林雪は朝の九時ちょうどに、その白いビルに足を踏み入れた。エントランスの冷房が肌を刺し、彼女は無意識にカメラバッグのストラップを握りしめた。写真撮影への情熱だけでこの業界に飛び込んだ新卒の彼女には、社内のひんやりとした空気が異様に感じられた。
「林さんですね。社長がお待ちです」
受付の女性は無表情でそう言うと、廊下の奥を指さした。林雪は軽く会釈をして、示された方向へ歩き出した。壁には派手なポスターが貼られ、商品のパッケージと思しき画像が整然と並んでいる。彼女はそれを直視できず、目をそらした。
社長室のドアをノックすると、中から低い声が返ってきた。
「入れ」
張社長はデスクの向こうで煙草をふかしていた。机の上には書類が乱雑に積まれ、灰皿には吸い殻が山盛りになっている。彼は林雪を一瞥すると、口元に笑みを浮かべた。
「新人か。今日からここで働くんだな。まあ、うちの会社にはちょっとした慣習があってな。新入社員は全員、自己紹介をしてもらうんだ」
「自己紹介……ですか?」
林雪が不安そうに尋ねると、張社長は煙草を灰皿に押しつけ、立ち上がった。
「ああ、社員の前でな。お前のことをよく知ってもらうための儀式だと思え。さあ、向こうのスタジオに来い」
彼は先に立って歩き出した。林雪は従うしかなかった。心臓が早鐘を打ち、手のひらに汗が滲む。何かがおかしい。そう直感したが、初日から反抗する勇気はなかった。
スタジオにはすでに十数人の男たちが集まっていた。李強はカメラの三脚を調整しながら、林雪を見て微笑んだ。その笑顔は一見穏やかだが、目の奥に何か底光るものを感じさせる。王浩は壁にもたれて腕を組み、林雪を値踏みするように見下ろしていた。他の男たちも、それぞれに淫らな笑みを浮かべている。
「さあ、林さん。まずは服を脱ぎなさい」
張社長が平然と言った。林雪は耳を疑った。
「え……何を言って……」
「言った通りだ。自己紹介の第一歩だ。お前の体を皆に見せるんだ。それがうちのルールだ」
林雪の顔から血の気が引いた。彼女は首を振り、後ずさりした。
「そんな……できません。私、帰ります」
「帰る? 契約書にサインしただろう。試用期間中は会社の指示に従うと。お前がここを辞めるなら、違約金を払ってもらうことになるぞ。それでいいのか?」
張社長の声は冷たく、断固としていた。林雪は言葉を失った。確かに契約書には細かい条項が並んでいたが、まさかこんな内容とは思わなかった。違約金の額は、彼女の貯金では払えないほど高額だった。
李強がそっと近づいてきた。
「林さん、慣れれば大したことじゃない。うちは家族みたいなものだからね。さあ、楽にしよう」
彼の手が林雪のブラウスのボタンに触れた。林雪は反射的に手を払いのけようとしたが、背後から王浩ががっしりと両腕を掴んできた。
「おとなしくしろよ、新人」
王浩の息が耳元にかかる。林雪は恐怖で体を硬くした。逃げ場はない。彼女は唇を噛みしめ、目を閉じた。李強が手際よくボタンを外し、ブラウスがはだけられる。次にスカートのファスナーが下ろされ、衣類が一枚また一枚と剥ぎ取られていった。男たちの視線が肌に突き刺さる。林雪はまるで自分の体が別物になったような感覚に襲われた。
「さあ、こっちに立って」
張社長がスタジオ中央のスポットライトの下を指さした。王浩に押され、林雪はふらふらとその場所に立った。明るい光が彼女の裸を容赦なく照らし出す。男たちの視線が全身を舐め回す。彼女は腕で胸を隠そうとしたが、張社長が厳しい声で言った。
「腕を下ろせ。隠すんじゃない」
林雪は震えながらも、従うしかなかった。腕をだらりと垂らし、うつむく。涙がこぼれ落ちそうになるのを必死にこらえた。
「よし、じゃあ始めるぞ」
張社長がそう言うと、男たちはそれぞれポケットやバッグから林雪の服を取り出した。先ほど脱がせたばかりのブラウスやスカート、下着類だ。林雪は何が起こるのか理解できなかった。
李強がブラウスを手に取り、それを顔に近づけて匂いを嗅いだ。そして自分の股間をまさぐりながら、ブラウスで自身を包み込むようにこすり始めた。他の男たちも同様に、林雪の衣類を使って自慰行為を始めた。スカートに鼻をうずめる者、下着を握りしめて腰を動かす者。スタジオには淫らな息遣いと衣擦れの音が満ちた。
林雪はその光景に眩暈がした。自分の身に着けていたものが、見知らぬ男たちの手で汚されている。吐き気が込み上げてきたが、その場で嘔吐することさえ許されない気がした。彼女はただ立ち尽くし、無機質な天井の照明を見上げた。目を閉じれば、その映像がまぶたの裏に焼きつく。開けていれば、現実が迫ってくる。
数分後、李強が最初に達した。彼はブラウスを握りしめ、荒い息をついた。そして濡れたブラウスを林雪に差し出した。
「さあ、着ろ」
林雪は目の前のブラウスを受け取るのが怖かった。生地は湿っていて、生暖かく、嫌な匂いが染みついている。彼女は首を振ったが、張社長が冷たく命令した。
「着ろ。これもルールだ」
林雪の手は震えていた。彼女は濡れたブラウスを広げ、自分の体に纏わせた。冷えた布地が肌に張り付き、ぬるぬるとした感触が全身に広がる。次にスカートが差し出された。同じように湿っていて温かい。彼女は歯を食いしばり、それを履いた。下着も同様に濡れており、彼女はそれを身につけるたびに自分の尊厳が少しずつ削り取られていくのを感じた。
男たちは次々と達し、そのたびに林雪は新たな衣類を着せられた。ブラウスは複数の精液でべとつき、スカートは重く垂れ下がっている。彼女は全身が汚物にまみれたような感覚に襲われた。それでも彼女は黙って耐えた。拒否すれば、さらに酷いことが待っている。そう直感した。
最後に王浩が下着を手に取り、彼女の目前で腰を動かした。彼は林雪の目をじっと見つめながら、卑猥な笑みを浮かべている。林雪はその視線から逃れるように顔を背けた。数秒後、王浩は低く唸り、下着を彼女の顔に押し付けてきた。
「お前の匂いだ。よく覚えておけよ」
林雪は顔をそむけようとしたが、王浩の手が強く押さえつける。鼻の先に生温かい液体の匂いが広がり、彼女は思わず息を止めた。やがて王浩が手を離し、下着を彼女の手に握らせた。
「着ろ」
林雪は手の中の下着を見下ろした。白い布地が濁った色に染まっている。彼女はそれを身につけることがどうしてもできず、その場に立ちすくんだ。しかし張社長がまたしても冷たい声を投げかけた。
「時間を無駄にするな。着ろと言ったら着るんだ」
林雪はゆっくりと下着を広げ、足を通した。濡れた感触が太ももに広がり、彼女の内側まで犯されているような気がした。涙がついにこぼれ落ちた。それでも彼女は声を上げなかった。上げれば、さらに大きな屈辱が待っていることを本能的に理解していた。
すべての衣類を着終えた林雪は、精液と汗の混じった異臭を全身にまとっていた。男たちは満足げに笑い合い、李強はカメラを構えていた。
「記念に一枚撮っておくか」
フラッシュが光り、林雪はその閃光の中で自分の姿が永遠に記録されることを悟った。彼女はもう二度と、純粋な気持ちでシャッターを切ることはできないだろう。その瞬間、彼女の心のどこかがぽっきりと折れた。
張社長が煙草に火をつけ、煙を吐き出しながら言った。
「これで自己紹介は終わりだ。今日はもう帰っていい。あしたから、本格的に仕事を覚えてもらう。ちゃんと期待に応えろよ」
林雪は無言でうなずいた。彼女の目は虚ろで、焦点が合っていない。足元がふらつき、壁に手をついて何とか体を支えた。男たちはそれぞれの場所に散っていき、スタジオには林雪だけが残された。
彼女はゆっくりとスタジオを出て、更衣室に向かった。鏡に映る自分は、髪は乱れ、着ている服はよれよれで、異様な臭いを放っている。彼女はシャワーを浴びたかったが、そんな気力も湧かなかった。ただ壁にもたれ、床に座り込んだ。
初出勤の日が、これで終わった。そして、これから何度もこの日が繰り返されることを、彼女は薄々感じていた。抵抗する力はもうない。ただ、流されるままに生きるしかないのだ。林雪は冷たい床の感触を頬に感じながら、ゆっくりと目を閉じた。