朝のキャンパスは、霊力復活によって活性化した空気で満ちていた。中庭の噴水からは淡い光る水しぶきが上がり、学生たちはそれぞれの能力を携えて校舎へと向かう。その中を、二十歳の丁旭はゆったりとした足取りで歩いていた。一見するとごく平凡な青年だが、その瞳の奥には誰にも見せない支配欲が潜んでいる。
彼の視線の先に、姉の姿があった。二十六歳の丁瑶は、正門の階段の上で数人の学生に囲まれている。彼女はクールな学園の花として知られ、その冷たく美しい顔立ちは誰をも寄せ付けない雰囲気を放っていた。霊力復活後、彼女の異能はさらに強力になり、戦闘時には冷酷無比と噂される。だが今、丁旭と目が合った瞬間、彼女の唇の端がほんのわずかに上がり、一瞬だけ色っぽい表情が浮かんだ。
丁旭は何も言わずにすれ違った。その背中に、姉の甘やかな視線が注がれているのを感じながら。
教室に入ると、ルームメイトの趙磊が既に席に着いていた。二十一歳の彼は豪快な性格で、最近のイベントに興奮しているらしい。
「おい、丁旭!聞いたか?昨日の霊力復活イベントで、また異能者のグループがダンジョンを攻略したって話だぞ。俺たちもそろそろ本格的に動く時期かもな!」
趙磊は机を叩きながら言ったが、すぐに不満そうな顔になる。
「でもな、あの林峰がまたお前の姉ちゃんにまとわりついてるんだよ。今日も朝っぱらから校門の前で待ち伏せしてたぜ。あの愚か者が、丁瑶さんに相手にされるわけないのにさ。」
丁旭は無表情で教科書を広げた。
「……くだらない。」
「だろ?俺もそう思う。でもお前には関係ないか。あの姉ちゃん、お前にだけはめちゃくちゃ優しいからな。」
趙磊は軽く笑いながら、話題を戦闘の話に切り替えた。丁旭は適当に相槌を打ちながら、心の中では別のことを考えていた。
放課後のチャイムが鳴り、学生たちが一斉に教室を後にする。丁旭は適当に荷物をまとめると、混雑した廊下を避けて人気のない校舎の隅へと足を向けた。
古びた階段を上がり、四階の非常階段へ続く扉の前で立ち止まる。そこは以前から誰も来ない場所だった。彼が軽く手を振ると、扉の錠前がカチリと外れた。
外に出ると、夕暮れの光が薄暗く差し込んでいた。鉄の手すりに寄りかかるようにして立つと、数分後には足音が近づいてきた。
「旭……」
柔らかく甘い声だった。丁瑶だった。彼女は周囲を警戒しながらも、すぐに弟の前に立つと、ゆっくりと膝をついた。スカートの裾が冷たい床の上に広がる。
「姉さん、遅かったな。」
丁旭は冷めた口調で言い放ちながら、手を伸ばして彼女のあごを摘んだ。
「すみません……今日は生徒会の仕事が長引いてしまって。」
丁瑶はそう言いながらも、その目には期待と興奮の光が宿っている。彼女は弟の指に顔を押し付けるようにして、小さく息をついた。
「さて、どうやってお前を辱めてやろうか。」
丁旭は軽く笑いながら、もう一方の手で彼女の髪を撫でた。その指が耳元をかすめると、丁瑶の体がピクリと震える。
「覚えているか?今日の授業で、お前は何も着けていなかったはずだ。せっかくだから、そのまま教室に戻るんだ。ちゃんと見せつけてやれよ。」
丁瑶の顔が一瞬で紅潮した。彼女はうつむきながら、しかし確かに微笑んでいた。
「はい……喜んでそうします。」
その声は、淫らな喜びに震えていた。丁旭は手を離し、一歩下がる。
「行け。」
「かしこまりました。」
丁瑶はゆっくりと立ち上がり、スカートの裾を整えると、そのまま非常階段を降りて校舎へと戻っていった。その後ろ姿は、一見すれば完璧な学園の花だったが、彼女の唇にはまだ甘やかな笑みが残っていた。
丁旭はその場に立ち尽くし、姉の足音が完全に消えるまで待った。そして、口元に冷たい笑みを浮かべながら、自分もまた校舎へと戻るのだった。