倉庫街の奥に構えられた古びたビルの一室。蛍光灯の青白い光が、コンクリートの床に敷かれた絨毯の上で揺れている。陳鋒はソファに深く腰掛け、指先でグラスの縁をなぞっていた。
「今週中に三人だ。美しい女を、だ。」
向かいのデスクに座る男――組織の幹部、佐藤――が、無造作に写真を数枚机の上に滑らせた。写真に写るのは、いずれも若く整った顔立ちの女たちだ。
陳鋒は写真に一瞥もくれず、酒を一口含んだ。冷えたウイスキーが喉を焼く。
「条件は。」
「身寄りの薄い者。人目につかない夜職の者。あるいは、失踪しても騒がれない立場の者だ。」佐藤は煙草に火をつけ、煙を吐き出した。「お前の腕なら造作もないだろう。」
陳鋒はようやく写真に手を伸ばした。一人目は銀座のクラブで働くホステス。二人目は看護師。三人目は――大学生か。ページをめくる指が一瞬止まる。
「ああ、楽な仕事だ。」
口元に笑みを浮かべ、彼は写真をスーツの内ポケットにしまい込んだ。既に頭の中では獲物を捕らえる手順が組み立てられていた。尾行、接触、薬、拉致。すべては慣れた手順だ。
夜の帳が街を包み込む頃、陳鋒はターゲットの一人が頻繁に通うナイトクラブに足を踏み入れた。クラブのフロアは原始的な熱気に満ちている。重低音が床を伝って足の裏を震わせ、色とりどりの光が踊る人々のシルエットを切り裂く。
バーカウンターの隅で、彼は標的の女を見つけた。黒いドレスに身を包んだ若い女が、友人の耳元で何かを囁いて笑っている。酒に染まった声、緩んだ動作。既に酔いが回っているようだ。
陳鋒はバーテンダーに目配せし、ひそかに手のひらを見せた。バーテンダーは微かにうなずき、手早くグラスに酒を注ぎ、その中へ小さな白い錠剤を落とした。薬は瞬時に溶け、誰の目にも分からない。
「お嬢さん、一杯どうですか?」
陳鋒はグラスを手に、女の隣に自然に腰を下ろした。女は一瞬警戒したような目を向けたが、男の整った顔立ちと落ち着いた物腰に、すぐに笑みを浮かべた。
「あら、知らない人からもらう酒は飲まない主義なんだけどね。」
「それは賢明だ。だが、これはただのシャンパンだよ。バーテンダーが直接注いでくれたものだ。」
彼はグラスを軽く掲げ、自分は何も仕込まれていないボトルの酒を煽った。女は迷った様子でグラスを見つめ、それから彼の目を見た。理性が警告を発しているのかもしれない。しかし、酒を断って場の空気を壊すのも気が引ける――そんな葛藤が一瞬、彼女の顔をよぎった。
結局、彼女はグラスを手に取り、一口含んだ。陳鋒はその動作をじっと見つめていた。喉が動き、酒が体内に流れ込む。あとは時間の問題だった。
十分後、女の意識は薄れ始めた。目が虚ろになり、体が傾ぐ。陳鋒は素早く彼女の腰を支え、まるで恋人を介抱するかのように優しくクラブの外へと連れ出した。警備員がちらりと目を向けたが、よくある風景に過ぎないと判断したのか、すぐに背を向けた。
駐車場に停めてあった黒いセダンの後部座席に彼女を押し込み、陳鋒は運転席に乗り込んだ。エンジンが静かに始動し、車は闇夜の中を滑り出した。
車はアジトへと向かった。地下に設けられた調教部屋は、外界から完全に遮断されている。防音壁、換気口には鉄格子、コンクリートの壁にはいくつかのフックが打ち付けられている。部屋の中央には据え付けの鉄製ベッドがあり、その四隅には革の拘束具が取り付けられていた。
陳鋒は無意識のうちに、もう一人の女の顔を思い浮かべていた。林薇。敵対するギャングの女ボス。屈強な男たちを従え、冷酷非情な采配を振るうその女は、しかし一度だけ、彼の前に見せた弱い表情があった。その一瞬の迷いが、なぜか彼の心の奥に棘のように刺さっている。
「…考えるな。」
彼は頭を振り、目の前の作業に集中した。若い女の体をベッドの上に横たえ、手首と足首を革の拘束具で固定する。女はまだ深い眠りに落ちていた。唇がわずかに開き、規則正しい寝息を立てている。
陳鋒は壁のスイッチを押した。天井のライトが淡い光を灯し、部屋全体に不気味な静寂が広がる。彼は女の髪の毛を一房指で掬い上げ、その感触を確かめた。
「目を覚ました時、お前は誰になるんだろうな。」
彼の声は、部屋の冷たい空気に溶けて消えた。