂は自分の体を見た。服は乱れ、肌には無数の跡が残っている。その瞬間、すべてを理解した。

「あなた……まさか……」

「そうだよ、君は僕のものになったんだ」

マークはスマートフォンを取り出し、画面を喆珂に向けた。そこには、昨夜の光景が映し出されている。意識を失った彼女が、マークに犯されている映像だった。

「この映像をインターネットに流されたくなければ、言うことを聞け」

喆珂の顔が青ざめた。彼女の拳が震える。

「そんな……卑怯よ……」

「卑怯?何を言うんだ。愛する人を手に入れるためには、手段を選んではいられないんだ」

マークは喆珂の顎を掴み、無理やり自分の目を見させた。

「これからは、僕の言うことを聞け。そうすれば、この映像は誰にも見せないし、君の夫にも知られないようにしてやる」

「ふざけないで……私は楼成を愛してる……」

「愛している?ならば、この映像が彼の元に届いたらどうなると思う?」

マークの言葉に、喆珂の心臓が凍りついた。楼成は純粋な人間だ。彼がこの映像を見れば、彼女が不貞を働いたと誤解するかもしれない。いや、どんな理由があれ、彼はこの現実を受け入れられないだろう。

「……わかったわ」

喆珂は声を絞り出した。その目からは涙が溢れていた。

「賢い選択だ」

マークは満足そうに笑うと、喆珂の頭を撫でた。

「今夜も来い。場所は後で知らせる」

そう言い残して、マークは部屋を出ていった。喆珂は一人残され、ベッドの上で膝を抱えた。

「楼成……ごめんなさい……」

彼女の嗚咽が、冷たい部屋の中に響き渡った。

この日から、喆珂の留学生活は一変した。表面上は普通の学生として過ごしながら、夜になるとマークに呼び出され、彼の欲望のままに体を弄ばれる日々が始まったのだ。

彼女は自らの弱さを呪いながらも、楼成を守るため、そして自分の将来を守るために、その屈辱に耐え続けることを選んだ。

――必ず、いつか……。

彼女の心の中には、復讐の炎が静かに燃え続けていた。しかし、その日が来るまで、彼女はこの男の支配に従うしかなかった。

留学生活の始まりは、こうして暗い影に包まれたのである。

チャプター10

週末の朝、厳喆珂はいつものように目を覚ました。窓の外から差し込む柔らかな日差しが、ベッドの上に横たわる彼女の顔を照らしている。彼女はゆっくりと瞬きをし、体に残る昨日の疲労感を感じながら、スマートフォンを手に取った。主人からの新しい任務が届いているはずだ。

案の定、メッセージアプリには主人からの一通のメッセージが表示されていた。彼女は息を呑み、震える指でメッセージを開いた。

「今日はペットショップに行け。店は駅前の通りにある『ふわふわペット』だ。店長に『主人の使いで来た』と言え。すべては店長の指示に従え。いいな?」

簡潔な命令文。心臓がドキドキと胸の中で大きくなる。ペットショップで何をされるのか、想像もできなかった。しかし、拒否することは許されない。彼女は深く息を吸い込み、ベッドから起き上がった。

シャワーを浴び、一番質素な服を選ぶ。化粧は最小限に抑えた。何かの準備をするつもりもなかった。むしろ、自分をなるべく目立たなくしたかった。

午前10時。彼女は駅前の商店街に足を踏み入れた。平日の朝は人通りが少ないが、それでも彼女の心臓は激しく打っている。ガラス張りのペットショップを見つけると、足を止めた。店の中には、子犬がケージの中でじゃれ合っている。一見すると、ごく普通のペットショップだ。

彼女はドアを開けた。ベルがチリンチリンと鳴り、店内に響く。爽やかな空気とペットフードの匂いが混ざり合っていた。一人の店員がカウンターの後ろから顔を上げた。

「いらっしゃいませ、何かお手伝いしましょうか?」

厳喆珂は一瞬躊躇したが、すぐに主人の命令を思い出した。喉がからからになるのを感じながら、言った。

「あの…主人の使いで来ました。店長さんに会いたいんです。」

店員の顔色がほんの少し変わった。彼女は厳喆珂を一瞬じっと見つめ、何かを確認するような目をした。そして、うなずいた。

「少々お待ちください。店長を呼んできます。」

店員は奥の扉へ消えていった。厳喆珂はその場に立ち尽くし、両手を自分の前でぎゅっと握りしめた。数分後、スーツを着た中年男性が出てきた。彼は厳喆珂を頭からつま先まで、ゆっくりと値踏みするように見つめた。

「君が…主人の方の使いか。」

店長の声は低く、どこか含みのある口調だった。彼は何かを知っているように見えた。厳喆珂はこっくりと頷いた。

「はい。」

店長はにやりと笑った。それは、彼女の居心地を悪くさせる笑みだった。

「わかった。じゃあ、奥に来てくれ。」

彼は振り返らずに、先に立って店の奥へと歩き出した。厳喆珂は一瞬ためらったが、すぐに後ろを追った。背中に店員の視線を感じたが、もう逃げ場はなかった。

奥に進むと、ペット用の洗浄室があった。白いタイル張りの部屋で、中央にはステンレス製の洗浄台が置かれている。天井からはホースがぶら下がっていた。店長は洗浄室のドアを開け、厳喆珂を中に招き入れた。

「ここで、新品のペットになるための準備をしよう。」

新品のペット――その言葉が耳に刺さった。厳喆珂は唇を噛みしめ、何も言わなかった。

店長は店員に合図を送った。先ほどの若い女性店員が入ってきて、手にはゴム手袋と大きなビニールシーツを持っていた。店長は厳くんにひとこと言うと、部屋の外に出て行った。

「彼女に君の準備をさせろ。すべては主人の命令だ。」

ドアが閉まり、厳喆珂と女性店員だけが部屋に残された。店員は淡々とした表情で、作業用の台にビニールシーツを敷いた。

「服を脱いで。」

厳喆珂は一瞬、体が固まった。しかし、抵抗は無駄だと分かっていた。彼女は震える手で、一つずつ服を脱いでいった。冷たい空気が裸の肌に触れる。羞恥と不安で、体が小さく震えた。

「洗浄台の上に横向きに寝て。」

店員の声は事務的で、感情がこもっていなかった。厳喆珂は指示通り、ステンレスの台の上に横向きに寝た。冷たい金属が肌に直接触れ、鳥肌が立った。店員は手際よくゴム手袋をはめ、潤滑剤の入ったチューブと浣腸器を準備した。

「浣腸を3回行います。きれいにしてから、次の工程に移ります。」

最初の浣腸が始まった。冷たい液体が体内に流れ込む感覚。それはいつもの主人の調教とは違う、もっと無機質で、ペットとしての処理に過ぎないものだった。厳喆珂は歯を食いしばり、その不快感に耐えた。

「ちゃんと耐えて。終わったらトイレに行くから。」

20分後、3回目の浣腸と排泄が終わり、体は徹底的に清潔にされた。厳喆珂は力なく洗浄台に横たわり、店員が入念に体を洗い、拭き上げるのを黙って受け入れた。

その間、店員は何も言わず、無言で作業を続けた。厳喆珂の体が完全に乾いたのを確認すると、店員はキャビネットからいくつかの物を取り出した。

それは、黒い革製の首輪、犬の耳を模したヘッドバンド、そしてふわふわした犬のしっぽがついたプラグだった。

「立ち上がって。」

厳喆珂は言われた通りに立ち上がった。店員は彼女の首に首輪を装着した。冷たい革が肌に絡みつく。次に、犬耳のヘッドバンドを彼女の頭に乗せ、最後にしっぽのプラグを彼女の体に装着した。プラグが入るとき、思わず声が出そうになったが、必死にこらえた。

すべての装着が終わり、店員は一歩下がって厳喆珂を見渡した。まるで完成した作品を確認するような視線だった。

「これで終わり。店長を呼ぶわ。」

店員が出ていくと、間もなく店長が再び入ってきた。彼は厳喆珂の姿を見て、満足そうな笑みを浮かべた。

「うん、なかなかいい。牝犬にふさわしい姿だ。」

彼はスーツの内ポケットから、一枚の書類を取り出した。厳喆珂の前に差し出す。書類の上部には「牝犬取引契約書」と書かれていた。

「これにサインしろ。」

厳喆珂は震える手で書類を受け取り、中身を読んだ。それは、彼女をペットとして譲渡する契約書だった。署名欄には、彼女の名前と、先ほどの配達先の住所が記入されていた。彼女は一瞬、思考が止まった。ペットとして契約される。それは、自分が完全に所有物になることを意味していた。

しかし、署名を拒否したところで、何も変わらないことも分かっていた。主人の命令に背けば、もっと酷い罰が待っている。彼女は唇を噛みしめ、ペンを握った。震える手で、署名欄に自分の名前を書き込んだ。

店長は署名を確認すると、書類を丁寧に折りたたんでポケットにしまった。そして、スマートフォンを取り出し、配達員を呼び出した。

「配達の準備ができた。来てくれ。」

間もなく、一人の若い男性が洗浄室に現れた。彼は配達用の制服を着ており、手には犬用のキャリーバッグを持っていた。彼の目は厳喆珂の姿を見て一瞬輝いた。

「この子か。かわいい牝犬だな。」

配達員は厳喆珂に近づき、彼女の胸をいきなり掴んだ。厳喆珂は驚いて息を呑んだが、配達員は気にせずに揉みしだいた。

「ちゃんと主人のところに届けるからな。おとなしくしていろよ。」

彼は口元に笑みを浮かべながら、手を離した。そして、店長に書類とキャリーバッグを受け取ると、厳喆珂を連れて店の裏口から外へ出た。

店の裏手には、白い配達車が停めてあった。配達員は車のバックドアを開け、厳喆珂を後部座席に座らせた。そして、彼女の手首を拘束し、目隠しをした。視界が奪われると、急に恐怖が倍増する。次に、口枷を装着された。これで彼女は話すこともできなくなった。

「大人しくしていろよ。しばらくしたら、主人のところに着くからな。」

配達員が厳喆珂を軽々と抱え上げ、犬用のケージの中に入れた。ケージは狭く、ろくに体を動かすこともできなかった。匂いもなく、ただ自分の心臓の鼓動と、車のエンジン音だけが聞こえる。

車が発進した。厳喆珂は目隠しの中で、これからどうなるのかという恐怖と、自分の意志が完全に奪われていく感覚に震えた。しかし、マークに調教されてからの数ヶ月で、抵抗する気力はすでに失われていた。彼女はただ、主人が自分に何を望んでいるのかを受け入れるだけだった。

車はしばらく走った。途中、いくつかの信号で止まり、またゆっくりと動き出す。時間の感覚が曖昧になる。10分か20分か、それとももっと長かったのか。やがて、車が停まった。

エンジンが切れ、運転席のドアが開閉する音がした。後ろのバックドアが開き、冷たい空気がケージの中に流れ込んでくる。配達員の手がケージの中に差し込まれ、彼女の腕を掴んだ。

「着いたぞ。降りろ。」

彼女はケージから引きずり出され、誰かの腕に抱えられた。足が地面から離れ、階段を上る感覚があった。ドアが開き、室内の温かい空気を感じる。扉が閉まる音と、鍵がかかるカチッという音。

「お届け物だ。指定の場所に置いてやれ。」

配達員の声が遠くに聞こえた。そして、がっしりした腕に抱えられながら、部屋の奥へと運ばれていった。

床に降ろされたとき、ふかふかのカーペットの感触が足の裏に伝わった。口枷と目隠しは外されていない。彼女は裸のまま、犬耳と首輪としっぽのプラグだけをつけて、その場に座り込んでいた。

配達員が出ていく気配がした。ドアが閉まり、室内が静寂に包まれる。一人きりになったのかと思った瞬間、背後から足音が聞こえた。

「いい子だ。ちゃんと来たんだな。」

その声は、主人の声だった。低く、甘く、しかし確実に彼女を支配する声。厳喆珂の体は、その声に反応して自動的に震えた。

主人の手が彼女の髪を撫で、耳の先をそっと触った。彼の指は優しく、しかしどこか意地悪な感触があった。

「店で何をされたか、教えてみろ。」

主人の手が彼女の首輪に触れ、そっと引っ張った。彼女は声を出そうとしたが、口枷のせいで言葉は出てこなかった。代わりに、くぐもった声だけが漏れる。

「ああ、そうか。話せなかったな。いいだろう、後でゆっくり教えてもらう。」

彼の手はゆっくりと彼女の体をなぞり始めた。胸のふくらみを優しく撫で、腹を下り、太ももへと進む。そのたびに、彼女の体は反応し、肌が粟立った。

「ペットとしての最初の配達は完璧だ。お前は本当にいい牝犬になった。」

主人は彼女のしっぽのプラグを軽く引っ張った。予想外の刺激に、彼女の体がピンと伸びる。彼は低く笑った。

「もっと気持ちよくしてやるよ。」

主人は彼女を抱え上げ、どこかへ移動した。柔らかなベッドの上に放り投げられる。彼の体が彼女の上にかぶさり、口枷が外され、次に目隠しが取り外された。

視界が突然開け、眩しさに目を細めた。そして、目の前に見えたのは――

見慣れた顔だった。

茶色の髪、鋭い目つき、口元に浮かぶ冷酷な微笑み。その顔は、大学のクラスメートであり、彼女に恋心を抱くマークだった。

「マーク…あなた…」

声がかすれて出てこなかった。すべてのピースが、一瞬で頭の中で組み合わさった。主人からのメッセージ、ペットショップでの指示、配達された行き先――すべてがマークの仕業だったのだ。

「そうだよ。驚いたか?お前の主人は、他でもない俺だ。」

マークは微笑みながら、彼女の頬を撫でた。その手のひらは温かく、しかし彼女を震え上がらせる冷たさも含んでいた。

「どうして…どうしてこんなことを…」

質問が口から漏れた。しかし、その声は弱々しく、抗う意志を感じさせなかった。マークは彼女の髪をかき上げて、耳元に顔を近づけた。

「理由なんて簡単だ。お前が欲しかったからだ。あの日、図書館でお前を見たときから、ずっとお前のことが欲しかった。お前が結婚していることも、夫がいることも関係ない。俺はお前を手に入れたかったんだ。」

彼の指が彼女の首元をなぞる。首輪の革の感触が冷たく、彼女の肌に張り付いていた。

「お前の身体も、心も、すべて俺のものだ。楼成は遠くにいる。お前の主人は俺だ。」

厳喆珂は涙が溢れそうになるのを感じた。夫の楼成のことを思うと、胸が締め付けられた。しかし、その感覚はすぐに、何か別のものに塗り替えられた。

それは、この数ヶ月間の調教で植え付けられた服従の感覚だった。主人の命令に従うことが、彼女の生きる意味になっていた。抵抗したいという気持ちはあるのに、体はすでに主人の支配を受け入れていた。

「さあ、新しい主人にちゃんと挨拶しろ。」

マークはベッドの端に腰かけ、足を組んだ。彼の足元には、冷たい床の上で裸のままの厳喆珂がいる。彼は顎で合図を送った。

「ひざまずけ。」

その一言が、彼女の最後の抵抗の壁を打ち砕いた。心の中で、何かがガラスのように割れる音が聞こえた。

厳喆珂はゆっくりと、両膝を床につけた。冷たいフローリングの感触が骨に直接伝わってくる。彼女は頭を垂れ、マークの足元にひざまずいた。四つん這いになり、首輪についたリードが彼の手に渡されるのを待った。

「よくやった。お前は、本当にいい牝犬だ。」

マークの手が彼女の頭を撫でる。それは、本物の犬を褒めるような仕草だった。しかし、厳喆珂の心はもう、その言葉にさえも安らぎを覚え始めていた。

「主人…」

彼女の声はかすれていたが、初めて自らの意思で「主人」と呼んだ。

マークの目が、満足げに細められた。

「それでいい。お前はこれからも、俺のペットとして生きていくんだ。もう二度と、人間の女には戻れない。」

彼は彼女のあごをぐっと掴み、顔を上げさせた。涙で潤む彼女の目をじっと見つめながら、低い声でささやいた。

「お前は俺のものだ。ずっと、永遠に。」

厳喆珂は、自分の運命を受け入れた。涙は止まらず、それは頬を伝って滴り落ちた。しかし、その涙はもはや抵抗の涙ではなかった。それは、新たな主人への服従の証であり、過去の自分との決別の涙だった。

「はい、主人。私はあなたの牝犬です。」

彼女は自分でそう言った。言葉にすると、さらにその感覚が深く、体の中に染み込んでいくようだった。

マークは立ち上がり、彼女を抱き上げた。そして再びベッドの上に横たえ、自分の体を重ねた。

「今日からお前の全ての任務は、俺のペットとして、完璧に振る舞うことだ。いいな?」

「はい、主人。」

彼女の返事は、まるで呼吸をするように自然だった。もう、抵抗する自分はいなかった。ただ、主人の求めるままに、牝犬として生きていくことだけが、彼女の存在意義だった。

彼の手が彼女の体を撫で、口づけが降り注ぐ。そのすべてが、彼女の新しい日常の始まりだった。彼女は目を閉じ、その感覚に身を任せた。

自分の意志で降伏した牝犬として、彼女はこの夜を、主人の腕の中で過ごした。

チャプター2

# チャプター2

意識が浮上する感覚。まるで深海の底から、ゆっくりと浮かび上がってくるかのようだった。厳喆珂のまぶたは重く、全身は鉛のように沈んでいた。何かがおかしい。そう直感した瞬間、彼女の体は警鐘を鳴らし始める。

視界は暗い。いや、目隠しをされている。口元に張り付く異物感――ガムテープだ。手足を拘束する何か。縄か、あるいは手錠か。そして何より、下半身に感じる異様な感覚。膣内を埋め尽くす、熱く硬い質量。それは規則正しく動いていて、彼女が意識を取り戻したことに気づいたのか、一瞬止まった。

「んっ……んんっ!」

声にならない悲鳴。嗚咽が喉の奥で詰まる。恐怖が全身を駆け巡る。誰だ? 何が起きている? 記憶の断片を必死に繋ぎ合わせようとする。昨日は――図書館で遅くまで勉強していた。帰宅途中、何かを飲んだような気がする。そうだ、自動販売機で買ったミネラルウォーター。あれに何か仕込まれていたのか?

体格の良い誰かが彼女の上に覆いかぶさっている。腰の動きが再開されるが、先ほどよりもゆっくりと、まるで彼女の反応を確かめるかのように。厳喆珂は歯を食いしばり、嗚咽をこらえる。涙が目隠しの布地に染み込んでいく。

「おや、目が覚めたか」

声が聞こえる。だがどこか不自然だ。機械的で、抑揚のない声音――変声器を使っている。つまり、相手は正体を隠すつもりだ。厳喆珂は職業9品の武者だ。普通の人間なら、薬物で眠らせたところで、こんなに早く意識を取り戻すことはないと考えるだろう。相手は彼女が武者であることを知っている。だからこそ、正体を隠す必要があるのだ。

犯人は一旦腰の動きを止め、彼女の太ももに手を這わせる。ぞっとするような感触。厳喆珂は全身の力を込めて身動ぎしようとしたが、薬の効果がまだ残っていて、思うように力が入らない。

「これからお前は俺の性奴隷だ」

変声器を通した声が、冷たく部屋に響く。

「俺は主人だ。リモートで任務を出す。従わなければ――お前が強姦されるビデオを、夫に送る」

楼成。その名が脳裏をよぎった瞬間、厳喆珂の心臓は凍りついた。夫は今、遠く離れた母国で武者としての任務に就いている。彼に知られたら――彼がこの辱めを知ったら、どうなる? 彼は怒り狂うだろう。そして、もっと恐ろしいのは、この屈辱的な映像を彼に見られること自体だった。

「俺の身元を探ろうとするな。もし探れば、同じくビデオを夫に送る。分かったか?」

厳喆珂は微かにうなずく。それ以外に選択肢はなかった。口を塞がれたまま、涙が止まらない。犯人は満足げに彼女の体から離れ、衣擦れの音が聞こえる。服を整えているのだ。

「任務はメールで伝える。従え」

それだけ言い残し、足音が遠ざかる。ドアが開き、閉まる音。そして静寂が部屋を支配した。

厳喆珂はしばらくそのままでいた。全身の震えが止まらない。膣内から滴り落ちる液体の感触が、現実を突きつける。自分は今、見知らぬ男に凌辱されたのだ。夫を裏切ったのだ。そう思うと、吐き気がこみ上げてきた。

時間が経つのを待つ。ゆっくりと、しかし確実に、薬の効果が薄れていくのが分かる。職業級武者として鍛え上げた体は、常人よりはるかに速く毒物を代謝する。手足の指先に、少しずつ感覚が戻ってくる。

十分ほど経っただろうか。力を振り絞り、両腕を一気に広げる。パキッという音とともに、縄が引きちぎれた。次に足首の縛りも同じように破る。口のガムテープを引きはがすとき、皮膚が裂けるような痛みが走ったが、構ってはいられなかった。目隠しを外す。部屋は見知らぬ場所だった。安っぽいビジネスホテルの一室だろうか。シーツは乱れ、床には使用済みのコンドームの包みが転がっている。

厳喆珂はよろめきながら立ち上がり、バスルームに駆け込んだ。洗面台の鏡には、泣きはらした自分の顔が映っている。髪は乱れ、唇は腫れていた。服は無惨に引き裂かれ、床に捨てられている。

彼女はシャワーのお湯を最大限に熱くし、その下に体を滑り込ませた。熱湯が肌を焼くように痛い。それでも構わず、ボディソープをたっぷりと手に取り、全身をゴシゴシと擦る。何度も、何度も。肌が赤くなり、痛みを感じるまで擦り続けた。それでも、体に染みついた汚れは落ちない。男の体液が、彼の手の感触が、あの声が――すべてが記憶に刻まれている。

「うぅ……うぁ……」

声を殺して泣いた。シャワーの水が涙を洗い流す。楼成の顔が浮かぶ。彼は今何をしているだろう。任務に集中しているはずだ。彼のことを想うほど、罪悪感が胸を締め付ける。自分は汚されてしまった。もう、彼にふさわしい妻ではないのかもしれない。

だが、それでも。諦めるわけにはいかない。厳喆珂は歯を食いしばり、顔を上げた。鏡の中の自分は、まだ戦うことを忘れていない目をしていた。

――必ず、あの男を見つけ出す。そして、この辱めを晴らす。

だがその前に、彼の命令に従わなければならない。ビデオが楼成の手に渡ることは、絶対に避けなければ。それは彼を傷つけるだけでなく、自分たちの関係を永遠に破壊するものだ。

ホテルを後にするとき、フロントの男が怪訝な顔をしたが、構わなかった。タクシーを拾い、自宅マンションに戻る。部屋の中は、何も変わっていない。自分の机の上には、昨日まで読んでいた金融の教科書が置いてある。日常と非日常の境界線が、あまりにも曖昧で、頭がくらくらした。

その日は一日中、部屋に閉じこもった。スマートフォンをチェックするたびに、新しいメールが届いていないか確認する。夫からのメッセージにも、平常心を装って返信した。「元気だよ」「勉強は順調だよ」――偽りの言葉を打ち込む指が震えた。

そして翌日。午前0時きっかりに、一通のメールが届いた。

差出人は「MASTER」。件名は「任務1」。

本文は簡潔だった。

「今夜、午後10時。ランジェリーを着用し、自宅近くの主要道路沿いで写真を3枚撮影せよ。全身が写ること。場所が特定できないよう、背景に注意しろ。撮影後、すぐにこのアドレスに送信せよ。期限は今夜中。従わない場合、ペナルティとして、ビデオの一部を夫に送信する。」

厳喆珂は画面を凝視した。手が震える。こんなこと、できるはずがない。ランジェリー姿で、人通りのある道路に立つなんて。もし誰かに見られたら? もし知り合いに遭遇したら?

しかし、拒否すればビデオが送られる。あの男の目的は、彼女を少しずつ支配下に置くことだ。最初は小さな命令から始め、抵抗を弱めていく。そういう手口だ。

彼女はクローゼットを開け、奥の方にしまってあったランジェリーを取り出した。それは楼成と結婚する前に買ったもので、一度も着たことのなかったものだ。黒いレース素材で、ほとんど布地と呼べないほど薄い。これを着て外に出ろと言うのか。

時計は午後9時を回っていた。決断の時は迫っている。

彼女はランジェリーに着替え、その上からトレンチコートを羽織った。鏡の前で、コートの前を合わせる。これなら一見しただけでは分からない。しかし、写真を撮るためにはコートを脱がなければならない。誰もいない場所を選ばなければ。

夜の街は、思いのほか人通りが少なかった。彼女は自宅から十分に離れた場所まで歩き、人気のない歩道を見つけた。街灯の明かりだけが、アスファルトを淡く照らしている。

深呼吸を一つ。トレンチコートのベルトを解き、肩から滑り落とす。冷たい夜風が、露出した肌を撫でた。鳥肌が立つ。スマートフォンを自撮りモードに設定し、震える手でシャッターを切る。

一枚目。俯き加減で、顔がはっきり写らないように。

二枚目。横向きで、体のラインが分かるように。

三枚目。街灯を背景に、全身が収まるように。

写真を確認する。どの写真でも、彼女の顔は辛うじて判別できる程度だった。これなら、もし流出しても特定は難しいかもしれない。そう自分に言い聞かせ、メールに添付して送信した。

返信はすぐに来た。

「よくやった。次の任務は明日の朝に送る。忘れるな。お前の体は、もう俺のものだ」

厳喆珂はその文面を何度も読み返し、スマートフォンをベッドに投げ捨てた。涙が止まらない。自分は何をしているんだ。夫を裏切っている。それでも、止められない。

二日目の任務は、さらに屈辱的だった。

「授業中、膣と肛門にバイブを挿入したまま受講せよ。休憩時間にトイレで写真を撮り、送信せよ。バイブは本日中に購入し、指示通りに使用すること。写真は挿入状態が確認できるもの」

厳喆珂は指示された通りにアダルトショップでバイブを購入し、自宅でそれらを挿入した。異物感に吐き気がする。しかし、それを堪えてキャンパスに向かった。講義室に入る瞬間、周囲の学生たちが自分を見ているような気がしてならなかった。実際には誰も彼女に注目していないのに、膣と肛門に挿入されたバイブが存在を主張するように、微妙に震えている。

講義中、教授の声が遠くに聞こえる。集中できない。下半身に感じる圧迫感と、かすかな振動が意識を散らす。隣の席の学生が何かを質問しているが、まったく頭に入ってこない。彼女はただひたすら、ノートに文字を書き連ねるふりをした。手が震えて、文字は歪んでいる。

休憩時間になり、彼女はすぐにトイレに駆け込んだ。個室に鍵をかけ、スカートをまくり上げる。下着の上からでも、バイブの形が浮き出ているのが分かる。指示通り、挿入状態の写真を撮る。下着をずらし、膣内に埋め込まれたバイブの一部が写るように。肛門の方も同様に。手が震えて、画像がぶれた。何度か撮り直し、最も鮮明なものを選んで送信する。

返信はすぐに来た。

「合格だ。次の任務は今夜」

三日目の任務は、深夜の道路でのランジェリー撮影だった。ただし今度は、バイブを挿入したまま。夜風が冷たく、バイブの振動が絶え間なく彼女を刺激する。写真を撮るとき、無意識に太ももを擦り合わせてしまう。自分がこんなにも卑猥な姿になっていることに、羞恥と同時に、どこか倒錯的な感覚も覚え始めていた。

四日目。任務はさらにエスカレートした。

「授業中、膣と肛門にリモコン式ローターを挿入せよ。リモコンは俺が持っている。授業中、遠隔操作でお前を絶頂させる。休憩時間にトイレでオナニーし、その証拠の写真を送れ」

その日、厳喆珂は講義室でローターを挿入した状態で座っていた。いつリモコンが操作されるか分からない恐怖が、彼女の神経を尖らせる。教授がホワイトボードに数式を書き始めたとき、突然、膣内のローターが低い振動を始めた。

「っ……」

息を呑む。必死に声を殺す。ローターの振動は次第に強くなり、彼女の敏感な部分を正確に刺激する。相手は遠隔で操作しながら、彼女の反応を楽しんでいるのだ。そう思うと、怒りと屈辱で頭が真っ白になりそうだった。

しかし、体は正直だ。振動に合わせて、彼女の体内は潤み始める。快感が背筋を這い上がり、理性を溶かしていく。太ももをきつく閉じ、膝の上に置いた手が白くなるほど握りしめる。

「……厳さん? 大丈夫ですか?」

隣の席の女子学生が、心配そうに声をかけてきた。

「だ、大丈夫……ちょっと、体調が……休憩時間に、休みます……」

声が上ずっているのが自分でも分かる。相手は遠隔操作を続けている。振動のパターンが変わり、断続的な刺激が彼女の理性を追い詰める。ローターの振動は、巧妙に彼女のクリトリスを擦り上げる位置に調整されていた。

授業が終わるまで、あと二十分。長すぎる時間だ。彼女は必死に耐えた。絶頂しそうになるたび、爪を掌に食い込ませ、痛みで意識を保つ。唇を噛み締め、酸味のある血の味が広がる。

ようやく休憩のチャイムが鳴った瞬間、彼女は立ち上がり、トイレに駆け込んだ。個室に鍵をかけ、スカートと下着を一気に下ろす。ローターはまだ振動を続けている。彼女はその場にしゃがみ込み、指を膣に挿入した。自分の指で慰めるという、さらに深い屈辱。しかし、体は快楽を欲していた。彼女は狂ったように指を動かし、数分後、激しい絶頂に達した。

その直後、ローターの振動が止まった。相手は彼女の絶頂を見届けたのだ。トイレの個室で、彼女は声を殺して泣いた。そして、指示通り、絶頂後の濡れた指とローターの写真を撮り、送信した。

返信は、いつものように即座に来た。

「よく我慢した。だが、まだ終わらない。今夜の任務を忘れるな」

五日目。最終任務。

「ランジェリーを着用し、膣と肛門にローターを挿入した状態で、道路脇で絶頂しろ。その瞬間の写真を撮り、送信せよ。絶頂の表情がはっきり分かること。拒否すれば、ビデオを夫に送る」

その夜、厳喆珂は指示された場所に立っていた。深夜の住宅街で、人通りはほとんどない。ランジェリー姿の上に、薄手のカーディガンを羽織っている。風が吹くたびに、肌が粟立つ。膣と肛門に挿入されたローターは、既に彼女の手元のリモコンで起動できる状態にしてあった。だが、指示では道端で絶頂しなければならない。つまり、通りかかる人がいないとも限らない場所で、自ら快楽に身を委ねる必要がある。

彼女はカーディガンを脱ぎ捨て、ランジェリー姿を露わにした。冷たい夜気が肌を包む。震える手で、ローターのスイッチを入れる。振動が体内に広がり、彼女の息を荒くする。両手で自分の胸を揉みしだきながら、快感に身を委ねる。最初は恥ずかしさで動きがぎこちなかったが、次第に官能的に腰を動かし始める。

「あっ……ああっ……」

声が漏れる。誰かに見られるかもしれないという恐怖が、逆に興奮を高める。彼女はもう、自分を制御できなくなっていた。この一週間で、彼女の心は少しずつ壊れていった。貞操観念も、羞恥心も、すべてが溶けていく。

絶頂が近づく。彼女はスマートフォンを手に取り、自撮りモードを起動する。そして――

「ああっ! い、く……!」

体が弓なりに反り返り、快感の波が全身を貫いた。その瞬間を、彼女はシャッターに収めた。写真には、恍惚とした表情を浮かべ、頬を紅潮させた自分が写っている。なんて卑猥な姿だろう。

彼女はその写真をメールに添付し、送信した。

数分後、返信が来る。

「良くやった。これでお前は完全に俺のものだ。今夜はよく休め。明日から、新たな任務が始まる」

厳喆珂はランジェリー姿のまま、その場に崩れ落ちた。体はまだ熱を帯びている。涙が止まらない。自分はどこまで堕ちてしまったのか。夫の顔を思い浮かべると、胸が締め付けられる。

それでも、彼女はまだ諦めていなかった。心の奥底で、反撃の機会を窺っている自分がいる。この屈辱を、必ず晴らす。そのためには、今は耐えなければ。すべてが終わったその日、あの男を必ず見つけ出し、この手で――。

夜空を見上げると、星が一つ、瞬いていた。それはまるで、遠く離れた故郷で任務に就く夫の目を思わせた。

「ごめんね、楼成……」

彼女は小さく呟き、ゆっくりと立ち上がった。汚れた体をまた洗わなければ。どんなに洗っても落ちない心の汚れを、今日もまた、自分自身で癒すしかなかった。

チャプター3

週末の夜、厳喆珂は寮の部屋でスマートフォンを手に、画面に映し出された一通のメッセージを凝視していた。匿名の送信者——あの男からだった。

「明日、午前十時。住所は後で送る。小さな商店だ。レジ打ちの臨時店員として働け。イヤホンは今日中に届く。それを装着し、指示を待て。決して外すな。」

文面は簡潔で、命令の形を取っていた。彼女は唇を噛みしめ、返信もせずに画面を閉じた。胸の奥で何かが軋む音がしたが、もはや抗う力は残っていなかった。あのビデオ——彼女の知らないうちに撮影された、恥辱にまみれた姿が、いつ公開されるかと思うだけで背筋が凍る。

数時間後、寮の郵便受けに小さな小包が届けられた。開けると、ごく普通のBluetoothイヤホンが一つ入っていた。彼女はそれを手に取り、しばらく迷った後、耳に装着した。電源が入り、何の音も聞こえないまま、ただ存在感だけが彼女の耳の中に残った。

翌朝、厳喆珂は指定された住所へ向かった。商店街の一角にある、こぢんまりとした雑貨店だった。看板には「吉野商店」と書かれている。扉を押し開けると、中の店主——五十代ほどの男が、だらりとカウンターに肘をついて新聞を読んでいた。彼女が入ってくるのに気づき、顔を上げて無愛想に一瞥した。

「ああ、臨時の子か。こっちだ。レジの操作を教えるから、覚えろ。」

店主の声は低く、無関心そのものだった。厳喆珂はうなずき、彼の指示に従った。レジの操作は簡単で、商品のバーコードを読み取り、金額を入力し、釣り銭を渡す——それだけだ。彼女は職業九品の武者でありながら、このような単純作業に従事している自分に、滑稽さと屈辱が入り混じった感情を覚えた。

昼過ぎまで、客はまばらだった。年配の女性が調味料を買い、小学生が駄菓子を求めに来る——そんな日常の光景が、彼女の前を淡々と過ぎていく。イヤホンからは何の音も聞こえてこない。ただ、彼女の鼓動と、レジの電子音だけが耳に響いていた。

午後三時を過ぎた頃、店主が「少し店を離れる。夕方まで戻らん」と言い残して出て行った。厳喆珂は一人で店に残された。カウンターに立ち、流れゆく時間にただ耐える。窓の外では、秋の日が傾き始めていた。

閉店時間——午後七時が近づくにつれ、彼女の心は落ち着かなくなった。イヤホンから、まだ何の指示もない。一日中、ただレジを打っていただけだ。何かがおかしい。あの男は、こんな平凡な任務で満足するはずがない。胸の奥で不安が渦巻き始めた。

午後六時五十五分。最後の客が去り、店は静まり返った。彼女がレジの清算を始めようとしたその時、イヤホンからかすかな音が聞こえた。ノイズが走り、続いて低い声——あの男の声が聞こえてきた。

「よくやった、喆珂。では、最後の任務を伝える。」

彼女の背筋が凍りついた。声はわずかに掠れていて、どこか楽しげだった。

「レジの中の現金を、いくらか抜き取れ。目立たない程度に。二千円程度でいい。そして……それを自分の膣内に隠せ。」

一瞬、彼女の脳が真っ白になった。

「……何を……」

「聞こえなかったのか? 金を抜き取れ。膣に押し込め。指示に従え。さもなければ、ビデオが全世界に公開される。お前の夫・楼成も、見ることになるだろうな。」

その言葉が、彼女の抵抗を完全に打ち砕いた。彼女は震える手でレジを開け、二千円札を一枚抜き取った。紙幣を手に握りしめ、トイレに入る。個室に鍵をかけ、スカートをたくし上げる。下着をずらし、右手に持った二千円札を、ゆっくりと自分の体の中へ押し込んだ。冷たい感触が膣内を這い、彼女の顔が羞恥で赤く染まった。しかし、止めることはできなかった。紙幣が完全に収まるまで、彼女は指を奥へと進め続けた。そして、深く息を吐き、下着を戻した。

午後七時。店主が戻ってきた。彼は無言で店のシャッターを下ろし、戸締まりを始めた。厳喆珂はカウンターの前で立ち尽くし、彼が帰るように合図するのを待っていた。しかし、店主はシャッターを完全に閉めた後、ゆっくりと彼女の方へ向き直った。その顔に、先ほどまでの無愛想な表情は消え、奇妙な笑みが浮かんでいた。

「おい、そこのお嬢ちゃん。ちょっと待て。」

彼女の心臓が跳ねた。

店主はカウンターの前に立ち、両手を腰にあてた。

「レジの中の金、抜いただろう。二千円だ。すぐに出せ。」

厳喆珂は顔色を変えた。彼女の口からは言葉が出なかった。金は、膣内にある。出せるはずがない。彼女は武者としての本能で、体に力を込めた。職業九品の力——常人ならば一撃で吹き飛ばせるだけの実力が、彼女の全身に漲った。店主に襲いかかろうとしたその瞬間、イヤホンから声が聞こえた。

「抵抗するな。言うことを聞け。」

その命令は、彼女の体を縛る鎖のようだった。彼女は一瞬で力を抜き、ただ立ちすくんだ。

店主は彼女の変化を感じ取ったのか、ますますにたりと笑った。

「どうした? 金を出せないのか? なら、仕方ない。ボディチェックだ。」

店主はゆっくりと彼女に近づき、その指が彼女の制服の襟元に触れた。彼女は武者でありながら、ただされるがままに立っていることしかできなかった。店主の手は彼女の体をまさぐり、胸や腰を撫で回した。そして、スカートの裾を捲り上げた。

「ほう……ここか。」

店主の指が彼女の股間を押し、硬くなった何かを感じ取った。彼女の下着をずらし、指を膣内に差し込む。冷たい指が彼女の内部を探り、紙幣の端をつまみ上げた。ずるり、という音と共に、二千円札が引き出された。

店主は紙幣を眺め、奇妙な笑みを深めた。

「なるほどな。これはなかなか……面白い隠し方だ。」

彼は紙幣をカウンターに置くと、今度は彼女の体をカウンターに押し付けた。彼女の背中が冷たい木製の表面に当たり、胸が押し潰される。店主の手が再び彼女のスカートの中に侵入し、下着を一気に引き下ろした。

「やめ……っ」

「黙れ。命令だ。」

その言葉が、彼女の抵抗を完全に奪った。彼女は目を閉じ、唇を噛みしめた。店主の指が彼女の膣口をなぞり、濡れていないことを確認し、少し苛立ったように吐息を漏らした。そして、無理やり指を二本差し込み、内壁を弄り始めた。痛みが走る。彼女は声を押し殺した。

「濡れてないじゃねえか。まあいい。俺が濡らしてやる。」

店主の指は執拗に彼女の内部をかき回し、彼女の敏感な箇所を探り当てた。彼女の体が勝手に震え、腰が浮く。嫌悪と羞恥が入り混じった感覚が、彼女の意識を蝕んだ。やがて、彼女自身の反応が彼女を裏切り、膣内がじわりと湿り始めた。店主は満足そうに鼻を鳴らし、自らのズボンを下ろした。

「さあ、いくぞ。」

彼の性器が彼女の入り口に当てられ、そのまま一気に突き入れられた。彼女の口から悲鳴が漏れたが、すぐに噛み殺された。店主は彼女の腰を掴み、激しく動き始めた。カウンターが軋み、彼女の体は揺さぶられる。彼女はただ、されるがままに耐えることしかできなかった。イヤホンからは、あの男の低い笑い声が聞こえてくるような気がした。

数分の後、店主は彼女の中で果てた。熱い液体が彼女の体内に流れ込む。彼女はその感覚に、胃の中が逆流するような思いを味わった。店主は器具を抜き、再びズボンを履いた。そして、カウンターに置いた二千円札を手に取り、再び彼女の股間に押し込んだ。

「これは、俺からの置き土産だ。持ち帰れ。また来週も来い。もし逃げたら、どうなるか分かってるな?」

店主はそう言い残し、彼女を解放した。彼女は体を起こし、震える手で下着を直し、スカートを整えた。膣内に押し込まれた紙幣の感触が、彼女に生々しい現実を刻みつける。

店主は店の裏口へと消え、彼女は一人でシャッターをくぐって外に出た。夜の冷たい風が彼女の頬を撫でる。彼女はその場に立ち尽くし、涙がこぼれ落ちるのを感じた。しかし、泣くことさえも、あの男に許されているとは思えなかった。彼女はそのまま、寮へ向かって歩き出した。体の中に、二千円と、あの男の命令と、店主の痕跡が、重く残っていた。

チャプター4

# チャプター4

あの日の出来事から、一週間が過ぎた。

厳喆珂は大学の図書館で、金融工学の参考書を広げていた。窓際の席からは秋の日差しが差し込み、ページの上に柔らかな影を落としている。彼女の指先は静かに文字を辿っていたが、目は文字を追っていなかった。

あの店主の顔が、時々脳裏をよぎる。脂ぎった笑顔、荒い呼吸、そして——彼女の体に残る記憶。職業九品の武者である彼女の身体は、通常の人間よりはるかに回復が早い。しかし、心の傷はそう簡単には癒えなかった。

しかし、不思議と——あの日以来、主人からの連絡は一切なかった。

イヤホンからは何の音も流れず、スマートフォンにメッセージが届くこともない。任務がない一週間は、まるで普通の留学生活を取り戻したかのようだった。クラスメートと笑い合い、教授の講義を聞き、夜には寮で紅茶を飲みながら論文を読む。

楼成とのビデオ通話では、いつも通りの自分を演じた。

「元気そうだな、珂珂」

画面の向こうで、彼が優しく笑う。その顔を見ると、胸の奥が締め付けられるような痛みが走る。嘘をついている罪悪感と、何も知らない彼への愛しさが入り混じる。

「うん、こっちは順調だよ。あなたは?任務は大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。最近は事件も少なくてな。でも、お前がいなくて寂しい」

その言葉に、彼女の喉が詰まった。

「——私も、寂しいよ」

本当は、抱きしめてほしかった。すべてを話して、彼の腕の中で泣きたかった。でも——できない。主人の影が常に彼女の背後にあり、もし楼成に知られたら、彼をも危険に巻き込むことになる。

通話を終えた後、彼女はベッドに横たわり、天井を見つめた。

「——一体、何なんだろう」

この沈黙は、何を意味しているのか。主人は彼女を飽きたのか?それとも——次の任務が、より恐ろしいものになる前触れなのか。

不安と平穏の狭間で、彼女の心は揺れていた。

金曜日の夜。寮の自室で読書をしていると、スマートフォンが振動した。

心臓が跳ねた。

画面には、見慣れないアプリからの通知が表示されている。彼女の指は震えながら、メッセージを開いた。

『明日、午前十時。行きつけのジムに行け。服装:全身タイプのヨガウェア。肌の露出は禁止。必ず守れ』

簡潔な命令。それだけだった。

厳喆珂はスマートフォンを握りしめ、目を閉じた。平和な一週間は終わったのだ。また、あの日々が始まる。

彼女はクローゼットを開け、隅にしまってあった黒いヨガウェアを取り出した。首から足首までを覆う、全身タイプのものだ。買ったのは数ヶ月前だが、まだ一度も着たことがなかった。

鏡の前でそれを広げる。伸縮性のある素材は、彼女の身体の線をくっきりと浮かび上がらせるだろう。嫌な予感がするが——逆らうことはできない。

翌朝、目覚まし時計が鳴る前に彼女は目を覚ました。簡単に朝食を済ませ、指示されたヨガウェアに着替える。鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。

黒い素材が、彼女のしなやかな身体にぴったりと張り付いていた。胸の膨らみ、腰のくびれ、長い脚——すべてが強調されている。しかし、肌は一切露出していない。一見すると、ごく普通のフィットネスウェアだ。

「——行かなきゃ」

彼女は深呼吸をし、バッグを持って部屋を出た。

ジムはキャンパスから徒歩十分の場所にある、二十四時間営業の施設だ。学生だけでなく、近隣の住民も利用するため、週末の午前中は比較的空いている。

入口をくぐると、受付の男性が彼女に気づいた。

「あれ、厳さん、今日はヨガ?」

「ええ、ちょっと体を動かそうと思って」

彼女は自然な笑顔を作り、会員証をスキャンしてもらう。内部に入ると、いくつかのマシンで数人の利用者が汗を流している。エアロビクススタジオは無人で、広いフロアに鏡とマットが並んでいる。

彼女はスタジオの隅にマットを敷き、ストレッチを始めた。イヤホンはすでに耳に装着しているが、まだ何の音も聞こえてこない。

——どんな命令が来るのだろう。

不安を押し殺し、彼女はポーズをとり始めた。ダウンドッグ、三角のポーズ、戦士のポーズ——一つ一つの動作に集中することで、余計な考えを追い出そうとする。

十分ほど経った頃、イヤホンから突然、音声が流れた。

「亀のポーズをとれ」

低い声。主人だ。

厳喆珂は一瞬固まったが、すぐに従った。マットの上に座り、両脚を前に伸ばす。そして、ゆっくりと上半身を前に倒し、腕を脚の下に通して背中の方へ伸ばす。亀のポーズ——体全体を丸め、頭を床に近づけるポーズだ。

この姿勢は、外部からの刺激を遮断し、内面に集中するためのものだと言われている。しかし、今の彼女にとっては——無防備を強要されるポーズだった。

背後から誰かが近づいてくる気配がした。

「動くな」

イヤホンから命令が入る。彼女はそのままの姿勢を保った。

二人の人物が彼女の両側にしゃがみ込んだ。無言で——まるで事前に打ち合わせていたかのように——彼女の右手首を掴み、何かを巻き付ける。

手錠ではない。革製の拘束具だった。

「な——」

「黙れ。抵抗するな」

主人の声が鋭く響く。彼女は歯を食いしばり、されるがままになった。

拘束具は彼女の手首をぴったりと固定し、さらにその先に付いたベルトが膝裏を通って、脚と腕を一体化させる。次に、もう一人の男が彼女の左手首を同じように拘束した。両腕が脚の下で固定され、彼女は完全に亀のポーズのまま動けなくなった。

「う——」

声にならない悲鳴が漏れる。身体を丸めたまま、腕と脚が一体化され、自由を奪われた。指先一つ動かせない。

二人の男は立ち上がり、彼女の背後に移動した。そして——金属音が聞こえた。ハサミの刃が開閉する音だ。

「やめ——」

彼女の言葉を遮るように、背中に冷たい感触が走った。ハサミの先端が、ヨガウェアの背中の部分に差し込まれる。そして——ざくっという音と共に、素材が裂かれた。

「あっ——」

黒い布地が、背中の中央から両側へと引き裂かれる。肩甲骨から腰まで、一直線に切り開かれた。さらに、男たちは無造作に袖の部分も切り裂き始める。

「やめ——やめてくれ——」

彼女の懇願は無視された。ハサミは容赦なく動き、ヨガウェアは細切れになっていく。肩の部分が切り離され、胸元が露わになる。腰の部分も切り裂かれ、臀部がむき出しになった。

「うぅ——」

彼女は顔を上げられない。亀のポーズのまま、下を向きながら、自分の身体が裸にされていくのを感じるしかない。切り裂かれた布地は床に落ち、彼女の白い肌が空気に触れる。

最終的に、黒いヨガウェアは背中と脚の部分が完全に切り開かれ、彼女の身体は丸出しになった。ただし、腕と脚を固定する拘束具はそのままだ。彼女は全裸のまま、亀のポーズで固定され、動くことも隠すこともできない。

「よくやった。そのまま維持しろ」

主人の声には、満足げな響きがあった。

その時、スタジオの入口が開く音がした。

「——え?」

若い男性の声。厳喆珂は顔を上げられないが、誰かが入ってきたことを察した。

「な、なんだこれ——裸の女が——」

別の声。複数の足音が近づいてくる。

「ちょっと待て、これ——拘束されてるぞ」

「おいおい、マジかよ」

三、四人の男性の声が聞こえる。彼らはおそらく、他のエリアでトレーニングをしていたジム利用者だ。週末の午前中、この時間帯にスタジオを使う者は少ない。しかし、完全に無人というわけでもなかった。

「おい、大丈夫か?誰かにやられたのか?」

一人の男が彼女に近づき、しゃがみ込んだ。彼の視線が、彼女の裸体を舐めるように動く。

「——すごい体だな。モデルか?」

「ちょっと、これ、ヤバくないか?警察呼ぶべきだろ」

「いや、待て——イヤホン付けてるぞ。これ、何かのプレイじゃないか?」

男たちの間で、困惑と好奇が入り混じる。その時、イヤホンから主人の声が再び聞こえた。

「彼らに、好きにさせてやれ。お前の体は、今日一日彼らのものだ。拒否するな」

厳喆珂の全身が震えた。

「——いや——」

「拒否すれば、その映像を楼成に見せることになる。お前の選択だ」

選択の余地はなかった。

彼女は唇を噛みしめ、涙を堪えた。そして——ゆっくりと、頷いた。

男たちはその仕草を見て、空気を読んだ。

「——やっぱり、そういうことか」

「マジかよ。でも——これ、ヤバすぎないか?」

「でもよ、本人がOKしてるなら——」

最初に近づいてきた男——二十代後半くらいの、筋肉質な体つきの男——が彼女の背後に回った。そして、無造作に彼女の臀部を撫でた。

「っ——」

彼女の体が跳ねる。

「——触り心地、すげえな。これで一日中、好きにしていいのか?」

「命令だ。遠慮するな」

主人の声が、彼女の耳に響く。

男の手が、彼女の腰から太ももへと滑り落ちる。その感触に、彼女の理性が悲鳴を上げる。

「——じゃあ、遠慮なく」

男が言い終わる前に、別の男が彼女の前に回り込んだ。

「おい、俺もいいよな?」

「ああ、順番だ。まずは俺から——」

最初の男が、彼女の背後でベルトを外す音がした。金属のバックルがこすれる音。そして——彼女の腰を掴む手の感触。

「——行くぞ」

「まっ——」

彼女の拒否の言葉は、背後からの衝撃で遮られた。

「ああああっ——」

無理やり広げられた脚の間から、熱いものが彼女の中に入り込む。前回の店主とは違い、若い男の勢いは激しかった。

「はっ——すげえ、締め付けが——」

男は腰を打ち付けながら、荒い息を吐く。彼女の身体は亀のポーズのままで、逃げることも抵抗することもできない。ただ、彼の動きに合わせて揺れるしかない。

「おい、俺も——」

前の男が彼女の顔の前に立った。ベルトを外し、彼の勃起した性器を彼女の口元に押し付ける。

「口を開けろ」

命令に、彼女は従うしかなかった。唇を開き、それを迎え入れる。

「んうっ——」

男性の味が、口の中に広がる。前後から同時に貫かれ、彼女の意識は白く染まり始める。

数分後、最初の男が彼女の中で果てた。熱い液体が子宮口に叩きつけられる。そして、すぐに次の男が背後につく。

「よし、次は俺の番だ」

こうして、厳喆珂はジムのスタジオで、知らない男たちに次々と体を許すことになった。

時間の感覚が曖昧になる。十人目か、二十人目か——数えることすらできなかった。彼女の身体は、職業九品の武者としての強靭さを持っている。普通の女性なら何度も気絶しているような状況でも、彼女は意識を保ち続けた。

「——まだやれるのかよ、この女」

「すげえな。もう三時間は経ってるぞ」

「俺、もう四回目だわ。それでも締め付けが衰えねえ」

男たちの間で、彼女の身体は評判になっていた。口コミが広がり、スタジオには次々と新しい男が訪れる。中には既婚者もいれば、大学生も、中年のサラリーマンもいた。

昼過ぎになると、スタジオの外にも人が集まり始めた。

「おい、本当にやってるのか?」

「ああ、見てみろよ。あのポーズで一日中——」

「ありえねえ——」

何人かの女性も混ざっていたが、彼女たちは引いた目で見ているだけだった。止めに入る者はいない。なぜなら——厳喆珂自身が、拒否しなかったからだ。

午後三時。彼女の体は汗と精液でべとべとになっていた。口の中も、膣内も、何度も何度も汚され続けた。それでも、彼女の身体は悲鳴を上げなかった。

——武者の身体で良かったと思う日が来るなんて。

彼女は自嘲気味に思う。常人ならば、脱水症状か疲労でとっくに動けなくなっている。しかし、彼女の身体は気の循環によって活力を維持し、むしろ感覚が研ぎ澄まされていく。

その感覚が、恐怖だった。

午後五時になると、主人の声が再びイヤホンに流れた。

「よく頑張った。そろそろ終わりだ」

その言葉と同時に、ジムのスタッフがスタジオに現れた。

「——お客様、本日はこれまでで閉店となります」

男たちは名残惜しそうに、しかし従順に彼女から離れる。スタッフは彼女の拘束具を外し、何も言わずにバスタオルを投げ渡した。

厳喆珂は震える手でタオルを身体に巻き付け、ゆっくりと立ち上がった。脚の間から、白濁した液体が太ももを伝って垂れる。

彼女は何も言わず、スタジオを後にした。男たちの視線が、背後から突き刺さる。

ロッカールームで、彼女はシャワーを浴びた。熱いお湯が、身体に染み込んだ汗と精液を洗い流す。しかし——心の汚れまでは、落ちなかった。

鏡の前に立ち、自分の身体を見る。全身に、無数の手の痕と歯形が残っていた。首筋、胸、腰、太もも——あらゆる場所に、誰かの所有物である証が刻まれている。

彼女はタオルをぎゅっと握りしめ、唇を噛んだ。

——まだ、終わらない。

帰り道、イヤホンから主人の声が聞こえた。

「今日の映像は、非常に良く撮れていた。お前の恥ずかしい姿を、永久に残してやろう」

「——」

「次の任務は、また連絡する。それまでは、ちゃんと休め。お前の身体は、俺のものだからな」

通話が切れた。

厳喆珂はその場に立ち止まり、空を見上げた。夕焼けが、キャンパスの校舎をオレンジ色に染めている。まるで何もなかったかのような、平和な風景。

彼女はゆっくりと息を吐き、寮への道を歩き始めた。

職業九品の武者としての誇りは、もうとっくに踏みにじられていた。けれど——彼女はまだ、生きている。その事実だけが、彼女を支えていた。

チャプター5

# チャプター5

厳喆珂はベッドの上で目を覚ました。窓の外から差し込む朝日が、彼女の白い肌を照らしている。昨夜の記憶が断片的に蘇り、彼女の体が微かに震えた。

――また、やってしまった。

そう思いながらも、彼女の心の奥底には、ある種の安堵感が広がっていた。主人からの任務に従うたびに、彼女の中で何かが変わっていくのを感じる。最初の頃は抵抗感と羞恥心で押し潰されそうだったが、今ではそれすらも麻痺し始めている。

彼女はスマートフォンを手に取り、匿名のメールボックスを確認した。新しいメッセージが届いている。

「よくやった。お前の従順さに主人は満足している。今日は新たな任務を与える。トレンチコート一枚だけを着て、タクシーに乗れ。運賃は体で支払え。その過程を自ら撮影し、送れ。」

厳喆珂の呼吸が一瞬止まった。公共の場での露出、そして見知らぬ男との性的行為――それは彼女の残っていた理性の最後の砦を打ち砕くものだった。

しかし、彼女の指は既に返信を打ち始めていた。

「了解しました。主人の命令通りに実行します。」

文字を送信した瞬間、彼女の心臓が激しく鼓動した。恐怖と興奮が入り混じった複雑な感情が全身を駆け巡る。

彼女はクローゼットからトレンチコートを取り出した。ベージュ色の上質な生地で作られたそれは、彼女の体をすっぽりと覆うことができる。しかし、その下に何も身につけないという事実が、彼女の羞恥心を刺激した。

鏡の前で、彼女は全ての服を脱ぎ去った。鏡に映る自分の裸体を見つめながら、彼女はゆっくりとトレンチコートを羽織った。コートのベルトを締めると、かろうじて体のラインが隠れる。しかし歩くたびに裾が揺れ、太ももが露わになる。

厳喆珂は深呼吸を何度か繰り返し、小さなビデオカメラをコートのポケットに忍ばせた。そして、寮の部屋を出た。

キャンパスを歩く間、彼女の足取りは重かった。すれ違う学生たちの視線が、自分に向けられているような気がする。実際には誰も彼女の秘密に気づいていないのに、彼女の心臓は激しく鼓動し続けた。

大学の正門を出ると、タクシー乗り場に向かった。一台のタクシーが停まっている。運転手は中年の男性で、無精ひげを生やした普通の男だった。

「どこまで行かれますか?」運転手が尋ねた。

厳喆珂は後部座席に乗り込み、ドアを閉めた。「都心の繁華街でおろしてください」

タクシーが走り出す。彼女の手は微かに震えていた。ポケットの中のカメラが、彼女の顔と運転手の後ろ姿を捉えている。

しばらくの沈黙の後、彼女は意を決して口を開いた。

「あの……運賃のことなんですが、現金を持っていなくて」

運転手が怪訝そうな顔でバックミラーを覗き込んだ。「は?」

「その代わりに……体で払ってもいいですか?」

言葉を発した瞬間、彼女の頬が真っ赤に染まった。運転手は一瞬何が起こったのか理解できなかったようで、間抜けな表情を浮かべている。

「え? 何言ってんだ、お嬢ちゃん?」

厳喆珂はトレンチコートのベルトをゆっくりと解き始めた。コートの前が開き、彼女の裸体が露わになる。運転手の目が大きく見開かれた。

「本気か?」

「はい……お願いします」

運転手は周囲の車の流れを確認すると、ハンドルを切って脇道に入った。人気のない駐車場に車を停める。

「本当にいいんだな?」

厳喆珂は黙って頷いた。彼女の体は緊張と興奮で震えていた。運転手が後部座席に移動し、彼女の体に触れた。その手は荒く、性急だった。

行為の間、厳喆珂はカメラを回し続けた。彼女の顔には苦痛と快楽が入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。運転手が果てた後、彼女は乱れたコートを整え、何食わぬ顔で車を降りた。

「ありがとうございました」と彼女は言い、タクシーを去った。

その日の夜、彼女は撮影した映像を編集し、匿名のメールで主人に送った。送信ボタンを押す指は、もう震えていなかった。

マークは自分のアパートで、送られてきた映像を貪るように見ていた。画面の中の厳喆珂は、明らかに以前とは違う。彼女の目には、抵抗の色が消え始めていた。代わりに、ある種の諦めと、そしてわずかながらの快楽の色が浮かんでいる。

「ついに……お前も堕ち始めたな」

彼の声は低く、抑揚がなかった。彼は新しい任務の作成に取り掛かった。

翌日の夜、厳喆珂のスマートフォンが震えた。新しい命令が届く。

「男湯に行け。そこで自慰を見せろ。そして、他の男たちに姦淫されろ。全てを撮影しろ。」

厳喆珂は一瞬ためらったが、すぐに返信した。

「承知しました。」

彼女はまたトレンチコートを羽織り、カメラをポケットに忍ばせた。今度は目的地が事前に分かっている。市内の老舗銭湯だ。彼女はそこに向かった。

銭湯の暖簾をくぐると、男湯の入口が目に入る。彼女は一呼吸置いて、引き戸を開けた。湯気が立ち込める脱衣所には、数人の男たちが裸でいる。彼女の突然の出現に、男たちは驚いて固まった。

「ちょっと、ここは男湯だぞ!」

一人の中年男が叫んだ。しかし厳喆珂は構わずに、ゆっくりとコートを脱ぎ始めた。彼女の裸体が露わになると、男たちの視線が一気に変わった。驚きから、欲望へ。

「お願いします……私を……使ってください」

彼女の声は小さく、しかしはっきりと男たちの耳に届いた。最初は戸惑っていた男たちも、次第に彼女の周りに集まってきた。

厳喆珂は浴場のベンチに座り、脚を開いた。そして、自慰を始めた。指が自身の秘部に触れるたびに、彼女の口から甘い吐息が漏れる。男たちは息を呑んでその光景を見つめていた。

「誰か……最初に……してください」

彼女の誘いに、一人の若い男が名乗り出た。彼は厳喆珂の前に立ち、自身の男性器を彼女の口に押し込んだ。彼女は抵抗せず、むしろ積極的にそれを咥え込んだ。

その後、次々と男たちが彼女を犯した。厳喆珂は無数の男たちに囲まれ、全身を弄ばれながらも、カメラだけは離さなかった。彼女の意識は半分以上飛んでいたが、それでも主人の命令を遂行することだけは忘れなかった。

全てが終わった時、彼女の体は精液と汗でべとべとになっていた。彼女はよろよろと立ち上がり、コートを羽織って銭湯を後にした。男たちは呆然と彼女の後ろ姿を見送っていた。

その夜遅く、マークの元に新しい映像が届いた。彼はそれを繰り返し見ながら、厳喆珂の変化を確信した。

「もうすぐだ……もうすぐお前は完全に俺のものになる」

次の数日間、任務は途絶えた。厳喆珂は自分の部屋で過ごしながら、自分の精神状態の変化を感じていた。主人からの命令がないことに、なぜか物足りなさを覚えている。あの屈辱の瞬間が、今では待ち遠しく感じられる。

彼女はベッドに横たわりながら、自分の体に残る男たちの痕跡を指でなぞった。あちこちに残った赤い跡、痛み、そして忘れられない快感。それらが彼女の中で渦を巻いている。

「私は……おかしくなってしまったのかもしれない」

そう呟きながらも、彼女の口元には微かな笑みが浮かんでいた。楼成のことを考える時間も減った。彼の顔を思い出そうとしても、なぜかぼやけてしまう。代わりに、主人の命令と、その命令に従う自分の姿が鮮明に浮かんでくる。

彼女はスマートフォンを手に取り、自分から主人にメッセージを送ろうかと迷った。しかし、それは許されていない。命令を待つことだけが、彼女に許された行為だ。

その日、彼女はキャンパスを歩いているときにマークとすれ違った。彼はにこやかに「やあ」と手を振った。厳喆珂も微笑み返したが、その目には以前のような輝きはなかった。

「最近、元気ないみたいだね。何かあった?」マークが心配そうに尋ねた。

「ううん、大丈夫。ちょっと疲れてるだけ」

「そうか……無理するなよ」

マークは立ち去りながら、内心でほくそ笑んでいた。厳喆珂の表情には、明らかに服従の色が現れ始めている。彼女の精神は確実に侵食されていた。

その夜、厳喆珂は夢を見た。夢の中で彼女は再び男湯にいた。無数の男たちに囲まれ、彼女は笑っている。そして、その光景を見ている主人の影があった。主人の顔は見えなかったが、その存在だけははっきりと感じ取れた。

「もっと……もっとやってください」

彼女は夢の中でそう叫んでいた。

目を覚ますと、彼女の体は汗で濡れていた。そして、自身の股間が湿っていることに気づいた。彼女は自分の意志とは無関係に、体が反応していることを自覚した。

「もう……戻れない」

彼女は静かに涙を流した。しかし、その涙は悲しみの涙なのか、それとも歓喜の涙なのか、彼女自身にも分からなかった。

翌日、久しぶりに任務が届いた。

「今夜、繁華街の路上でストリップを行え。通行人の前で全てを曝け出し、誰かに自分を買わせろ。その時に得た金で、ホテルの一室を借りろ。そこで待機しろ。」

厳喆珂は命令を読んだ瞬間、心臓が高鳴るのを感じた。彼女はすぐに準備を始めた。化粧を施し、髪を整え、露出の多い服を着た。そして夜の街へと繰り出した。

繁華街はネオンが輝き、多くの人々で賑わっている。彼女は人通りの多い交差点の近くに立ち、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。最初は上着、次にスカート、そして下着。周りの人々が立ち止まり、彼女を取り巻く。

「おい、何やってんだ?」

「すごい……本物の裸だ」

声が飛び交う中、厳喆珂は全裸になり、優雅にポーズを取った。彼女の体はネオンに照らされて、幻想的に輝いている。

「私を買ってください……値段はお任せします」

彼女の声は、周囲の雑音に消えそうになりながらも、何人かの耳に届いた。一人のスーツ姿の男性が近づき、財布から一万円札を取り出した。

「これで足りるか?」

「ありがとうございます」

厳喆珂はその金を受け取り、服を着始めた。周りの人々はまだ興奮冷めやらぬ様子で、彼女を見送った。

彼女はその金で近くのラブホテルに入った。部屋に着くと、ベッドに腰掛け、主人からの次の指示を待った。

間もなく、スマートフォンが震えた。

「今夜はそこで休め。明日、新しい任務を伝える。」

厳喆珂は安堵の息をついた。そして、自分の体をベッドに横たえながら、これまでの日々を思い返していた。

彼女は変わってしまった。以前の自分なら、決して許せなかった行為の数々。今ではそれらを積極的に行い、主人からの称賛を待つ自分がいる。楼成への想いはどこか遠くへ消え去り、代わりに主人への服従と依存が心を占めている。

「楼成……ごめん……」

彼女は呟いたが、その声にはもう罪悪感は込められていなかった。ただ、過去の自分への別れの言葉のように聞こえた。

彼女は目を閉じ、明日の任務を想像した。何を命じられるのか、どんな屈辱が待っているのか。それらを思うと、彼女の体は微かに震え、芯が熱くなるのを感じた。

「私は……主人の牝犬だ」

その言葉を口にした時、彼女の中で何かが確定した。もう後戻りはできない。いや、もう戻りたくないのかもしれない。

夜は更け、街の灯りが次第に消えていく。厳喆珂はホテルのベッドの上で、静かに新しい自分を受け入れ始めていた。彼女の目には、狂気と陶酔の光が宿っている。

かつての武道宗師のヒロインは、確実に消え去ろうとしていた。代わりに現れたのは、主人に従うだけの、一匹の牝犬に過ぎなかった。

しかし、それでも彼女は微笑んでいた。その微笑みは、かつて楼成に向けていたものとは全く異なる、歪んだものだった。

主人の任務を果たすこと。それだけが、今の彼女の存在意義だった。

チャプター6

# チャプター6

また週末が訪れた。厳喆珂は窓辺に立ち、夕暮れの街並みを眺めていた。先週の任務の記憶がまだ生々しく残っている。彼女は無意識に太ももを擦り合わせた。あの日々の辱めが、まるで昨日のことのように思い出される。

スマートフォンが震えた。匿名のメッセージが届く。

「新しい任務だ。よく読め。」

添付ファイルには指示書と、ある荷物の配送情報が記載されていた。厳喆珂の指がわずかに震える。彼女は深く息を吸い込み、メッセージを開いた。

「本日午後3時、城南公園へ向かえ。到着次第、送付した器具を使用して自身を固定せよ。器具の使用方法は同封の説明書に従え。もし誰かに発見された場合、その相手の要求に従い、姦淫を許せ。すべての過程を撮影し、指定のアドレスに送信せよ。」

厳喆珂の顔色が青ざめる。しかし、拒否する選択肢はなかった。あのビデオがある限り、彼女は従うしかない。彼女は静かに支度を始めた。

鏡の前で、彼女はJK制服を身にまとった。白いブラウスに紺色のプリーツスカート、ネクタイを締める。下着は履かない。指示に従い、肛門ロックを装着する必要があるからだ。彼女はスカートの下に何も身につけていないことに、背徳的な羞恥を覚えた。

玄関で届いたばかりの小包を受け取る。箱を開けると、そこには二つの部品が入っていた。一つは金属製の鎖で、先端には南京錠のようなロック機構が付いている。もう一つは、空気で膨らむシリコン製の肛門プラグだった。説明書には、プラグを挿入した後、リモートで膨張させると書いてある。空気を抜かない限り抜けなくなる仕組みだ。

厳喆珂は器具をバッグにしまい、アパートを出た。午後の陽射しが眩しい。彼女は足早に歩きながら、周囲の視線を感じた。すれ違う人々は何気ない表情で通り過ぎていく。誰も彼女がスカートの下に何も履いていないことなど知る由もない。

城南公園に到着した。平日の午後、公園は閑散としている。高齢者が数人、ベンチで休んでいるだけだ。厳喆珂は公園の奥へと進んだ。人目につかない場所を探して、木々の陰に隠れた遊歩道を見つける。

そこには古びた手すりがあった。錆びついた金属製の手すりは、彼女が自分を固定するには十分な強度を持っていた。

厳喆珂は周囲を確認する。誰もいない。彼女はスカートをまくり上げ、しゃがみ込んだ。バッグから肛門プラグを取り出す。シリコン製のそれは、ひんやりと冷たい。彼女は唇を噛みしめ、ゆっくりとプラグを肛門に押し込んだ。

「んっ……!」

異物感に思わず声が漏れる。しかし、彼女は歯を食いしばって作業を続けた。プラグが完全に収まるまで挿入し、次に鎖の先端をプラグに接続する。カチッという音とともに、しっかりと固定された。そして、鎖のもう一端を手すりに巻き付け、南京錠を閉じた。

これで彼女は手すりに繋がれた。鎖の長さは約1メートル。わずかな範囲しか動けない。彼女はスマートフォンでメッセージを送信した。

「準備完了です。」

すぐに返信が来る。

「了解した。これから膨張させる。覚悟はできているな?」

次の瞬間、肛門内で異変が起きた。プラグが徐々に膨らみ始める。空気が注入される感触が、内部から広がっていく。

「ああっ……!」

厳喆珂は思わず腰を震わせた。プラグが肛門を押し広げ、内部で膨れ上がる。もう抜くことはできない。空気を抜くリモコンはマークが持っている。彼女は完全に拘束された。

彼女は必死にスカートを下ろし、鎖を隠そうとした。しかし、プリーツスカートの下から鎖が覗いているのがわかる。彼女は手すりに凭れかかり、なるべく自然な姿勢を装おうとした。

しかし、その不自然な様子はすぐに通行人の目を引いた。

「お嬢さん、大丈夫かい?」

声をかけられ、厳喆珂は全身を硬直させた。振り返ると、40代くらいの男性が立っている。スーツ姿で、ビジネスマンといった風体だ。

「だ、大丈夫です……ちょっと休んでいるだけで……」

彼女の声は震えていた。男性は疑わしそうに彼女を観察する。そして、スカートの裾から覗く金属製の鎖に気づいた。

「それは……何だ?」

男性の目つきが変わる。彼はゆっくりと近づいてきた。

「い、いえ、これは……」

「見せてみろ。」

男性は強引に彼女のスカートをめくり上げた。鎖が露わになる。プラグが肛門に挿入され、手すりに繋がれている光景が、完全に彼の目に映った。

「ほう……これは面白い。」

男性の口元に歪んだ笑みが浮かぶ。

「まさか、こんな場所で自分を拘束しているとはな。しかもJK制服だ。誰かの指示か?」

厳喆珂は顔を真っ赤にして俯いた。涙が目に浮かぶ。しかし、任務の指示を思い出す。

「もし誰かに見つかったら、その相手に姦淫されることを許せ。」

彼女は震える声で答えた。

「……はい。ご自由に……してください。」

男性は満足そうに頷いた。

「そうか。それなら、遠慮なくいただこう。」

彼は周囲を確認すると、彼女を手すりに押し付けた。スカートをまくり上げ、彼のズボンのファスナーを下ろす。そして、無理やり彼女の後ろから侵入した。

「ああっ!」

痛みと屈辱が同時に襲う。しかし、彼女は抵抗できなかった。肛門にはすでにプラグが挿入されている。男性のペニスはその脇をこじ開けるように進入した。

「くっ……狭いな。でも、それがいい。」

男性は激しく腰を動かし始めた。厳喆珂は手すりに掴まり、必死に耐える。彼はスマートフォンを取り出し、その様子を撮影し始めた。

「笑顔でカメラを見ろ。さもないと、もっと苦しめるぞ。」

厳喆珂は涙を堪え、カメラに向かって無理やり微笑んだ。男性はその表情を満足げに撮影する。

「そうだ。その顔だ。よく似合っているぞ、牝犬。」

罵倒の言葉が彼女の心をさらに抉る。しかし、彼女は従うしかない。すべてはあのビデオのためだ。

最初の男性が終わると、入れ替わるように別の男性が現れた。公園の清掃員だ。彼は状況を一目で理解し、にやりと笑った。

「おやおや、これはまた面白いことになってるな。俺も混ぜてもらおうか。」

「どうぞお好きに。」

先の男性が快く承諾する。清掃員は作業着を脱ぎ捨て、彼女の前に立った。

「口を開けろ。」

厳喆珂は従うしかない。彼女の口に清掃員のペニスが挿し込まれた。彼は彼女の頭を掴み、激しく抽送を始めた。吐き気を催すが、彼女はそれに耐えた。

その日、何人もの男が彼女を訪れた。サラリーマン、学生、作業員、老人……年齢も職業も様々な男たちが、鎖に繋がれた彼女を次々と姦淫した。そのたびに彼女は撮影され、辱めを受けた。

陽が傾き始めた頃、マークからメッセージが届いた。

「そろそろ終わりだ。空気を抜く。」

肛門内のプラグから空気が抜ける感触がした。シリコンが萎み、抜けやすくなる。厳喆珂はすぐにプラグを引き抜き、鎖を外した。彼女の身体は無数の精液で汚れていた。スカートもブラウスも乱れ、ネクタイは緩んでいた。

彼女はスマートフォンで撮影されたビデオを確認する。何本ものファイルが、彼女の恥辱の記録として保存されていた。指示通り、匿名のメールアドレスにすべてのファイルを送信する。

そして、彼女はよろめきながら公園を後にした。帰路につく間、すれ違う人々の視線が刺さる。誰も彼女が何を経験したか知らない。しかし、彼女はもう以前の自分ではいられなかった。

アパートに戻り、部屋のドアを閉めた瞬間、厳喆珂はその場に崩れ落ちた。涙が止まらない。彼女は浴室に這って行き、シャワーを浴びた。熱い湯が身体に染みる。彼女は隅に座り込み、膝を抱えて泣き続けた。

スマートフォンが再び震える。新しいメッセージだ。

「よくやった。今日のビデオはすべて確認した。素晴らしい出来だ。また次の任務を送る。楽しみにしていろ。」

厳喆珂はスマートフォンを握りしめ、震える指で返信した。

「……かしこまりました、ご主人様。」

彼女はもう自分を取り戻せないことを悟っていた。この歪んだ関係から抜け出せない。あのビデオが彼女を永遠に縛っている。彼女は楼成の顔を思い浮かべた。彼は何も知らない。遠い異国で、彼女の帰りを待っている。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

厳喆珂は何度も謝り続けた。しかし、その言葉は誰にも届かない。浴室のタイルに反射する自分の姿は、涙と精液にまみれていた。彼女はもはや、かつての自分ではない。

翌朝、厳喆珂は腫れた目で目覚めた。身体中に痛みが走る。彼女はベッドから起き上がり、鏡の前に立った。自分の顔が別人のように見える。目の下の隈、疲れ切った表情、荒れた肌。

彼女は制服を洗濯し、身体を清めた。そして、平常通りの生活を装おうとした。しかし、心の奥底では、また次の任務が来ることを予感していた。

その晩、彼女が夕食の準備をしていると、再びスマートフォンが震えた。新しいメッセージだ。

「次の任務は月曜日だ。詳細は追って連絡する。それまでに体調を整えておけ。」

厳喆珂は震える手で返信した。

「了解しました。」

彼女は冷蔵庫から食材を取り出し、一人分の夕食を作り始めた。窓の外には、静かな夜の街が広がっている。彼女の心は、もう二度と戻れない場所にあることを、暗闇が知っているかのようだった。

食事中、彼女はスマートフォンに保存された楼成の写真を見つめた。彼の優しい笑顔が、今はとても遠い。彼女は写真に指を触れた。

「成……私は……」

言葉にならない。彼女はスマートフォンを置き、静かに涙を流した。

何時間が経っただろう。彼女がソファでうつらうつらしていると、再び通知音が鳴った。新しい任務の詳細が届いたのだ。

「月曜日、午前10時。大学の図書館へ行け。そこでの行動は、追って指示する。今回は、特別な準備が必要だ。以下のものを購入しておけ。」

リストには、バイブレーター、ローター、その他のアダルトグッズが並んでいた。しかも、それらを大学内で使用することが示唆されていた。

厳喆珂はスマートフォンを握りしめ、深く息を吸った。彼女の運命は、もう彼女自身のものではない。彼女はただ、ご主人様の命令に従うだけの存在になったのだ。

「……かしこまりました、ご主人様。」

彼女はそう返信すると、ベッドに横たわった。明日もまた、彼女は辱めに耐える。そして、その日々が永遠に続くことを、彼女は知っていた。

チャプター7

チャプター7

月曜日の朝、厳喆珂は薄く開けたカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。体の奥底にまだ残る倦怠感を引きずりながら、彼女はゆっくりと起き上がった。ベッドサイドのスマートフォンが、低く短いバイブレーションを発する。新しいメッセージの通知だ。画面をタップする指が、わずかに震えていた。

送信者は相変わらず匿名のアカウント。本文は簡潔だった。

「今週の任務を開始する。1日目:あなたの借りているアパートの階段室で、服をすべて脱ぎ、5分間裸で立っていなさい。誰かに見られる可能性を考慮し、扉は施錠しないこと。写真を3枚撮影し、送信せよ。期限は本日23時59分。」

文字面だけを見れば、単なる指示に過ぎない。しかし、その背後にある意図は明確だった。マークは彼女の尊厳を少しずつ、しかし確実にすり減らそうとしている。階段室という半公共の空間で裸になることは、自宅内で裸になるのとは次元が違う。誰がいつ通りかかるかわからない場所で、無防備に身を晒す——その羞恥と恐怖を、彼は味わわせたいのだ。

喆珂はスマートフォンを握りしめたまま、しばらく動けなかった。瞳の奥に、一瞬の怒りと抵抗心がよぎる。しかし、すぐにその感情は冷たい諦念に覆い尽くされた。手元には、あの恐ろしい映像を盾に取られてしまった自分がいる。彼女の裸体が、夫ではない男に蹂躙される映像。それがネットに拡散されれば、キャンパスでの立場も、そして何より楼成との関係も、すべて崩壊する。

「……やるしかないのよ」

自分自身に言い聞かせるように、喆珂は呟いた。ゆっくりとベッドを抜け出し、洗面所に向かう。鏡の中の自分の顔は、青白く、目元にはうっすらと隈が浮かんでいた。ここ数週間のストレスが、彼女の美しい肌にも陰りを落としている。

朝の支度を済ませた後、彼女はアパートの部屋を出た。共有スペースである廊下には、幸いにも人の気配はない。階段室はエレベーターのすぐ隣にあるが、この時間帯は入居者の多くがすでに出勤しているか、まだ寝ているかのどちらかだ。喆珂は深呼吸を一つして、階段のドアを押し開けた。

コンクリート打ち放しの階段室は、ひんやりとした空気に包まれている。一階から四階までの踊り場は、天井の蛍光灯が白々と照らしていた。彼女は最も人の目に触れにくい二階と三階の間の踊り場を選んだ。壁は無機質なグレーで、小さな窓から外の景色がわずかに覗くだけだ。

スマートフォンを手に取り、タイマーを5分にセットする。そして、ゆっくりと服に手をかけた。まずカーディガンを脱ぎ、次にブラウスを脱ぐ。下半身に目をやると、スカートのファスナーを下ろし、それを足元に落とした。最後に下着一枚になる。ここまではまだ何とか気持ちを保てたが、次の動作——ブラとショーツを外す——には、強い抵抗感があった。

「……はあ」

細く長い息を吐き出し、彼女は目を閉じた。手が震える。それでも、背中のホックを外し、肩からストラップを滑り落とす。ショーツをずり下ろすとき、指先が自分の肌に触れるたびに、鳥肌が立った。

裸になる。何の防御もない状態で、この冷たい空気の中に立つ。喆珂は自分の腕で胸を隠そうとしたが、それも指示に反するかもしれないと思い直し、両腕を体の横に下ろした。彼女の裸体は、均整の取れた美しいプロポーションを誇っていた。白磁のような肌が、蛍光灯の明かりを受けてほのかに輝いている。

心臓が激しく打っている。階段の上から誰かが降りてくる足音が聞こえるたびに、彼女の全身は硬直した。しかし、幸いにもその足音は二階のドアが開く音とともに消えていった。誰もこの踊り場を通りかからない。それでも、いつ誰が現れてもおかしくないという緊張感が、彼女の精神を少しずつ蝕んでいく。

タイマーが電子音を鳴らした。5分が経ったのだ。喆珂は急いで服を着直し、指定されたポーズで自撮り写真を撮影した。顔が写らないように、細心の注意を払って。三枚の写真を選び、マークの指示通りに無記名の画像投稿サイトにアップロードし、そのリンクを匿名アカウントに送信した。

送信完了の表示を確認した瞬間、彼女はその場にしゃがみ込んだ。膝が震えている。涙がこぼれ落ちそうになるのを、必死にこらえた。こんなことが、これから何度も繰り返されるのだ。今週だけでも、まだ三日間の任務が残っている。

その日の夕方、マークから新たなメッセージが届いた。内容は、翌日——火曜日——の任務に関する指示だった。

「2日目:昼食の時間帯に、出前を注文しなさい。下着は一切着用せず、その上から透明なランジェリーのみを着用して、玄関で受け取りなさい。配達員を積極的に誘惑する必要はないが、もし配達員が何かを求めてきた場合、拒否してはならない。なお、配達員には事前にあなたが『特別なサービス』を希望していることを伝えてある。いい子にしていれば、すぐに終わる。」

喆珂はその文字を何度も読み返した。頭の中が真っ白になり、一時的に思考が停止した。「もし配達員が何かを求めてきた場合、拒否してはならない」——その言葉の意味は明白だった。マークは彼女が配達員に何をされるか、最初から計算しているのだ。それに加えて、配達員が事前に情報を得ているということは、今日の相手は匿名で送り込まれた加害者の一人に過ぎない——そう考えると、全身の血の気が引く思いだった。

何とか抗議のメッセージを送ろうとしたが、スマートフォンを握る手が震えて文字が打てない。送信ボタンを押す勇気もなく、結局その夜は何も返信できずに終わった。

火曜日の午前中、喆珂はほとんど食事を取れなかった。胃のあたりが重く、吐き気がこみ上げてくる。それでも、時間は残酷なほど正確に過ぎていく。午前11時を過ぎたころ、彼女はスマートフォンで出前アプリを開き、近くの中華料理店で定食を注文した。配達備考欄には何も書かなかったが、マークがすでに何らかの手を打っているのだろう。注文が受理されたという通知が来た瞬間、彼女は自分の運命が決まったような気がした。

指示に従い、喆珂はすべての下着を脱いだ。冷たい空気が直接肌に触れる。その上から、彼女は透明なレースのランジェリーを一枚羽織った。それはほとんど透けており、胸のふくらみや下腹部の線がはっきりと視認できる。少しでも自分の体を隠そうと、バスローブを重ね着することを考えたが、それも禁じられているかもしれない——そう思いとどまった。

結局、彼女は透明なランジェリーだけを身に着け、その上に薄手のカーディガンを羽織った。カーディガンの前を合わせれば、一見普通の服装に見えるかもしれない。しかし、玄関で開錠して配達員と対面した瞬間、その装いは無意味になる。彼の目には、透けたレース越しの裸体がはっきりと映るのだ。

注文から30分後、インターホンが鳴った。喆珂の心臓が大きく跳ねる。画面には、若い男性配達員の姿が映っていた。彼はごく普通の顔立ちで、特に特徴的なところはないが、目つきがどこか落ち着かない様子だった。

「は、い……少々お待ちください」

喆珂は声を震わせながら応答し、ゆっくりと玄関のドアを開けた。ドアの隙間から顔を出すと、配達員は一瞬驚いた表情を見せ、次に彼女の服装——特に、薄いカーディガンの下から透けて見える透明なランジェリーに視線を釘付けにした。

「あ、お届け物です……こちらのサインをお願いします」

彼は無理に落ち着いた声を出そうとしているが、その声は明らかに上ずっていた。喆珂は震える手で伝票を受け取り、サインをした。その間、配達員の視線は彼女の胸元と脚の線を何度も往復している。

「あの……お客様、こちら、お店からの特別なサービスの案内なんですが……」

配達員はバッグから一枚の紙を取り出した。そこには、乱暴な手書きの文字で「追加サービス:女性客が配達員に性的サービスを求める場合があります。了承の上でお届けください」と書かれていた。明らかにマークが仕組んだものだ。

「こ、これは……」

「もう結構です。ありがとうございました」

喆珂は受け取りを拒否しようとしたが、そのとき配達員の手が素早く動き、彼女の手首を掴んだ。彼の目は濁り、もはや平常心を保っていない。

「店から言われてるんです。サービスを求められたら断るな、って。それに、あなた、こんな格好で出てきて……明らかに誘ってるんでしょ?」

「違う!私は……違うの!」

喆珂は必死に手を振り解こうとしたが、相手は若くて力がある。彼女の腕を引くと、玄関の中にずるずると引きずり込んだ。カーディガンがはだけ、透明なランジェリー越しの裸体が露わになる。配達員の息が荒くなるのが、耳元で聞こえた。

「きれいな体してるね……旦那さんは知ってるの?こんなこと」

「やめて……お願い……やめて……」

喆珂の懇願も虚しく、配達員は彼女を床に押し倒した。玄関マットの上に仰向けに倒れた彼女の上に、彼が覆いかぶさる。透明なレースが破れる音がした。

「いい子にしてれば、すぐ終わるって言われたんでしょ?俺も早く帰りたいんだ。協力してくれよ」

彼の手が、彼女の体をまさぐる。抵抗しようとするたびに、彼はその手に力を込めた。恐怖と羞恥で、喆珂の視界が歪む。涙が止まらず、ぼやけた視界の中で、天井の蛍光灯が白く光っているのが見えた。

どれほどの時間が経ったのか——10分か、20分か。配達員は彼女の体を好き勝手に弄び、最後に簡単な言葉を残して立ち去った。

「ありがとうございました。またご注文お待ちしてます」

その皮肉な別れの言葉が、かえって残酷だった。喆珂は床に横たわったまま、動けなかった。体のあちこちが痛み、透明なランジェリーは破れ、所々に彼の体液が染み込んでいた。彼女はゆっくりと体を起こし、バスルームに這うように向かった。シャワーの蛇口をひねり、冷水を浴びる。冷たい水が、汚れた肌を洗い流す——しかし、心に刻まれた傷は、そんな簡単に消えるものではなかった。

水曜日の朝、喆珂はほとんど眠れないまま目を覚ました。昨夜、マークから新しい指示が届いていることを思い出し、恐る恐るスマートフォンを開いた。

「3日目:野外露出の課題。あなたが借りているアパートから徒歩15分以内の場所で、公衆トイレではない場所を選び、そこで立ち小便をしなさい。できれば、草むらや木陰など、完全に隠れていない場所が望ましい。その様子を動画で撮影し、送信せよ。撮影は自分で行うこと。顔は写さなくてよいが、局部がはっきりと映っている必要がある。」

喆珂は頭を抱えた。自宅の中での行為でも耐え難いのに、外の——公共の場で露出するなど、正気の沙汰ではない。しかし、拒否すればどうなるか。あの映像がネットに拡散される。楼成に知られる。すべてを失う。

彼女はスマートフォンを握りしめ、外に出る準備を始めた。目立たないように、地味な色のトレーナーとジーンズに身を包む。キャップを深くかぶり、サングラスも着用した。万が一、誰かに顔を認識されないための措置だ。

アパートを出て、近くの小さな公園に向かった。その公園は、比較的人の少ないエリアにあり、周囲には古い住宅が立ち並んでいる。公園の片隅には、大きなクスノキが枝を広げ、その下にはベンチがある。しかし、彼女が必要としているのはトイレではなく、誰の目にも触れずに用を足せる場所だ。

喆珂は公園の奥へと進んだ。クスノキの根元には、低木が茂り、地面が少し窪んでいる場所がある。そこなら、通行人からは見えにくいかもしれない——そう判断し、彼女はトレーナーのファスナーを下ろし、ジーンズとショーツを膝までずり下ろした。草むらにしゃがみ込む。冷たい土の感触が、太ももの裏に伝わる。

……どうして、私がこんなことを。

自問自答しながらも、彼女はスマートフォンを手に持ち、動画の録画を開始した。カメラは自分の下半身を映している。彼女は目を閉じ、意識を集中させた。最初はなかなか出なかったが、緊張と恐怖で膀胱が限界に達していたのか、やがて尿が地面に落ち始めた。草の葉を伝い、土に吸い込まれていく。その音が、動画にはっきりと録音された。

数秒後、彼女は用を済ませ、急いで服を整えた。動画を停止し、そのファイルをスマートフォンの隠しフォルダに保存した。そして、指定されたアドレスに送信する。指先が震えていたが、何とか操作を完了した。

アパートに戻る道すがら、喆珂は自分の行為を反芻していた。あんな場所で、もしかしたら誰かに見られていたかもしれない。自分はどの段階まで堕ちれば気が済むのか。そもそも、マークの要求はどこまですれば終わるのか。終わりは来るのか——。

午後、スマートフォンが震えた。また新しいメッセージか——と思いながら見ると、それはマークからではなく、留学生会のグループチャットだった。週末に交流イベントがあるという連絡で、彼女も参加を求められている。喆珂は迷ったが、断れば不自然に思われるかもしれないと考え、渋々参加の返事をした。

その夜、マークからの指示はなかった。木曜日と金曜日は任務がなく、休息を取らせるという内容が、事前に伝えられていた。しかし、喆珂にはその「休息」すらも、次の屈辱への準備期間に過ぎないように思えた。

木曜日、彼女は一日中アパートにこもった。カーテンを閉め切り、薄暗い部屋の中で、ただぼんやりと過ごした。昼過ぎになって、ようやく起き上がり、簡単な食事を取った。味はほとんど感じなかった。食べるという行為そのものが、機械的になっていた。

金曜日も同じような一日だった。午前中に大学の図書館で数時間過ごしたが、本に書かれた文字が頭に入ってこない。目の前の文字はただの記号の羅列で、意味を成さなかった。周囲の学生たちが笑い合っている声が、遠くの世界の出来事のように聞こえた。

午後、彼女はアパートに戻り、荷物の整理を始めた。机の引き出しの奥から、夫・楼成との結婚写真が入った小さなフォトフレームを見つけた。写真の中の彼は、優しく微笑んでいる。その笑顔を見た瞬間、喆珂の目の涙が止まらなかった。

「ごめん……ごめんね、楼成……」

誰もいない部屋で、彼女は写真に向かって謝り続けた。自分がされていること、自分がしていることを、彼は知らない。知ったら、彼はどう思うだろう。愛していると言ってくれたあの人は、こんなにも汚れた自分を、それでも愛してくれるのだろうか——。

涙が枯れるまで泣いた後、喆珂はスマートフォンを手に取った。マークからのメッセージが届いているかもしれない、という恐怖と、もう任務がないという安堵が入り混じる。通知を確認すると、彼からの新しい連絡はなかった。代わりに、留学生会から明日のイベントの詳細が届いていた。会場はキャンパス内の学生会館で、開始は午後2時。喆珂は参加ボタンをタップした。

その夜、彼女は湯船に長く浸かった。温かいお湯が、疲れた体を包み込む。先週までの一週間の出来事が、走馬灯のように頭をよぎった。マークの陰湿な支配。配達員の荒々しい手つき。公園でのあの屈辱。そして……これからも続くであろう、さらなる試練。

「……私は、どこまで堕ちるんだろう」

浴槽の中で、彼女は自分の体を見下ろした。湯の表面に揺れる自分の姿は、確かに彼女自身であるのに、もう一人の別人のように感じられた。厳喆珂という人間は、もうここにはいないのかもしれない。ただ、マークに操られる操り人形だけが、そこに残っている。

彼女は深く息を吸い込み、湯の中に顔を沈めた。水中で目を開けると、ぼやけた世界が広がっている。息を止めていられる限界まで、そのままじっとしていた。肺が空気を求めて痙攣し始めたとき、彼女はようやく顔を上げた。

生きている。まだ、終わっていない。

喆珂は湯船から上がり、バスローブを羽織った。鏡の前で自分の目を見る。赤く腫れた目。疲れ切った表情。しかし、その瞳の奥には、わずかながらかすかな灯火が灯っているようにも見えた。

——まだ、私は私だ。どんなに汚されても、楼成の妻としての誇りだけは、失いたくない。

そう自分に言い聞かせても、胸の奥底では、もうすでにその誇りが脆くも崩れ去っていることを、彼女は感じていた。ただ、それに気づかないふりをしているだけだった。

週末。土曜日の朝、喆珂は留学生会のイベントに参加するために、キャンパスへ向かった。天気は快晴で、秋の陽光がキャンパスを明るく照らしている。彼女は白いブラウスにタイトスカートという、一見清楚な装いを選んだ。しかし、服の下にはいつでも命令に従えるように、下着をつけていなかった。それは、マークからの直接の指示ではない。しかし、彼女の心はすでに、自ら服従の姿勢を取るようになっていた。

イベント会場には、すでに多くの留学生が集まっていた。彼女は知り合いの何人かに挨拶をし、軽く会話を交わした。誰も彼女の異変に気づいていない。表面的な笑顔は、うまく作れている。しかし、心の内側では、常にマークの影がよぎっていた。

午後3時ごろ、イベントの合間にスマートフォンを確認すると、マークから新しいメッセージが届いていた。喆珂の心臓が凍りつく。

「よく休めたか?来週からまた新しい任務を用意している。もっと面白いことを考えてある。週明けまで楽しみにしていろ。」

その言葉の端々に、悪意と軽蔑が滲んでいた。喆珂はスマートフォンを握りしめ、その場で立ち尽くした。周りの人々の笑い声が、遠くの騒音のように聞こえる。

——まだ終わらない。もっと酷いことが待っている。

彼女は顔を上げ、窓の外を見た。青空が広がり、雲一つない。しかし、その青さは、彼女の目には黒く濁って映った。

その夜、アパートに戻った喆珂は、ベッドに横たわりながら、天井を見つめていた。明日は日曜日。任務のない最後の休息日。そして月曜日から、また新たな屈辱の日々が始まる。彼女はゆっくりと目を閉じた。

——楼成。もしもあなたがここにいてくれたら、私はこんな風にならなかったのに。

その思いが、心の中で繰り返し響いた。しかし、彼はここにいない。彼は母国で、武者としての道を歩んでいる。彼の妻がこんなにも汚されているとは、夢にも思っていないだろう。

喆珂は静かに涙を流した。涙は枕に染み込み、冷たく広がっていく。彼女の心もまた、同じように冷たく、そして——少しずつ、壊れ始めていた。

チャプター7 終わり