月児は夜の十二時を過ぎてから、そっと自室を抜け出した。廊下には家族企業のビルへと通じる秘密の通路がある。彼女はそれを知っている。父は決して教えなかったが、幼い頃から屋敷の構造を探り続けてきた月児には、すべての隠し扉がわかっていた。侍女にだけは伝えてある。「二時間だけ待って。戻らなければ、適当に手を打って」と言い残して。
エレベーターは地下三階まで黙って降りた。通常の社員証では届かないフロア。だが月児は父のオフィスからこっそり複製したカードを持っている。金属の扉が無音で開き、冷たい空気と薬品の匂いが押し寄せた。
薄暗い照明の下、廊下の両側に無機質なドアが並ぶ。研究施設にしては異様なほど静かだ。月児は心臓の高鳴りを押さえながら、一番奥のドアの前で足を止めた。鍵はかかっていない。取っ手を回すと、中からまるで別の世界の空気が流れ出した。
部屋の中央には、壁から突き出した奇妙な形状の台があった。人間の下半身だけを固定するためのものだ。壁には円形の穴が開き、その向こう側には拘束具が取り付けられている。月児は息を呑んだ。これは――壁尻室だ。父が何をしているのか、噂では聞いていた。だが実際に目にするのは初めてだった。
「そんな……本当に、こんなものを……」
一歩踏み込んだ瞬間、かすかなブザー音が聞こえた。頭上から何かが降りてくる。月児は逃げようとしたが、足が絡まった。細い針が首筋をかすめ、一瞬の痛みの後、世界が歪み始める。麻酔だ。視界がぼやけ、膝が崩れた。最後の意識の中で、背後で誰かが走ってくる足音が聞こえた。
「おい、新商品か? 今日の搬入リストに載ってなかったぞ」
「たぶん試作品だろう。こっちの壁に固定しろ」
月児の体は無造作に持ち上げられ、壁の穴に押し込まれた。腰の部分を金属製のベルトで固定され、両足は開かれたまま台に載せられる。スカートがめくれ上がり、下着が露わになる。頭は壁の向こう側にあるため、何がされているのかはっきり見えなかったが、身体の感覚は麻酔が切れてくるにつれて戻ってきていた。
「あ……動けない……やめて……」
言葉にならない声が漏れる。だが男性たちはまったく気にしない。一人が彼女の太腿に触れ、もう一人が何かのボタンを押した。壁の機械が作動し、下半身が少し持ち上げられる。完全に無防備な姿勢になった。
「処女か? これは上物だ。データを取っておけ」
そう言って、最初の男が彼女の後ろに立った。月児は恐怖で全身が硬直した。抵抗しようとするが、拘束が強固で全く身動きが取れない。壁の向こう側からは、自分の手も足も見えない。ただ、男の体温が迫ってくるのだけが感じられた。
「いや……お願い……私は、月家の……」
「月家? 何言ってるんだ。新商品の声帯模倣機能は優秀だな」
男は笑いながら、彼女の処女膜を無造作に破った。鋭い痛みが腰の奥から走り、月児は悲鳴を上げた。だが叫んでも助けは来ない。自分がまさに、父の造った玩具の一つとして扱われていることが理解できた。屈辱と絶望が渦巻く中、身体は容赦なく貫かれ続けた。
何度目かの中出しの後、男たちは満足したのか、部屋を出て行った。施錠される音がして、月児はひとり壁に固定されたまま残された。痛みと冷たさが混ざり合い、涙が止まらない。だが同時に、身体の奥で何かがずきずきと疼く。それは痛みだけではない。未知の快感の記憶が、神経の奥でかすかに息づいていた。
「私は……どうかしてる……」
月児は震える指を、かろうじて手首に巻かれたバングルに触れさせた。これは父が贈ってくれたものだが、彼女は密かにAI管理システムへのプライベート権限を埋め込んでいた。声を絞り出す。
「ライト……認証コード、アルファ・シックス・ナイン・フォー……私を解放して。地下三階、壁尻室」
数秒の沈黙の後、壁の機械がかすかに唸った。拘束ベルトが解除され、月児の体は自由になった。床に落ちると、すぐに這うようにして出口へ向かう。服は乱れ、下着は血と体液で濡れていた。エレベーターに乗り込み、急いで自室へ戻る。
侍女が待っていた。月児の姿を見て、何も言わずにバスローブを差し出す。月児はそれを受け取り、シャワー室に駆け込んだ。湯を全身に浴びながら、自分を強く抱きしめる。泣き声がかすかに響く。だが、頭の片隅では、あの感覚が忘れられない。恐怖、痛み、そしてその奥から這い上がる微かな熱。
「私は……汚れたんだ……それとも、目覚めたのか……」
浴室の鏡に映る自分の顔は、涙で濡れているのに、唇の端がわずかに上がっているように見えた。月児は慌てて視線をそらす。だが、心の奥底で認めつつあった。あの快楽の記憶を、もう一度味わいたいと。後悔と罪悪感の裏側で、禁断の欲が静かに芽吹いていた。