# 第一章 予想外の発見
放課後の校舎を出ると、夕暮れの風が頬を撫でた。小天はいつものようにうつむき加減で歩きながら、今日も無事に一日が終わったことにほっとしていた。クラスメイトとの会話は必要最低限。目立たないことが何よりの安心だった。
家に着くと、玄関の鍵が開いていることに気づいた。母はまだ仕事のはずなのに。リビングに明かりはついておらず、代わりに二階から微かな物音が聞こえてくる。
「お母さん?」
声をかけても返事はない。しかし確かに誰かがいる気配がする。小天は階段を上がりながら、嫌な予感に襲われた。母の寝室のドアがわずかに開いていた。そこから漏れる明かりと、くぐもった声。
心臓が早鐘を打ち始める。見てはいけないと分かっていながら、足は勝手に動いた。ドアの隙間から、部屋の中が覗ける位置に体を滑り込ませる。
その瞬間、小天の時間が止まった。
母がベッドの上にうつ伏せになっていた。艶やかな黒のストッキングが脚を包み、ハイヒールを履いた足が少し浮いている。その隣には、叔母の姿があった。叔母も同じようにセクシーなストッキングを履き、手には鞭のようなものを持っている。
「もっと…もっと強くお願い…」
母の声が甘く掠れていた。今まで聞いたことのないような、淫らな響き。叔母が手にした鞭で母の尻を打つと、パシッという鋭い音と共に、母の体が震えた。
「ああっ…ありがとうございます…」
母の口から漏れる言葉は、まるで別の人間のようだった。いつも上品で淑やかな母の姿はどこにもない。そこにいるのは、支配されることを悦ぶ一人の女だった。
小天の頬が熱くなった。股間が反応しているのを感じる。恥ずかしさと興奮が入り混じり、頭の中が真っ白になる。見てはいけない。そう思いながらも、目が離せなかった。
叔母が母の髪を掴み、顔を上げさせる。母の目はとろりと潤み、頬は紅潮していた。
「姉さん、今日はよく感じてるね。小天が帰ってくるかもしれないのに、そんな声出しちゃって」
叔母の言葉に、小天は息を呑んだ。自分の名前が出たことで、現実に引き戻される。この光景を目撃してしまったことの重大さが、ようやく理解できた。
「やめて…そんなこと言わないで…」
母か弱々しく首を振るが、その仕草すらも艶めかしく見えた。小天はもうこれ以上見続けることができず、気配を消してその場を離れた。足音を立てないように、慎重に階段を下りる。自分の部屋に駆け込み、ドアを閉めて鍵をかけた。
壁にもたれ、荒い息を整える。心臓はまだ激しく打ち続けている。見てしまった。母の秘密を。そして、それを見た自分の中に、確かに興奮が芽生えていた。
どうして母があんなことを。あのストッキングは…確か、前に母のクローゼットで見たことがある。気になって触った記憶がある。あの滑らかな感触が、今も指先に蘇る。
それからどれだけ時間が経っただろう。階下から母の声が聞こえてきた。
「小天?帰ってるの?」
いつもの優しい声。さっきまでの淫らな姿とは別人のようだ。小天は返事をしようとして、声が出なかった。何度か咳払いをして、なんとか「うん」とだけ答えた。
「ご飯にするわよ。降りてきて」
「…後で食べる」
返事をすると、母の足音が遠ざかっていった。小天は自分の手のひらを見つめた。震えている。興奮なのか、恐怖なのか。それとも…両方なのか。
夜、布団に入っても眠れなかった。まぶたの裏に、あの光景が焼き付いている。ストッキングに包まれた母の脚、叔母の手に握られた鞭、そして母の甘い声。何度も何度も再生される。
小天は自分の欲望を自覚していた。以前から、母のストッキングに何故か惹かれていた。クローゼットの中にしまってあるストッキングを見ては、触りたい衝動に駆られたこともある。でも、それはあくまで秘かな憧れだった。
今日見たものは、その憧れに火をつけた。母は支配されたがっている。そして叔母は、それを受け入れている。もしも自分が…。
「何考えてるんだ、俺」
小天は自分の思考を打ち消すように頭を振った。母は母だ。自分の母親だ。そんなことを考えるのは間違っている。道徳心が警鐘を鳴らす。しかし、その警鐘はかき消されてしまう。あの光景が、あの音が、頭から離れない。
朝、目を覚ますと、重い疲労感があった。ほとんど眠れなかったからだ。リビングに下りると、母が朝食の準備をしていた。スーツ姿で、頭はきっちりとまとめられている。いつものキャリアウーマンの姿だ。
「おはよう。顔色が悪いけど、大丈夫?」
「…うん、ちょっと眠れなかっただけ」
小天は俯いて答えた。母の顔をまともに見られない。もし目が合ったら、自分が何を知っているか悟られてしまいそうだった。
「そう。無理しないでね」
母が手を伸ばして小天の頭を撫でた。その手の温もりに、また違う感情が湧き上がる。母は相変わらず優しい。でも、その優しさの裏にあるものを見てしまった今、素直に受け入れられなかった。
登校するため玄関で靴を履いていると、背後から声がかかった。
「小天」
振り返ると、母が立っていた。何かを言いたそうな表情だ。一瞬、昨夜のことを問い詰められるのではないかと緊張した。
「いってらっしゃい」
ただそれだけだった。母は優しく微笑んでいる。でもその微笑みの裏に、何か別の意味が隠されている気がしてならなかった。
「…いってきます」
小天は慌てて家を飛び出した。外の冷たい空気が、熱を持った頬を冷ます。このまま日常が続くのだろうか。それとも、あの秘密が何かを変えてしまうのだろうか。
誰にも言えない秘密を抱え、小天は歩き出した。頭の中では、昨夜の光景がまだ鮮明に蘇っていた。そして、それ以上に怖かったのは、その光景をもう一度見たいと願う自分がいることだった。