冬の夕暮れ、灰色の空から細かい雪が舞い落ちる。駅前のロータリーにタクシーが停まり、後部ドアが開く。小天はキャリーバッグを引きずりながら車を降り、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。大学の初年度、最初の学期が終わった。試験のストレスから解放された解放感と、これから始まる長い休みへの期待が胸の中で混ざり合う。
実家の門前に立つと、見慣れた二階建ての家が雪の中で静かに佇んでいた。ポケットから鍵を取り出そうとしたその時、玄関の扉が内側から開かれる。
「おかえりなさい、小天様」
二人の女が深く頭を下げていた。母の婉美と叔母の婉麗だ。二人とも黒のストッキングに統一された服装で、足元には細かいヒールのパンプス。手には肘まで覆うレースの手袋を嵌め、指先からうっすらと肌色が覗いている。化粧は薄く、口元だけが赤く引き締まっている。
小天は一歩も動かず、ただ見下ろした。彼女たちはゆっくりと膝をつき、床に額を擦り付けるようにして平伏した。
「ただいま」
短く言って、小天は靴を脱いだ。婉美が素早く手を伸ばし、彼のスニーカーを丁寧に靴箱にしまい込む。その手が微かに震えているのが分かった。
リビングに通じる廊下を歩きながら、小天は無言だった。背後から、二人の女が這うようにして付いてくる気配がする。時折、ストッキングが畳の上で擦れるかすかな音が聞こえた。
リビングのソファに腰掛けると、婉美と婉麗がそれぞれの位置に跪いた。婉美は左側、婉麗は右側。決して乱れないその配置は、半年の不在の間も変わっていなかった。
「顔を上げろ」
二人の女が顔を上げる。婉美の目には涙がたまっていた。婉麗は唇を噛みしめ、何かを耐えるような表情をしている。
「小天様、お留守の間、私たちはちゃんと決まりを守ってまいりました」婉美の声は少し震えていた。「毎日、指定の服装に身を包み、お部屋の掃除を欠かさず、いつお戻りになってもいいように準備しておりました」
「叔母さんは?」小天は婉麗に視線を向ける。
婉麗は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに答えた。「私も同じです。姉と一緒に、お前の…いや、小天様の帰りを待っておりました」
「ふん」
小天は口元だけで笑った。彼の目は冷たく、二人の女たちの全身を舐めるように見つめる。特にストッキングで覆われた足元に視線が留まる。
「良いストッキングだ。新しいのか?」
「はい、先週新しく取り寄せました」婉美が答える。「前のものは擦り切れてしまいましたので」
「擦り切れるほど、毎日履いていたのか」
「ご指示通り、毎日欠かさず」
小天は満足げに頷いた。彼はソファの肘掛けに腕を乗せ、指先で軽くそれを叩く。考え事をするときの癖だ。
「この半年、お前たちは自分たちで調教を続けてきたそうだな。どんなことをした?」
婉美が恐る恐る口を開く。「毎日、朝晩二回の儀式。お互いの体を縛り、ムチで打ち合いました。週に一度、自分たちで新たな玩法を考え、実行しました。すべてノートに記録してあります」
「ノートを見せろ」
婉美が立ち上がり、壁の本棚から一冊の黒いノートを取り出して、再び跪きながら差し出した。小天はそれを受け取り、ぱらぱらとめくる。日付ごとに細かく記された文字、ところどころに血のような染みが付いている。
「ふざけたことをしているな」
その一言に、二人の女の肩がびくっと震えた。
「自分たちで好き勝手に遊んでいただけだ。お前たちは調教されているのか、それともただの自己満足に浸っているのか」
「申し訳ございません」
婉美と婉麗が同時に頭を床に擦り付ける。その姿を見下ろしながら、小天はゆっくりと立ち上がった。
「冬休みは長い。お前たちには本物の調教というものを思い知らせてやる」
小天の声は低く、だが確かな力がこもっていた。彼の目が一瞬、危険な光を帯びたように見えた。
婉美の体が微かに震える。恐怖と、そして同時に腹の底から湧き上がってくる期待が、彼女の全身を支配していた。彼女はそれを自覚していた。この少年―自分の息子に支配されることへの陶酔。それはまるで麻薬のように、彼女の理性を蝕んでいた。
一方、婉麗は違った。彼女は姉ほど素直ではなかった。小天に対する感情は複雑で、時に反抗心が顔を覗かせる。しかし、それでも彼の前では決して逆らえない。それは彼が持つ支配力が、彼女の意志を上回っているからだ。
「今夜から始める」
小天は静かに宣言した。二人の女は顔を上げることなく、ただ「はい」とだけ答えた。
雪はますます激しくなり、窓の外は白く霞んでいた。リビングには沈黙が流れ、三人の呼吸だけがかすかに聞こえる。その沈黙の中に、新たな調教の始まりを予感させる緊張が漂っていた。
婉美は内心で、これから始まる苦痛と屈辱の日々に、すでに溺れ始めていた。