新国の国際空港に降り立った瞬間、蘇雪はその清潔で整然とした風景に一抹の違和感を覚えた。しかし、裕福な家に育った令嬢としての驕りが、その感覚をすぐに打ち消した。彼女は高級ブランドのスーツケースを引きずりながら、タクシー乗り場へと向かった。空気はどこか冷たく、人々の表情には余計な感情がなかった。
ホテルにチェックインした後、蘇雪は街を散策することにした。異国の文化に触れることに興味はあったが、現地の法律について調べる気は毛頭なかった。自分は外国人であり、多少のことは許されるだろうという根拠のない自信があった。彼女はスマートフォンで観光名所を検索しながら、歩道を闊歩した。
通りかかった公園のベンチで、彼女は持っていた空のペットボトルを何気なく草むらに投げ捨てた。新国では公共の場でのゴミのポイ捨ては厳禁であり、罰則は極めて重い。しかし、蘇雪はそれを知らなかった。彼女はただ、快適な休暇を満喫していただけだった。
数分後、彼女は美しい庭園の前に立った。入り口には「立入禁止」と書かれた看板があったが、文字は現地語で書かれており、英語の説明は小さく隅にあった。蘇雪はそれに気づかず、あるいは気づいても無視して、門をくぐった。彼女にとって、禁止は他人のためのものであり、自分には関係ないものだった。
庭園の中央にある噴水を見ながら、彼女は自撮りをしようとスマートフォンを構えた。その瞬間、背後から鋭い声がかかった。
「動くな。あなたは現在、新国の法律に違反している。」
振り返ると、制服を着た巡査が二人、無表情で立っていた。その目には一切の同情がなかった。蘇雪は最初、冗談かと思った。彼女は笑みを浮かべて言った。
「何の話ですか?私は観光客ですよ。ちょっと写真を撮っていただけです。」
巡査の一人が無線で何かを伝え、もう一人が彼女に近づいた。「あなたは公共の場でのゴミの不法投棄および立入禁止区域への侵入の現行犯で逮捕します。抵抗するならば、さらに重い罪が課せられます。」
蘇雪の顔から笑みが消えた。彼女は焦りながら、バッグから札束を取り出した。「これで十分でしょう?私は誤解されたんです。お金ならいくらでも払います。それに、私は蘇グループの令嬢です。こんなことで問題を大きくしないでください。」
巡査はその札束を見もせず、冷たく言い放った。「新国の法律は金で買えません。あなたの身分も関係ない。従いなさい。」
蘇雪は激しく抵抗した。彼女は大声で叫び、自分の権利を主張したが、巡査たちは機械的に彼女の腕を掴み、手錠をかけた。周囲の通行人は一瞥もくれずに通り過ぎていった。この国では、法律違反者は同情の対象ではないのだ。
拘置所に連行される間、蘇雪は震えていた。彼女の頭の中は混乱で満ちていた。自分が何をしたというのか?ただの些細な違反ではないか。どうしてこんなことになるのか。しかし、新国の司法制度は彼女の常識を遥かに超えていた。ここでは、法律は絶対であり、個人の背景や感情は一切考慮されない。
拘置所の鉄の扉が閉まる音が、彼女の耳に異様に大きく響いた。薄暗い廊下を歩かされながら、蘇雪は初めて、自分が本当に無力であることを実感した。かつての高慢な令嬢は、今やただの囚人に過ぎなかった。彼女は涙を必死にこらえながら、これから待ち受ける運命にただ怯えるしかなかった。