第三章の始まり、严喆珂は康城大学の図書館で金融の教科書を広げていた。窓の外からは秋の冷たい風が吹き込み、キャンパスの木々が黄金色に染まっていた。彼女はペンを手に取り、ノートに複雑な数式を書き込む。指先は滑らかに動くが、心のどこかで楼成のことを考えていた。
彼は今頃、武道の試合で戦っているのだろう。先週の電話では、彼が「非人級」の壁を突破しつつあると興奮気味に語っていた。严喆珂は微笑み、スマートフォンを開いてメッセージを送る。
「頑張ってね。私はこっちでちゃんと勉強してるよ」
すぐに既読がつき、スタンプが返ってきた。それだけで心が温かくなる。
图書館を出ると、彼女はいつものようにジムへ向かった。武道の練習は日課だ。職業九品の武者として、彼女の体は日々鍛えられている。筋肉はしなやかで、動きは機敏。白い肌にうっすら汗が浮かぶ。
「今日もやるか」
彼女は更衣室で着替え、トレーニングルームへ向かう。ストレッチの後、基本の型を繰り返した。拳を突き出し、蹴りを放つ。その動きは美しく、力強かった。
一時間ほど練習を続けた後、彼女はタオルで汗を拭き、帰る準備を始めた。その時だった。
――くぐもった音が聞こえた。
武者として鍛えられた聴覚が、微かな物音を捉えた。呼吸のような、もがくような音。それは奥のプライベートトレーニングルームから聞こえてくる。
严喆珂は眉をひそめた。この時間帯に他の利用者がいるのは珍しい。彼女は自然と音の発生源へと足を向けた。
廊下を曲がり、突き当たりの部屋の前に立つ。ドアが少し開いていた。中からは確かに人の気配がする。彼女は慎重に、隙間から中を覗き込んだ。
その光景に、彼女の呼吸が止まった。
部屋の中には、見覚えのある顔があった。クラスメイトであり、ルームメイトでもある朱莉だ。金髪の白人女性で、いつも自信に満ちた笑みを浮かべている。今、彼女はトレーニングベンチに仰向けに寝かされた男性の上に跨っていた。
男性は全裸で、両手両足がベンチの四隅に固定されていた。彼の顔の上に、朱莉の下腹部がしっかりと押し付けられている。彼女のショートパンツの下からは、白いレースの下着が覗いていた。男性の口と鼻は完全に塞がれ、彼は必死に体をくねらせている。その時々に発するくぐもった声が、先ほど严喆珂が聞いた音だった。
しかし朱莉は微動だにしない。彼女はまるで何かを楽しむかのように、男性の顔の上に座り続けている。彼の呼吸が奪われるにつれ、男性の下半身に変化が現れた。彼の陰茎が硬く立ち上がり、空気を求めるように震えていた。
数分が経過した。男性の動きが徐々に弱まり、ついに彼の体がびくびくと痙攣し始めた。精液が勢いよく噴き出し、彼の腹の上に白い液体が広がった。その瞬間、男性の抵抗は完全に止まった。
朱莉はゆっくりと体を起こした。彼女の顔には満足げな笑みが浮かんでいる。男性は深く息を吸い込み、咳き込みながらも、ようやく呼吸を再開した。
严喆珂はその一部始終を見ていた。彼女の心臓は激しく鼓動していた。楼成とする性交は、いつも正常位か対面座位だけだった。彼女は知らなかった。こんなにも違うやり方で、男を満足させることができるなんて。
「なんだこれ……」
彼女は思わず声を漏らしていた。その瞬間、部屋の中が静まり返った。
朱莉が扉の方を見た。
視線が合った。やばい、と思ったが、もう遅い。朱莉はゆっくりとベンチから立ち上がり、ドアへと歩いてきた。彼女の青い瞳が、严喆珂を捉えて離さない。
「見てたの?」
朱莉の声は優しく、しかしどこか支配的だった。严喆珂は後ずさりしようとしたが、朱莉の手が素早く伸びて、彼女の手首を掴んだ。
严喆珂は職業九品の武者だ。普通人である朱莉の動きなど簡単にかわすことができる。しかし今は、なぜか体が動かなかった。彼女は朱莉に引かれ、部屋の中へと誘い込まれた。
朱莉はドアを閉め、鍵をかけた。その音が厳重に響く。
「あ、あの……」
「大丈夫よ」
朱莉の声は落ち着いていた。彼女はもう一度ベンチの方を振り返る。固定されていた男性が、よろよろと起き上がり、服を探していた。
「君は帰っていいわ」
朱莉の指示に、男性は素直に従った。彼は乱れた服を整え、足早に部屋を出て行く。残されたのは、朱莉と严喆珂だけだった。
「どう? ああいうの、初めて見たんでしょ?」
朱莉の問いかけに、严喆珂は頷く。顔が熱くなっていた。自分の頬が赤くなっているのがわかる。
「あれは……窒息プレイっていうのよ。男の子を支配するのって、すごく気持ちいいの」
朱莉はベンチに腰かけ、严喆珂を自分の前に立たせた。彼女の瞳が严喆珂の全身を舐めるように見つめる。
「あなたも試してみたい?」
严喆珂の心臓がさらに速く打ち始めた。彼女の口からは、自然と言葉が漏れていた。
「うん」
自分でも驚くような返事だった。しかし、もう後戻りはできなかった。
朱莉は微笑み、立ち上がった。彼女は严喆珂の手を引き、ベンチの前へと導く。
「じゃあ、まずはあなたがあの男の子の代わりをしてごらん」
朱莉がベンチを指さす。严喆珂はゆっくりとベンチに仰向けに寝た。冷たいパッドが背中に触れる。朱莉は彼女の手首をベンチの脚に固定しようとしたが、途中でやめた。
「やっぱり、最初は自由にさせてあげるわ。もし気分が悪くなったり、苦しかったりしたら、私を押しのけてね」
朱莉の優しい言葉に、严喆珂は頷いた。彼女の体が少し震えている。恐怖と期待が入り混じった感情が、全身を駆け巡っていた。
朱莉がベンチを跨いだ。彼女の太ももの内側が、严喆珂の視界いっぱいに広がる。朱莉はゆっくりと膝を曲げ、体重を严喆珂の顔の上にかけた。
「いくわよ」
その瞬間、世界が暗転した。
朱莉の下腹部が、严喆珂の口と鼻を完全に覆っていた。ショートパンツの布地と、その下のレースの下着が、彼女の呼吸を完全に遮断する。空気が入ってこない。彼女の肺が酸素を求めて痙攣し始めた。
严喆珂の手が無意識に朱莉の尻を掴んだ。しかし、彼女は押しのけない。その感触が、どんどん強くなっていく。甘い匂いが彼女の鼻腔を刺激する。しかし、それ以上に、酸素の欠乏が彼女の意識を曖昧にさせていった。
彼女は職業九品の武者だ。長時間の息止めなど容易いはずだった。しかし今は、心が乱れ、体内の気血をコントロールできなかった。心臓が猛烈に打ち鳴らされ、全身が熱くなる。
「んっ……んんっ……」
思わず声が出た。しかし、その声は朱莉の下腹部に吸収されて、かすかにしか聞こえない。
時間が経つのがわからなかった。十秒か、二十秒か。もっと長く感じられた。やがて、严喆珂の視界に星が散り始めた。酸欠による眩暈が彼女を襲う。それでも、彼女は朱莉を押しのけなかった。
そして、その瞬間が訪れた。
彼女の全身が激しく震え、意識が真っ白になった。まるで雷に打たれたような衝撃が、彼女の腰から全身へと広がっていく。彼女の秘所が強く収縮し、熱い液体が溢れ出した。彼女の白いトレーニングパンツが、瞬時に濡れていく。
「あっ……ああっ……」
言葉にならない声が漏れる。彼女の体が、痙攣するように震えた。その間も、朱莉は静かに座り続けていた。
しばらくして、朱莉がゆっくりと体を起こした。光が差し込み、严喆珂の視界が回復する。彼女の顔は真っ赤で、涙がにじんでいた。
「どう? 気持ちよかった?」
朱莉の問いかけに、严喆珂は言葉を返せなかった。彼女は自分の下半身に視線を落とした。白いパンツが大きく濡れ、陰部の形が透けて見えている。恥ずかしさが一気に押し寄せた。
「あっ……ああっ……」
彼女は急いで体を起こし、自分の濡れたパンツを隠そうとした。しかし、既に遅かった。朱莉が微笑みながら、彼女の肩を優しく抱いた。
「大丈夫よ、隠さなくても」
朱莉は严喆珂の手を引いて立ち上がらせ、部屋の隅にある小さなバスルームへと連れて行った。
「一緒に洗いましょう」
朱莉が严喆珂のトレーニングウェアを優しく脱がせ始めた。ビショビショになったパンツが露わになる。严喆珂は恥ずかしさで体を硬くしたが、抵抗しなかった。朱莉が水を出し、温かい湯が彼女の体を包み込んだ。
「緊張しなくていいのよ。これから、もっとたくさんのことを教えてあげる」
朱莉の手が、严喆珂の背中を優しく撫でる。その感触が、なぜか心地よかった。严喆珂は目を閉じ、水の流れに身を任せた。
洗い終わると、朱莉がタオルで彼女の体を拭き、新しい服を着させた。镜の前で、严喆珂は自分の顔を見た。まだ少し赤いが、なんとか落ち着きを取り戻していた。
「行きましょう」
朱莉が手を差し伸べる。严喆珂はその手を取った。二人はジムを出て、キャンパスの夜道を歩いた。秋の風が彼女たちの髪を撫でる。星がきれいな夜だった。
寮の部屋に戻ると、朱莉はベッドに腰かけ、严喆珂を見上げた。
「今日のことは、私たちだけの秘密よ」
严喆珂は頷いた。彼女の心の中では、まだあの感覚が残っている。支配される快感。息ができない苦しさ。そして、許されることのない解放感。
彼女は自分の頬がまた熱くなるのを感じた。
「ありがとう……朱莉」
その言葉に、朱莉が微笑む。彼女の青い瞳が、優しく輝いた。
夜が更けていく。严喆珂はベッドに横たわり、天井を見つめた。頭の中では、楼成の顔が浮かぶ。彼に言えない秘密が、彼女の胸の中で大きく膨らんでいた。
でも、それでもいいと思った。これが彼女の新しい世界だった。
次第に眠気が襲い、彼女の意識はゆっくりと闇に溶けていった。