空色の檻

站点:NovelAI.one内容:前8章在线试读ID:d4a81c08更新:2026-07-01 15:06
空は厚い雲に覆われ、月明かりすらも地上には届かなかった。3030年の夜は、かつて人間が誇った文明の残骸を包み込み、静寂と腐臭だけが漂っている。 蘇雪晴は、崩れかけた高層ビルの陰から慎重に顔を出した。右手には使い込まれた戦術ナイフ、左手には小型のハンドガン。装備は最低限だ。彼女の瞳は暗がりでもよく見えるよう訓練されており
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廃墟の始まり

空は厚い雲に覆われ、月明かりすらも地上には届かなかった。3030年の夜は、かつて人間が誇った文明の残骸を包み込み、静寂と腐臭だけが漂っている。

蘇雪晴は、崩れかけた高層ビルの陰から慎重に顔を出した。右手には使い込まれた戦術ナイフ、左手には小型のハンドガン。装備は最低限だ。彼女の瞳は暗がりでもよく見えるよう訓練されており、一歩ごとに耳を澄ませ、足音を殺す。廃墟と化したこの街の無人地区には、物資を狙う生存者だけでなく、何よりも《それら》が潜んでいる。

彼女の胸の内は、不安で押し潰されそうだった。誰も信じられない。数日前まで一緒に行動していた仲間も、今はもういない。彼女はただ、生き延びるために動き続けるしかなかった。そしてその奥底では、長期間抑え込んできた欲望が、時折疼くように彼女を苛んだ。それに抗うことで、自分がまだ人間であることを必死に証明しているのだ。

──何かが動いた。

蘇雪晴は即座にその場に伏せ、息を殺した。がれきの下から聞こえる微かな物音。しかし、それは《それら》の出す不気味な唸り声ではない。人間の、靴底が砂利を踏む音だ。

彼女は音の方向を探りながら、ゆっくりと体を起こした。遠く、三つ目の交差点の先に、かすかな明かりが揺れている。ランタンの光だ。誰かがいる。

警戒を緩めずに、蘇雪晴は建物の影を伝いながらその光源に近づいた。やがて、その持ち主の姿が闇の中に浮かび上がる。若い男だ。警察官の制服を身にまとっているが、それはもはやボロボロで、汚れにまみれていた。彼もまた、単独で行動しているらしい。

「誰だ!」

男が鋭く声を上げ、懐中電灯を蘇雪晴の顔に向けた。眩しさに一瞬目を細めるが、彼女は動じずに答える。

「特警の蘇雪晴だ。お前こそ、誰だ。」

「……李昊。北部警察署の、巡査だ。」

青年は警戒を解かず、距離を保ったまま名乗った。その声にはまだ幼さが残っており、純粋そうな印象を与える。しかし、この世界で純粋さは、ただの弱さに過ぎない。蘇雪晴は内心でそう判断した。

「一人か?」

「ああ……仲間とは、二日前にはぐれた。お前も、一人か?」

「そうだ。」

短い沈黙が流れる。蘇雪晴は李昊の装備を素早く観察した。拳銃は持っているが、弾薬は少なそうだ。食料も、背負ったリュックの膨らみ具合から見て、心もとない。

「協力しよう。二人で行動すれば、生存率は上がる。」

彼女はあえてそう提案した。本心では、他人を頼りにする方がリスクが高いと知っている。しかし、この若者が無謀な行動で死ぬよりは、監視下に置いた方が安全だと考えたのだ。

しかし、李昊は首を振った。

「いや、俺は北城区へ向かう。あそこにまだ、使える物資が残っているらしい。お前は、どうする?」

「中央地区だ。生存者がいれば、信号を送る。お前も、何か見つけたら同じようにしろ。」

「……分かった。無事でな。」

李昊はそれだけ言うと、背を向けて北へと歩き始めた。その後ろ姿は、頼りなくもあり、またどこか哀れでもあった。蘇雪晴はしばらくその背を見送り、やがて自身の進むべき方角へと足を向けた。

冷たい風が吹き抜け、彼女の短い髪を揺らす。彼女は拳を強く握りしめた。何かを信じることの愚かさを、身体中に刻み込まれていた。それでも、彼女は歩き続ける。この廃墟の始まりを、自分自身の手で終わらせるその日まで。

北城区の罠

# 第二章:北城区の罠

廃墟となった高層ビルの影が、灰色の空に切り裂かれている。李昊は三日間の探索で何も得られず、疲労で足が鉛のように重くなっていた。肩から掛けた使い古したバッグには、空の水筒と数本の乾燥した栄養バーの包み紙だけが入っている。

「もう少しだけ…」

彼は自分に言い聞かせながら、錆びた非常階段に足をかけた。金属製の階段は軋み、その音が静寂の中に鋭く響く。手すりには古い血痕がこびりついており、それが誰のものか考えるだけで背筋が寒くなった。

二階、三階…足取りは重く、息は荒くなる。窓のない廊下は暗く、唯一の光源は手に持った古い懐中電灯だけだった。その光は弱々しく、壁に映る自分の影さえも歪んで見える。

四階に辿り着いた時、彼は壁に手をついて息を整えた。額から滴る汗が、埃をかぶった床に落ちる。三日間だ。三日間も探索を続けているのに、食料も水も見つからない。仲間たちはすでに彼を見限り始めているだろう。

「くそ…」

呟きながら、彼は廊下の奥へと進んだ。廃墟特有のカビと腐敗の匂いが鼻をつく。ところどころ崩れた天井からは、かすかな明かりが差し込んでいる。その明かりが、彼の疲れ果てた顔を照らし出した。

突然、下腹部に鈍い痛みが走った。彼は慌てて足を止める。そういえば、朝から一度も用を足していなかった。緊張と疲労で忘れていたが、今になって急激に尿意が襲ってきた。

「トイレ、トイレ…」

彼は焦って周囲を見回した。薄暗い廊下の先に、ぼんやりとトイレの表示が見える。彼は急いでその方向へと歩き出した。

しかし、歩くたびに下腹部の圧迫感が増していく。そして、それと同時に別の感覚が目覚め始めていた。長時間の我慢で、彼の体は予期せぬ反応を示していたのだ。

李昊は下を向いて、息を呑んだ。

天青色のスキニージーンズの股間部分が、明らかに盛り上がっている。それは自然な膨らみではなく、明らかに彼の陰茎が勃起している証拠だった。布地の上からでも、その形状がはっきりと分かる。

「な、なんで今…」

彼は混乱した。こんな緊迫した状況で、なぜ体がこんな反応を示すのか理解できなかった。しかし、尿意と性的興奮が混ざり合い、彼の意識は二重の苦痛に苛まれる。

彼は必死にトイレに駆け込んだ。便器はひび割れ、床は汚水で濡れているが、今はそんなことを気にする余裕はない。彼は急いでジッパーを下ろそうとした。

しかし、ジッパーが引っかかった。

「くそっ!」

彼は焦って何度も引っ張ったが、布地が食い込み、ジッパーは微動だにしない。その間にも、彼の陰茎はズボンの中でさらに膨張し、布地の下で脈打っている。天青色のジーンズの上から、その隆起はますます明確になり、まるで中に何か別の生き物がいるかのようだった。

「頼む、動いてくれ!」

彼は汗びっしょりになりながら、必死にジッパーと格闘した。しかし、指は震え、思うように動かない。尿意は限界に達し、陰茎の先端からはわずかに透明な液体が滲み出している。それは彼の興奮を物語っていた。

「ああ…もう…」

李昊は壁に手をつき、深く息を吸った。落ち着け、落ち着くんだ。彼は自分に言い聞かせる。しかし、体は彼の意思に反して反応し続ける。陰茎は硬くなり、痛みすら感じ始めていた。

窓の外からは、遠くで何かが崩れる音が聞こえる。その音に彼はびくついたが、今の彼にはトイレの個室から出る勇気もなかった。もし誰かにこの姿を見られたら…そう思うだけで、さらに興奮が高まる。

「どうして…どうしてこんな時に…」

彼は自分の運命を呪った。この末世の中で、生き残ることすら困難なのに、なぜ体はこんな反応を示すのか。抑圧された性欲が、最も不適切な瞬間に爆発したのだ。

ジッパーはまだ固く閉じたままで、彼の陰茎はその狭い空間でさらに膨らみ続けている。天青色のジーンズの股間部分は、今や不自然なほどに盛り上がり、その輪郭が布地の上に浮き彫りになっていた。

李昊は震える手でもう一度ジッパーに挑戦したが、やはり無駄だった。彼の目には涙が浮かんでいた。恐怖と屈辱と、制御できない欲望が入り混じり、彼の心を蝕んでいく。

「誰か…助けて…」

しかし、彼の声は誰にも届かない。廃墟のビルには、彼一人だけが取り残されていた。そして、彼の体は彼の意思を無視して、ますます昂ぶっていくのだった。

致命的な出会い

# 第三章 致命的な出会い

暗闇の中、李昊の耳に微かな物音が届いた。がさり、という布擦れの音。それは背後から確かに聞こえてきた。

彼の心臓が一瞬で凍りついた。反射的に腰のホルスターへ手を伸ばすが、そこには何もない。銃を失くしたのだ。いつ、どこで落としたのかもわからない。恐怖が脊椎を駆け上がり、全身が石のように硬直した。

「だ、誰だ...?」

震える声が闇に吸い込まれる。返事はない。ただ、重く濁った呼吸だけが、彼のすぐ後ろで聞こえる。

李昊はゆっくりと、凍りついた関節を無理やり動かして振り返った。

そこには、髭で覆われた老人の顔があった。目だけが異様にぎらつき、脂ぎった肌は月明かりに青白く浮かび上がっている。にやりと歯を見せて笑った口元からは、腐敗した息が漏れていた。

「あ、あの...す、すみません...」

李昊の声は上ずり、震えて言葉にならない。彼は後ずさりしようとしたが、足ががくがくと震えてうまく動かない。

「俺は、ただの警官で...ここを通りかかっただけで...」

老人は無言のまま、ゆっくりと右手を伸ばした。その手は異様に大きく、節くれ立った指はまるで鉤爪のようだった。

「頼む...見逃してくれ...何もしないから...」

李昊の懇願も虚しく、老人の手は一気に彼の股間を掴んだ。ジーンズの上からでも明らかに盛り上がっていたそこを、鷲掴みにされたのだ。

「うあああっ!」

李昊の悲鳴が廃墟に響き渡る。あまりの激痛に膝から崩れ落ち、必死に許しを乞う。

「痛い!痛い!すみません!すみません!もうしません!許してください!」

涙が溢れ出し、鼻水と混ざり合って彼の顔を濡らす。しかし老人は無表情のまま、もう一方の手に光る刃物を現した。それは使い古されたナイフで、刃先は鈍く光っていた。

「い、嫌だ...やめてくれ...」

老人の手が一振りされる。瞬間、ジーンズごと肉が切り裂かれる生々しい感触が李昊の下半身を走った。熱い鮮血が太ももを伝って流れ落ちる。彼は自分の股間を見下ろした。切断された器官が、布の残骸とともに地面に落ちていた。

「あ...あああ...」

声にならない絶叫が喉の奥から絞り出される。あまりの痛みに彼の意識は飛びそうになったが、恐怖がかろうじてそれを引き止めた。

老人は何事もなかったかのように、闇の中に消えていった。足音さえも立てずに。

李昊は両手で股間を押さえながら、血の海の上でのたうち回った。指の隙間から鮮血が噴き出し、止まる気配はない。地面は真っ黒に染まっていく。

「たす...けて...」

誰もいない闇に向かって、彼は弱々しく手を伸ばした。しかし、応える者はいない。冷たいコンクリートの感触だけが、彼の頬に伝わってくる。

視界が徐々に狭くなっていく。周囲の音が遠のき、自分の心臓の鼓動だけが大きく聞こえる。それが次第に弱まり、不規則になっていく。

「おかあ...さん...」

最後の言葉を残して、李昊の体はぴくりとも動かなくなった。開かれたままの瞳は、何もない虚空を見つめていた。血溜まりはゆっくりと広がり、やがて彼の全身を包み込んだ。

廃墟には再び静寂が戻り、ただ血の匂いだけが濃厚に漂っていた。

ゾンビの追跡

第四章 ゾンビの追跡

崩れた鉄骨と瓦礫が散乱するフロアに、蘇雪晴の足音がかすかに響く。三階建ての廃ビルは、かつては小さな商業施設だったのだろう。ガラスケースは砕け、商品は荒らされ、壁には乾いた血痕が飛び散っている。窓の外から差し込む夕日が、室内の埃を浮かび上がらせていた。

彼女は慎重に足を進めながら、倒れた棚の影に目を凝らす。右手にはサプレッサーを装着した拳銃、左手は常にバックパックの予備マガジンに触れている。

「……何もないな」

二階まで探索を終えても、目ぼしい物資は見つからなかった。空のペットボトルがいくつか転がっているだけだ。食料も水も、すでに他の生存者がかき集めた後らしい。

蘇雪晴は壁に背をつけ、小さく息をついた。三日間、この街の周辺をくまなく探したが、缶詰一つ、浄水器一つ、まともな武器すら見つからなかった。それどころか、生きている人間にも出会っていない。

「まさか……本当に私だけなのか?」

呟いた声が虚しく響く。彼女は首を振り、考えを振り払うように階段へ向かった。

三階へ上がる途中だった。

階段の踊り場で、かすかな物音が聞こえた。ガラガラと何かが転がる音。蘇雪晴は即座に足を止め、拳銃を構えた。耳を澄ますと、低いうなり声がいくつも重なっている。

「……まずい」

彼女はゆっくりと後退したが、すでに遅かった。三階のフロアから、四体のゾンビがよろよろと姿を現した。そのうちの一体が、首を不自然に曲げて蘇雪晴の方を見た。目は濁り、口元は血まみれだ。

「くそっ」

どれが最初に動いたのかはわからなかった。瞬間、ゾンビたちは一斉に彼女に向かって突進してきた。蘇雪晴は冷静に照準を合わせ、トリガーを引く。発砲音はサプレッサーで抑えられていたが、それでも静かなビル内では大きく響く。

一体目は額を撃ち抜かれ、その場に崩れ落ちた。二体目、三体目も同様に倒れた。しかし、四体目が間合いを詰めてくる。蘇雪晴はさらに二発撃ち込んだが、致命傷には至らない。

「弾が……」

残弾はあと五発。彼女は即座に撤退を決断した。ゾンビを蹴り倒し、階段を駆け降りる。背後から複数の足音が追いかけてくる。どうやら下の階のゾンビも目覚めてしまったらしい。

二階のフロアに飛び込むと、蘇雪晴は机の陰に身を隠した。壁際に転がっていた空き缶を拾い、遠くへ投げる。ガチャンという音にゾンビたちは一瞬注意をそらしたが、すぐに彼女の匂いを追ってくる。

「しつこいな……」

彼女は這うように移動し、階段を一気に駆け下りて一階の出口へ向かった。しかし、入口付近にも三体のゾンビがうろついている。彼女は舌打ちし、裏口へと迂回した。

裏口は金属製のシャッターで半分閉ざされている。下の隙間は四十センチほど。蘇雪晴は迷わず体を横にして潜り込んだ。かろうじて通り抜けた瞬間、背後でゾンビの手が彼女の足首を掴もうとしたが、わずかに届かない。

外に出ると、彼女はすぐ近くの廃車の陰に隠れた。生い茂った雑草と積まれた廃材が、死角を作っている。彼女はできるだけ呼吸を静め、身を縮めた。

ゾンビたちはしばらくうろついていたが、やがて目標を見失い、散り散りになっていった。十分ほど経って、周囲が静まり返ったのを確認してから、蘇雪晴はゆっくりと息を吐いた。

「……危なかった」

彼女は後ろ頭を壁に打ち付け、天を仰いだ。額には汗が浮かび、手のひらも湿っている。

残弾はあと二発。食料も水ももうない。この廃墟街で生き延びられるのは、あとせいぜい一日だろう。

蘇雪晴は目を閉じた。疲労が骨の髄まで染み込んでいる。特警隊でも指折りの実力者だった自分が、今やこうしてゴミのように隠れている。仲間は全滅し、連絡手段も失った。そして何より、この絶望的な孤独。

「どうして……私だけが生き残ったんだろう」

答えのない問いが、再び頭をよぎる。彼女は唇を噛みしめ、冷え切った拳銃のグリップを握りしめた。

汚染された水

その場所は、かつてオフィスビルだったらしい。窓は割れ、壁には無数のひび割れが走り、床には散乱した書類やガラクタが埃をかぶっている。蘇雪晴は慎重に廊下を進みながら、異常な物音がないか耳を澄ました。何週間も続く水不足で、喉はからからに乾いていた。唇はひび割れ、舌は上顎に貼りつくようだ。

彼女は非常階段の裏手に、小さな給水室を見つけた。蛇口は錆びついているが、かすかに水滴が垂れている。周囲に異変はない。彼女はためらいながらも、手のひらで水滴を受け、匂いを嗅いだ。少し鉄錆びたような臭いがする。しかし、もはや選択肢はなかった。彼女はその濁った水を両手ですくい、一気に飲み干した。

冷たい液体が喉を通過する感触が、生き返るようだった。しかし、その直後。腹部に、鈍く重い痛みが走った。最初は我慢できる程度だったが、すぐに激しい痙攣へと変わり、腸がねじれるような感覚が襲う。これは──まずい。

彼女は急いで近くのドアを押し開けた。そこは、書類棚が倒れた薄暗い小部屋だった。窓は塞がれ、かすかな光だけがかろうじて内部を照らしている。下痢の予感が急速に迫る。彼女は手早くドアを閉め、鍵をかけた。ベルトのバックルを外し、天青色のスキニージーンズを腿まで下ろす。かがみ込むようにして、冷たい床の上にしゃがみ込んだ。

体内から、熱く腐敗した液体が激しく放出される。音と匂いが、狭い空間に充満した。彼女は震える手で壁に寄りかかり、必死に呼吸を整えようとした。しかし、喉の奥から込み上げてくるのは、自己嫌悪とむなしさだった。かつて特警隊のエースと呼ばれた自分が、今やこんな場所で、排泄物にまみれて震えている。

彼女の目に、涙が浮かんだ。しかし、それはすぐに乾いた。泣いている暇などない。この世界では、一瞬の油断が死につながる。彼女は歯を食いしばり、ズボンを引き上げた。ベルトを締めながら、次の行動を考える。水はもう飲めない。食料も底をついている。そして、体の異変はまだ治まってはいなかった。

外から、風に乗って獣の遠吠えが聞こえてくる。蘇雪晴は拳を強く握りしめた。まだ、死ぬわけにはいかない。たとえ、この手がどれだけ汚れても。

秘密の自慰

# 第六章: 秘密の自慰

廃墟となったビルの片隅、崩れかけた壁が作り出す狭い空間で、蘇雪晴はようやく安堵の息をついた。周囲の安全を確認し、がれきで簡易的なバリケードを作ってから、彼女はしゃがみ込んだ。

長い間我慢していた尿意を解放すると、コンクリートの床に液体が打ち付けられる音が静寂の中に響く。排泄を終え、彼女は大きく息を吐いた。緊張が解けていくのを感じながら、ふと視線を下に落とすと、薄暗い光の中で自分の下腹部が目に入った。

濃い陰毛の間から、ひそやかに隠れた陰部がのぞいている。蘇雪晴は自分でも驚くほど長い時間、そこを見つめていた。27年間、誰にも触れられたことのない場所。男の影すら近づけたことのない、自分だけの秘密の領域だ。

指が震えながら、ゆっくりと陰毛をかき分けた。分厚い陰唇が指の感触に反応して、わずかに開く。恐る恐る中指を滑り込ませると、予想以上に湿っていることに気づいた。排泄のためだけではなく、何か別の欲望が体の中に潜んでいるのかもしれない。

「あ…っ」

思わず漏れた声が、狭い空間に吸い込まれていく。蘇雪晴は目を閉じ、唇を軽く噛んだ。自分でも信じられないほど、指は勝手に動いていた。陰唇の間をなぞり、敏感な部分を探るように指先が蠢く。

「んんっ…」

淫らで艶めかしい表情が、彼女の整った顔に浮かんだ。普段の冷徹な女特警の面影はそこにはない。指を一本、また一本と増やしながら、彼女は自分の秘部に侵入していく。

「あっ…ああっ…こんな…変なのに…」

独り言が混じりの喘ぎ声が漏れる。指を出し入れするたび、体内からぬめり気を帯びた音が響く。蘇雪晴の呼吸は次第に荒くなり、腰が無意識に動いて指の動きを助けていた。

「いい…気持ちいいよ…」

彼女は声を潜めて呟いた。毎日の生死の狭間で、感じることすら忘れていた感覚が洪水のように押し寄せる。恐怖や不安が一時的に消え去り、代わりに快楽だけが全身を支配した。

「こんな…こと…していいのかな…でも…」

指の動きが加速する。彼女の吐息は熱く、頬は朱に染まっていた。目を閉じたまま、まるで誰かとの交合を想像しているかのように、唇からは卑猥な言葉が漏れ続ける。

やがて、強烈な痙攣が彼女の体を襲った。一瞬の絶頂の後、蘇雪晴はゆっくりと指を引き抜いた。ぬめる指先をズボンで拭いながら、彼女は素早く立ち上がった。いつもの冷静な表情を取り戻し、手際よくズボンを履く。

まるで何もなかったかのように、彼女はバリケードを解除し、周囲の警戒を再開した。だが、耳の先端がほんのりと赤く染まっているのを、誰も気づくことはなかった。

病院の危機

# 第七章 病院の危機

その日、蘇雪晴は廃病院の探索を続けていた。数日前に食料を確保して以来、この地域で最も安全そうに見える建物を拠点にしようと考えたのだ。病院は広く、逃げ場も多い。しかし、その分危険も潜んでいた。

彼女は慎重に廊下を進んでいた。朽ちた床は軋み、天井からは剥がれた石膏ボードが垂れ下がっている。どこからか水の滴る音が聞こえる。静寂が不気味だった。

ふと、蘇雪晴は足を止めた。壁際に古びた金属製のバケツが置いてある。何の変哲もないバケツだったが、彼女はそれを避けて通ろうとした。しかし、狭い通路だった。体をひねった拍子に、バックパックが壁にぶつかり、バランスを崩す。

「くっ…」

次の瞬間、彼女の右足がバケツを蹴飛ばしていた。

ガシャーン!

けたたましい金属音が、静まり返った病院内に響き渡る。その音は反響し、何重にも増幅されて廊下の奥へと消えていった。

蘇雪晴の心臓が激しく打ち始めた。「しまった…」

一瞬の静寂の後、遠くから低いうなり声が聞こえ始めた。複数の足音が、規則性なく床を叩く音。それは徐々に大きくなり、やがて一つのうねりとなって迫ってくる。

彼女は反射的に出入口の方へ走り出した。しかし、前方の曲がり角から影が現れる。それは男女のゾンビだった。ボロボロの病院着を纏い、皮膚は青白く変色し、目は虚ろに濁っている。口からは血の混じった唾液を垂らしながら、両腕を伸ばして蘇雪晴に襲いかかろうとする。

「くそっ!」

蘇雪晴は方向転換し、別の通路へ飛び込んだ。背後からはさらに多くの足音が迫ってくる。彼女は全力で走った。腐敗した空気が肺を焼く。心臓は破れんばかりに鼓動している。

しかし、運命は彼女に味方しなかった。目の前に現れたのは行き止まりだ。左右の壁は無機質なコンクリート。唯一の扉は金属製で、手をかけると簡単に開いた。彼女はそこに飛び込んだ。

狭い部屋だった。元はおそらく医師の執務室か何かだろう。机と椅子が倒れ、書類が散乱している。窓はあるが、鉄格子がはめられていて外には出られない。

蘇雪晴は必死に扉を閉めようとした。しかし、蝶番が錆び付いていて、完全に閉まらない。隙間からゾンビの腕が差し込まれる。彼女は体重をかけて扉を押さえたが、外からの圧力は増すばかりだった。

「誰か!助けて!」

彼女は叫んだ。声は震えていた。元特警として、訓練を受けた戦士として、決して見せてはいけない弱さだった。しかし、この絶望的な状況で、理性は崩れ去っていた。

「ここにいる!助けてくれ!」

声が枯れるまで叫んだが、応答はない。当たり前だ。誰もいないのだ。仲間は皆死に、ただ一人取り残されたこの世界で、助けを求める声は虚空に消えるだけだった。

恐怖が、彼女の膝を震わせた。涙が溢れ出る。止められなかった。長期間抑圧してきた孤独と恐怖が、一気に噴き出したのだ。

「やめて…もうたくさんだ…」

扉がミシミシと軋む。蝶番が耐えきれず、ついに破損した。扉が内側に開き、ゾンビの群れが雪崩のように押し寄せる。

蘇雪晴は後退ったが、壁に阻まれた。逃げ場はない。彼女は腰のナイフを抜いた。しかし、相手の数は十数体。無力感が全身を包んだ。

最初のゾンビが彼女に飛びかかる。彼女はナイフでその腕を切り裂いたが、次のゾンビが横から襲いかかる。そして、背後から別のゾンビが、彼女の腰に両腕を回した。

「嫌っ!」

彼女の体がバランスを失い、床に倒れ込む。天井の蛍光灯が、明滅しながら不気味な光を放っている。目に映るのは、無数の腐った顔。彼女の上に覆いかぶさろうとする、飢えた牙の数々。

その時だった。彼女の天青色のスキニージーンズに包まれた、肉付きの良い臀部に、鋭い痛みが走る。

「ああっ!」

背後から、ゾンビが彼女の尻に噛みついたのだ。分厚いジーンズは簡単に引き裂かれ、腐敗した歯が彼女の柔らかな肉に食い込む。血がにじみ出る。痛みと恐怖が同時に襲った。

彼女は必死に手を伸ばし、机の脚を掴もうとした。しかし、指先が触れたのは冷たい空気だけだった。

「たすけて…」

声は掠れ、ほとんど音にならなかった。目の前の景色が歪み始める。意識が遠のいていく。

ゾンビたちは、彼女の体のあらゆる場所に歯を立てようと群がっていた。彼女の悲鳴は、もはや誰にも届かない。部屋の中に、むしゃぶりつく音と、血の匂いが充満していく。

蘇雪晴の視界が、暗転した。最後に見たのは、天井の蛍光灯が完全に消える瞬間だった。

陰部の惨劇

意識が遠のく中、蘇雪晴は這ってでも前に進もうとした。左脚が何かに絡みつかれ、ズボンの膝の辺りがびしょ濡れになっている。振り返ると、一匹のメスのゾンビが地面に這いつくばり、彼女の股間に顔を埋めていた。天青色のスキニージーンズに包まれたその場所は、既に歯型がくっきりと浮かび、裂けた布の隙間から血が滲んでいる。

「離せ!離せってば!」蘇雪晴は脚をばたつかせて抵抗しようとした。だが、ゾンビの顎の力は異常に強く、まるで鉄の檻のように閉じ込められていた。彼女の股間からは激痛が走り、あまりの痛さに彼女の背筋が震え、声にならない悲鳴が喉の奥から漏れ出た。恐怖で涙が止まらず、彼女は無意識のうちに下を見た。自分の最も秘めた場所が、腐った怪物によって抉られている。血が腿を伝い、ジーンズに暗い色の染みを作り、地面に滴り落ちた。

「いや…いやあああ!」蘇雪晴は叫び、泣きながらゾンビの頭を押しのけようとした。しかしその手は腐った肌の上で滑り、逆に自らの傷口に指が触れてしまい、さらに激しい痛みが走った。彼女は慌てて手を引き、掌が血で真っ赤に染まっているのを見て、一瞬言葉を失った。

周囲のゾンビが次々と近づいてくる。足音が地面を震わせ、腐臭がますます濃くなった。遠くの街灯の光がうっすらと彼女の姿を照らし出すが、その光は希望ではなく、恐怖を一層際立たせるだけだった。蘇雪晴は顔を上げ、泣き声をあげながら叫んだ。

「私のマンコ…痛すぎる…ううう…助けて…誰か助けてよ…」

返事はなかった。聞こえるのはただ、近づくゾンビたちの唸り声だけだった。股間のゾンビはなおも噛み続け、歯が肉の奥へと食い込み、骨に触れようとしている。蘇雪晴はもう叫ぶ力も残っていなかった。耳元で血が流れる音だけが聞こえ、それがまるで彼女の命の最後を刻む時計のようだった。意識は徐々に闇に溶けていき、最後に残ったのは恐怖と絶望だけだった。