放課後、小天はいつものように自宅のマンションのエレベーターに乗った。玄関のドアを開けると、いつもなら母の「おかえり」という声が聞こえてくるはずなのに、今日は妙に静かだ。
「母さん?」
リビングには誰もいない。ランドセルをソファに置き、キッチンを覗くが、食事の準備の気配もない。どうやらまだ帰っていないらしい。小天は自分の部屋へ向かおうとした瞬間、二階からかすかに何かの物音が聞こえた。
もともと気にする性格ではなかったが、その音が妙に引っかかった。ゴトン、という鈍い音の後、くぐもった女性の声が聞こえたのだ。母の部屋だ。
階段を上りながら、もしかしたら母が何か落としたのかもしれない、と思った。しかし廊下に立つと、ドアの向こうから母の声がはっきりと聞こえてきた。それは苦しそうでありながら、どこか甘やかな響きを帯びていた。
「ああ…もっと…もっと強く…」
小天の心臓がどくりと跳ねた。何を言っているんだ、母さんは。誰かと話しているのか?もしかして友達か、それとも——
彼は無意識のうちに息を殺し、ゆっくりとドアの隙間に近づいた。少しだけ開いた隙間から、部屋の中の光景が覗ける。
母がベッドの上にうつ伏せになっていた。足にはきらびやかな黒のストッキング、さらにその上から細いヒールのパンプスを履いている。手首は何かの紐で後ろ手に縛られ、口には布のようなもので猿轡がされている。しかしそれ以上に衝撃的だったのは、母の隣にいる小姨の姿だ。
「姉さん、こんなに濡らして…本当に気持ちいいんだね」
小姨は細長い鞭のようなものを持ち、優しく母の太ももを撫でていた。彼女自身もセクシーなガーターベルトとストッキング姿で、普段の朗らかな印象とはまったく別人のように見える。
「うん…うん…」
母は猿轡の隙間から甘えたような声を漏らし、腰を小刻みに動かしている。その姿はまさに、テレビやネットで見たことのあるSMプレイそのものだった。
小天の頭は真っ白になった。眩暈がして、手すりに手をついた。心臓は激しく打ち鳴り、耳の奥で血の騒ぐ音がする。これは夢だ——そう思いたかったが、視界に飛び込んでくる光景はあまりにも現実的だ。
母が——自分の母親が、あんな格好で、あんな声を出して、しかも相手は自分の叔母だ。何を考えているんだ、この人たちは。この状況の異常さに、小天の思考は混乱で満たされた。
しかし同時に、身体の奥底から湧き上がる別の感覚があった。それは単なる驚きや嫌悪ではなく、もっと原始的で、自分でも制御できない何かだった。彼の下半身が熱を帯び、意識していないのにズボンがきつくなっていく。
見てはいけない。そう思いながらも、目はドアの隙間に釘付けになっていた。母のストッキングに包まれた脚のライン、小姨の手の動き、そのすべてが彼の心に焼き付いていく。
「もっと奥まで全部見たい…でも見てはいけない…」
二つの相反する感情が小天の中で激しく衝突していた。そして、小姨が振り返る素振りを見せたとき、彼は慌てて後退し、足音を立てないように自分の部屋へと逃げ込んだ。
部屋のドアを閉め、壁に背を預ける。荒い息が止まらない。全身がカッと熱くなり、額からは汗が滲んでいる。ズボンの前は完全に盛り上がっていた。自分で触れると、指先が震えているのがわかった。
あの光景を思い出すだけで、体が反応してしまう。母の脚、小姨の笑顔、部屋に漂っていた独特の匂い——それらが一つになって、小天の理性を蝕んでいく。
「俺は変態だ…」
自分を呪うように呟いた。しかしそれでも、またあの光景を見たいという欲望が、心の奥底でうごめき続けていた。
夜、夕食の時間になっても、小天は部屋から出られなかった。母がノックして「小天、ご飯よ」と呼びかけてきたが、声がいつもと変わらないのに、かえって怖かった。何も知らないふりをして、普通の顔をして向き合える自信がなかった。
「ちょっと体調が悪いから、後で食べる」
そう言ってやり過ごした。ドアの向こうで母が一瞬間を置いた。何かを言いかけて、やめたような気配がした。
「…わかったわ。お粥を置いておくからね」
足音が遠ざかる。小天はため息をつき、ベッドに倒れ込んだ。天井を見上げながら、頭の中ではあの映像がループ再生される。母のストッキング、小姨の鞭、二人の交錯する視線——そして何より、母が猿轡をしながらも幸せそうな顔をしていたこと。
「母さんはあれが本当に好きなんだ…」
そう思うと、なぜか胸の奥がざわついた。嫉妬なのか、それとも共感なのか、自分でもわからない。ただ、あの場面に自分も参加していたら、と想像してしまう自分がいる。母のストッキングに触れることができたら、小姨のように母をコントロールできたら——
「やめろ、俺は母の息子だぞ」
頭を振り、布団を頭から被った。暗闇の中で自分の心臓の音だけが聞こえる。今夜は眠れそうにない。そして、この秘密を抱えたまま、明日も母の顔を見なければならない。それが何よりも怖かった。